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環境に優しい「燃料電池」と「燃料電池車(FCV)」ってなんだろう?

燃料電池自動車(FCV)は、動力源として燃料電池を用いる電気自動車の一種です。FCVは、水素と酸素を化学反応させて電力を生み出す「燃料電池」で発電を行い、その電力を利用してモーターを駆動させることにより走行します。

二酸化炭素(CO2)を発生させないことから、燃料電池は環境にやさしいエネルギー源として注目を集めています。この記事では燃料電池の基本的な知識を中心に、今後のFCV普及における課題についても詳しく解説します。

目次

  1. 環境にやさしく、燃料を消費して発電する「燃料電池」
  2. 車載電池として使用される固体高分子形燃料電池ってなんだろう?
  3. 燃料電池を使うFCVと、電気を使うEVはどう違うの?
  4. FCVには現在どのような課題があるんだろう?
カースモーラちゃんのPICK UP
  • FCVは環境に優しい燃料電池を使用しているよ。
  • 燃料電池は電池と思われがちだけど、電力を生成する「装置」のことなの。
  • エコカーとして期待されているFCVだけど、水素ステーションの数や車両価格の高騰が、普及を進める上での課題になるみたい。

環境にやさしく、燃料を消費して発電する「燃料電池」

環境にやさしく、燃料を消費して発電する「燃料電池」

燃料電池は、一般的な蓄電池とは異なります。「電池」という呼称ですが、実は「蓄電池」ではありません。


電気化学反応を利用して、水素と酸素の化学エネルギーから直接電力を生成する「発電装置」なのです。従来の発電システムが化石燃料の燃焼に依存しているのに対し、燃料電池はそのような燃焼プロセスを必要としません。


主なメリットとしては下記が挙げられます。


  • 高い発電効率:化石燃料を燃焼させる従来の発電方法に比べて、より高い効率で電気エネルギーを生成することができる
  • 優れた環境特性:生成されるのは環境に無害な水のみなため、環境への負荷が極めて少ないという特徴がある
  • 排熱利用による総合効率の向上:発電過程で生じる熱を有効利用することにより、全体のエネルギー効率をさらに向上可能

こうした優れた特徴から、燃料電池は国内外でその開発が積極的に進められています。


環境への負担を軽減し、持続可能なエネルギーシステムの一翼を担うことが期待されている燃料電池は、今後のエネルギー技術の発展において重要な役割を果たすはずです。

車載電池として使用される固体高分子形燃料電池ってなんだろう?

車載電池として使用される固体高分子形燃料電池ってなんだろう?

燃料電池には、構造や動作温度が異なるさまざまな種類が存在します。


実用化やさらなる性能向上を目指して研究が進められている主なものは、「リン酸形燃料電池(PAFC)」「溶融炭酸塩形燃料電池(MAFC)」「固体電解質形燃料電池(SOFC)」「固体高分子形燃料電池(PEFC)」の4種類。


中でも「固体高分子形燃料電池(PEFC)」は、車載電池として使われています。もともとは宇宙開発用に開発された技術であり、その後多岐にわたる分野への応用が進められています。


主な特徴としては下記が挙げられるでしょう。


  • 優れた始動特性:常温から発電が可能で、迅速なスタートが可能
  • 作動温度の低さ:作動温度が約90℃程度と比較的低いため、耐熱性が低い材料にも使用可能

このような特徴により、特に容量や重量に制約がある自動車用の車載電池に適していると言われています。環境に配慮した持続可能なエネルギーソリューションとして、今後さらにその重要性が高まっていくはずです。

燃料電池を使うFCVと、電気を使うEVはどう違うの?

燃料電池を使うFCVと、電気を使うEVはどう違うの?

