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栗原市 管財課の公用車、日産 リーフ(現行モデル)

国からの補助金だけではない!地方自治体による電気自動車普及の取り組みを紹介~宮城県栗原市・登米市編~

新世代のクリーンエネルギー車には国から最大85万円(軽自動車は55万円)の「CEV補助金」や各種の減税・免税措置があり、新車を買うユーザーはとても助かりますが、都道府県や市町村が独自に設定している補助金制度も、合わせて使えばさらにオトク!今回は宮城県北部の栗原市と登米市で、補助金のお話を聞きました。

目次

  1. 補助金のみならず、公用車も電気自動車を長く使用中の栗原市
  2. 市の独自財源で、電気自動車の補助金を続ける登米市
  3. 自然が豊かな土地柄ゆえの、「環境対策先進自治体」

補助金のみならず、公用車も電気自動車を長く使用中の栗原市

環境対策の補助事業で長年の実績を誇り、公用車に電気自動車も多い栗原市(市役所本庁舎)

環境対策の補助事業で長年の実績を誇り、公用車に電気自動車も多い栗原市(市役所本庁舎)

太陽光発電の補助は、もう卒業していた?!

2005年4月1日、当時の栗原郡9町1村の合併で誕生した「栗原市(くりはらし)」は、宮城県内陸北部で観光名所でもある栗駒山により、岩手県や秋田県と県境を接しており、昔から交通の要として機能してきた歴史を持ちます。


旧町村の市街地や鉱山(旧鶯沢町の細倉鉱山)を除けば、農業を中心とした自然の豊かな土地柄であり、街灯のLED化など宮城県内でも独自の施策による、「環境対策先進自治体」として知られてきました。


現在は「電気自動車購入支援補助金」がある一方、他の自治体でありがちな太陽光発電や蓄電池といった住宅設備の補助金はなく、筆者(CARSMORAライター・兵藤忠彦)としても興味津々で、施策担当の環境課 環境政策・施設係へ話を聞きに行ってきたわけですが!




令和6年度 電気自動車購入支援補助金

BEV・PHEV・FCEV

10万円

申込期間

2024/5/7~2025/2/28


※または、交付予定件数に達するまで。

備考

※2024年4月1日以降新規登録の新車。


※1世帯または1事業者につき、同一年度1台まで。


※先着20件(5/29現在5台受付)。


───まず栗原市について、他の自治体が「ゼロカーボンシティ宣言」後に環境対策に本腰を入れ、太陽光発電や蓄電池など住宅設備に加え、自治体によっては電気自動車も補助する、という施策とはだいぶ様相が異なります。


令和6年(2024年)2月9日のゼロカーボン宣言以前、令和4年度から電気自動車の購入支援補助金を始めている一方、太陽光発電や蓄電池の一般住宅向け補助はしていないのがユニークだと思いますが、このような形になったのはなぜでしょう?


栗原市 環境課 環境政策・施設係の担当者様(以下:「栗」):住宅への太陽光発電の補助は、以前やってたんですよ。


今は業者が新築なり改築を提案するプランに太陽光発電などをパッケージ化していますから、単純に「既存の住宅へ取り付けるだけ」という補助は栗原市だとやり切っていて時代にそぐわないと打ち切り、次は電気自動車だろうと、令和4年度から始めたわけです。


───先進的な取り組みをなされてたんですね!


しかし今年(令和6年)に入ってようやく「ゼロカーボンシティ宣言」をしたわけですが、宮城県からの「みやぎ環境交付金」には、あまり関係なかったんですか?


栗:結果的にゼロカーボンシティ宣言はだいぶ後になりましたが、環境交付金はそれ以前からあったので、特に影響はなく、以前からの環境対策をそのまま進めている形です。

e-Mobility Powerとの協定で、市の急速充電器も一新する予定!

栗原市 栗駒総合支所に設置されている「月に1台で4回利用可能」な、無料の急速充電器

栗原市 栗駒総合支所に設置されている「月に1台で4回利用可能」な、無料の急速充電器

───環境省から後押しされるまでもなく、独自性をもって環境対策を長年続けているのは、素晴らしいと思います。


独自性と言えば、2023年11月に株式会社e-Mobility Power(イー・モビリティパワー、以下「同社」)と「栗原市内のEV・充電インフラの普及促進に向けた連携協定」を締結したというのも、電気自動車関連でかなり目立った動きですが、現況はどうでしょう?


