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電気自動車はデメリットしかないと言われる理由|メリットも紹介!
公開日:2024/04/02更新日:2024/04/02
目次
電気自動車のデメリットの前に|エンジン車との違いは?
電気自動車のデメリットやその理由を説明する前に、まずはHEV(ハイブリッド車)などを含むエンジン車と電気自動車で、構造や仕組み、各種コストがどう違うかを説明していきましょう。
電気自動車とエンジン車の構造・仕組みの違い
電気自動車とHEV(ハイブリッド車)を含むエンジン車の、主な構造や仕組みの違いを以下の表にまとめてみました。
電気自動車 | エンジン車(HEV含む) | |
エネルギー源 | 電気 | ガソリンや軽油などの燃料 |
エネルギーチャージ方式 | バッテリーに充電 | 燃料タンクへ給油(充填) |
チャージ速度 | まだ技術的に遅い(チョイ足しでも10分以上) | 速い(満タンでも長くて5分程度) |
車内エネルギー貯蔵の特徴 | バッテリー配置の自由度が高いが重くてかさばり、消費しても重量は変わらないが、劣化で容量が減る | 燃料タンク配置の自由度は低く大きくてかさばるが、消費すれば軽く、劣化しても容量は変わらない |
動力方式 | モーター&インバーター | エンジン(内燃機関)が主 |
動力の特徴 | 低回転から大トルクのモーターは駆動輪に近い位置へほぼ直結配置で自由度も高くかさばらず、しかし電気を流す重いケーブルが長く大量に必要で価値の高い金属も多く消費 | エンジンは低回転での効率が悪いためモーターアシストを介さないと燃費が悪く、駆動輪へは大掛かりな駆動系を介して接続するため配置の自由度が低く、大きくてかさばり、劣化すれば燃費が落ち、定期交換が必要な消耗品が多い |
危険性の懸念 | 高電圧による感電や、バッテリーの炎上爆発など | 燃料が可燃性物質のため引火炎上、爆発など |
こうした特徴の違いから、電気自動車では専用プラットフォームを使ってエンジン車以上のスペース効率化を図る努力も行われていますが、車体というよりはエネルギー源や動力方式の違いによる差が主だとわかります。
電気自動車はエンジン車より燃料コストが安い
次に燃料コストですが、2020年代半ばの現時点に限って言えば、エンジン車で使うガソリンや軽油よりも、電気自動車で使う電気の方が低コストだと言えます。
ただしこれはまだ電気自動車の普及が途上のため、発電所から充電設備までのインフラ整備が少なくて済んでいるため電気代が安上がりな一方、ガソリンなど石油製品はまだ世界中で需要が高く、産油国の調整で価格が高騰したまま推移という事情にも、注意が必要です。
今後は電気自動車の普及率増加に対応したインフラ整備が電気代に反映されるかもしれませんし、自動車に限らずエネルギー転換で石油製品の需要低下とともに価格も下がり、エンジン車の燃料コストが安くなるかもしれません。
ただ、その場合でも火力発電所での発電コスト低下とセットですから電気代も安くなるかもしれず、時代や地域、政治、経済といった複雑な事情で変わっていくことでしょう。
電気自動車の車両コストがエンジン車より高い理由
電気自動車ならではの効率化を図るため専用プラットフォームを使う程度の現在、車体そのものはエンジン車とコスト面で大きな差はありません。
問題はバッテリー、インバーター、モーターという「電気自動車三種の神器」、その全てで高価な希少金属が必要で、高電圧の電気を流すための長くて重く車内を這い回るケーブルには、やはり高価な銅が必要とされており、電気自動車の車両コストを押し上げています。
ただしこの種の問題は、1997年にトヨタが世界初の量販HEV、初代「プリウス」が発売されて以降の長いテーマで、その頃も同クラスのエンジン車よりはるかに高い車両価格から、「HEVなんて燃費が良くても廃車までモトが取れない」と言われたものです。
今ではHEVが高価でモトが取れないなんて誰も言いませんし、電気自動車も希少金属から安価な材料へ置き換える努力が進んでいますから、いずれエンジン車が少数派になって、わざわざ作るのに手間がかかるようになる頃には、車両コストが逆転するかもしれません。
電気自動車はデメリットしかないと言われる7つの理由
仕組みや特徴の違いゆえに、全体の構成が大きく異なる電気自動車ですが、現在はデメリットしかないと言われてしまうことが多いようです。
