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電気自動車の航続距離ランキング20選【国産EV・輸入EV別】
公開日:2024/01/31更新日:2024/10/21
国産および輸入車を含む、長い航続距離を持つ優れたEVモデルを選び、それぞれの特性と性能について詳細に説明します。
目次
EVの「航続距離」とは?
Konstantin - stock.adobe.com
EVの航続距離とは、フル充電後に走行できる最大距離を指します。これは、モデルごとのバッテリー容量や交流電力量消費率(電費)、走行条件によって異なります。
外気温も航続距離に影響を与える要素の一つ。EVに採用されるリチウムイオンバッテリーは低温環境に弱い特徴を持ち、外気温による差はあるものの寒冷地では航続距離・電費が減少するとされています。
EVの航続距離はガソリン車やディーゼル車と比較して短い傾向にありますが、近年では技術の進歩によりその差は縮まりつつあります。
航続距離の長さは、車を選ぶ際の判断基準の一つであり、消費者が日常生活や特定の用途に合わせて最適なEVを選ぶための重要な情報なのです。
EVの航続距離の目安
EVの航続距離を考慮することは、車選びにおいて極めて重要です。市場に出回るEVの航続距離は、モデルごとにそれぞれ差があります。本項ではEVの航続距離の目安、EVとガソリン車の航続距離の違い、日常の運転ニーズに与える影響を解説します。
EVの航続距離は約200km/約400km〜が目安
EVの航続距離は大きく2つに分けられます。一つ目はおよそ200km程度と、比較的短めの航続距離のモデル。一般的に軽EVや超小型モビリティに分類されるモデルが多く、主に市街地での日常使用に適しています。短距離ではあるものの、通勤や日々の買い物をはじめとした普段使いがメインの場合には最適です。
一方で、400km以上の航続距離を持つモデルは、遠方への旅行や出張をはじめとした長距離を移動する機会が多いユーザーに適しています。充電ステーションが少ない地域や旅行などで使用する場合であっても、計画的に運用することで安心して運転できるのではないでしょうか。
航続距離の違いを理解し、使用目的やライフスタイルに適したモデルを選択することは、EVの満足度を高める上で非常に重要です。ユーザーは自身のライフスタイルを踏まえたうえで必要な航続距離を考慮し、最適なEVを選ぶことをおすすめします。
EVとガソリン車の航続距離はどれくらい違う?
EVの航続距離は年々伸びてきてはいるものの、現時点でガソリン車には及びません。一般的に多くのガソリン車はフルタンクで500~800km以上走行できるのに対し、多くのEVの航続距離はフル充電でおよそ200~500km程度です。
その要因とされているのがエネルギー密度の問題。EVに用いられるバッテリーの重量あたりのエネルギー密度はガソリンと比べて低いとされ、ガソリン車に近しい航続距離を実現するには、バッテリーの容量を増やす必要があります。EVの車両重量がガソリン車と比べて重いとされているのはこれが原因です。
ところがバッテリー技術は急速に進化しているのがポイント。現在までEVのバッテリーでは、充分な航続距離を持つニッケル、マンガン、コバルトを正極材料に用いた三元系のリチウムイオンバッテリーが主流とされてきました。このバッテリーはEVの車両価格を高額にしている原因の一つとされています。
一方で近年注目を集めているのが三元系より安いものの、航続距離が短いことからEVでは一般的ではなかったLFPバッテリー(リン酸鉄リチウムイオンバッテリー)です。LFPバッテリーは近年の技術躍進によりそれらの欠点を克服、航続距離を伸ばすと共に車両価格の低減にも貢献したのです。
このようにバッテリー技術は年々進歩し、改善されています。比較的新しいモデルでは、600km以上の航続距離を持つEVも見られるようになりました。近い将来、EVの航続距離はガソリン車に近づく、あるいはそれを超える可能性があるでしょう。
ライフスタイルによっては航続距離が短くても問題ない