栗:隣の秋田県湯沢市が、同社と先んじて提携(2023年2月)したのを参考に、ウチでもやろうとなったわけですね。


もともと、花山(旧・花山村)の「道の駅路田里はなやま 自然薯の館」と、栗駒(旧・栗駒町)の「栗駒総合支所」に設置していた急速充電器がいい加減古くなってきまして。


運用に制約(1台につき月4回まで)を設けてまで無料でやるのも時代にそぐわなくなってきましたし、同社へ委託する形で花山はそのままの場所で、栗駒は近くの観光拠点「山の駅くりこま」へ移転するのと同時に機器を更新し、今後は有料化します。


まだ設置のための補助金を申請している段階で、交付決定待ちではありますが、今年(2024年)秋には新しくなる予定ですよ!


───湯沢も栗原も豪雪地帯ですが、これで冬に県境越えをしても、宮城・秋田どちらかで新しい急速充電器を使えますから、電気自動車ユーザーは安心ですね!


栗:国道(栗原市と秋田県湯沢市を花山経由で結ぶ398号)は冬季通行止めですから、冬は残念ながら関係ないんですけどね(笑)

水素ステーションはまだないけど、FCEVもドンとこい!制度は柔軟に運用

協定を結んだe-Mobility Powerによって、栗駒総合支所の急速充電器は機器更新と同時に「山の駅くりこま」でリニューアル予定

協定を結んだe-Mobility Powerによって、栗駒総合支所の急速充電器は機器更新と同時に「山の駅くりこま」でリニューアル予定

───「電気自動車購入支援補助金」の制度面に話を移しましょう。


補助対象車両にはFCEV(燃料電池車)も含まれていますが、これはもしかして水素ステーションが市内で建設されるという予定が?


栗:うーん、ないですね…何しろ一番近い水素ステーションが仙台ですから、今の時点で買おうという人はいないと思いますが、将来的にはわかりませんし、今後を見据えてFCEVも一応…という形です。


───とはいえ、今年夏にはホンダからCR-VのプラグインFCEVが発売されますし、近場は充電した電気で走り、時々仙台に行ったついでに水素を入れてくる、なんてことが意外と早く実現するかもしれません。


そこで要項に書かれたFCEVの定義で、「燃料電池によって駆動される電動機のみを原動機とし」という部分が気になったのですが、プラグインFCEVもPHEV(プラグインハイブリッド車)かFCEV、どちらかで認めてもらえるんでしょうか?


栗:確かに要項通りに考えたらその通りですが、バッテリーの電気で走るなら電気自動車の一種でいいだろうとか、そのへんは柔軟に考えていく事になるでしょうね。


───補助金を受け取った場合、「財産の処分制限」で4年間はやむをえない事情でもない限り車を売ったり処分したりできないことになっていますが、これは仮に「転居」してしまった場合はどうでしょう?転勤で栗原市外への転出は普通にありえますが。


栗:実例がなかったので、ちょっと想定外かもしれませんが…もしそういう事例が出てきたら、転居後まで利用状況を追いかけるとか、何らかの検討はしなくてはなりませんね。

補助金の利用は順調で、2年目から補助対象の台数を倍増

栗原市の重要な観光資源、栗駒山麓ジオパークなどを守るためにも、環境対策の推進は必須だった

栗原市の重要な観光資源、栗駒山麓ジオパークなどを守るためにも、環境対策の推進は必須だった

───これまで市の補助金を受けた電気自動車、実績はズバリ?!


栗:初年度(令和4年度)は10台、2年目(令和5年度)から倍増して20台に達しましたから、上限に達して余るということもありませんでした。


もし上限に達せず、「みやぎ環境交付金」で出た財源に余裕が出ても、電気自動車に限定してる予算じゃありませんから、他の環境対策事業へ投入します。


───内陸の自然豊かで広大な土地柄とはいえ、市内でサクラとか普通に見ますもんね…今後についてはどうでしょう?