その理由はどんなところにあるのか、以下で説明しましょう。
デメリット1. 車両価格が高い
希少な材料を使い、エンジン車とは異なる生産設備を要するため投資も必要で、まだ普及率が途上なため、開発コストや設備投資などを生産数で割れば1台当たりのコストが下がる「スケールメリット」も受けにくい電気自動車は、高価というデメリットを抱えています。
これを解消するには、安い材料への置き換え、派生車を多数並行開発することによる開発コスト低減、生産設備の稼働率上昇による生産コスト低減が必要ですが、根本的には売れて普及してくれないことにはどうしようもありません。
そのため、政府や自治体などによる購入の補助金、維持のための減税や免税が多数導入され、普及率を上げようと努力されています。
デメリット2. 充電時間が長い
ガソリンスタンドへフラッと立ち寄り、給油機でガソリンや軽油を入れれば満タンまで5分もかからないエンジン車に対し、電気自動車は急速充電設備に接続してチョイ足し充電するだけでも最低10分は要します。
航続距離の長い大容量バッテリー車なら、90kW級、150kw級といったハイパワーな「超急速充電」を使っても、80%の急速充電上限には30分を要し、それも充電設備が空いていればの話で、先客がいれば当然待たねばならず、給油待ちとはワケが違うのです。
普通充電で満充電なら自宅や拠点で一晩動けませんし、明日は出るのが速いからと6kwのハイパワー普通充電でも数時間、これではエンジン車同様の使い勝手は期待できません。
バッテリー交換式も試行されてはいますが普及には問題が多く、いずれ充電方法、あるいは「充電という概念」に革命が起きない限り、このデメリットは解消されないでしょう。
デメリット3. EV充電スポットが少ない
近年、エンジン車でもHEVの普及とエンジンの超低燃費化で燃料需要が低下、地下の燃料タンク更新費用が捻出できないガソリンスタンドの廃業が相次ぎ、特に過疎化の進む地方では「スタンド難民」も増えるなど問題になっています。
しかし電気自動車の長距離運行、あるいは自宅に充電設備を持たないユーザーには不可欠な公共の充電スポット不足はそれ以上で、いくら充電設備を増やしても、それ以上に電気自動車が増えれば、少ない設備に複数が押しかける「充電スポット難民」は減りません。
しかも、それを原因に電気自動車の普及が遅ければ、初期に整備された充電スポットが採算を取れずに更新ではなく廃止される悪循環も起きており、今後の課題となっています。
デメリット4. 航続距離が短い
エンジン車の燃費なんて10km/Lも走れば上等、中には実燃費1~2km/Lなんて今考えると笑うしかない極悪燃費が許された1990年代までと異なり、2020年代の今は10km/L台が当たり前、HEVなら30km/台走ってもおかしくはありません。
おかげで遠出すれば1,000kmくらい無給油で走り、遠出も通勤もしないので何ヶ月もガソリンスタンドへ行かないユーザーもいるほどですが、電気自動車は満充電から600kmも走れば世界トップクラス、しかもカタログスペックですから、実際はその半分から7割程度です。
単に走らないだけならいいのですが、ユーザーが懸念するのは「災害レベルの悪天候や長期休暇時の大渋滞、立ち往生での電欠」で、冷房や暖房が効かない中で充電スポットにたどりつくのも容易でないのは命に関わります。
デメリット5. バッテリーが劣化する
エンジン車なら「劣化で近頃はガソリンがあまり入らなくなったよ」なんて話は聞いたことがありませんが、電気自動車のバッテリーは経年劣化による容量低下が普通に起こりますから、「新車の時より遠出できなくなった」なんて事が、普通にありえます。
しかも急速充電を頻繁に繰り返せば劣化は加速しますし、気温など環境によっても状態は変わるので劣化の進み具合はユーザーによって異なり、メーカーがバッテリーの温度管理のためアレコレと組み込んでも根本的な解決にはなっていません。
劣化するなら交換すればいいかというと、実質「エンジン車との価格差のほとんどはバッテリー」と言われるくらい高価ですから、よほど裕福なユーザーでもなければ非現実的。
「全固体電池」などと呼ばれる、劣化が進みにくい新世代バッテリーが有望な対策と考えられていますが、実際に発売されてユーザーの厳しい評価を受けないことには、イメージ改善になかなか結びつかないのが実情です。
デメリット6. リセールバリューが悪い
