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家庭用EV充電器を自宅に設置するには?種類や工事費用の相場

電気自動車(EV)の所有を検討する際、大抵は同時に考えるのが自宅に家庭用EV充電器を設置するかどうかです。中には充電設備の設置が困難な借家住まいや月極駐車場が拠点なため公共充電スポット頼りというユーザーもいますが、多くは自宅での基礎充電を検討するはずで、今回は設備の種類や工事費用の相場を紹介します。

目次

  1. 家庭用EV充電器とは
  2. 家庭用EV充電器の種類
  3. 家庭用EV充電器の使い方
  4. 家庭用EV充電器の設置工事の内容・流れ
  5. 家庭用EV充電器の本体費用・工事費用の目安
  6. 家庭用EV充電器の設置工事で知っておきたいこと
  7. 【Q&A】家庭用EV充電器について多い質問
  8. 家庭用EV充電器についておさらい

家庭用EV充電器とは

家庭用EV充電器とは

家庭用EV充電器とは、電気自動車を自宅で充電するための設備です。


最近は集合住宅に設置するパターンも増えてきましたが、家庭用は一軒家の壁面やガレージに設置して電気自動車とケーブルを接続、走行用バッテリーへ充電するもの。


また、家庭用EV充電器には昼間に太陽光発電などで充電、夜間には自宅へ電力を供給する「走る蓄電池」として使うためのV2H(Vehicle to home)設備もあります。

家庭用EV充電器を自宅に設置するメリット

その気になれば各種施設の公共用充電スポットでの充電だけでも使えないことはない電気自動車ですが、それだとガソリンスタンドに行くのと変わらず電気自動車のメリットが薄まるうえに、ある程度の充電量を随時確保するため、頻繁な充電が必要です。


家庭用EV充電器があれば、自宅への滞在中に長時間ゆっくり充電できますし、まだ数が少ない充電スポットに先客がいるため、長い待ち時間や他の充電スポットを探して右往左往する手間もかからないのは大きなメリットでしょう。

家庭用EV充電器の充電時間の目安

基本的に、家庭用EV充電器は現在の日本だと低出力で3kW(16A)、高出力でも6kW(30A)の200V普通充電で、代表的な国産車では充電時間が以下のようになっています。




車種(バッテリー容量)

3kW(16A)

6kW(30A)

日産 リーフ(40kWh)

約16時間

約8時間

日産 リーフe+(60kWh)

約23.5時間

約12.5時間

日産 サクラ(20kWh)

約8時間

約4時間

日産 アリア B6系(66kWh)

約25.5時間

約12時間

日産 アリア B9系(91kWh)

約35時間

約16.5時間

トヨタ bZ4X(71.4kWh)

約21時間

約12時間

家庭用EV充電器の充電料金の目安

2024年3月現在、家庭での一般的な電気料金は、公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会によれば、1kWhあたり約31円(2022年7月22日改定)となっており、主な国産車でバッテリーが空の状態から満充電した場合の目安は、以下となります。


なお、3kWでは契約アンペアが20Aで済み、6kWでは30Aに上げる必要があるものの、基本料金が異なるだけで、電気料金は変わりません。




車種(バッテリー容量)

電気料金

日産 リーフ(40kWh)

1,240円

日産 リーフe+(60kWh)

1,860円

日産 サクラ(20kWh)

620円

日産 アリア B6系(66kWh)

2,046円

日産 アリア B9系(91kWh)

2,821円

トヨタ bZ4X(71.4kWh)

2,214円

家庭用EV充電器の種類

家庭用EV充電器の種類

2024年現在の家庭用EV充電器は基本的に3kWまたは6kW普通充電となりますが、その設置方法や充電器のタイプによって、いくつかの種類に分かれ、それによって設置の難易度、さらに施工料金も大幅に変わってきます。

家庭用EV充電器1. 壁付けタイプ

もっとも単純なのが自宅の壁面に設置する壁付けタイプで、屋外で電化製品を使ったり、あるいは給湯器などに電力を供給する壁付けコンセントを電気自動車への充電に対応したものへ交換した一番簡単なものから、充電ケーブルを収めた本格的なボックス型まであります。


自宅に設置された配電盤からの距離が近いため、仮に全くの新設だとしても施工料金は安上がりなものの、家屋の構造やガレージとの距離によっては設置に向いていません。

家庭用EV充電器2. 自立スタンドタイプ

家屋とガレージの間が離れている場合や、駐車場との間に道などがあって、壁付けタイプと電気自動車をケーブルで接続するのに向いていない場合は、家屋の配電盤から地中などに電線を通し、ガレージや駐車場へ「自立スタンドタイプ」の充電設備を設けます。


