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主な国の電気自動車(EV)への取り組みとこれからの課題

脱炭素社会を目指す中で、ガソリン車やディーゼル車から、電気モーターを動力源とする電気自動車(EV)への移行、すなわち「EVシフト」が世界的に注目されています。

地球温暖化や環境汚染といった課題への対応として世界中で進められており、持続可能な社会への重要な一歩として認識されているEVシフト。そのために多くの国が多様な取り組みに着手しているのです。

当記事では日本におけるEVシフトの現状を、欧米諸国や中国の動向と併せてご紹介していきます。また、日本の展望や、EV普及のために解決すべき課題についても説明していきます。

目次

  1. ゼロエミッションビークル(ZEV)って何?
  2. EV普及に向けた主要国家の取り組みを知ろう
  3. 日本でEVが普及するためにはどんな課題があるんだろう
カースモーラちゃんポイント
  • 走行中に排気ガスを一切排出しない自動車のことを「ゼロエミッションビークル(ZEV)」と呼ぶよ。
  • 各国はEV普及のためにたくさんの施策を行っているみたい。
  • 日本ではインフラ整備の遅れや、走行距離と充電時間の問題、中古市場の問題など、まだまだ課題がありそうだね。

ゼロエミッションビークル(ZEV)って何?

ゼロエミッションビークル(ZEV)って何?

ZEVは、走行中に排気ガスを一切排出しない自動車全般のこと。

電気自動車(EV)や燃料電池自動車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHV)などが含まれます。EVやFCVなどの車は、従来のガソリンやディーゼル燃料を使用するガソリン車と比較して、大気汚染物質や温室効果ガスの排出を大幅に削減することができます。


そのため、地球温暖化のリスクを低減することが期待されています。1990年にはカリフォルニア州でZEVを義務付ける画期的な法律が成立し、以降この概念は世界的に広まりました。


この法律の成立は自動車産業における大きな転換点となり、多くの自動車メーカーがZEVの開発に力を入れるきっかけとなりました。


現在ではZEVは環境に配慮した持続可能な輸送手段として、世界中で普及を見せています。

EV普及に向けた主要国家の取り組みを知ろう

EV普及に向けた主要国家の取り組みを知ろう

世界各国では2050年のカーボンニュートラルを目指し、ZEVの普及を進めるための規制が強化されています。

代表的な国の取り組みをご紹介しましょう。

日本

日本の自動車メーカーは、ZEVの普及促進に向けて、さまざまな取り組みを行っている最中です。


具体的には、ZEVに関連する技術開発に力を入れており、バッテリー技術や燃料電池技術の向上に重点を置いています。


また、バン、トラック、バスなどの商用車を含む広範な車両を対象とし、商用車のZEV化にも着手しています。このような施策を行うことで、日本の自動車メーカーはZEVの普及や、持続可能なモビリティの実現を目指しているのです。


また、ZEVそれぞれの特徴を使い分けることも視野に。


例えば、小型宅配車両など近距離の小型車ではEV、バスやトラックなど長距離を走る大型車ではFCV、乗用車などの中型車ではPHVというように、商用車間でも技術を使い分ける構想も考えられています。


また、東京都は、2018年5月に開催した国際会議「きれいな空と都市 東京フォーラム」において、2030年の都内の乗用車新車販売に占めるZEVの割合を、50%まで高めるとの目標を掲げました。


そのため東京都は、次世代自動車であるZEVの普及促進に向けて取り組んでいます。

アメリカ(特にカリフォルニア州)

特にカリフォルニア州は、ZEVに関する規制の先駆者です。2035年までに新車販売のすべてをZEVにするという目標を設定しています。


ほかの州もカリフォルニア州の規制をモデルにして、ZEV規制を導入しているほど。


ZEV数値目標を積極的に設定し、新車販売に占めるZEVの割合は2026年式モデルで35%、2030年式では68%と、段階的に引き上げられました。


そのために購入時の補助金や税制優遇、優先的な駐車場の提供などのインセンティブを提供。


さらに、州全体での充電インフラと水素燃料供給ステーションの拡充にも力を入れており、ZEVの利用者が増えることを支援しています。

欧州連合(EU)

