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実車を見ずに発表即オーダーから2年!東北のアイオニック5ユーザーに聞いてみた「冬でもイケます」使い勝手!
公開日:2024/08/05更新日:2024/08/05
目次
アイオニック5…それはあまりにもさりげない初対面だった
待ち合わせ場所に現れたアイオニック5は、SUVというよりちょっと大柄なホットハッチ
2024年7月某日、指定された宮城県仙台市近郊の某所で待っていたところ、スルスルスル…と背後からいきなり現れた1台のSUV…タイヤノイズ以外ほぼ無音、ピクセル調のテールランプはこれこそヒョンデの「アイオニック5」!大泉さんの登場です。
ちなみに筆者にとってアイオニック5の実車は初対面で、現在のヒョンデは日本国内にディーラー網がないため、何かのイベントや、こうしてユーザーさんと巡り合わない限り、近くでシゲシゲと観察する機会はそうそうありません。
それゆえ、黒(アビスブラックパール)のボディカラーの随所へシルバーのアクセントが光る大泉さんのアイオニック5は、流行りの「オラオラ顔」とは対極的にスポーティで精悍なフロントマスクと合わせ、「シックで落ち着いた雰囲気を発する、大人のSUV」でした。
否、「本当にこれで最低地上高160mm、全高1,645mmもあるの?!」と言いたくなるようなワイド&ロースタイルからは、ヒョンデ公式HPの画像から感じるような都会派SUVというより、実物は少々大柄なスポーティ・ハッチバック車に見えます。
「いやー、ホイールが大径(20インチ)ですし、ホイールベースも長いから、ハリアーみたいなSUVが来ると思ってた友達からは、驚かれるんですよ。」とは、大泉さんの談。
それだけではなく、ガッチリ寝かせて大きめのリアスポイラーを組み、鋭角的なCピラーなどテール周りのクーペルックも正直言ってカッコイイ!
ピクセル調の前後灯火類など、直線的かつ鋭角なフォルムに「角」をうまく組み合わせたデザイン感覚は、筆者が四半世紀ほど前に試乗したミドルクラスセダンの「エラントラ」から、長い月日を経てヒョンデも目覚ましく成長したな…と感じさせてくれました。
今回はそんなアイオニック5と、オーナーの大泉さんの経験談を伺っていきましょう。
オーナー様は整備工場運営…ヒョンデ提携拠点も近くで安心
自宅充電に欠かせない充電コンセントはアイオニック5ユーザー大泉さんの物件にもしっかり装備、ちなみに大泉さん自身は普通充電でコト足りるため、急速充電未経験!
兵藤(筆者):今日はお忙しい中、お時間ありがとうございます。近場で電気自動車ユーザーに取材できたらと思ったら大泉さんに行き当たりまして…ちょっと変わった待ち合わせでしたね?
大泉:ええ、ここはウチの土地でもともと田んぼやってたんですが、区画整理で住宅地になって、最近は転勤族でも一戸建てがいいという方もいますし、アパートだと管理がかえって面倒ですから、建売よりこういうのもアリかなと思って、賃貸の住宅を建てたんですよ。
せっかくだからと屋根の上には太陽光発電パネルも載せて、ちゃんと電気自動車用の充電コンセントもつけました!
兵藤:おぉ~、電気自動車ユーザーらしい配慮というか、自治体から補助金が出るイマドキの新築エコ住宅なら、当たり前の設備なんでしょうね。
もうこのへんでも、電気自動車はけっこう走ってますか?
大泉:リーフやサクラは当たり前に走ってますけど、このあたりならむしろFCEV(燃料電池車)のMIRAIが多いですね。
兵藤:ああ、ここ確かに水素スタンド(イワタニ水素ステーション宮城仙台)が近いから、MIRAIでも不便は感じない地域ですもんね…そういう意味では、ようやくサクラをよく見かけるようになって程度のウチ(仙台市太白区)より、選択肢が多そうです。
大泉さんのご商売も、こういう住宅関連なんですか?
大泉:そもそもは兼業農家で、本業はあくまで整備工場なんですよ。親族に不動産関係の者がいるので、こういう住宅も今後はやっていこうと思ってますが。
兵藤:なるほど!整備工場をやっているから、アイオニック5のようにディーラー網がなく、オンライン販売の電気自動車でも、自分で面倒を見られると?
大泉:ヒョンデは確かにディーラーはないんですけど、近くにヒョンデと提携した整備拠点(仙台市宮城野区の「Y-PIT仙台」)があるので、専門的なメンテはそこでお願いできますから、特に困ることはありませんね。
え、見ないで買ったんですか?!
このアイオニック5 ラウンジAWDを「見ないで買った」という大泉さん…思い切りのよさにあこがれます!
兵藤:ふーむ、そうなると…大泉さんの車歴というか、アイオニック5を購入するに至った経緯を教えていただけますか?