これは電気自動車に限らず、HEV、PHEV(プラグインハイブリッド車)といった、「走行用バッテリーの状態が性能や価値に大きな影響を及ぼす車全般」の話ですが、車体の内外装がどれだけキレイであっても、走行用バッテリーが劣化すれば価値は激減です。
そのため、基本的にエンジンさえシャキッとしていれば、あとはメンテナンス費用など走行用バッテリー交換に比べれば大したことのないエンジン車に比べ、購入価格に対する売却(あるいは下取り)価格の割合を意味する「リセールバリュー」が急激に低下します。
つまり、同じ年式でもエンジン車に対して電気自動車のリセールバリューは低く、高年式でも急激に値落ちしていくのです。
特に最近は、「まだ乗れるうちに普通のエンジン車に乗っておこう」という需要もあって、エンジン車の中古車価格が高騰していますから、その傾向はさらに強まっています。
デメリット7. 販売車種が少ない
ホンの数年前、電気自動車なんて日産とテスラ、それに三菱の軽自動車か、トヨタやタケオカのミニカーくらいだった頃より、短期間で電気自動車の車種は急激に増えました。
何とか検査室レベルの不正で排ガス規制などをごまかしていたヨーロッパの自動車メーカーが、ついに不正がバレてエンジン車を投げ出すハメになったのが主な要因ですが、中国の電気自動車が躍進するとエンジン車を見直す動きが出たり、世界が振り回されています。
そういうフラフラした状況でも電気自動車の車種は増え続けていますが、何しろまだ新しすぎて開発が追いついておらず、ユーザーによる選択肢の少なさが解消されるのには、もう少し時間がかかりそうです。
電気自動車のデメリットに対する誤解・解消方法
実際に多数存在する電気自動車のデメリットですが、あくまで「現時点での話」であり、近い将来には解決されるであろう、何なら既に解決に向かっていながら誤解されたままなものや、使い方次第で解消できるケースもあります。
「車両価格が高い」→補助金活用で解消できる
車両価格の高さは、とにかく普及して開発・生産コストを下げれば解消していくものですから、現在はメーカーが努力するだけでなく、政府や自治体もそれらを後押しするための補助金に莫大な予算を費やしています。
まずカタログで「高い!」と感じてそれっきりになるユーザーも多いのですが、NeV(一般社団法人 次世代自動車振興センター)で簡単に調べられる、国や自治体の補助金をチェックしてみると、目当ての車種が実はとても安く買えることがわかるのです。
日産 サクラなど、東京都在住なら購入時に最大126万5,600円もの優遇を受けられるため、ベース車で最高出力が同じ47kW(64馬力)のデイズターボ2WD車(183万8,100~200万6,400円)より、サクラ(122万8,100~177万4,800円)の方がはるかに安く買えます。
「充電時間が長い」→走行に必要な充電で短縮できる
充電時間の長さが大きな問題となるのは、「普通充電による満充電」や、「急速充電による80%充電」をフルにやってしまう場合ですが、エンジン車であってもガス欠寸前と満タンを繰り返す人は、あまりいないでしょう。
電気自動車でも同様で、ちょっとした休憩や買い物などで車を止める10分ほどの時間に充電すれば、急速充電ならかなりの充電量を、最近増えている6kW普通充電でもその後のドライブに余裕ができる程度の充電は十分に可能です。
このあたりの感覚は、まだバッテリーの性能と本体の電力使用量のバランスが取れていなかった時代からスマホを使っていた方なら容易に想像できると思いますが、要するに「できる時にできるだけ充電しておく生活習慣で、案外不便は解消できる」となります。
「EV充電スポットが少ない」→実は全国2万か所以上ある
電気自動車を所有するうえで、とても有益なサイトのひとつがEV充電スタンド情報サイト「GoGoEV」ですが、ここで公開されている全国の充電スポット数は実は21,555拠点!(2024年3月20日現在)
もちろん、全国にいくらあろうと「必要な時に、必要な場所へ、必要な数が」なければ話になりませんし、「ウチの近所にはないぞ?!」と言われればそれまでなのですが、具体的な設置場所まで情報が投稿されており、意外な場所にまで設置されていることがわかります。
そうやって意識していると、街でも最近できた新しい充電スポットを見つけることが増えるもので、「思い込みから今まで目にしても気づかず、身近に充電スポットがないと誤解していた」というケースが、実は多いのかもしれません。