栗:財源になってる「みやぎ環境交付金」次第ですね…現時点では令和7年度まで(令和8年3月31日まで)が決まってますが、その先は県から話が下りてこないとなんとも。


交付金が絞られて縮小するのか、増えたので補助金も増えたり、ありえない話ではないんですが。

公用車も市役所のリーフ3台はじめ、各支所で活躍中!

栗原市役所の本庁舎では、管財課が管理しているリーフ3台(初代2台・2代目1台)を運用している

栗原市役所の本庁舎では、管財課が管理しているリーフ3台(初代2台・2代目1台)を運用している

───最後は市民のお手本になるであろう公用車への導入ですが、現在使っている電気自動車は、どんな車種でしょう?また栗原市は豪雪など冬は電気自動車に厳しそうな環境ですが、運用への支障が多発した事例はありますか?


栗:東日本大震災(2011年3月)からの復興を機に、初代の日産 リーフを入れまして、その後は現行のリーフに三菱のMiEV(i-MiEVやミニキャブMiEV)を入れたりで、だいぶ早い段階から入れて、本庁舎の管財課や各支所で使ってます。


詳しい説明や撮影許可は、管財課に聞いてみるとよいでしょう。


───(管財課へ移動し)こちらで、電気自動車の公用車を使っていると伺いました。


栗:現行(2代目)のリーフが1台、初代が2台の3台で、普通充電器も台数分あります。


各部署で持っている公用車とは別に、必要に応じて管財課から貸し出すんですが、冬場もちょっとした見回りで長くても市内数十kmを走る程度ですから、冬場だからと支障が出たという話はないですね…それを超える用途なら、別に向いている車を使えばよいですし。


───管財課の方も時々は運転すると思いますが、使い勝手はどうですか?


栗:そりゃもう静かで…アクセルペダルを戻したらブレーキがかかる(ワンペダル)以外は、普通の車と同じように運転して使えますから、電気自動車と意識することはあまりないですね。

「道の駅路田里はなやま」でも、急速充電器の利用者に聞いてみた

国道398号で秋田県湯沢市へ抜ける途上の栗原市花山(旧・花山村)にある道の駅では、おそらく宮城県内でも屈指の急速充電器が現役稼働中で、これも2024年秋に機器更新予定

国道398号で秋田県湯沢市へ抜ける途上の栗原市花山(旧・花山村)にある道の駅では、おそらく宮城県内でも屈指の急速充電器が現役稼働中で、これも2024年秋に機器更新予定

栗原市役所で電気自動車への補助金について伺った後、町で設置した急速充電器があるという、「道の駅路田里はなやま 自然薯の館」にも行ってみました。


この秋には協定を結んだe-Mobility Powerが新しい急速充電器を設置し、有料化される予定ですが、到着すると、ちょうど道の駅の従業員へ利用申請の書類を記入し、今まさに充電開始という現行リーフのユーザーがいたので、話を聞いてみました。


───こんにちは、今日はどちらからで…ええっ岩沼市?!県内とはいえ南部ですから、ずいぶん遠くからいらっしゃいましたね(高速道路を使っても約100km以上)。


リーフのユーザー様(以下「リーフ氏」):これは40kWh版の現行リーフだから、カタログスペック(WLTCモード322km)はともかく、高速道路で80km/h巡航とかならともかく、それなりに走ると帰りが心細いんで、こうして充電するわけですよ。


───高速道路でキビキビ走ると、エンジン車でも平均燃費を見てたら落ちていきますもんね…経年劣化によるバッテリー容量落ちとか、そういうのも関係しますか?


リーフ氏:実はリーフ3台乗り継いでて、初代の1台目は納車1日で津波に流されちゃって、数カ月後に初代の2台目、2019年からこの2代目リーフですけど、初代と違って2代目は何年使ってもちゃんと100%まで充電できますし、航続距離が少し落ちたかも程度ですよ。


───だからこうして山奥への所用でも、急速充電があるから長距離の往復もこなせるわけですね…ただ、秋には新しい充電器へ切り替えて、有料になるみたいですよ?


