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今まで海外に流出していた?中古BEVを安心して買いやすくなるかもしれない話

ちょっとお高めでも中古で安くなったり、新車販売時には不人気でも中古で人気が出て街でもよく見かけたり。中古車は新車以上に車種の人気を左右することがあります。しかし電気自動車はその多くが中古販売されずに輸出されてしまっているそうで…しかし今後は中古の電気自動車にも、人気車種が出るかもしれないというお話。

目次

  1. 年間2万台も輸出されてしまっている「中古EV」
  2. 「人気がないから輸出でいいじゃないか」とはならない理由
  3. 「電池性能の保証」で、中古EV市場を育成せよ!
  4. JUからの提言も期待したい

年間2万台も輸出されてしまっている「中古EV」

年間2万台も輸出されてしまっている「中古EV」

中古車情報サイトを見れば、BEV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)も中古車がそれなりに出回っているものの、まだ新しいジャンルで新車販売台数も少ないため、普通のエンジン車やHEV(ハイブリッド車)に比べればそのタマ数はかなり少なめ。


それも劣化による性能低下が懸念される走行用バッテリーへの依存度が高いほど値落ちが激しく、エンジン車よりHEVが、HEVよりPHEVが、100%走行用バッテリーで走るBEVなど短期間でガタ落ちする傾向にあります。


そのため、「BEVの中古車市場」はかなり厳しいことになっているようで、民間のシンクタンク&コンサルティング(政策立案や問題解決案の専門家)大手、日本総研のレポートによると、財務省の統計で2023年には2万台もの中古BEVが海外へ輸出されているそうです。


日産 サクラなどヒット車種が出る前の2021年あたりまで、国内のBEV販売台数は2万台程度でしたから、「ほとんどが中古車市場に出回らないまま輸出されている」という見方もできますが、これがただの「売れない車の厄介払い」で済まないのがBEVの難しいところ。


何しろ国内で産出されない(日本でコストに見合った採掘が可能な資源など、今はほとんどありませんが)希少金属が多数「国外流出」していることになります。


短期的には「だからこそいい値で売れた、ある意味で資源の輸出」とも言えますが、何しろもともとは輸入した資源ですから出ていけばそれっきり、何かの事情で輸入が止まれば生産できなくなって、中古車の輸出どころではありません。

「人気がないから輸出でいいじゃないか」とはならない理由

「人気がないから輸出でいいじゃないか」とはならない理由

国内で人気がないものを輸出してしまえば無駄にもならず、どこかで役立っていいじゃないか…とは普通の不人気車の話ですが、BEVやPHEV、HEVに積まれた走行用バッテリーは、うまく回収すれば使い古しを別な製品でリユース(再利用)できます。


リユースに回せないほど性能が低下したり、リユースでいよいよ寿命を迎えても、リサイクル(廃棄物の有効利用)すれば希少金属でまたバッテリーを作ったり、別な形で活かすことも可能です。


この生産→利用→再利用→廃棄物の有効利用というサイクルを「サーキュラーエコノミー(循環経済)」と言いますが、中古のBEVやPHEV、HEVを輸出して国外流出してしまったのでは、日本国内での循環経済が成立しません。


日本総研のレポートでは、サーキュラーエコノミーによる経済効果は世界で2030年までに約4兆5千億ドル、日本だけでも6,000億円に達し、2050年には約8兆円規模のポテンシャルを秘めているとされています。


つまり「走行用バッテリーを積んだEV(電動車)をただ輸出しているのでは、すさまじい経済的損失である」と同時に、資源が輸入頼りでは安全保障にも大きく関わる問題なので、何とか国外流出を止めねばなりません。


特に走行用バッテリーの容量が大きい割に中古車の値落ちが激しく、輸出に回りがちなBEVなど、早く対策を立てねば大変な事になる、というわけなのですが、この話題は何も最近出た話ではなく、数年前から問題になっていたことです。


日本総研では2020年10月に「BACEコンソーシアム(Battery Circular Ecosystemコンソーシアム)」を設立し、何とか自動車用のリチウムイオンバッテリーの循環構造を確立しようと動いており、2024年も半ばになってようやく、何をすべきか具体化してきました。

「電池性能の保証」で、中古EV市場を育成せよ!

