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中国の電気自動車(EV)メーカー「BYD」とは?車種一覧も紹介!
公開日:2024/05/13更新日:2024/05/13
目次
中国の電気自動車(EV)メーカー「BYD」とは?
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中国の自動車メーカー「BYD」、正式には「比亜迪(ビーヤーディ)汽車工業有限公司」と言って、1995年に創業した電池メーカー、「比亜迪股份(こふん)有限公司」の子会社であり、今ではテスラと並び電気自動車の覇権を世界で闘うトップクラスメーカーです。
ここではBYDの歴史や特徴、今後の展望についても紹介していきます。
BYDの歴史
1995年に創業した電池メーカー、BYD(比亜迪股份(こふん)有限公司)は成長とともに自社で生産する電池の有効活用策として自動車業界への進出を決め、経営の傾いたメーカーを買収して2003年にBYD Auto(比亜迪(ビーヤーディ)汽車工業有限公司)を設立。
2008年にトヨタや三菱より早くプラグインハイブリッド車を市販したことでも知られ、2010年代には電動のバスやフォークリフトを日本へ輸出開始、そんなBYDは自動車の先進技術に携わる人間なら、「乗用車もいつ日本に上陸するのかと恐れられる黒船」でした。
2023年1月にはSUVのATTO3を皮切りに、日本で乗用車の販売を本格的に開始するとともに、全国で正規ディーラー網の展開を進めています。
BYDの電気自動車(EV)の特徴・強み
BYDの強みは何といっても「親会社が電池メーカー」なことで、昔ながらの自動車メーカーでいえばBMWやダイハツのような、「エンジン屋が自動車メーカーになった」のと同じ出自であることです。
トヨタが2020年に中国でBYDと電気自動車を共同開発する合弁会社を設立、ハイブリッド車で鳴らした制御技術にBYDの電池が加われば鬼に金棒と、トヨタにも認められたことで、BYDの電気自動車用バッテリー技術がどれほどのものかわかります。
実際、日本市場に投入した電気自動車はコストパフォーマンスが非常に高く、各種の電化製品を通して中国製品へのネガティブな先入観がない世代ならば、有力な選択肢と考えるユーザーは少なくありません。
BYDは日本市場から撤退の可能性も?
日本では過去に、韓国のヒョンデ(当時は「ヒュンダイ」読み)が進出したものの販売が振るわず撤退した歴史があり、「中国や韓国のメーカーが日本で成功するわけがない」という先入観を持つ世代は確かに存在します。
しかし、物心ついた頃から電化製品をはじめ、身の回りで中国や韓国の製品に囲まれていた世代からすれば何の問題もなく、BYDが日本で展開している電気自動車はドイツ人がデザインして世界で通用しており、バッテリーなどむしろ世界レベルの一級品です。
日本の商習慣に配慮し、オンライン販売ではなく全国各地に実店舗(ディーラー)を建設していることからも、BYDが日本に根を張ろうと最大限に努力していることがわかります。
充電設備の設置など、日本で電気自動車を普及させるための貢献度にまだ課題は残るものの、「よほどの事態」でも起きない限り、そうそう日本からの撤退はないでしょう。
BYDの電気自動車(EV)の車種一覧
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ここではBYDが2024年4月現在発売している2車種と、間もなく発売予定の1車種を紹介します。
BYDは日本で少なくとも年間1車種を追加していくと表明しており、今後もSUVやミニバンの新モデルに期待です。
BYD ATTO 3のスペック・価格
2023年1月、BYD乗用電気自動車の本格市販第1号として発売されたSUVで、日本市場でも扱いやすいコンパクトサイズ、使用する希少金属が少なくて安価、安定性の高いリン酸鉄リチウムイオンバッテリーを使用しているため、ソコソコの性能で安価に抑えています。
SUVは世界的に電気自動車を含め競争が大変激しく、ATTO3より性能が優れた同クラス車は他にも多数ありますが、400万円台以下でATTO3と同程度以上の一充電走行距離は、ヒョンデのコナ(446km)くらい、550万円台前半でもテスラ モデルY RWD(507km)程度。
つまりATTO3とは、「2024年4月時点で、現実的な価格と満足できる程度の性能を両立した、数少ない電動SUV」なのです。
普通充電は3kW/6kW対応、約30分の90kW急速充電で230km分以上の充電を可能としているため長距離ドライブ用途にも十分に使えて快適性や積載能力も十分、V2H/V2L外部給電にも対応したSUVで450万円と、これほど安く購入できるモデルはそうそうありません。
メーカー | BYD |
車種 | ATTO3(アット スリー) |
モデル・グレード | ■ベースグレード |
全長×全幅×全高 | 4,455×1,875×1,615mm |
車両重量 | 1,750kg |
乗車定員 | 5人 |
最小半径 | 5.3m |
駆動方式 | FWD |
電力消費率 | 139Wh/km(WLTCモード) |
一充電走行距離 | 470km(WLTCモード) |
総電力量 | 58.56kWh |
最高出力 | 150kW(204PS) |
最大トルク | 310N・m(31.6kgf・m) |
価格(税込) | ■ベースグレード:450万円 |
公式サイト |
BYD DOLPHINのスペック・価格