リーフ氏:今は充電のたび、道の駅の従業員へ声かけて、いろいろ書かなきゃいけなくて、逆にいろいろ面倒ですからね。


───ああ、先ほど見てましたが、「1台4回まで」という制約のために、手続きが面倒なんですね。


リーフ氏:その手間が省けるから、かえって気軽に充電できていいと思います。




お問い合わせ先

栗原市 市民生活部 環境課 環境政策・施設係


電話:0228-22-3350


FAX:0228-22-0350

市の独自財源で、電気自動車の補助金を続ける登米市

今回話を伺った、登米市 市民生活部 環境課がある南方庁舎

今回話を伺った、登米市 市民生活部 環境課がある南方庁舎

えっ、県からの交付金ではなく、市の独自財政なんですか?!

西は山沿いの栗原市、東は沿岸部の気仙沼市に挟まれ、岩手県と県境で接する宮城県内陸北部の登米市(とめし)は、「平成の大合併」で2005年4月に9町が合併して生まれた比較的新しい市。


ラムサール条約に登録された重要保全湿地であり、冬には白鳥も飛来する「伊豆沼」「内沼」、さらに明治初期には水沢県の県庁だったため、歴史的建造物も多く、郷土料理の名物「油麩丼」も美味しい登米市などが観光スポットの、自然豊かな自治体です。


そんな登米市でも昨年度(令和5年度)から「電気自動車等導入支援事業」を実施しており、話を伺ってきました。


令和6年度 電気自動車等導入支援事業

BEV・PHEV・FCEV

10万円

申込期間

2024/4/1~2025/3/31


※または、交付予定件数に達するまで。

備考

※令和6年1月1日から12月31日の間に初度登録した新車購入またはリース契約の、事業用ではなく自家用車。


※国交省が定める「超小型モビリティ」は除く。


※車検証で使用の本拠の位置が登米市内。


※1世帯または1事業者につき、同一年度1台まで。


※予定台数20件。

令和6年度住宅用新エネルギー設備導入支援事業補助金

木質バイオマス燃焼機器設置事業


(ペレットまたは薪を燃料として使用する暖房機器及びボイラー)

木質バイオマス燃焼機器の購入、設置に関する費用の3分の1または10万円のいずれか低い額(千円未満切り捨て)。


───まずは制度の概要と、現状で補助金が出るのは電気自動車とバイオマス燃焼機器のみ、他の自治体でよくある「太陽光発電や蓄電池のセット」がなく、電気自動車などに10万円と、割と手厚い補助金が出るに至った経緯から、お聞かせください。


登米市 市民生活部 環境課 環境政策係・担当者様(以下:「登」):以前は太陽光発電と蓄電池の導入補助をやってたんですが、平成30年度で終えることにしまして、今後は何を支援していこうかと検討しました。


そこで、カーボンニュートラルを目指すという観点からふさわしいと、市内の森林資源を活かせる木質バイオマス燃焼機器設置事業ですとか、令和5年度からは電気自動車の補助を、新たに始めたわけです。


───やはり財源は県からの「みやぎ環境交付金」ですか?


登:いや、登米市は環境交付金を別の事業に使ってまして、電気自動車については市が独自の予算を組んでますね。だから昨年は20台以上の申請が来て、市で補正予算組んで全車対応なんてこともできましたが、財源に限りがあるため、今年は最初から「20台」で。



目指すは「カーボンニュートラル」

環境課がある登米市南方は、旧・南方町時代から地域を盛り上げるという意味で「もっこりの里」というキャッチコピーで売り出すなど、なかなかユニーク

環境課がある登米市南方は、旧・南方町時代から地域を盛り上げるという意味で「もっこりの里」というキャッチコピーで売り出すなど、なかなかユニーク

───電気自動車以外でバイオマス「燃焼」にも補助となると、カーボンフリーを目指すのとは、ちょっと違うんですね。


登:ええ、あくまで「カーボンニュートラル」です。


───そうなると、自動車の方も電気自動車などのように排出ガスゼロの動力だけではなく、e-Fuel(代替燃料)やバイオフューエルを使った内燃機関にも、「カーボンニュートラル」という観点からは、まだ可能性を感じそうですが?


登:e-Fuelやバイオフューエルは、実現するとしてもまだまだ相当先の話と考えていて、既に市販車が走っている電気自動車と比べて、今すぐどうこうはならないと思ってます。


そもそも「燃料」の話ですから、「自動車」と違って、燃料に市から補助を出してという話にはならないですね。


補助対象車について…高価なものから優先度を上げたという考え


───制度の要項を見ると、「新車の購入」であって「買い替え」に限定しておらず、しかし中古車は対象外、超小型モビリティも対象外となっていますね?


