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マンションで電気自動車の充電器設置が進まない理由とは?対応方法は?

マンション住まいだけど電気自動車に乗りたい、将来的に電気自動車以外の選択肢が先細るなら、もう今から検討しなくてはというユーザーもいると思いますが、ハードルとなるのが「充電器」の設置。新築だと最初からついていたり、既存のマンションでも導入例が増えてきましたが、設置がなかなか進まない理由と対応方法とは?

目次

  1. マンション住まいだと電気自動車に乗るのは難しい?
  2. マンションに電気自動車の充電器を設置するには住民全体の合意が必要
  3. マンションで電気自動車の充電器設置が進まない理由
  4. マンションに電気自動車の充電器を設置する方法
  5. マンションの電気自動車の充電器設置でかかる費用
  6. マンションに電気自動車の充電器が設置されない場合の対応方法は?
  7. 今後はマンションにも電気自動車の充電器設置が増える見込み

マンション住まいだと電気自動車に乗るのは難しい?

マンション住まいだと電気自動車に乗るのは難しい?

電気自動車に乗るにはEV充電器が必要で、見切り発車で公共の充電スポットを利用するユーザーもいますが、自宅にEV充電器を設置すれば大抵は自宅で充電すれば済みます。


しかし自宅が戸建てではなくマンションの場合、設置のハードルが結構高いのです。

EV充電器が設置されているマンションはまだ少ない

SNSで電気自動車関連の情報をチェックすると、EV充電器について「新築マンションに全戸分を設置!」、あるいは既存のマンションへの導入事例が紹介され、これで電気自動車への乗り換えが進み、電気自動車の新車割合が増える時代に対応すると歓迎されています。


しかし、そうした「事例紹介」が存在すること自体、EV充電器を設置したマンションがまだまだ少ないことの証明であり、電気自動車を普及させるための課題になっているのです。

電気自動車に興味を持っている人の40%はマンション住まい

経済産業省が2017年に発表した統計では、電気自動車に興味を持って試乗を希望する人のうち40%がマンションなど共同住宅に住んでいる一方、実際にEVを購入したユーザーで共同住宅の居住者は10%に留まる、とされていました。


電気自動車の積極的な普及促進策が実働したのはその後で、マンションなど共同住宅へEV充電器を設置するのに手厚い補助金が出るようになって状況はだいぶ変わっているとは思われるものの、まだまだ十分にはほど遠いのが現状でしょう。

マンションへのEV充電器の設置を国や自治体も支援する動き

マンションへのEV充電器設置が進まないため、電気自動車へ買い替える流れも滞るという状況を改めるため、国や自治体は手厚い補助金を設定し、EV充電器の設置を支援しています。


2024年3月現在でも「令和5年度補正予算 充電インフラ整備事業」が始動し、同月15日より充電設備の補助金の追加募集・申請受付が始まったと、NeV(一般社団法人 次世代自動車振興センター)の公式サイトから告知されました。


さらに、同サイトの「地方自治体の支援制度」では、地方自治体ごとに充電設備の補助事業等の有無、内容を紹介しています。

マンションに電気自動車の充電器を設置するには住民全体の合意が必要

マンションに電気自動車の充電器を設置するには住民全体の合意が必要

マンションへEV充電器を設置するには「共用部分の変更」、つまり住民の共用スペースである駐車場の改装工事が必要となるため、単に「自分が止めるため契約している駐車場に充電設備を設置」とはいかず、住民全体の合意が必要となります。


大抵の場合、マンションは大規模になるほどそれ自体をひとつの「街」のように定義して、管理組合の役員や理事会の理事を住民の持ち回りで引き受けつつ、「街の環境維持・発展」に尽くす仕組みとなっているため、住民の総意を得ない事業を強行することはできません。


まずは組合や理事会に「EV充電器の設置」議題として提出し、設置がいかにマンションの住民へメリットをもたらすかのプレゼンを行って納得してもらい、反対意見があれば説得して、全体の合意を得なければならないのです。

マンションで電気自動車の充電器設置が進まない理由

マンションで電気自動車の充電器設置が進まない理由

マンションへのEV充電器設置には、余計な出費を望まない現状維持派、もっとよい充電器やサービスが登場するまで待つべきという時期尚早派、そもそも電気自動車が普及するのかと不信感を募らせる懐疑派など、反対勢力を説得するという高いハードルがあります。

電気自動車を誰も持っていないだろうという現状維持派

まず立ちはだかるのが、「今、電気自動車に乗っている住民がいないのに、EV充電器などつけて誰が使うのか、設置費用が無駄ではないか」という問題ですが、これは結局のところ「タマゴが先か、ニワトリが先か」という話です。