もちろん設置費用は高額になりますが、電気自動車と接続する充電ケーブルは短くて済むため、足を引っ掛けたりケーブルの劣化による故障といったリスクは減るというメリットもあるので、初期投資のつもりで採用してもいいかもしれません。

家庭用EV充電器3. V2H機器

壁付けタイプや自立スタンドタイプが200Vで3kW、6kW両方あるのに対し、原則として6kWの高出力版のみ、そして自宅から「充電」するだけではなく、自宅へと「給電」することも可能なのが、V2H機器です。


昼には自宅の太陽光発電などで充電、夜には逆に給電して自宅を外部電源に頼らない仕組みにする「走る蓄電器」として、長期間の停電が予想される大規模災害時でも、自宅の電力を保てるメリットがある反面、機器や設置費用はもっとも高額となります。

家庭用EV充電器の使い方

家庭用EV充電器の使い方

どの充電器を選んだ場合でも、約80%の充電量に留まる急速充電と違って、充電に長時間かかる代わり「満充電」が可能な普通充電ですから、電気自動車を使ったカーライフの中心となる設備が家庭用EV充電器です。


電気自動車を使わない在宅時にはほぼ繋ぎっぱなしでなるべく満充電を保ち、バッテリーへの負担が大きい急速充電に頼らないで、バッテリー容量を極力長期間保つというのがもっとも一般的な使い方となります。


その他、V2H機器を用いた場合は、太陽光発電などと組み合わせ、「走る蓄電池」として自宅へ給電するのも役割のひとつです。

家庭用EV充電器の設置工事の内容・流れ

家庭用EV充電器の設置工事の内容・流れ

自宅へ家庭用EV充電器の設置を決めたなら、まずは施工業者選びが第一です。


単純に電気工事業者であればいいというものではなく、「電気自動車の充電設備である」という意味や特徴を理解したうえで、なるべく慣れた業者を選べればよいのですが、自宅の設計図を持つ業者でなければ手が付けられない、という事情があるかもしれません。


実際には自宅を建てた業者、電気工事業者、電気自動車の情報を提供するディーラー、そしてもちろん自分自身との連携が必要になるでしょう。


あとは現地調査で施工の可否、見積もりなどを経て契約し、必要な工事を施工する事になりますが、ここで住んでいる地域によっては自治体からの補助金が出る場合もあるので、そうした手続きも必要となります。

家庭用EV充電器の本体費用・工事費用の目安

家庭用EV充電器の本体費用・工事費用の目安

家庭用EV充電器の種類や価格はさまざまで、自宅やガレージ、駐車場の位置関係や状態、環境によって選択できる充電器本体や施工方法が変わってきますが、ここでは本体費用や工事費用の目安を説明します。

家庭用EV充電器の本体費用の目安

一例として、充電用コンセントの大手メーカー、パナソニックのサイトから、戸建て住宅向け製品のメーカー希望小売価格(税込)を以下にまとめました。


もちろんメーカーやモデルによって価格は異なり、より安価な選択肢もあります。




壁面取付タイプ


(車載ケーブルを使う充電コンセント・原則3kW)

屋外コンセント

4,290円

カバー付 屋外コンセント

1万2,210円

コンセント内蔵充電ボックス


(標準タイプ)

7万8,210円

コンセント内蔵充電ボックス


(ケーブル収納タイプ)

11万7,260円

壁面取付タイプ


(充電ケーブルを備えたMode3タイプ)

3kW

20万200~27万1,700円

6kW

24万3,100~41万3,600円

ケーブル内蔵充電ボックス(3kW)

24万3,100~25万7,400円

スタンドタイプ

充電コンセント(3kW)

14万3,000円

Mode3タイプ(3kW)

42万9,000~64万3,500円

Mode3タイプ(6kW)

45万2,100~92万9,500円

V2H

太陽光発電・蓄電システムなどを含まない最低構成(6kW)

272万8,000~330万円

家庭用EV充電器の工事費用の目安

工事費用については、単純に屋外コンセントを一番安い充電コンセントに入れ替える程度で済むなら最安3万円程度から約30〜40万円、本格的な設備で余裕を持って考えるなら約90万円からが目安となるようです。


さらにV2H機器ともなると、太陽光発電や蓄電池を別途用意した蓄電システムとも組み合わせるか、自宅が新築か部分的な改装で済ませるか、さらに業者や施工時期によっても異なり、最安30~40万円からとも言われますが、余裕をもって考えた方がいいでしょう。