航続距離はEVを選択する際の重要な要素ですが、日常生活における使用方法によっては短い航続距離でも充分に実用的であることがあります。特に、市街地での日常的な移動や通勤など短距離が主である場合、航続距離の長いEVよりも航続距離が短いモデルが適していることが多いです。
ポイントは航続距離が短いモデルは車両価格が低く設定されていることが多いなど、経済的な面でもメリットがある点。航続距離が短いEVは、都市部での通勤、近所への買い物、子どもの送り迎えなど、日常的な短距離の移動に最適な選択肢となります。
購入を検討している方は、自身の移動パターンや使用目的に合わせて、最適な航続距離のEVを選択することをおすすめします。
EVの実際の航続距離はカタログ値の7割程度と考えるのが無難
そもそもカタログに記載されているEVの航続距離や電費などの数値は、国際的に統一された燃費・排ガスの試験方法、WLTPモード(Worldwide harmonized Light vehicles Text Procedure)によって市街地、郊外、高速道路走行時などの走行状況を考慮したうえで測定されています。
ところが実際の運転状況、気象条件、道路の状態、車内の電気使用量など、様々な外部要因によって、実際の日常使用ではカタログ記載の航続距離よりも短くなることが一般的です。
例えば寒冷地で走行する場合には、EVのバッテリーは低音環境下に弱いため、通常時と比べて走行距離が減少します。さらにEVはエンジンを搭載しないため、カーエアコンで暖房を利用する際もエンジンの熱を利用できないことから、ガソリン車と比べて電力消費量が大きくなるのが特徴です。
このように、実際に走行する際にはさまざまな環境から影響を受けるため、EVの航続距離を見積もる場合はカタログ値の約70%を目安として考えることが推奨されます。
航続距離や電費に影響を与える要因を正しくおさえることで、EVについてより深く理解することができるでしょう。特に長距離を運転する機会が多いユーザーは、外部要因が航続距離に影響を与える差を考慮した計画が重要です。
国産EVの航続距離ランキング10選
以下では、航続距離が長い国産EVをランキング形式で紹介します。
順位・メーカー・車名・グレード | 航続距離(WLTCモード) | バッテリー容量 | 1kWhあたりの航続距離 |
---|---|---|---|
1位:日産 アリア(91kWh車) B9 | 640km | 91kWh | 7.03km/kWh |
2位:レクサス RZ RZ300e version L | 599km | 71.4kWh | 8.39km/kWh |
3位:トヨタ bZ4X G(FWD) | 567km | 71.4kWh | 7.94km/kWh |
3位:スバル ソルテラ ET-SS(FWD) | 567km | 71.4kWh | 7.94km/kWh |
5位:レクサス UX300e version C/version L | 512km | 72.8kWh | 7.03km/kWh |
6位:日産 アリア(66kWh車) B6 | 470km | 66kWh | 7.12km/kWh |
7位:日産 リーフ(60kWh車) e+G/e+X/e+X 90周年記念車 | 458km | 60kWh | 7.63km/kWh |
8位:日産 リーフ(40kWh車) G/X/X Vセレクション/X Vセレクション 90周年記念車 | 322km | 40kWh | 8.05km/kWh |
9位:マツダ MX-30 e-SKYACTIV EV(全車) | 256km | 35.5kWh | 7.21km/kWh |
10位:ホンダ N-VAN e:(全車) | 245km | 29.6kWh | 8.28km/kWh |
航続距離上位5車種の概要(国産車)
1位:日産 アリア(91kWh車)
2024年10月現在の日本で、「もっとも電気自動車を売る気があるメーカー」、日産が誇る電気自動車のフラッグシップモデルであり、国産最強SUVなのが、このアリアです。
バッテリー容量91kWhの「B9」系と、同66kWhの「B6」系があり、航続距離が長いのはもちろん前者で、B9系のFWDモデル「B9」はWLTCモード航続距離640kmと、今では600km超えも珍しくない輸入電気自動車と同等のスペックを誇ります。