むしろEV充電器を設置することで、住民は燃料代より安い充電料金、エンジン車より安い維持費というメリットがありますし、「EV充電器があるマンション」ということで資産価値も上がって売却時にも有利など、予算をかける意義を説明せねばなりません。

よい充電器やサービスを待つべきではという時期尚早派

「もう少し待てば、もっといい充電器が出るだろう」という意見は、普通充電が3kWから6kWへ、さらに欧州では22kWや43kW出力が登場し、日本もそうなる可能性はあるので多少説得力があります。


ただ、日本だと大部分のユーザーは一日あたりの走行距離が3kWでも一晩かからず充電できる程度ですし、多少伸びても6kWで十分、それ以上走るなら出先で一泊しながら充電するのを考えた方がいいような環境ですから、いま以上を求める意味があまりありません。


サービスについても、課題だった充電料金の徴収がスマホのアプリで簡単決済という方式が普及しつつあり、設置無料、設置補助金の申請もお任せという業者の設置サービスも合わせて向上しつつあり、むしろ補助金が出る今のうちに設置してしまうべきです。

そもそも電気自動車が普及するなんて信じない懐疑派

現状維持派に近い考えですが、より積極的に「電気自動車なんて普及するはずないだろう」と、そもそも電気自動車の性能その他に不信感があり、今までのエンジン車やハイブリッド車で何が悪いんだという意見があります。


これも電気自動車以外に水素を充填する燃料電池車、水素燃料や代替燃料で駆動するエンジン車にも未来がある可能性を否定できない以上、それなりに説得力はあるのですが、現状はまだ燃料の確保やインフラ整備が電気自動車以上に困難な「絵に描いた餅」です。


そう遠くない将来、エンジン車やハイブリッド車を置き換えていく最有力候補が電気自動車というのは、時期が多少前後しこそすれ既定路線ですから、それを粘り強く説明していく必要があります。

マンションに電気自動車の充電器を設置する方法

マンションに電気自動車の充電器を設置する方法

ここでは、戸建て住宅と異なり「全住民の共用スペース」であるマンションの駐車場へ、EV充電器を設置するのに必要な方法を、管理組合や理事会で説得するための知識として紹介していきます。

マンションのEV充電器の設置方法は「専有型」「シェア型」の2種類

マンションのように共用スペースへ駐車場を設けている場合、EV充電器の設置方法はそれぞれの駐車枠へEV充電器を設置する「専有型」と、駐車枠とは別に共同使用の充電スポットを設けた「シェア型」の2種類があります。


専有型は普段停めている場所で充電できますから、充電のために移動する必要がない反面、必要な数だけ設置すると多額の費用がかかりますし、入居者が車を使わなくなったら無駄な設備になりかねません。


シェア型は限られた数のEV充電器を設置するだけで設置コストは安く済み、住民の合意も得やすく、電気自動車の普及率が低い時期なら充電スポットの取り合いで争うこともない理想の方式ですが、充電のたび移動する手間は外の充電スポットと変わらないのが欠点です。

マンションに設置するEV充電器は「コンセントタイプ」「Mode3タイプ」の2種類

設置するEV充電器は大きく分ければ、車載ケーブルで充電器と接続する充電コンセントを使った「コンセントタイプ」と、充電器に備え杖の充電ケーブルを電気自動車に接続する「Mode3タイプ」の2種類で、それぞれ壁面設置がスタンド式があります。


コンセントタイプは基本的に3kW普通充電で、充電器本体にはケーブルもない簡素なものですから設置費用は安く、よほど毎日のように長距離走行を繰り返し、3kW充電では一晩で充電しきれないほどのヘビーユーザーを除けば、日本ではこの程度で十分です。


一方、Mode3タイプは充電ケーブルを備える分だけ設置費用が高額で、3kWの倍となる高出力で充電時間もおおむね半分の6kW普通充電を設置すると、さらに高額ですが、たまの長距離ドライブでも一晩経ったら満充電で安心して使いたいというヘビーユーザー向き。


最近だとカタログスペック面でのアピールや、災害に備えてなるべく短時間で満充電にしておきたいユーザーの意識もあってか、6kW普通充電を選択する例が増えているように思えます。

料金徴収を行うために使用状況を把握できるシステム導入の必要性も考えられる

マンションの設備管理は、管理組合や理事会から委託された管理会社が行うものの、EV充電器の電気料金の徴収まで委託しようにも、「住民からマンション内で直接金銭の授受をしない契約」というケースが多く、現実的ではありません。


