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電気自動車のバッテリー交換費用はいくら?劣化を抑える方法も解説
公開日:2024/06/23更新日:2024/06/23
目次
なぜ電気自動車のバッテリー交換が必要になる?
現在の主流であるリチウムイオンバッテリーは、充放電による劣化は比較的生じにくいとされていますが、使っているうちに負極の材料である炭素に分子構造の変化が始まって、炭素内のリチウムイオンが減る、つまり劣化してしまいます。
その変化を加速させる原因には、内部での化学反応が活発となる、おおむね60℃を上回る高温環境での使用、長時間充電せずにいると自己放電しきった後の過放電で、負極の銅箔が溶け、充電不能になるといった現象が代表的です。
その対策としては、特に酷暑時の青空駐車で直射日光を避けるため日除けシートを被せたり、可能であれば青空注射を避けて日陰で風通しのいい駐車場所を選んだり、過放電はもちろん、満充電や電欠直前など劣化が早まる状態を避け、充電残量30~80%が適切など。
それでも充電時のバッテリー容量や、残走行距離が著しく減少してしまった場合には、軽度の部品交換で済むような場合を除き、乗り続けるにはバッテリー交換しかありません。
電気自動車のバッテリー交換費用の目安
バッテリー交換費用の目安ですが、電気自動車は一般向けの乗用車でも大は超高額な輸入高級車から、小は軽自動車、超小型モビリティまであり、バッテリー容量もそのサイズに応じて軽自動車なら20kWh、大型のモデルだと100kWhオーバーまであり、一概に言えません。
相場としては、容量に応じるもののおおむね、約100〜300万の範囲になると言われます外、なにぶん希少金属などが多い原材料価格の相場や円高・円安による為替の問題もあって、「本当に必要な時にいくらかは、全くの時価」としか言いようがないのも事実です。
例:日産サクラのバッテリー交換費用の目安
ひとつの例として日産で大人気の電気自動車、軽乗用車のサクラに搭載される20kWhバッテリーの交換費用はいくらになるかといえば、日産自身が公式にアナウンスしていないため、リーフなど他車の事例から推測するしかありません。
ただ、推測するにしても参考にした時期などから予想価格が大きく異なり、40万~50万円と楽観気味な予想もあれば、75~80万円程度と悲観的な、あるいは円安による高騰を見越して余裕を持った現実的な予想もありますが、100万円以下で収まるのは共通しています。
電気自動車のバッテリー交換はどこに依頼できる?
バッテリー交換は、小型の電気製品やリモコンのようにただ電池を交換するだけとはいかず、交換したバッテリーに応じてシステムの再セットアップが必要なため、所有している電気自動車のメーカー系ディーラーへの依頼がもっとも身近な選択肢でしょう。
それ以外では、電気自動車のバッテリー交換も受け付けるという整備工場やカーショップがあれば、そこに依頼するという手もありますが、一見客として飛び込みでそのような業者へ問い合わせたり、依頼するのはハードルが高いというなら、ディーラーです。
中には横浜の「OZモーターズ」のように、旧型リーフへ現行リーフ用バッテリー交換などアップグレードを引き受けるショップも出てきているため、興味があれば検索してみるのをオススメします。
OZ MOTORZ
電気自動車の製造コストでバッテリー価格が占める割合
一般的に高額であるとされ、同クラスのガソリン車はもとより、バッテリー容量の少ないPHEVでも大容量バッテリーだけで走るBEV(ピュアEV)より安価になる原因とされる走行用バッテリーですが、2023年以降はBEV販売台数の伸び悩みで価格は下落傾向です。
それでもなお車両価格に占めるバッテリー価格の割合は3〜4割程度とされており、今後もしばらくの間、高額なバッテリーによる高価格の電気自動車という構図は変わりません。
電気自動車のバッテリー劣化によって起こる問題
昔ながらの自動車におけるエンジン同様、電気自動車の能力を大きく左右するバッテリーですが、それが劣化した際に起こる問題にはどのようなものがあるか、以下で紹介します。
充電できる容量が減り、航続距離が短くなる
ほとんどの電気自動車で使われているリチウムイオンバッテリーは、基本的に他の製品で使われているものと特性は変わりませんから、スマートフォンを日常的に使用しているユーザーなら想像は容易です。
すなわち充電してもすぐにバッテリーが減り、電欠までに使用できる時間が減る…電気自動車で言えば新車時のような容量を維持できなくなって、同じように充電しても航続距離が短くなってしまいます。
場合によっては、以前なら十分に往復できた距離でも途中で公共の充電スポットを利用しなければいけなくなるわけです。
航続距離が短くなることで、充電時間や回数が増える
劣化により航続距離が短くなってしまえば、当然のように充電回数は増え、充電している時間も長くなってしまいます。
これが家庭や拠点における普通充電(基礎充電)ならともかく、出先の場合は時間を惜しんで急速充電を利用する機会が増えるでしょうから、バッテリーへの負担が大きい急速充電の多用でさらに劣化が加速するという悪循環に陥ることが避けられません。
さらに、劣化前はあまり必要がなかった急速充電の電気代でランニングコスト増加も避けられませんから、バッテリーの劣化をなるべく避ける環境や使い方が重要になるわけです。
電気自動車のバッテリーが劣化する主な原因
電気自動車によるカーライフへ大きな影響を与え、場合によっては「電気自動車なんて、もうゴメンだ!」とネガティブなイメージを植え付けかねないバッテリー劣化ですが、その主な原因をいくつか抜粋します。
充電せずに長期間放置は過放電の元!