「航続距離が短い」→一充電航続距離が400km以上の車種もある
現時点で電気自動車の航続距離が短いのは本当の話で、日本でも初の大ヒット作になった日産 サクラ(180km)や、同社のリーフ40kWhバッテリー搭載車(322km)など、まだまだシティコミューターレベルに留まっています。
ただ、同じリーフでも60kWHバッテリー搭載車、リーフe+系は450km走りますし、メルセデス・ベンツの高級電動セダン、EQSは日本で販売される電気自動車では最長の700km走るほど、初期に比べて航続距離がグングン伸びる日進月歩の時代。
もちろん、闇雲に航続距離を伸ばそうとバッテリー容量だけ増えても充電時間が伸びるだけで、リーフe+など3kW普通充電だと満充電に約23.5時間もかかる一日仕事ですが、そこはエンジン車での燃費に相当する電費(電力消費率)の技術革新に期待しましょう。
「バッテリーが劣化する」→メーカー保証がついている
初代プリウスの頃から電動車泣かせだった「走行用バッテリーの劣化、交換する際の高額な出費」ですが、メーカーも将来への期待をかけた投資として、電気自動車のバッテリー劣化に対しては手厚い保証をかけています。
具体的な例では、トヨタ系なら購入から8年16万km、さらに追加プランで2年4万kmの「バッテリー容量70%保証」をしていますし、日産も同様に8年16万kmの容量保証です。
いずれも、新車購入からある程度の年数かつ走行距離の範囲内で、保証よりバッテリー容量が低下した場合には、修理や部品交換により容量を回復させるというものですから、電気自動車が登場した初期のように「数年で使い物にならなくなった!」はだいぶ減っています。
「リセールバリューが悪い」→実はHEVと同じレベル
リセールバリューの悪さはバッテリー劣化への懸念が原因…つまりバッテリーの劣化は航続距離性能の低下、車としての価値が下がるというのは、本当の話です。
ただし、HEVやPHEVも電気自動車と同様に走行用バッテリーが航続性能や動力性能のキモとなっていますし、今ではほとんどが同じようなリチウムイオン電池を使っていますから、バッテリー容量低下によるリセールバリュー悪化は同様に発生します。
電気自動車と違って燃料を給油すればエンジンで走れるため、モーターアシスト領域やEV走行時間の限度に影響が出る程度のHEVやPHEVは、電気自動車ほどではないとはいえ、電気自動車の技術レベル水準が上がった現在なら、ほぼ同レベルと考えてもよいでしょう。
電気自動車はデメリットしかない?メリットは?
現時点でまだ電気自動車にデメリットがあるのは本当で、エンジン車とは全く異なる工業製品として接したり、生活にも変化が必要なのは確かですが、現時点でのメリットも把握しておきましょう。
- 電気代は燃料代より安い。
- 補助金をうまく使えば、同クラスのエンジン車より安く買える。
- 設備があれば自宅で充電し、ガソリンスタンドへ行く必要があまりない。
- 専用プラットフォームを使った電気自動車は、スペース効率が優れている。
- 配置の自由度が高いバッテリーの床下配置による低重心で、走行安定性が高い。
- V2H(Vehicle to Home)による「走る蓄電池」としての性能がもっとも高い。
- 電気製品を利用するV2L(Vehicle to Life)能力が高い。
V2H/V2Lについては海外の一部で全く非対応車もあり、そうした車は補助金も低いためメリットは薄く、現時点では専用プラットフォーム車もまだ少ないため、全てを満たす電気自動車はなかなかないのですが、今後は増えていく流れです。
【結論】電気自動車はデメリットだけではない
ユーザーが懸念するようなデメリットは実際にまだ多数あり、現時点で全てのユーザーへ無条件でオススメするにはまだ時期尚早な電気自動車ですが、環境や生活スタイルによっては、既にメリットによる恩恵の方が多いユーザーもいるはずです。
自分の場合はどうなのかよく調べてみると、あるいは「デメリットしかないのでは?」から、「早く乗り換えた方がいいのでは?」へと考えが変わるかもしれません。
明らかにエンジン車にメリットがあったのは2010年代までで、2020年代には拮抗していき、2030年代にはどうなっているか、今から検討を始めても早すぎることはないでしょう。
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