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トヨタ MIRAIの中古車が安い理由|新車の価格比較や購入前の注意点
公開日:2024/06/26更新日:2024/06/26
目次
トヨタ MIRAIとはどんな車?
水素を燃料として酸素と化学反応させて電気を取り出し、排出するのは水だけで有害な排出ガスを出さない「燃料電池」を動力源とした電気自動車、FCEV(燃料電池車)の一般市販用国産第1号として2014年12月に発売されたのが、トヨタのMIRAIです。
初代モデルはプリウスを拡大したような4人乗りFWD車のセダンでしたが、2020年12月にモデルチェンジした現行の2代目では大型化した5人乗りRWD車の大型セダンとなり、クラウンセダンFCEV(2023年11月発売)のベースにもなりました。
電気自動車が充電するような時間をかけず、短時間にガソリンを給油するのと同じような感覚で水素を充填できて、航続距離も長いのが特徴です。
電気自動車としてはBEV(ピュアEV)と並ぶ有望株とも考えられます。
トヨタ MIRAIの新車価格・中古価格を比較
MIRAIは2019年~2020年6月まで販売された初代と、2020年12月から販売されている2代目(現行モデル)があります。
車体サイズは2代目の方が大きく、初代の4人乗りに対して2代目は5人乗りという差があるものの、基本的には燃料電池スタック、電動パワーユニットの部分が高価なため、初代と2代目で意外と価格差はありません。
むしろ2代目の方が廉価グレードは安く、運転支援関連の装備が充実した上級グレードがかなり高価という違いがあるものの、以下の表で示したような中古車の大きな価格差は、「古い型落ち車は急激に中古車価格が下がる」というセオリーに沿ったものでしょう。
確かに古くても10年落ち程度の車としては値落ちが激しいものの、その理由については別項で紹介します。
新車価格 | 中古車価格(車両本体価格) | |
初代 | 723万6,000~740万9,600円 | 64万3,000~210万円 |
2代目(現行) | 710万~861万円 | 249万8,000~569万円 |
トヨタ MIRAIの中古車が安い理由
年式がまだ新しい割には中古車の値落ちが激しく、特に初代はガタ落ちと言ってもよいくらいなトヨタ MIRAIですが、ここではMIRAIの中古車が安い理由を紹介します。
そもそも燃料電池車が欲しいというユーザーがいない
新しもの好きで最新技術に興味があるユーザーでもない限り、そもそもMIRAIって何?燃料電池車って何?というユーザーが多いのは確かで、得体が知れない車なうえに、まだ新しいのにも関わらず妙に安い車など、「ワケあり」としか思われません。
これが電気自動車なら「そろそろそういう時代かな」と思う人もいますし、公共の充電スタンドが増えて見かける機会は増え、ケーブルをつないで充電するという感覚はスマホなどと変わりませんが、まず「燃料電池とは?」から理解してもらわねばならない状況です。
これではMIRAIのようなFCEV(燃料電池車)を欲しいというユーザーはそうそう現れず、中古車の価値は下がる一方でしょう。
水素ステーションの整備が進まず、数が非常に少ない
MIRAIのようなFCEVに限らず、燃料電池に必要な水素を供給するインフラや、水素の供給体制もまだ十分ではなく、FCEV用の水素ステーションに至っては「あるところにはあるが、ないところには本当にない」という状況です。
これではMIRAIを購入して使いこなせるユーザーはかなり限られてしまいますし、転勤がある仕事についている場合など、転勤先に水素ステーションがないため車を手放さなければいけない、という事態すら普通にありえます。
これでは充電スタンドが「まだ少ない」程度な電気自動車の方がマシなくらいで、MIRAIのような車を普通に使えるような社会になっていないのが実情です。
水素タンクの交換費用が高額でメンテナンスも特殊
MIRAIの水素タンクは寿命が15年と定められ、交換費用はタンク1つにつき約50万円、あるいはもっと高額と言われており、新車ならばともかく、水素タンクの交換時期が数年後に迫ったMIRAIの中古車を購入してしまうと、どれだけ安くとも全く割に合いません。
さらに、高圧タンクに充填した水素を電気に変換するという燃料電池の仕組み自体が自動車用としては非常に特殊であり、たとえばディーラー以外の整備工場などで安易に手をつけられるものではないなど、扱いに気を使いすぎます。
走り出してしまえば、バッテリーの代わりに燃料電池を積んだだけの普通の電気自動車とはいえ、個人が気軽なカーライフに使おうとしても、なかなか思うようにいかないのです。
初代は4人乗りの狭いセダンで不便なイメージ
現行の2代目はサイズアップと水素タンクの適正配置で比較的ゆったりした車内空間が得られ、後席中央はやや狭く快適とまではいかないものの、一応5人乗りが可能となっています。
しかし2020年6月まで販売していた初代の場合、車体サイズが少々小さくて燃料電池を詰め込むと車内空間は狭くならざるをえなくなり、軽自動車と同じ4人乗りに甘んじなければいけませんでした。