しかし現在では、設置された充電器の予約から充電料金のクレジットカード決済までスマホのアプリで完結してしまうシステムが登場しており、もはやEV充電器設置のハードルではないと考えてよいでしょう。

マンションの電気自動車の充電器設置でかかる費用

マンションの電気自動車の充電器設置でかかる費用

住民の合意を得るためには避けて通れないのがEV充電器の「設置費用」で、ここではマンションへ設置する際の費用をどのように考えて、把握しておくかを解説していきます。

EV充電器本体や設置工事にかかる費用

EV充電器本体は、車載ケーブルをただ刺すだけでフタも何もない簡素な3kW充電コンセントならもっとも安くて5,000円台から、いわゆる「盗電」や設備の破損を防ごうとボックスまでつけても15万円程度で、ケーブル備え付けのMode3は20万~93万円と高額。


設置費用は既存分電盤で1~数台程度の充電スポットを設ければよいシェア型なら、1台で約50万円、2~4台を充電できるよう設置しても約150万円程度で済みます。


これが各駐車枠へ専用のEV充電器を設置する専有型、あるいは大規模なシェア型なら充電専用の分電盤の設置工事まで入ってくるため、3kW10台分でも約1,200万円から、6kWならその倍以上と、1台あたりで割ってもかなり高額です。


コンセントタイプ(3kW)

Mode3タイプ(3kW/6kW)

本体価格

5,000~15万円程度

20万~93万円程度

設置費用(既存分電盤)

約50万~約150万円程度(※1~数台)

設置費用(専用分電盤)

約1,200万~3,100万円程度(※10台以上)

マンションへEV充電器を設置する場合は補助金が使える

国からのCEV補助金では充電設備の設置補助も出ており、高速道路のSA/PAや道の駅、商業施設や宿泊施設、月極駐車場や事務所、工場と並び、公共の充電スポットに準ずる扱いとしてマンションへのEV充電器設置にも補助が出ます。


補助対象と、補助率は以下の表の通りです。




補助対象経費の内訳

補助率

充電設備の購入費


以下の設備が対象。


  • 普通充電設備
  • 充電用コンセント
  • 充電用コンセントスタンド

1/2以内

充電設備の設置工事費


  • 充電設備設置工事費
  • 付帯設備工事費
  • その他設置にかかる費用(停電回避費を除く)

定額(1/1以内)または1/2以内

マンションに設置したEV充電器のランニングコストもかかる

マンションへ設置したEV充電器は、当然ながらその維持管理費用にかかるランニングコストがあり、具体的には電気料金と管理費用です。


電気料金はスマホのアプリを使って充電した分をそのままクレジットカード決済でその都度、徴収するのがスマートですが、駐車枠に専用のEV充電器を設置した専有型の場合は、月々の駐車料金に電気料金を上乗せして徴収するという方法も使えます。


管理費用については、設置時にどんな管理会社とどんな契約を結んだかによって変動しますし、いずれ設備が破損や故障、寿命で交換せねばならない時の費用を積み立てておく必要もありますから、これも住民に誰からどのくらい取り立てるかの合意が必要です。

マンションに電気自動車の充電器が設置されない場合の対応方法は?

マンションに電気自動車の充電器が設置されない場合の対応方法は?

Refrina - stock.adobe.com

管理組合や理事会での合意が得られない、あるいは合意まで待てない、それとも機械式立体駐車場でEV充電器の設置が困難または老朽化していて建て替えと同時に工事する予定など、「マンションにEV充電器が設置できない、設置に時間がかかるケース」はあります。


また、大容量バッテリーを搭載する電気自動車はエンジン車やハイブリッド車と比べても非常に重いため、駐車場の重量制限に引っかかる場合もありえるわけです。


そんな状況でも、近隣に公共の充電スポットがあるため、日常使用は急速充電で何とかなったり、EV充電器を設置した月極駐車場へ車を引っ越す方法などで対応できます。


それでも自宅マンションの駐車場で充電できるメリットは非常に大きいため、できることならEV充電器を設置するよう粘り強く交渉したり、駐車場に対応した重量の車種を検討するなどしたいものです。

今後はマンションにも電気自動車の充電器設置が増える見込み

これまではEV充電器の設置が限られていたマンションですが、公共の充電スポットに準じた扱いで手厚い補助金が出ることや、災害時の非常電源として非常に有用なことが周知されたこともあって、マンションへの設置が進んでいく流れです。


実際、10年後、20年後には新車販売の多くが電気自動車となっていく中で、「充電設備のないマンションになど住めない」という声が高まるのは目に見えていますから、マンションへ設置する動きは一層加速していくことでしょう。

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