登:電気自動車の新車は、国からの補助金(CEV補助金)を得てもまだ高価ですが、中古車や超小型モビリティは安いですし、それなら高い方から優先して、購入を後押ししようと考えました。


───高価と言えばFCEV(燃料電池車)も高価で、補助対象にもしっかり入っていますが、現状で仙台より近くに水素ステーションはないですし、市内で買う人もいないでしょうから、一応将来に向けて…程度ですよね?


登:それが、私も話を聞いただけなんですけど、市内で(FCEVを)買った人がいるらしいんですよ…それで一応、対象に含めてはいるんですが。


───水素ステーションがないのに、FCEVを買った人がいたんですか?!もしかして、一応電気と水があれば作れますから、どこかの事業所で独自に水素燃料を作ったりというお話は?


登:うーん、そういう話も聞いた事がなくて、今後も水素ステーションができるという話はまだないんですよね。

明言はしないものの?!申請が多いのは国産の軽乗用EV

───昨年度から電気自動車などの補助金をスタートして、20台以上の申請に補正予算まで組んで対応したそうですが、差し支えなければ具体的な車種を教えてください。


登:メーカーや車種は…お答えできませんが、国産の軽EVがほとんどですね。


───軽「乗用」EVってことで、いいでしょうか?(笑)


登:そういう事になります(笑)


───まあ実質、2車種(サ◯ラ、e◯クロスEV)しかないですよね!PHEV(プラグインハイブリッド)は?


登:それも国産の(笑)


───23つしかないので(ト◯タ、三◯、マ◯ダ)…輸入車にも一応PHEVはありますよ?


登:輸入車はもともと高価なうえに、PHEVはさらに高価、BEV(電気自動車)はPHEVよりもっと高価ですから、やはりなかなか買う人がいませんね。


現実としては、カタログで180kmとか走る軽EVでアシとしては十分、問題ないわけです。

V2H設備含め、充電器への補助や、その他の要望は?

───登米市は戸建てのお宅がほとんどですから、みんな自宅に普通充電設備を設置してると思いますけど、充電設備への補助はどこの自治体でも低調なんですよね。


それでも太陽光発電とのセットでV2H充放電設備への補助は出すところが多いんですが、登米市ではこれまで太陽光発電の補助を出したお宅へ、改めてV2H設備の補助を検討しないのでしょうか?


登:ウチみたいな土地柄(登米市は典型的な車社会)だと、昼間はみんな車で出かけて夜に充電しますから、太陽光発電で昼に充電して、夜に住宅へ電気を供給するような「走る蓄電池」として使えないので、V2Hの意味がないんです。


県ではV2Hの補助をやってますし、登米市でも需要があれば考えるかもしれませんけど、そもそもV2Hを知らない人が多いので、要望自体上がってきてません。


───住民から要望が高まれば検討するけど、V2Hは現状だと現実的ではないということで…他にこうしてほしい、あれが欲しいという要望はあります?


登:「普通のハイブリッドはダメなのか」って問い合わせが来ますけど、そんな高価なものではありませんからね。


───何なら、今やハイブリッド車って「ただ燃費がいいだけの普通の車」ですもんね。


登:そうです、だから新エネルギー車に補助は限定しています。

道の駅の急速充電器は、観光振興策

「道の駅みなみかた もっこりの里」の急速充電器

「道の駅みなみかた もっこりの里」の急速充電器

───(環境課がある)南方庁舎・南方総合支所の表にある「道の駅みなみかた もっこりの里」には急速受電機を設置していますが、観光で市内を訪れた方向けの急速充電器は、市で他に整備しないんですか?


登:実はあの急速充電器は市ではなく、業者で運営してます(もちろん有料)。


もともと市でも急速充電器は1台あったのを譲渡して、今は「道の駅みなみかた」(旧・南方町)のほか、「道の駅 林林館」(旧・東和町)、「道の駅 津山 もくもくランド」(旧・津山町)、「道の駅米山 ふる里センターY・Y」(旧・米山町)の4箇所に増えました。


観光課の管轄なので、ウチ(環境課)の環境対策事業とはまた別ですね。

公用車は昨年度に第1号を配備!もっと高性能な車が登場してほしい!