大泉:そもそもが車好きで、「OPTION」とかチューニング誌も普通に読んでる少年だったんですけど、整備工場をやるのにこっちへ帰ってきて長年トヨタのアクアに乗り、それからリースでスズキのソリオにも乗ってと…案外普通ですよね?
でも次はSUV、それも手頃な価格になってきた電気自動車に乗ろう!と思った頃に、ちょうどアイオニック5が発表され、それが2022年の春先(※)だったんですが、当時AWDが「ラウンジAWD」しかなかったので、それを注文したら夏には来て、ずっと乗ってます。
(※アイオニック5は2022年2月に日本仕様を発表、同年5月に受注開始)
兵藤:他にも電気自動車のSUVはあったと思いますが、決め手はなんだったんでしょう?ヒョンデはディーラーがありませんけど、発表会を見に行ったりしましたか?
大泉:いや、発表されてすぐにオーダーしましたから、実車を見ないまま買ったんですよ(笑)
兵藤:え!見ないで買ったんですか?!それはまた大胆な…
大泉:テスラも考えたんですけど、当時モデルYがまだ売ってなくてですね(日本では2022年6月10日に受注開始)、トヨタのbZ4Xやスバルのソルテラも、アイオニック5よりちょっと後(2022年4月発表・5月発売)だったんです。
兵藤:「クルマは欲しいと思った時が買い時」なんて言いますが、アイオニック5はまさにそうした意味で、大泉さんにとっては運命的なクルマだったんですね。
ちなみにその後はテスラ車も見たと思いますが、大泉さんから見て、同じ電気自動車でもテスラとヒョンデで違いはありました?
大泉:細かいところですが、テスラ車だとジャッキアップの時、専用のジャッキポイントパッドがないと、作業を断られる場合があるんですね(※)。
その点、アイオニック5は従来からの車と同じ作りで普通にジャッキアップできますから、気を使わなくていいという違いはあります。
(※テスラ車のジャッキアップ作業については情報が錯綜しているものの、作業者のコンプライアンス事情などから、「ジャッキポイントパッドがないと作業を断られるケース」は実際にある模様)
兵藤:なるほど…このへんは整備業者さんらしい視点ですね。
こんなに走ってくれるから、冬でも急速充電したことがない
大泉さん曰く「ちゃんとウィンカーレバーが右、ワイパーレバーが左にあるところに、ヒョンデやBYDの本気度を感じる」
兵藤:実際に乗ってみてはどうでした?乗り心地とか、航続距離なんかは?
大泉:電気自動車だから静かなのは当たり前ですが、長距離でも乗り心地でストレスを感じることなく、実に快適ですね。
ウチで長距離というと、嫁さんの実家まで行くのに片道で150kmくらい、往復でも300km程度ですから、(ラウンジAWDの一充電航続距離は577kmもあるので)、全く問題ないんですよ。
満充電で起動すると、残走行距離表示は470kmくらいですけど(※)、その通りだとしてもオツリが来ますし。
(※電気自動車の残走行距離表示は、エンジン車のそれと同じく日常の運転状況から割り出す平均値なので、普通に乗っていればカタログ値より少ない表示が出る方が多い)
兵藤:AWDですから雪道でも安心だと思いますが、ちまたの話ではよく「電気自動車なんて冬にはカタログの半分も走らない」なんて言われますよね?
そうなると途中で一応念のため、充電を挟んだりするんですか?
大泉:あー冬に暖房ガンガンかけると、確かに他の季節よりは落ちますが…せいぜい2〜3割程度ですよ?
ヒョンデのBEVはバッテリーヒーティングがついててバッテリー性能がそんなに落ちませんし、暖房もヒートポンプですから、昔のリーフ(※)みたいに暖房つけたら電気食いまくるなんてこともないですから、バッテリー残量が30%切った事すらありません。
(※2012年11月マイナーチェンジ以前の初代モデル)
兵藤:それなら、普段自宅で普通充電すれば、コト足りちゃいますね。
大泉:一度だけ、アイオニック5ユーザーのミーティングが富士(スピードウェイ)の方であるって聞いて、電気自動車らしくV2L機能使って「綿あめ」の移動販売でもやるか!なんて考えたんですけど、直前に用事で行けなくなりまして。
それが唯一のチャンスだったくらいですから、実は急速充電って一度もしたことないんです。
兵藤:年に何回あるかっていうほどの長距離ドライブ以外では、急速充電がなくても困らないどころか、やる機会すらない…カタログで500km以上走っちゃう電気自動車って、ホント大したものですね!
大泉:そんなもんだから、すっかり「家で充電すればいいや」が普通になっちゃって、オフクロが乗ってる車にガソリン入れてきてくれ、なんて言われると、もうメンドクサイとしか思いません(笑)。
次はモデルYも気になる…実はウォールコネクターを設置済み
アイオニック5には一応フランク(フロントフード下の荷室)はあるものの、「充電ケーブルを入れるくらいですね」
兵藤:新技術が多数使われている電気自動車だけに、乗ってて不具合で困った!なんてことも皆さん心配だと思いますが、そのへんはどうでしょう?