まずいちばんやってはいけないのが、使わないからと充電せずに長期間放置してしまうこと…今までの自動車でも、長期間放置して補機用の12Vバッテリー上がりを起こしていたようなユーザーは要注意です。
特に電気自動車で多用されるリチウムイオンバッテリーは「自己放電」という現象で走らずとも勝手に放電するうえに、それで電欠になった後も放電を続けようという「過放電」を起こし、電極の負極に用いられる銅箔が溶け、充電不能になることがありえます。
充電・放電の繰り返しも劣化の元だが仕方ない
充電して、走るなり放置して自然になり、放電してを繰り返す電気自動車のリチウムイオンバッテリーですが、これはそういう使い方以外にありえない以上は避けられません。
しかし、充電。放電の繰り返しで使い続けているうち、負極の材料として使われる炭素が分子構造の変化を起こしてしまい、炭素内のリチウムイオン量が減少していき、バッテリーの劣化につながります。
これは2024年現在も多用されているリチウムイオンバッテリーの技術的限界ですから、全固体電池なり、他の次世代バッテリーが実用化されて現実的な価格で市販車に搭載される時代が来るのを待つしかないのです。
近年の酷暑は厳しい!高温環境はバッテリーの大敵!
年を経るごとに地球温暖化現象が進行し、2023年は全国で猛烈な酷暑、2024年も4月から沖縄など南の島でもないのに30℃以上の真夏日が観測される「酷暑の日本」ですが、青空駐車で猛烈な直射日光にさらされる環境は、バッテリーには全くよくありません。
暖房時の航続距離現象で冬が苦手というイメージのある電気自動車ですが、バッテリーにとってむしろ過酷なのは真夏であり、60℃以下なら大丈夫という想定で開発されてはいるものの、真夏にジリジリ焼かれてはそれを超えますから、カバーなどで保護するべきです。
電気自動車のバッテリー寿命は何年が目安?
高価なうえに劣化しやすい電気自動車の走行用バッテリーですが、想定される寿命はおおむね何年くらいでしょうか。
一番の目安となるのは各メーカーのバッテリー保証で、だいたいはどこも共通で、それぞれ設定された年数または走行距離の、先に到達したところまでは保証して極端に劣化したバッテリーの交換や故障修理に応じています。
それを超えたところは「寿命」と考えて有償修理・交換となりますから、大いに参考となるでしょう。
【参考】各自動車メーカーのバッテリー保証内容
自動車メーカー | 保証内容 |
トヨタ | 【機能保証】 8年16万km+BEVバッテリーサポートプラス2年4万km 【容量保証】 8年16万km/電池容量維持率70%+BEVバッテリーサポートプラス2年4万km |
スバル | 【機能保証】 8年16万km 【容量保証】8年16万km/電池容量維持率70% |
レクサス | 【機能保証】 8年16万km+BEVバッテリーサポートプラス2年4万km 【容量保証】 8年16万km/電池容量維持率70%+BEVバッテリーサポートプラス2年4万km |
日産 | 【電気自動車特有部品】 5年10万km保証 8年16万km |
三菱 | 初度登録後8年以内かつ走行距離16万km以内で容量の66%を下回った場合、または製造上の不具合等に起因する故障が発生した場合、無償で修理・交換。 |
マツダ | 【容量保証】 新車登録時から8年かつ走行距離16万kmまで、正常な使用条件下において駆動用バッテリーのSOH率(健全度)が70%を下回った場合、修理や部品交換で70%以上へ復帰する。 |
ヒョンデ | 8年または16万kmいずれか早い方まで容量70%保証。 |
BYD | 8年15万km、初期容量の70%を保証。 |
テスラ | 8年または240,000kmいずれか先に達するまで、 70%の容量を保証。 |
メルセデス・ベンツ/メルセデスAMG | 【EQAなど比較的安価な車種】 【EQSなど高額な高性能車】 |
BMW | 新車登録から8年16万kmまで保証。 |
プジョー | 新車登録日より8年間または16万km走行時のいずれか早い方の期間中は保証され、不具合等の発生時バッテリーの交換、修理あるいは補修に要する工賃及び部品代金が負担される。 |
シトロエン | 8年または16万km走行時のいずれか早い方まで保証 |
アウディ | 8年16万km、材料または製造上のすべての不具合について(不適切な使用等を除く)と、バッテリー残量の出荷時から70%未満も保証。 |