ただし、車重2t超(2,060kg)のSUVに長大な航続距離を与えるために91kWhものバッテリーが必要だったとも言えて、1kWhあたりの航続距離7.03km/kWhという数値はあまり効率的とは言えません。
価格も738万円以上と高価で、標準装備の235/55R19タイヤをダウングレードすれば、より安価で航続距離も700km近くへ伸ばせそうですが、日本国内での使用ならこれで十分ですし、「カタログスペック狙いのエコスペシャル」を出す必要もないでしょう。
メーカー | 日産自動車(NISSAN) |
---|---|
車種 | アリア |
航続距離が最長のグレード | B9 |
価格 | 738万2,100円 |
車両重量 | 2,060kg |
航続距離(WLTCモード) | 640km |
バッテリー容量 | 91kWh |
1kWhあたりの航続距離 | 7.03km/kWh |
電費(WLTCモード) | 169Wh/km |
公式サイト | 日産自動車(NISSAN)公式サイト |
2位:レクサス RZ RZ300e version L
トヨタとスバルが共同開発した、e-TNGAプラットフォームを使う電動SUVのレクサス版がRZで、途中から追加されたFWD版のRZ300eがトヨタ/スバル版を引き離し、航続距離で2位になりました。
姉妹車はバッテリー容量もタイヤサイズも同じ、しかもRZ300eは車重が姉妹車より80~90kgほど重いにも関わらず電費(WLTCモード交流電力消費率)が優れ、航続距離も30km以上長い結果になったのは、「空力の差」かもしれません。
1kWhあたりの航続距離も8.39km/kWhと傑出しており、これは国産電気自動車ですとバッテリー容量を20kWhに押さえて軽く、タイヤも細くて抵抗の少ない日産 サクラや三菱 eKクロスEV(9km/kWh)に次ぐ値です。
メーカー | レクサス(LEXUS) |
---|---|
車種 | RZ |
航続距離が最長のグレード | RZ300e version L |
価格 | 820万円 |
車両重量 | 1,990kg |
航続距離(WLTCモード) | 599km |
バッテリー容量 | 71.4kWh |
1kWhあたりの航続距離 | 8.39km/kWh |
電費(WLTCモード) | 120Wh/km |
公式サイト | レクサス(LEXUS)公式サイト |
3位:トヨタ bZ4X G(FWD)
トヨタ/スバル/レクサス3姉妹車のトヨタ版で、元より550?650万円と安価なうえにCEV補助金が満額の85万円出るため、「400万円台から狙える国産SUV」としてコストパフォーマンスの高いbZ4X。
航続距離ではレクサス RZに及ばないとはいえ、もっとも安くて軽い「G」グレードのFWD版が567kmと最長モデルになりましたが、空力性能でRZに及ばないならば、せっかくの廉価グレードゆえにタイヤをダウングレードして姉妹車中最長狙いもアリでは?と思います。
メーカー | トヨタ自動車(TOYOTA) |
---|---|
車種 | bZ4X |
航続距離が最長のグレード | G(FWD) |
価格 | 550万円 |
車両重量 | 1,900kg |
航続距離(WLTCモード) | 567km |
バッテリー容量 | 71.4kWh |
1kWhあたりの航続距離 | 7.94km/kWh |
電費(WLTCモード) | 126Wh/km |
公式サイト | トヨタ自動車(TOYOTA)公式サイト |
3位:スバル ソルテラ ET-SS(FWD)
トヨタ/スバル共同開発の電動SUVでスバル版となるソルテラは、トヨタ版bZ4Xの「G(FWD)」グレード相当となる廉価版ET-SS(FWD)が順当に同率3位の567km。
この共同開発でスバルが主に関わったのはAWDシステムのセッティングや、ソルテラ自体で走りの味付けがメインとされていますから、FWD車は無難にトヨタ版と同じ数値を出したということなのでしょう。
スバルらしさは航続距離より走り味で発揮!ということのようです。
メーカー | スバル(SUBARU) |
---|---|
車種 | ソルテラ |
航続距離が最長のグレード | ET-SS(FWD) |
価格 | 627万円 |