単に型落ちなだけでなく、広くもなく5人乗れず不便なセダンというのでは自動車としての魅力がそもそも欠けており、「珍しいFCEV」という以外の存在意義があまりないうえ、型落ちで古いとなれば、中古車の価格が大幅に下落しているのも当然です。
電気自動車の発展でFCEVの必要性が薄い
初代で650km、2代目では750~850kmも走り、水素充填時間は電気自動車の急速充電時間よりはるかに短くて手軽を売りにしたMIRAIですが、ここ数年で電気自動車や急速充電器の発展は著しく、MIRAIのようなFCEVのメリットがあまりなくなってきています。
すなわち、電気自動車でも一充電走行距離が700kmを超えるような車種があり、テスラ モデル3のロングレンジAWDのようにMIRAIより安価なモデルまで登場しました。
充電器も2025年には設置の始まる350kW急速充電器だと、対応車種ならわずか10分で400kmは走れるだけの充電ができてしまうため、そう遠からず「水素ステーションが少なくて不便なFCEVより、普通に電気自動車を選んだ方がいい」となるわけです。
トヨタ MIRAIを中古で購入するメリット・デメリット
中古車価格の激しい下落が目立つトヨタ MIRAIですが、それでも用途や環境によっては中古車を購入して使いこなすことができるかもしれません。
ここではそのメリットとデメリットを説明します。
トヨタ MIRAIを中古で購入するメリット
MIRAIを中古車で購入する場合、近隣や主に想定される目的地、あるいはそこまでの経路に水素ステーションが存在し、それなりに高年式のモデルなら、以下のようなメリットがあります。
- 2024年5月現在ならまだ、ほとんどの電気自動車より航続距離が長い。
- 同じく、水素充填時間が電気自動車の急速充電よりはるかに短い。
- 燃料電池が劣化すると出力はやや落ちるが、水素燃料タンクの容量が減るわけではないため、電気自動車と違って航続距離はほとんど落ちない。
このように、現時点ではまだ電気自動車に対して有利な面が多く、水素ステーションさえあれば「使い勝手が非常によい電気自動車」であるばかりか、リチウムイオンバッテリーのように劣化による航続距離減少を心配する必要がありません。
トヨタ MIRAIを中古で購入するデメリット
MIRAIの中古車価格が著しく下落する理由が、そのままデメリットとなります。
- 水素ステーションが近所にあっても、出先にない場合はドライブして行ける場所が非常に限られてしまう。
- 水素ステーションは機器の故障や資格を持った従業員の不足で常時営業しているとは限らず、営業状況に行動を左右されてしまう。
- 初代の初期型など低年式車を購入してしまうと、水素タンクの寿命がすぐに迫り、多額の費用をかけて交換するか、手放すかの決断を迫られる。
- 初代MIRAIは車内スペース不足で快適性に難があり、4人までしか乗れない。
FCEVならではの問題点、そして社会がまだFCEVの普及には時期尚早なことから、よほど恵まれた環境でもない限り致命的なデメリットがあることは否定できません。
トヨタ MIRAIの中古車購入で後悔しないための注意点
さまざまな問題をクリアし、用途や環境にも問題がないこと、水素ステーション次第でドライブが制限される不便を理解したうえで購入するとしても、トヨタ MIRAIを中古で買っても後悔したいためには、以下のことに注意する必要があります。
自宅やよく行く場所に水素ステーションがあるか確認
まず大前提なのは、自宅の近く、さらに定期的に通うような遠くの目的地があるならばその近くや経路上でも、「水素ステーションがちゃんとあるかどうか」は確認しておかなければいけません。
単に存在するだけではなく、営業時間、休業日、機器故障などでやたらと休業していないか、閉鎖予定がないかどうかもしっかり確認しておかないと、いざ水素を充填しようと思ったら営業していない、または廃業して閉店している場合など、完全に後悔します。
初代MIRAIは4人しか乗れないことに注意が必要
2020年12月にモデルチェンジした現行モデル(2代目)なら、クラウンセダンFCEVのベースになるくらいですから後席も広くて快適、後席にも3人座れる5人乗りですが、これが初代となると、そうはいきません。
初代MIRAIは水素タンク配置の問題で、軽自動車と同じく後席は2人しか乗れない定員4人仕様で、絶対に4人までしか乗らないと決まっているならともかく、いざという時に5人乗れなくて困る、実用性が劣るということは、事前に把握しておく必要があります。
わずか数年後に水素タンクを交換する低年式車かどうか
MIRAIが搭載する高圧水素タンクの寿命は15年と定められており、初代MIRAIの初期型なら2014年式ですからもう10年が経過しており、残り5年足らずということになります。
その交換費用は諸説あり、タンク1本あたり50万円とも200万円とも言われますが、いずれにせよ高額のため、低年式車は避けた方が無難です。
大型車の水素タンクは寿命が20年まで認められたため、普通車のMIRAIでも同様に延長されれば条件はだいぶ良くなるものの、現状では初代MIRAIを買うなら可能な限り高年式車、できれば2代目MIRAIを買う方がよいでしょう。
トヨタ MIRAIの中古車購入はどんな人におすすめか?