ボルボ | 初度登録から8年または走行距離160,000kmのどちらか早い方、ただし車両・バッテリーの点検作業をボルボの推奨する項目・時期に適宜実施し、かつボルボが推奨する取扱方法に従って使用されている場合に限る。 |
ジャガー | 車両登録日から5年間は走行距離無制限の新車保証および、車両登録日から8年以内または走行距離16万km以内で、バッテリー容量が70%を下回った場合に保証。 |
フォルクスワーゲン | 8年間または走行距離16万km走行(どちらか先に到達した方)後もオリジナルの充電容量の70%を維持することを保証。 |
ポルシェ | 新車登録から8年、走行距離16万km以内を保証。 |
テスラ(8年または24万km)、メルセデス・ベンツ(10年または25万km)を除けば、ほぼ横並びで8年16万km、どちらか早く到達した方まで、新車時からの残容量70%を保証するとなっており、電気自動車用バッテリーの基本的な寿命と言えそうです。
電気自動車のバッテリーの劣化を抑えて寿命を伸ばすポイント
電気自動車がなかなか使い物になる便利な乗り物と認識されない原因となっているバッテリーの劣化ですが、技術的要因で2024年現在使われているリチウムイオンバッテリーでは避けがたい問題とはいえ、寿命をいくらかでも伸ばすポイントはあります。
満充電も電欠も避ける充電管理が大事
電欠による過放電はもちろんですが、意外なことに満充電も劣化を早めるため、極力避けたほうがよいとさえています。
自宅などで基礎充電(普通充電)を行う際は、カタログスペックに近い航続距離にしようと満充電にしがちなものの、実際には80%程度を上限にするのが長持ちの秘訣です。
ならば電欠にならなければ過放電を避けられてよいかといえば、これも余裕を持って30%程度を下限にすることが推奨されており、おおむね充電量30~80%の間を保ちましょう。
保管場所はなるべく高温を避け、無理なら日除けを
60℃を超える高温環境では劣化が早まるリチウムイオンバッテリーですが、可能な限り保管場所は青空駐車を避け、近年問題となっているような真夏の猛暑日ですら涼しいような屋内、あるいは風通しがよく日陰になるようなカーポートの下に止められれば最高です。
しかし保管場所(駐車場所)を選べるユーザーばかりではなく、場合によっては炎天下で直射日光にさらされる青空駐車を余儀なくされるでしょうから、その場合はスペースに余裕があって事情が許す限り何らかの日除けを設けましょう。
それも無理なら、せめて断熱性のある日除けシートなどで、バッテリーの温度上昇を防いでください。
スピード控えめで温度上昇による劣化を防ぐ
電気の急速な充電・放電はバッテリーが発熱して劣化の進行を早めますから、日常的な急速充電は避けるのがセオリーとはいえ、使用環境によっては避けられません。
ならばせめて急速な放電、すなわち長時間バッテリーに負担の大きい高速走行、あるいは加減速の激しい走行の繰り返しは極力避けるべきです。
日常使用においては制限速度を守り、速度性能が優れた車でも超高速巡航は避け、急発進や急減速など「急」のつく運転をしないのが、バッテリーにも優しい運転と心がけてください。
電気自動車のバッテリーが寿命を迎えたら買い替えの選択肢も
ガソリン車ならエンジンの故障や劣化で交換するより、買い替えを選択するユーザーが多いのと同様、電気自動車でもバッテリーが保証期間を超えて劣化が著しくなって「寿命」を迎えた場合、その時点でのバッテリー交換価格によっては買い替えも選択肢になるでしょう。
愛着があって長く乗りたいというのであれば、多額の交換費用を払って乗り続けるのもアリですが、数年前に比べて急激に車種数が増え続けている2024年時点でも電気自動車はまだ発展途上、明日は今日より安くてよい車が出るかも、という状況です。
さほどのこだわりがなければ新しい車ほどバッテリーも長持ちしますし、従来とは異なる長期間・長距離の新たな保証プランが適用になる場合もありますから、状況によっては積極的に買い替えを検討するべきでしょう。
電気自動車のバッテリー交換費用についておさらい
ここまで電気自動車のバッテリー交換について、それが必要となる劣化の原因や対策、交換の目安となるメーカー保証を交えて紹介してきました。
交換費用についてはあくまで「時価」に近く、実際に交換を要するタイミングでは交換費用に対して買い替えた方がトータルでは有利になる場合も説明させていただきましたし、その時々に応じた最新の情報収集で、ベストな選択を心がけていきましょう。