大泉:アイオニック5と言えば、普通充電をしていないと補機バッテリー(12V)に給電されなくなって、そのまま一晩とか放置すると起動不能になるトラブルがありましたね。
私は普段から毎日充電してたんですけど、たまたま一度充電しないままだった事があって、起動不能に。
それでヒョンデの提携拠点(Y-PIT仙台)にお願いして、ICCU(統合電力変換ユニット)をサービスキャンペーンでアップデートしてもらってます。
兵藤:あとはアイオニック5といえば、V2Hの「非推奨」問題ですか(※)。
(※800Vの高電圧システムであるアイオニック5は、日本で400VのV2H充放電設備に接続すると電圧変換ロスが生じるため、ヒョンデの日本法人は「外部給電のみ緊急時に限るという条件で使える」ことにしている…コナは400Vシステムなので問題なし)
大泉:うーん、韓国ではちゃんと対応してるんで、日本でも充電規格がCHAdeMOじゃなくCCSならとか、そのへんはいろいろ考えるところはありますね。
でも、車として日常の使い勝手に致命的な問題があるわけではないので、アイオニック5そのものは本当に気に入っていますよ。
兵藤:では、そんな大泉さんにあえて聞いちゃいますが、「次に気になる電気自動車」って、なんかありますか?
大泉:実はテスラのサイバートラック、もう予約の手付金入れてるんですよ(笑)
兵藤:はああ、今年の5月に仙台センターへ来た時、ホレちゃいましたね?でもまだ日本で販売できるか、わからないとかナントカ。
大泉:そうなんですよ、あとはやっぱりテスラで、モデルYの新型かな(もうすぐワールドプレミアと言われる、通称「ジュニパー」)。
兵藤:あれ、テスラだと普通充電もJ1772じゃなく、NACSですよね?
大泉:実はウチの充電設備、テスラのJ1772ウォールコネクター(アダプターをつければNACS規格のテスラ車にも充電できる)なんです(笑)
兵藤:もう買う気満々というか、電気自動車にズッポリはまってるじゃないですか!今日は長いインタビューになりましたが、本当にありがとうございました。
アイオニック5、宮城では5台、東北では20台程度が稼働
まだ実験的なオンライン販売に留まる慎重なヒョンデだが、アイオニック5はリアビューでもしっかり「魅せる車」であり、もっと評価されて台数が増えてもよいデザインだ
大泉さんへのインタビューを終えた後、宮城県におけるヒョンデの提携サービス拠点、「Y-PIT山形」さんへもお邪魔して、少し話を聞いてきました。
全てのヒョンデ車オーナーが提携拠点を使っているわけではなく、付き合いのショップでメンテナンスを受けているケースがあるかもしれません…という前提ですが、Y-PITさんで把握しているヒョンデの電気自動車は宮城県内で5台、東北全体でも20台ほど。
おそらくは全てがアイオニック5で、よりコンパクトなコナはないというのが意外なお話でしたが、筆者のように駐車スペースの問題でコナの方が…と思うユーザーは少数派で、自宅に充電設備を設置できるほど敷地に余裕があれば、アイオニック5が最適なのでしょう。
ただ、ホイールベース3,000mmは国産大型ミニバンのアルファード並で最小回転半径も5.99mと、車内が広いのはともかく、スーパーの駐車場などで取り回しには若干難があるようです。
そのため、大泉さんも今のアイオニック5や、気になる存在のモデルYとは別にセカンドカーとしてコンパクトな電気自動車を求めていて、「フォルクスワーゲンは、なんでID.3を輸入しないんでしょうね?」と言っていたのも印象的でした。
電気自動車に慣れたユーザー向けセカンドカーとしては、現状でも軽BEVやフィアット/アバルト500e、新しいところではミニクーパーなどもあります。
今後は、ヒョンデのインスター、フォルクスワーゲンのID.2allなど、小型軽量安価な電気自動車が続々と日本に入ってきますし、日産の次期リーフも期待できますから、「ファーストカーもセカンドカーも電気自動車」という家庭が増えてきそうですね。
それらが大泉さんのアイオニック5のように、「冬でも平気で使える実用性」を持っているなら、日本でも今後数年で電気自動車が一気に増えるかもしれません。
このブランドについて
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HYUNDAI
ヒョンデ
韓国ではもっとも成功している自動車メーカーで、キアを傘下に収めるほか高級車ブランドのジェネシス、スポーツカーブランドのNを立ち上げ、世界的に勢いのある急成長メーカーのひとつです。三菱自動車の支援を受けた時代の印象もあり、2000年代の日本進出はブランドイメージの伸び悩みで早期撤退しますが、2020年代には効率的なオンライン販売に特化して再進出し、BEVのアイオニック5やコナ、FVEVのネクソといった精悍なデザインのSUVを展開、先進的な電動化モデルというだけでなく、EVの持ち味を活かしつつ走りの楽しさにもこだわったクルマづくりによって、日本でも以前とは異なり高い評価を受けつつあります。
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