メリット・デメリットがそれぞれあるとはいえ、主に水素ステーションというインフラ不足という致命的なデメリットを抱えたMIRAIですが、それでも中古車の購入をすすめるとしたら、以下のようなユーザーとなります。
- 自宅の近くに安定稼働している水素ステーションがある。
- 同じく安定稼働している水素ステーション複数がある地域との往復用途。
- 電気自動車が欲しいけれども、充電がわずらわしい。
- 使用頻度が少なく、内外装の程度が良好な車を安く買いたい。
上記を全て満たすユーザーはかなり限定されると思いますが、これならMIRAIを中古で購入しても十分に使いこなして、満足感も高いことでしょう。
【Q&A】トヨタ MIRAIの中古車についてよくある質問
以下では、トヨタ MIRAIの中古車の購入を検討している人から多い質問・疑問に回答します。
Q. 充填する水素の料金はどのくらいですか?
少し前なら水素は比較的割安な燃料のひとつだったのですが、インフレで水素を供給するエネルギー大手の運営コスト、設備メンテナンス費用が上昇して採算が著しく悪化しています。
そのため、2024年4月1日にENEOSは約33%値上げして1kgあたり2,200円、岩谷産業も同年6月1日から1kgあたり1,650円(いずれも税込)と約36%値上げ予定でした。
しかし同年5月17日に「水素社会推進法」が成立、既存燃料との価格差は国が補助して値上げ幅は抑えられる見通しです。
Q. 水素満充填時の航続距離は?
いずれもトヨタの社内計測値ですが、初代MIRAIではJC08モード相当で約650km、2代目MIRAIではGエグゼクティブパッケージ/G Aパッケージ/Gの3グレードがWLTCモード相当で約850km、それ以外のグレードは約810kmとされています。
ただし使用環境や運転方法で航続距離が大きく異なるのは電気自動車と同じなため、あくまで理想的な環境での数値と考えた方がよさそうです。
Q. FCEV関連の部品について、保証期間は?
電気自動車に特有の駆動用バッテリーとモーター、さらにFCEV特有のFC(燃料電池)スタック、高圧水素タンクは「特別保証」に該当し、新車登録時から5年、または走行10万kmのどちらか早く到達した方が、保証期間となります。
MIRAIの場合だと年間走行距離が少なめのため、走行距離よりも年数で保証期間に達することが多いようで、2020年にモデルチェンジした初代は間もなく、2代目も初期型は保証期間外の年数に達するため、保証期間外になると中古車価格は一気に下がるようです。
トヨタ MIRAIの中古車が安い理由についておさらい
今回はトヨタ MIRAIの中古車価格が新車価格と比べ、年式の割にかなり安くなっている理由を紹介しましたが、まだあまりにも少ない水素ステーションによって利用が大きく制約されるためか、年式の割に走行距離の少ない程度良好車が多いのも事実です。
そのため、水素ステーションに困らない環境のユーザーなら、満足感の高い車を格安で購入できるチャンスでもありますから、十分検討に値するオトクな情報だといえるでしょう。
このブランドについて
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TOYOTA
トヨタ
常に世界の最多生産台数を争い、日本のみならず世界を代表する自動車メーカー、トヨタ。多くの日本車メーカーと深い関わりを持ち、グループ全体で超小型車からバス・トラック、産業車両まで網羅したフルラインナップ・メーカーであり、近年は実用性やコストパフォーマンスのみならず、スポーツ性など走る楽しみにも力を入れています。世界初の量販ハイブリッドカー「プリウス」から電動化技術では最高の蓄積を持ち、自動運転技術の実用化、新世代モビリティと都市生活の在り方を模索する「ウーブン・シティ」へ多大な投資を行う一方、電動化だけがエコカー唯一の選択肢ではないというスタンスも崩さず、死角のない全方位戦略が現在の特徴です。