車両重量 | 1,910kg |
航続距離(WLTCモード) | 567km |
バッテリー容量 | 71.4kWh |
1kWhあたりの航続距離 | 7.94km/kWh |
電費(WLTCモード) | 126Wh/km |
公式サイト | スバル(SUBARU)公式サイト |
5位:レクサス UX300e version C/version L
レクサス初の電気自動車であるUX300eですが、RZ/bZ4X/ソルテラ3姉妹よりやや大容量のバッテリーを積んでいるにも関わらず1kWhあたり航続距離は7.03km/kWhと大きく劣り、航続距離も500kmをようやく超える程度に留まりました。
UXの場合はガソリンエンジン車/ハイブリッド車として作られ、その電気自動車版として後に登場したのがUX300eですから、車重もより大容量バッテリーを積んだアリア(91kWh版)より重くなってしまい、空力面でも電気自動車専用モデルに及ばなかったようです。
逆に言えば、「エンジン車の電気自動車版でありながら、頑張った方」ではないでしょうか。
メーカー | レクサス(LEXUS) |
---|---|
車種 | UX300e |
航続距離が最長のグレード | ■version C ■version L |
価格 | ■virsion C:650万円 ■virsion L:705万円 |
車両重量 | 2,065kg |
航続距離(WLTCモード) | 512km |
バッテリー容量 | 72.8kWh |
1kWhあたりの航続距離 | 7.03km/kWh |
電費(WLTCモード) | 141Wh/km |
公式サイト | レクサス(LEXUS)公式サイト |
輸入EVの航続距離ランキング10選
以下では、航続距離が長い輸入EVをランキング形式で紹介します。
順位・メーカー・車名・グレード | 航続距離(WLTCモード) | バッテリー容量 | 1kWhあたりの航続距離 |
---|---|---|---|
1位:テスラ モデル3 ロングレンジAWD | 706km | (75kWh) | (9.41km/kWh) |
2位:メルセデス・ベンツ EQS450+ | 700km | 107.8kWh | 6.49km/kWh |
3位:BMW i7 eDrive50 Excellence/eDrive50 M Sport | 652km | 105.7kWh | 6.17km/kWh |
4位:BMW iX xDrive50 | 650km | 111.5kWh | 5.83km/kWh |
5位:BYD シール ベースグレード | 640km | 82.56kWh | 7.75km/kWh |
6位:メルセデス・マイバッハ EQS680 SUV | 640km | 118kWh | 5.42km/kWh |
7位:テスラ モデルS デュアルモーターAWD | 634km | (100kWh) | (6.34km/kWh) |
8位:ヒョンデ コナ Voyage | 625km | 64.8kWh | 9.65km/kWh |
9位:メルセデス・ベンツ EQE350+ | 624km | 90.6kWh | 6.89km/kWh |
10位:アウディ Q8スポーツバック e-tron 55 quattro S Line レンジプラスパッケージ装着車 | 619km | 114kWh | 5.42km/kWh |
航続距離上位車種の概要(輸入車)
1位:テスラ モデル3 ロングレンジAWD
ほとんどの輸入電気自動車は、国産車に比べるとハイブリッドカーなど電動車、特に効率を重視したエコカーの経験が少ないためか、「重すぎて効率が落ちようとも、とにかくバッテリーを大量に積み、電費が悪化しても構わない」ようです。
そのためスペック上の航続距離は伸びても1kWhあたり航続距離は7km/kWhを割り込み、効率が悪い上に高価になりがちですが、そこはさすが電気自動車専門メーカーのテスラ、モデル3 ロングレンジAWDでは推測値とはいえ9.41km/kWhを叩き出しました。
これは国産軽自動車すら上回るもので、もちろん航続距離706kmは2024年10月現在の日本で販売されている全ての電気自動車のうち最長!