BYD第2の電気自動車として2023年9月に発売、SUVよりは競争相手の少ない5ドアハッチバックのコンパクトカーですが、そのコストパフォーマンスは秀逸です。
何しろベースグレードのライバル、日産 リーフ(408万1,000円~・航続距離322km)や、ロングレンジのライバルであるリーフe+(525万3,600円~・458km)より安くてよく走ります。
世界的にはテスラのモデル3 RWD(531万3,000円~・同573km)が最大のライバルですが、航続距離や動力性能こそ及ばないものの格段に安く、都市間交通でもさほど長距離走行が不要な日本なら、リーフからDOLPHINへの乗り換えで満足するユーザーは多いでしょう。
充電時間はベースグレード、ロングレンジそれぞれで3kW普通充電なら15/19.5時間、6kW普通充電なら7.5/9.8時間、30分の90kW急速充電なら304km/332km分を充電します。
これほど安くて必要十分な性能を持つBYDのベーシックモデルこそ、日本市場における電気自動車の普及に対して軽EVとともに最高の刺激となるもので、日本の自動車メーカーもウカウカしてはいられません。
メーカー | BYD |
車種 | DOLPHIN(ドルフィン) |
モデル・グレード | ■ベースグレード ■ロングレンジ |
全長×全幅×全高 | 4,290×1,770×1,550mm |
車両重量 | ■ベースグレード:1,520kg ■ロングレンジ:1,680kg |
乗車定員 | 5人 |
最小半径 | 5.2m |
駆動方式 | FWD |
電力消費率 | ■ベースグレード:129Wh/km(WLTCモード) ■ロングレンジ:138Wh/km(WLTCモード) |
一充電走行距離 | ■ベースグレード:400km(WLTCモード) ■ロングレンジ:476km(WLTCモード) |
総電力量 | ■ベースグレード:44.9kWh ■ロングレンジ:58.56kWh |
最高出力 | ■ベースグレード:70kW(95PS) ■ロングレンジ:150kW(204PS) |
最大トルク | ■ベースグレード:180N・m(18.4kgf・m) ■ロングレンジ:310N・m(31.6kgf・m) |
価格(税込) | ■ベースグレード:363万円 ■ロングレンジ:407万円 |
公式サイト |
BYD SEALのスペック・価格
日本だとテスラのモデルS対抗馬かと思われるSEALは2024年の年央、5~6月頃の発売と言われており、価格は未定ながらもモデル3や他のライバル(BMW i5など)より安価なことは確実。
モデルSよりひと周り小さい(モデル3よりは大きい)、独立トランク式の4ドアファストバックセダンで、リアウィンドウごと大きく開くテールゲート式の昨今流行りな4ドアクーペスタイルではないものの、十分に「走りそうな」スタイルはまさにスポーツセダン。
AWD車の動力性能はモデルS並とまでいかないものの、0-100km/h加速が3.8秒(モデルSのデュアルモーターAWDは3.2秒)と、コンパクトで安価に抑えたモデルとしては十分以上の性能で、発売されればコストパフォーマンス面でひとつのベンチマークになるでしょう。
2024年4月現在では日本仕様の価格やWLTCモード航続距離、充電パフォーマンスなどは発表されていないものの、「安いだけではない高性能のBYD車」として、存在感を発揮しそうです。
メーカー | BYD |
車種 | SEAL(シール) |
モデル・グレード | ■RWD ■AWD |
全長×全幅×全高 | 4,800×1,875×1,460mm |
車両重量 | ■RWD:2,055kg ■AWD:2,185kg |
乗車定員 | - |
最小半径 | - |
駆動方式 | ■RWD:RWD ■AWD:AWD |
電力消費率 | ■RWD:-(WLTCモード) ■AWD:-(WLTCモード) |
一充電走行距離 | ■RWD:640km(BYD自社計測値) ■AWD:575km(BYD自社計測値) |
総電力量 | ■RWD/AWD:82.56kWh |
最高出力 | ■RWD:230kW(313PS) ■AWD:390kW(530PS) |
最大トルク | ■RWD:360N・m(36.7kgf・m) ■AWD:670N・m(68.3kgf・m) |
価格(税込) | ■RWD:未発表 ■AWD:未発表 |
公式サイト |
BYDの電気自動車(EV)の価格比較
2024年4月現在、日本で販売されているBYDの電気自動車(EV)は2車種で、300万円台後半から高くとも450万円、それでもATTO3は2024年3月に10万円値上げしてこの安さですから、販売戦略さえ間違わなければ知名度の上昇とともに売れ筋になりそうな予感。
シールは2024年4月時点で日本での価格が未発表ですが、700万円前後になるのではと言われています。
車種 | 価格(税込) |
ATTO3(アット スリー) | ■ベースグレード:450万円 |
DOLPHIN(ドルフィン) | ■ベースグレード:363万円 ■ロングレンジ:407万円 |
SEAL(シール) | ■RWD:未発表 ■AWD:未発表 |
BYDの電気自動車(EV)の特徴・魅力
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ここではBYDの電気自動車(EV)について、その特徴や魅力について紹介します。
価格の安さばかりがクローズアップされやすいBYD車ですが、日本で電気自動車を購入する上で重要なポイントもしっかり抑えているのがポイントです。
なんといっても安い!コスパは最高レベル!