「電池性能の保証」で、中古EV市場を育成せよ!

そもそもBEVに限らずPHEVやHEVも含め、中古EV全般の値落ちが激しい理由は何かと言えば「使用状況や環境によって異なるバッテリーの品質や性能の劣化状態を、正確に評価できない」のが原因です。


もともと中古車とは、「高価だけにピカピカで新車みたいだと思えばすぐ壊れたり、ボロボロだけど安いからいいかと買ってみれば案外壊れない」など、バクチのような商品ではあるものの、走行用バッテリーはその不確定要素を確実に増しています。


EVに慣れた事業者ならば、走行用バッテリーの状態をキチンと検査し、劣化具合を確かめて中古車情報の備考欄へ掲載しますが、そうした事業者はまだ少なく、検査結果も共有されません。


日本でも10年以上BEVを販売している日産などは、廃車になったBEVのバッテリーを回収・再利用・廃棄物の有効利用といった循環体制をある程度は整えていますが、廃車される前に輸出されてしまったのでは意味なし!


そこで2024年も半ばになって経済産業省が音頭を取り、バッテリーメーカーによる電池の状況診断の共有、損害保険会社が保証期間内に劣化した場合は新品電池か、BEVそのものを同等車へ交換する性能保証保険の商品化、リユースによる他製品への二次利用を促進する政策が始まりました。


つまり、今までなら「価値が残っているのか、もうないのかよくわからないので、誰も買わないから輸出!」となっていた中古のEVにバッテリー保証がつき、寿命を迎えても価値が残りやすいようにすることで、中古EVの売買がしやすくなります。


これなら中古EVにもちゃんと値段がつきますし、リセールバリューが増すなら新車の購入もしやすくなりますし、中古を買ってもすぐ使えなくなる懸念は大幅に減るので中古EVは書いやすくなり、バッテリー再利用のアテがあるので下取りも期待できることになるでしょう。


新車も中古車も買いやすくなればBEVやPHEVの普及にも弾みがつきますし、諸事情でそれらの購入にいたらないユーザーも、HEVやMHEV(マイルドハイブリッド)といった電動車しか新車販売できなくなる予定の2035年以降に困ることはありません。

JUからの提言も期待したい

JUからの提言も期待したい

さらに、中古車といえばJU(日本中古自動車販売協会連合会)の「カーボンニュートラルに向けた自動車政策検討会」から2021年4月に出された提言も見逃せません。


そこでは、(トヨタやホンダなどが長年努力してきた経緯もあって)市場価値が安定しているHEVの人気は高いものの、バッテリーの性能評価を正しく行えないBEVの中古車は人気が低い、と断言されています。


他にも「発電方法のカーボンオフセットを同時進行しないと、CO2(二酸化炭素)排出が多い火力発電が主力である限りカーボンニュートラルは無理」など耳の痛い話もありますが、根本的にはなるべく長く自動車を使うのがエコであり理想という、もっともな話も。


ただ、そこでBEVの普及を推進するなら、新車だけではなく補助金や減税/免税を中古車にも実施すべき(※)だし、中古車の市場価値を正しく評価するためにも、走行用バッテリーの適性な評価制度を創設してほしい、という要望も。


(※一部自治体では、中古車にも補助金を出している例があります)


走行用バッテリーの評価制度はこれから始まって中古車のバッテリーにも一定の保証がつくようになっていく見込みですし、サーキュラーエコノミー(リユースやリサイクルを経る循環経済)のための「EV電池スマートユース協議会」も2024年10月に立ち上がりました。


あとはJUが主張するように、中古車も補助金や税制面で新車の数割程度でよいから、何らかの購入助成制度ができると、「新車でお高いBEVも、中古車なら…」というユーザーが増えてくるでしょう。


BEVに限らず、新ジャンルの自動車を普及させるには中古車がバンバン出回り、ある程度は安心して買えないと「食わず嫌いの偏見」ばかり増えてしまいますから、早く中古車を安心して買えるようになり、気楽にいろいろなBEVを試せる世の中になってほしいものです。

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