SUVではないごく普通の4ドアセダンなので軽く作れて空気抵抗も少なく、標準タイヤサイズも235/45R18と欲張っていないため転がり抵抗も少なく、もとより621万9,000円と安いうえにCEV補助金は85万円の満額支給で、500万円台前半から狙える現実的な価格。
まさに電気自動車としてひとつの「理想像」と言える1台なのは、間違いありません。
メーカー | テスラ(TESLA) |
---|---|
車種 | モデル3 |
航続距離が最長のグレード | ロングレンジAWD |
価格 | 621万9,000円 |
車両重量 | 1,828kg |
航続距離(WLTCモード) | 706km |
バッテリー容量 | (75kWh・推測値) |
1kWhあたりの航続距離 | (9.41km/kWh・推測値) |
電費(WLTCモード) | - |
公式サイト | テスラ(TESLA)公式サイト |
2位:メルセデス・ベンツ EQS EQS450+
空力を追求したデザインもさることながら、車重が2.5tを超えようとも構わず100kWh以上の大容量バッテリーを搭載し、まさに力技で航続距離を伸ばしてきた代表格がメルセデス・ベンツのEQSです。
ヨーロッパ仕様では既にバッテリー容量を118kWhに増加、WLTPモード参考値ながら822kmへと航続距離をさらに伸ばしたモデルが販売されているため、それが日本にも上陸すれば最長となりそうですが、それでも1kWhあたり航続距離は7km/kWhに達しません。
重くて高価(1,563万円)でもカタログ上の性能が良ければよし、電費が悪くとも富裕層向けの高級車なので気にしないというのはヨーロッパ的ではありますが、今後はもっと環境に配慮した電費のいい車種が求められることになるでしょう。
メーカー | メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz) |
---|---|
車種 | EQS |
航続距離が最長のグレード | EQS450+ |
価格 | 1,563万円 |
車両重量 | 2,530kg |
航続距離(WLTCモード) | 700km |
バッテリー容量 | 107kWh |
1kWhあたりの航続距離 | 6.49km/kWh |
電費(WLTCモード) | 182Wh/km |
公式サイト | メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)公式サイト |
3位:BMW i7 eDrive50 Excellence/eDrive50 M Sport
日本ではメルセデス・ベンツと「輸入高級車の双璧」を成すBMWの電動フラッグシップ・モデルであるi7ですが、バッテリー容量や航続距離はやや控えめで、1kWhあたりの航続距離もギリギリ6km/kWh台といったところ。
トヨタとの提携でなんとかエコカー技術をモノにしたいBMWですが、i7の航続距離や電費を見ている限りでは、今後の生き残りをかけてさらなる努力が求められそうです。
確かに航続距離はEQSほどではなくともそれなりで、走りもBMWらしくスポーティかもしれませんが、同社の真の革新は、「ノイエクラッセ」と呼ばれる次世代モデルからかもしれません。
メーカー | BMW(BMW) |
---|---|
車種 | i7 |
航続距離が最長のグレード | ■eDrive50 Excellence ■eDrive50 M Sport |
価格 | ■eDrive50 Excellence:1,598万円 ■eDrive50 M Sport:1,598万円 |
車両重量 | 2,560kg |
航続距離(WLTCモード) | 652km |
バッテリー容量 | 105.7kWh |
1kWhあたりの航続距離 | 6.17km/kWh |
電費(WLTCモード) | 185Wh/km |
公式サイト | BMW(BMW)公式サイト |
4位:BMW iX xDrive50
2021年発売当時はそれなりに画期的だった電動SUVのiXですが、輸入電動SUVでは最長の航続距離を誇るとはいえ、大柄なボディに重い大容量バッテリーを積んでようやく達成した数値であり、1kWhあたりの航続距離が6km/kWh台を割り込んだのはいただけません。
エンジン車で言えば「燃費が悪くとも燃料タンクの容量を増やしたから走れるだけ」で、電気自動車が増えるとともに厳しくなる電力事情を考えれば、早々に電費の優れた新世代モデルへ交代していくべきです。
ある意味で、ヨーロッパで現地のメーカーが中国車に苦戦しているのは、価格以外にこうした非効率さも原因だったのではないでしょうか。