家庭用EV充電器の設置工事で知っておきたいこと

家庭用EV充電器の設置工事で知っておきたいこと

ここでは家庭用EV充電器の設置工事について、事前の検討段階から知っておいた方がいいことを説明しましょう。


ユーザーによっては自宅への設備設置が電気自動車購入の絶対条件になるため、購入検討時の重要な分かれ道でもあります。

ブレーカーが100V対応の場合は200V対応への増設工事が必要

一般家庭で通常使われている電源は100Vで、電気自動車への充電はほとんどが200Vですから、電力会社との契約を200Vへ変更したうえで、配電盤に電気自動車の充電専用となる200V対応の漏電ブレーカーを増設する工事が必要です。


安全のため、また6kW普通充電のため30Aへの増強を求められる場合も多いので、電気の基本料金は上がるものの、ガソリンや軽油よりはるかに安く充電できると思えば、この部分の費用はさしたる負担と思わないでしょう。

設置場所とブレーカーの距離によっては配線工事の費用が別途かかる

電気自動車を止める駐車場が自宅敷地内、かつ建物に隣接しているため壁付けタイプで十分、そして充電器とブレーカーの距離が近く、もともと壁面にコンセントがあって、その配線容量にも余裕があるという最高の条件なら、設置工事はとても安価です。


しかし現実には駐車場と建物が遠く、壁面のちょうどいい場所に充電器の設置場所がなく、ブレーカーはよりにもよって建物内でも一番遠い反対側…と悪条件が揃ってくれば、建物内に始まり、駐車場の充電スタンドまで長く高価な配線工事が必要になってきます。

配線のために外壁や地面の工事が必要な場合は別途工事費がかかる

配線工事をするにしても、外壁に車の内装でいうところの「サービスホール」のようなちょうどよい穴が開いていない場合は新たに開けねばなりませんし、駐車場が遠ければ充電スタンドまで配線を通すパイプを地中に埋める工事も必要です。


あまりに悪条件が重なった場合は長い充電ケーブルを使うなど、充電器と駐車場の距離がある程度離れてもやむなし、と妥協が求められる場合もあるでしょう。

【Q&A】家庭用EV充電器について多い質問

【Q&A】家庭用EV充電器について多い質問

以下では、自宅に家庭用EV充電器を設置することを検討している人からの多くの質問・疑問に回答します。

Q. 家庭用EV充電器は自分でも設置できる?

家庭用EV充電器に限らず、一般住宅や店舗など600V以下の受電設備工事には、「第二種電気工事士」以上の資格が必要で、もしその資格さえあれば、DIYでの設置工事は不可能ではありません。


しかし、一歩間違えれば簡単に漏電などによる火災を起こし、自宅を焼失どころか周辺まで炎症する被害が…というハメになりかねず、現実にかかる手間や慣れない作業に苦労した挙げ句安心できないくらいなら、業者へ依頼する以外の選択肢はないでしょう。

家庭用EV充電器の自宅への設置工事で使える補助金はある?

自宅に家庭用EV充電器の設置工事を行うなら、まずはNeV(一般社団法人 次世代自動車振興センター)で充電設備補助金のチェックです。


残念ながら、戸建ての住宅に対する充電設備の設置補助金はV2H機器を除き設定されておらず、そのV2Hにしても申請が殺到して年度のかなり早い段階で締め切られてしまいますが、自治体単位で補助金が出る場合もあります。

Q. マンションに家庭用EV充電器を設置するには?

既存のマンションなど集合住宅に家庭用EV充電器を設置する場合、自分の駐車スペースとはいえ住民全員の共用部ですから勝手に設置工事などはできず、管理組合や理事会などで合意を得たうえで、希望者あるいは全戸分の充電設備を設置することになります。


そのためには他の住民の合意を得るため、戸建ての住宅と異なり国からの補助金が出るなどの知識をしっかりつけたうえで、説得に当たるとよいでしょう。

家庭用EV充電器についておさらい

今回は家庭用EV充電器の設置方法や、その種類、工事費用の相場について説明しましたが、既に電気が通っている自宅へちょっと充電器を設置し、充電ケーブルを引っ張るだけ…と思っていると、意外と手間や費用がかかるのに驚くかもしれません。


そのため公共の充電スポット頼みで見切り発車的に電気自動車を購入、国か自治体からの補助金設定を待って、後から自宅に充電器を設置しようというユーザーもいるほどです。


自宅への充電設備設置が容易になれば普及のハードルを確実に下げるため、補助金の充実が望まれます。

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