FCVもEVも、走行中にCO2を排出しないため、大気汚染の軽減や地球温暖化防止に貢献できるという点では共通しています。一方で、電力の取得方法や航続距離、燃料補給の方法についてはそれぞれ異なる特性があるのです。

外部供給と自車発電

FCVは車内に搭載された燃料電池で水素と酸素の化学反応を利用して直接電力を生成し、そして生成された電力を使ってモーターを動かします。


一方でEVは、発電所で生成された電力をバッテリーに蓄え、その蓄積された電力を使用して電気モーターを駆動させることで走行します。水素を元に電力を自ら”生成して”走行するのがFCV、電力をバッテリーに”蓄えて”走行するのがEV、と覚えておきましょう。

航続距離

FCVは約650〜750km程度の距離を走行することができると言われています。対してEVは約400kmの範囲内で運用が可能。


例えばトヨタ自動車の手がけるFCVとして有名な「MIRAI」は約850kmの走行が可能となっており、EVと比べて航続距離が長いという点が大きなメリットと言えるでしょう。

燃料補給の時間

FCVは約5分ほどで水素を補給することが可能ですが、EVはフル充電に多くの時間を要することも。急速充電が可能なモデルでも、10分から1時間程度は必要となってしまいます。

充電・燃料補給の方法

FCVの燃料補給は、基本的に専用の水素ステーションのみ。


また、水素の貯蔵には厚く頑丈な高圧タンクが必要となるため、EVに比べるとコストが高くなる傾向にあります。一方でEVは充電ステーションのみならず、自宅でも充電可能です。

FCVには現在どのような課題があるんだろう?

FCVには現在どのような課題があるんだろう?

航続距離や燃料補給の時間など、一般的なEVと比べてメリットの目立つFCV。


その一方で、燃料補給に必要なインフラの整備、材料の特殊性ゆえの価格高騰など、乗り越えなければならない課題がまだまだ存在します。

水素ステーションの数

FCVの燃料として使用される水素は、ガソリンのように車両のタンクに充填され、走行の際のエネルギー源となります。そのため、ガソリン車がスタンドで給油をするように、水素を補給するための水素ステーションが必要です。


しかしながら、この水素ステーションの数は全国的に不足している状態です。2022年5月時点で、日本国内の水素ステーション数は159か所。


主に「首都圏」「中京圏」「関西圏」「九州圏」といった4大都市圏に集中しており、このうち最も多いのは首都圏で59か所です。


全国のガソリンスタンドの数2万9,005か所(2020年度末時点)と比較すると、FCVの走行に必要不可欠な水素ステーションの数が圧倒的に足りていないことが分かります。FCVがガソリン車のように広く普及し、便利に利用されるためには、より多くの水素ステーションの設置が必要です。


このような現状を鑑みて、経済産業省の発表では2030年度までに水素ステーションの数を1,000基程度に増加させる、乗用車換算で80万台程度(水素消費量約8万トン)の普及を目指すなど、燃料電池車の普及促進を計画しています。

車両価格

FCVは、ガソリン車やほかの車種と比較してその高い価格が普及の障害となっています。


この高価格の大きな要因はいくつかありますが、その一つとしては、燃料電池に使用される材料に非常に高価で希少な白金(プラチナ)が多量に必要となる点にあります。価格を少しでも下げるためには、燃料電池の白金使用量を削減する、もしくは白金を使用しない燃料電池の開発を行う必要があるでしょう。


そのためにさまざまな研究も進行しているようです。こうしたFCVの価格高騰に対応すべく、経済産業省は「クリーンエネルギー自動車導入促進補助金」という制度を設けています。


当制度により、FCVを購入した際に補助金を受けることができるようになります。

カースモーラちゃんのまとめ

FCVは環境に優しいだけじゃなくて、充電時間が短かったり航続距離が長かったりとたくさんのメリットがあるんだね。だけど、まだまだ解決すべき問題がたくさんあるみたい。

インフラ整備と、価格の低減は特に大きな課題と言えそうだね。全国で水素ステーションが整備されて、手に届きやすい車両価格が実現できればFCVの普及はきっと加速するんじゃないかな。

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