メーカー | BMW(BMW) |
---|---|
車種 | iX |
航続距離が最長のグレード | xDrive50 |
価格 | 1,398万円 |
車両重量 | 2,560kg |
航続距離(WLTCモード) | 650km |
バッテリー容量 | 111.5kWh |
1kWhあたりの航続距離 | 5.83km/kWh |
電費(WLTCモード) | 190Wh/km |
公式サイト | BMW(BMW)公式サイト |
5位:BYD シール ベースグレード
「テスラ モデル3キラー」として日本にも上陸したBYDの新型セダンで、さすがに電費など効率面ではモデル3に及ばないものの、安価なLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリーで、モデル3より安価を実現(CEV補助金が少ないのも、独自のBYD補助金で対応)。
日本で主流のCHAdeMO充電規格や、V2H/V2L外部給電にも対応しているため使い勝手はシールの方が上で、1kWhあたりの航続距離も7.75km/kWhと、ほとんどの国産電気自動車を上回るため、日本で使うにはバランスの取れた電気自動車と言えるでしょう。
メーカー | BYD(BYD) |
---|---|
車種 | シール |
航続距離が最長のグレード | ベースグレード |
価格 | 528万円 |
車両重量 | 2,100kg |
航続距離(WLTCモード) | 640km |
バッテリー容量 | 82.56kWh |
1kWhあたりの航続距離 | 7.75km/kWh |
電費(WLTCモード) | 148Wh/km |
公式サイト | BYD(BYD)公式サイト |
EVの航続距離の選び方【ライフスタイル別の目安】
EVを選択する際、航続距離は個人のライフスタイルや使用目的に密接に関連しています。ここでは、日常使用に適した航続距離から、ロングドライブに対応できるモデルまで、さまざまなニーズに合わせた航続距離の目安を詳しく説明します。
日常使いなら航続距離は200km程度がおすすめ
日常生活でのEVを利用する場合は、およそ200km程度の航続距離を持つモデルがおすすめです。この航続距離のEVは、主に軽EVや超小型モビリティに分類されるモデルが多いのが特徴。
コンパクトなボディに普段の買い物や通勤に充分な荷室空間を備えたモデルも多いため、都市部での通勤、日々の買い物、そして近距離の移動など、日常的な用途に適しています。
そして通勤などで車を日常的に利用するユーザーの1年間の平均走行距離は、1万km程度と言われています。1日あたりの走行距離に換算すると、多くても30km程度あれば問題がないと言えるでしょう。
特に、頻繁に長距離を走行する必要がない市街地をメインとした使用においては、一見すると物足りない航続距離でも充分にニーズを満たします。市街地では充電ステーションへのアクセスも良好なため、航続距離が短いモデルでも日常的な使用における不便は少ないと言えるでしょう。
ロングドライブが多い場合は400km以上がおすすめ
ロングドライブを楽しむ方や頻繁に遠方への移動を必要とするユーザーの場合、400km以上の航続距離を持つモデルが最適です。ロングドライブや遠出に対応できるだけでなく、充電ステーションが遠く離れている状況や頻繁な充電が困難な場合でも、事前に充電計画を立てることで安心して運転を続けることができます。
航続距離400kmのモデルで都内から大阪までの距離、およそ500kmのドライブを例にすると、途中地点のサービスエリアなどで休憩を挟む際に1度の充電する、もしくはこまめに短時間づつ充電したら時間のロスも少なく、充分に走行可能です。
このようなロングドライブを頻繁に行うユーザーは、400km以上の航続距離を持つEVを選択することで長距離移動におけるストレスが軽減され、ドライブの快適性を向上できるでしょう。
EVの航続距離に影響する要素
EVの航続距離にはバッテリー容量や車の使用状況、気候条件、さらには走行する環境といった多くの要因が影響を与えます。本項では、主要な要因としてバッテリー容量やその状態、走行環境・状況を取り上げます。
バッテリー容量や劣化が航続距離に影響する
ガソリン車のタンク容量と同じく、EVのバッテリー容量と航続距離は密接に関連しています。一般的にバッテリーが大容量であればあるほど1回の充電量・時間は多く、走行できる距離は長くなります。頻繁に長距離を走行するユーザーには、大きな容量のバッテリーを搭載したEVが適していると言えるでしょう。