登米市が令和5年度に導入した公用の電気自動車第1号!要望により車種名は伏せていますが、見ての通りです

登米市が令和5年度に導入した公用の電気自動車第1号!要望により車種名は伏せていますが、見ての通りです

───最後に公用車について教えてください!電気自動車を使っていますか?


登:昨年度に市で初めての電気自動車を導入しました!ウチ(環境課)の車ですから、どうぞご覧ください!


───おお、メーカー名や車種名は伏せて…見ればわかりますけど、そういう事にしまして(笑)…-軽乗用車なんですね?てっきり、業務で使うから人も荷物も載せようと、軽1BOXを選ぶんだと思ってました。


登:いやーこれも(後席を倒せば)荷物はかなり載りますし、十分ですよ?普通充電器は1台分で、PHEV(「充電器の使い方」が書かれた紙を見る限りでは、52プリウスPHV)と共用です。


───最初の1台を足がかりに増やしたいところだと思いますが、やはりネックは充電器ですか?倉庫に止める車なら200V電源さえ来てれば設置は容易でしょうけど、青空駐車の公用車には充電スタンドを立てるのかって話になりますもんね?


登:うーん、それより問題なのは、災害時の対応ですね。


───停電したらどうすると…あれ?でも太陽光パネルや蓄電池があれば充電できて、むしろ便利なのでは?


登:太陽光パネルは倉庫の上にありますけど、この電力では庁舎の分をまかなうのが精一杯で、蓄電池もないのですよ。


───「電気自動車に回す電気なんか、ないぞ!」ってわけですか。


登:そうなんですねー、一方でガソリンスタンドは手動でも自家発電でも給油機が動きますし、大災害とか急場に広い市内のあちこちで対応を求められると、ガソリン入れて動く車の方が実用的だから、せめてハイブリッド車…という話になります。


───登米市は広いですもんね…せめて小型の1BOX車やトラックで、航続距離が500~600kmくらいの電気自動車が出れば、災害対応が求められる公用車にもふさわしい、という事になりますか?


登:まさにその通り!早くそういう車、出ませんかね?




お問い合わせ先

登米市 市民生活部(南方庁舎) 環境課 環境政策係


TEL:0220-58-5553


FAX:0220-58-3345

自然が豊かな土地柄ゆえの、「環境対策先進自治体」

栗原市南方の風景…一部の人口密集地を除けば、栗原市も登米市も大地の恵みと豊かな資源による農林業や観光業が重要で、それらを守るために先進的な環境対策に力を入れ、今は電気自動車の普及には熱心だ

栗原市南方の風景…一部の人口密集地を除けば、栗原市も登米市も大地の恵みと豊かな資源による農林業や観光業が重要で、それらを守るために先進的な環境対策に力を入れ、今は電気自動車の普及には熱心だ

今回取材した栗原市と登米市は、いずれも自然が豊かな土地柄で、環境対策へ積極的に取り組んできた、長い歴史を持つ自治体という、共通した特徴がありました。


農業や林業が盛んで、自然も立派な観光資源というだけではなく、むしろ積極的に保護していかなければ、自治体としてのアイデンティティにも関わる…そういう意味では、仙台市を中心とした都市部よりも切羽詰まった環境対策を熱心に推進する必要性があるようです。


そのため、両市とも「住宅用太陽光発電設備への補助?ウチはとっくに手掛けて、もう終わったので、今は電気自動車に力を入れています!」というスタンスで、ヘタな地方都市より一歩も二歩も進んでいるという印象で、軽EVは山奥でも普通に走っています。


この記事を読んでいる読者の方でも、「ウチは田舎だから補助金なんてないだろう!」なんてあきらめず、役所のホームページで環境対策や補助制度を探してみれば、いいことがあるかもしれませんよ?

著者プロフィール

【兵藤 忠彦】 宮城県仙台市在住のフリーランスライター。モータースポーツに参戦していた経歴は全てダイハツ車という、自動車ファンには珍しいダイハツ派で、現在もダイハツ ソニカを愛車として次の愛車を模索中。もう50代なので青春時代を過ごした1980〜1990年代のクルマに関する記事依頼が多いものの、自動運転やEVといった次世代モビリティでも楽しめるはず!と勉強中です。

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