安いだけが取り柄ではないとはいえ、BYD車の安さは秀逸です。
何しろDOLPHINは日産 リーフ(40kWhバッテリー搭載車)、リーフe+(同60kWh)と同程度のバッテリーでも優れた電費でWLTCモード一充電走行距離は長く、それでいて安いと「日本車キラー」ぶりを発揮し、車名の通りイルカのようなデザインも合格点。
ATTO3も競争が激しいSUVの中で格段に安く十分なパフォーマンスで、間もなくデビューのシールも電動スポーツセダンとしては十分な性能を持ちます。
機能も十分でV2H/V2L対応も!
安くてコスパ最高!にとどまらず、先進的な運転支援機能や予防安全機能に関した装備も整っていますが、日本市場に導入される電気自動車として嬉しいのは、なんといっても外部給電可能なV2H(Vehicle to Home)とV2L(Vehicle to Load)機能への対応です。
日本では災害のたびに電気自動車やプラグインハイブリッド車の「走る蓄電池」として高い機能が注目されており、他のあらゆる性能が優れていてもV2H/V2Lがない時点で魅力としては大きくマイナスになりますが、BYDはその点、しっかり日本へ適用しています。
オンライン販売じゃない!全国にリアル店舗を建設中!
最近は世界的に「新しい販売方法」として、電気自動車を中心にオンライン販売が推進されており、高価な電気自動車でも利益を出すべく人件費を削りたい思惑が見えています。
確かに商談がわずらわしいと感じるユーザーにとっては通販感覚で購入できてありがたいとも言えますが、対面販売で長年やってきた日本の商習慣を考えれば、ディーラーの担当者と直接やり取りして、展示車に触ったり試乗車に乗るのが欠かせないユーザーも多数。
そこでBYDは全国各地にリアル店舗、つまりディーラーの建設を進めており、商談のみならず、出先での不具合などを心配するユーザーの不安にもしっかり応えていきます。
BYDの電気自動車(EV)の選び方・比較ポイント
ここではBYDの電気自動車(EV)を検討対象にした場合に、BYDでもどの車種を選ぶべきか、ライバルと比較した際はどのような点がポイントになるかを紹介していきます。
短距離から小旅行まで対応するDOLPHIN
363万円からと、軽を除く電気自動車としては非常に安価なDOLPHINのベースグレードは、それでもWLTCモード一充電走行距離400kmと十分な性能を持つため、コンパクトな車体を活かした通勤や買い物に使うゲタ車からちょっとした小旅行まで対応!