ところが、EVに使われるリチウムイオンバッテリーは、繰り返し利用することで劣化するのが特徴です。そしてバッテリーの劣化は航続距離に影響を与える重要な要素。時間が経つにつれて、すべてのバッテリーは徐々に性能を低下させ、その結果として航続距離も減少していきます。この劣化を防ぐためには、正しい充電方法と適切なバッテリーの保守が重要です。
これにより、EVのバッテリーは長期間にわたって最良の状態を維持し、車両の性能と航続距離を最大限に活用することができます。
冷暖房の使い方によっては航続距離に影響する
EVの航続距離は、車内の冷暖房システムの使用が大きな影響を及ぼします。冷暖房を使用する際、特に極端な気温条件下では、エネルギー消費量が増加するのがポイント。これは、バッテリーのエネルギーが車両の動力だけでなく、温度調節のためにも使用されるためです。
冷暖房を頻繁に使用すると、バッテリーの充電がより速く減少し、結果として航続距離が短くなる可能性があります。特に冬の寒い日や夏の暑い日など、厳しい気候条件下での冷暖房の使用は、バッテリーの消耗を加速させる主要な要因となります。
また、エンジンを利用するガソリン車と比較して、モーターを利用するEVは暖房利用時の電力消費量が大きいのも特徴。ガソリン車はエンジンの熱を利用することで、電力消費を最小限にして室内を温められます。一方でEVの場合はバッテリーの電力を消費して車内を温めるため、多くの電力を消費してしまうのです。
このようにバッテリーのパワーは、車を動かす以外にも車内の温度を快適に保つために使われるため、航続距離の減少は避けられません。冷暖房の使用に関する知識を深め、バッテリーを効果的に管理することにより、EVの航続距離を最大限に伸ばすことが可能です。
上り坂では電費を消費するため航続距離に影響する
上り坂や起伏の多い道を走行する際、EVは平地での走行に比べてより多くのエネルギーを消費します。これは、坂道での重力に抗して車両を前進させるため、多くのエネルギーを必要とするためです。
特に急勾配や長い坂道では、バッテリーの消耗が通常よりも速く進み、結果として航続距離が短くなる傾向があります。この現象は、車両が坂を上るために必要な追加のパワーを供給するために、バッテリーからより多くのエネルギーを引き出す必要があるために生じます。
また、上り坂では回生ブレーキによる恩恵を受けにくいのも特徴。EVには運動エネルギーを電気エネルギーへと変換することによって発生する抵抗を減速に利用する回生ブレーキが採用されています。変換されたエネルギーはバッテリーで回収される仕組みです。上り坂を走行する際は坂による進行方向とは反対方向への力が常にかかっているため、下り坂と比べてエネルギーの変換効率が悪くなってしまいます。
起伏の多い地域でEVを運転する際は、このような状況に対応するために地形の特徴を理解し、事前に航続距離の見積もりを行うことが重要です。適切な予測と計画を行うことで、EVのバッテリー効率を最適化し、航続距離の予想外の減少を防ぐことができます。
EVのバッテリー劣化と航続距離の関係
EVのバッテリー劣化は、航続距離に直接影響を及ぼします。ここでは、バッテリーの劣化がEVの航続距離にどのような影響を及ぼすのか、そのメカニズムとその対策について詳しく解説します。
EVはバッテリー劣化によって航続距離が変わる
EVのバッテリー劣化は、車両の航続距離に大きな影響を与えます。時間の経過と共に、EVのバッテリーは徐々に劣化し、その能力は損なわれていきます。これにより、フル充電後の走行可能距離が減少することがあります。
バッテリーに負担をかけにくいとされているのは、充電を80%程度に止める方法。反対に満充電での長時間放置はバッテリーの性能を低下させる原因となります。
バッテリーの劣化速度は、充電の頻度や方法、車の使用条件、さらには外部の温度など、さまざまな要因によって異なります。バッテリーの健全性を長期間維持し、航続距離を最大化するためには、適正な充電方法を実践することが極めて重要です。
新車購入から何年くらいでバッテリーが劣化する?
一般的に、EVのバッテリーは新車からおよそ5年程度で劣化の兆候が見られはじめると言われていますが、これはバッテリーのタイプ、使用方法、充電の頻度、そして環境条件によって大きく変わります。
例えば、バッテリーを何度も完全放電させることや、高温環境での使用が多いと、劣化が早まる可能性があります。しかし、適切な使用方法と定期的なメンテナンスを行うことによって、バッテリーの寿命は伸ばすことができます。このようなケアを通じて、長期間にわたってバッテリーの性能を維持することが重要です。
バッテリーが劣化したら交換できる?費用の目安は?
EVのバッテリーが劣化した場合、交換が可能です。この交換費用は、車種や使用するバッテリーの種類によって異なるものの、三元系のリチウムイオンバッテリーはEVの車両価格を高額にしている要因とされ、一般的にはかなりの高額になる傾向があります。
交換コストは、数十万円から数百万円の範囲で変動することがありますが、この投資により、車の航続距離を元の状態に戻し、全体的な車両寿命を延ばすことができます。
EVのオーナーは愛車のバッテリー劣化が認められた場合、まずは高額な交換費用と乗り換えを検討する必要があります。新たなバッテリーへの交換を検討することで、車両のパフォーマンスと航続距離を改善することが可能です。
しかしながら、車両の状態が思わしくない場合、修理費等も検討する必要が出てくるため、乗り換えと変わらない費用になってしまうことも。そのため、現在の車両の状態を考慮したうえで検討することをお勧めします。
航続距離が短いEVで心配な「電欠」対策
航続距離が短いEVは「電欠」のリスクに注意が必要です。電欠のリスクをいかにして低減させるか、そして万が一電欠に陥った場合にどのような対応をすべきかについて、具体的な対策案について説明します。
ロングドライブの場合は充電計画をしっかり立てる
ロングドライブを計画する際、充電計画を慎重に策定することが求められます。これには、ルート上にある充電スポットの位置を事前に特定し、適切な充電時間を見積もることが含まれます。
これらの充電スポットの所在地を把握し、必要に応じて充電のスケジュールを組むことで、途中で電力が尽きるリスク(電欠)を効果的に回避できます。このような事前の計画は、安心して長距離を走行するための鍵となり、予期せぬ電力切れを避けるためには不可欠です。
電欠になってしまった場合はJAFなどのロードサービスを利用する
もし愛車が電欠になってしまった場合、JAFのようなロードサービスの利用が効果的な解決策となります。これらのサービスは多くの場合、EVのための緊急充電支援を提供しており、電欠で立ち往生した際には大変便利です。
ロードサービスを利用することで、緊急時に迅速に対応し、安全な場所まで車両を移動させるか、場合によってはその場で充電を行うことができます。EVオーナーは、電欠のリスクを避けるためにも、ロードサービスの加入を検討することが推奨されます。
EVの航続距離についておさらい
この記事では、EVの航続距離に関する重要な情報を提供しました。EVを選択する際には、航続距離が重要な決定要因となります。使用する環境や目的に合わせて適切な航続距離を持つモデルを選ぶことが重要です。
技術開発の進歩に伴い、今後さらに長い航続距離を走行するEVが登場することが期待されます。
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NISSAN
日産
かつては日本第2位の自動車メーカーであり、自他ともに求める「技術の日産」として、真剣なクルマ選びに値する玄人好みのクルマがユーザーに支持される日産自動車。フェアレディZやスカイライン、GT-Rといった歴史と伝統を誇るV6DOHCターボエンジンのハイパワースポーツをイメージリーダーとして大事にする一方、2010年に発売したリーフ以降、SUVのアリア、軽自動車のサクラなど先進的なBEVをラインナップ。さらにエンジンを発電機として充電いらず、従来どおり燃料の給油で乗れる「e-POWER」搭載車を増やしており、モーターのみで走行するクルマの販売実績では、日本No.1の実績を誇るメーカーでもあります。
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TOYOTA
トヨタ
常に世界の最多生産台数を争い、日本のみならず世界を代表する自動車メーカー、トヨタ。多くの日本車メーカーと深い関わりを持ち、グループ全体で超小型車からバス・トラック、産業車両まで網羅したフルラインナップ・メーカーであり、近年は実用性やコストパフォーマンスのみならず、スポーツ性など走る楽しみにも力を入れています。世界初の量販ハイブリッドカー「プリウス」から電動化技術では最高の蓄積を持ち、自動運転技術の実用化、新世代モビリティと都市生活の在り方を模索する「ウーブン・シティ」へ多大な投資を行う一方、電動化だけがエコカー唯一の選択肢ではないというスタンスも崩さず、死角のない全方位戦略が現在の特徴です。