ちょっと余裕が欲しいなら407万円で476km走る「ロングレンジ」も良いのですが、76km差に過ぎないと思えばベースグレードで十分でしょう。
リーフなど従来からのコンパクトカーや、軽自動車からのステップアップに最適です。
流行のSUVを電気自動車でも安価に、ATTO3
国産・輸入を問わず、最低地上高がしっかり確保された電動SUVとしてはヒョンデ コナに次ぐ安さのATTO3は、300万円超えが珍しくなくなったハイブリッドSUVからの乗り換えも視野に入ります。
高級輸入車や国産ブランドへのこだわりがなければ乗って損なし、音響性能にこだわった車内設備には2024年3月の改良でカラオケ機能が標準装備となりましたし、V2L外部給電機能はアウトドアにも最適で、エンターテイメント志向で車を選ぶユーザーに最適でしょう。
ビジネスもゴルフも長距離巡航で頼もしいSEAL
2024年4月時点ではまだ未発売のSEALですが、国産セダンがロクに残っておらず、輸入高級セダンがライバルとなる中で700万円前後からと思われる価格はハイブリッド車のみならず、純ガソリン車からの乗り換えまで十分検討対象になりえます。
スポーティなデザインに余裕の動力性能、十分な航続性能は長距離高速ドライブに最適で、ビジネスのための高速移動から休日のゴルフまで、コストパフォーマンスの高さが評価される電動スポーツセダンになりそうです。
BYDの電気自動車(EV)に適用される補助金・減税
電気自動車(EV)には、地球温暖化対策のため1台でも多くの乗り換えを促すべく手厚い税制優遇や補助金制度が設定されています。
もちろんBYDの電気自動車も例外ではなく、ここでは適用されてどれだけオトクに購入できるかを紹介しましょう。
グリーン化特例で自動車税は減税!追加措置の地域も
電気自動車は「グリーン化特例」という制度により、新車登録の翌年度に自動車税が概ね75%減税となり、ATTO3でもDOLPHINでも約18,750円が減税されます(発売されればもちろんSEALも)。
さらに、東京都や愛知県など独自の減税制度を設定している自治体では、期間に限りがあっていつまで延長されるかはわからないものの、「5年間の自動車税免除」という、地域によっては嬉しい特典もあるんです。
自動車税のグリーン化特例の概要(国土交通省)
エコカー減税で自動車重量税は100%免税
コンパクトなATTO3やDOLPHINはまだ軽い方とはいえ、大容量バッテリーで同クラスのエンジン車やハイブリッド車より重たい電気自動車にとってありがたいのが「エコカー減税」による重量税の減免(免税)です。
新車登録時と初回継続車検でそれぞれ100%免税、ATTO3もDOLPHINも購入時に約30,000円、初回継続車検時に約20,000円が免税されます。
SEALの場合は発表されている車重通りなら、購入時に約37,500円、初回継続車検時に約25,000円が免税です。
エコカー減税の概要(国土交通省)
安いとはいえありがたい!環境性能割も非課税!
車両本体価格の3%が徴収される環境性能割(旧・自動車取得税)ですが、令和8年(2026年)3月31日までに新規登録すれば非課税です(2024年4月現在・さらに延長の可能性もあり)。
安いBYD車では1,000万円オーバーの高級輸入電気自動車に比べれば恩恵は少ないとはいえ、本来さらに高価になるはずの環境性能割が0円なのはありがたい話で、これだけでも次の車へ乗り換える際、純エンジン車より電気自動車を選ぶ理由になります。
環境性能割の概要(国土交通省)
その他:国や各自治体による電気自動車の購入補助金
税制優遇措置だけではなく、国や自治体から買い替えを促す新車購入補助金が設定されていますが、その代表格である国の「CEV補助金」において、令和5年度補正予算や令和6年度予算分の「令和6年(2024年)4月1日以降の登録車」では、BYDは残念ながら少し冷遇。
車としての性能や機能に問題があるわけではなく、むしろ安いので普及を推進しそうなものですが、国としては車両だけではなく「充電器の設置などインフラ整備」も要件としており、残念ながら新興のBYDはまだそこが弱いポイントなのでした。
そのためATTO3もDOLPHINも(おそらくSEALも)、満額の85万円にはほ遠い35万円しかCEV補助金は出ませんが、BYDではゼロ金利ローンなどで時間を稼ぎつつ、全国のディーラーへ充電器を設置するなど、巻き返しを図ると思われます。
また、国だけではなく自治体からの補助金が出る地域もありますから、NeV(一般社団法人 次世代自動車振興センター)のHPでお住まいの地域の最新情報はチェックしておきましょう。
NeV(一般社団法人 次世代自動車振興センター)
BYDの電気自動車(EV)を試乗予約してみよう
ここまでBYDの電気自動車(EV)各車種についてご紹介しましたが、そろそろ実際に触れて、乗って、安い中国製電気自動車の実力を確かめたくなってきたのではないでしょうか?
BYDの公式HPには「試乗申込み」コーナーがあり、全国各地のBYDディーラーや試乗車の検索と予約ができます。
まだ北海道や東北、四国ではディーラーが少ないものの、2023年2月に横浜で1号店が開店したばかりとは思えない速度で建設が進んでおり、いずれ全国どこでもBYD車の試乗ができるようになるでしょう。