欧州連合(EU)は2035年までにすべての乗用車およびバンの新車をZEVにすることを目標に。


EU全体でのCO2排出量削減目標に沿って、自動車メーカーに対する厳しいCO2排出基準を設定しています。


欧州自動車工業会(ACEA)や欧州自動車部品工業会(CLEPA)などの業界団体は、充電インフラや再生可能エネルギーの整備、原材料調達の確保、ZEVの製造プロセスの安定化、これらに関する正確な評価の必要性を主張しています。


EU各国はこうした課題に対応するため、官民共同でZEVの供給安定に向けた取り組みが進められていくでしょう。


また、EUはバスやトラックなどの大型商用車に対しても、共通の排ガス規制「Euro7」を設けることで、EVおよびPHVのバッテリーに基準を定め、ZEVの質の向上を目指しています。

中国

世界でも非常に速いペースでEV市場が成長している国の一つといえば、中国です。


中国は世界におけるEV市場の大国であり、2022年時点では世界の全EV台数約2,600万台に対し約1,400万台を中国が占めています。


市場を牽引するのは、世界的にも有名な比亜迪(BYD)社に加え、小鵬汽車(Xpeng Motors)社や理想汽車(Li Auto)などの新興EVメーカーたち。


中国のEV市場は、国内外での影響力が大きく、その動向は世界の自動車産業に大きな影響を与えています。


特に、中国のEVメーカーによる技術革新や市場拡大の動きは、今後の世界の自動車業界における重要なトレンドとなりうるでしょう。


中国政府もまたEVに関する補助金や優遇税制を提供しつつ、充電インフラの拡充にも力を入れていれることで、EVの普及推進を図っています。

日本でEVが普及するためにはどんな課題があるんだろう

日本でEVが普及するためにはどんな課題があるんだろう

日本では諸外国と比較するとEVシフトが遅れているのではないかという指摘も。それにはいくつかの要因が関係していると考えられます。

インフラ整備の遅れ

日本におけるEVの充電インフラについての代表的な問題点としては、主にインフラ整備が挙げられます。


さらに充電ステーションの設置には地理的な偏りがあり、特に地方や田舎では充電ステーションが十分に整備されていないことが課題です。


充電ステーションの数が不足している現状では、EVユーザーは遠出をする際に安心感を持てず、常にバッテリー切れの不安を抱えてしまいます。


こうしたEVにおけるインフラ面での不安が、普及の足枷になっている可能性も。


EVの普及を進めるためには、充電インフラの早急な整備が不可欠と言えるでしょう。


充電ステーションの数と分布を改善することで、EVユーザーがより安心して車を使用できるようになることが期待されます。

走行距離と充電時間

現在のEVにおけるバッテリーのエネルギー密度は、ガソリン車に比べて低い傾向にあります。


EVの実質エネルギー搭載量はガソリン車の約3分の1程度とされています。


さらに、季節によって必要となる冷暖房の使用はEVの航続距離に影響を与えてしまいます。


その理由は、冷暖房の使用による電力消費は、バッテリーの放電を早め、結果的に航続距離を短くしてしまうためです。


また、バッテリーの充放電には制約があります。バッテリーを100%放電すると損傷や寿命の短縮の原因になるため、完全放電を防ぐために設計上の余裕が設けられているためです。


そのため、充電容量も100%まで満たされないように設計されているのが一般的です。


このようなバッテリーを積んだEVですが、ガソリン車と異なる方法、すなわち「充電」することでエネルギーの補充を行います。


現在、急速充電を行っても約80kmを走行するための充電にはおよそ15分かかるのが現状です。


ガソリン車に慣れているユーザーにとって、給油時間は約5分程度と短いため、EVの充電時間は長く感じられるかもしれません。


また、2023年3月時点で日本国内に約20,000箇所の充電施設がありますが、そのうち急速充電に対応しているのは全体の約42%、約8,000箇所程度ほど。


これらの課題は、EVの普及に向けた重要な改善点となっており、バッテリー技術の進化、充電インフラの拡充が求められています。

中古車価格

EVの中古車市場における価格は、バッテリーの劣化問題が大きく影響しています。バッテリーの寿命は理論上は車体と同じ程度ですが、実際の寿命は使用方法によって異なるためです。充放電の繰り返し、特に急速充電はバッテリーに大きな負担をかけ、劣化を早める原因に。急速充電によりバッテリー温度が高まると、劣化が進行する可能性が増加してしまいます。


また、自動車購入時の残価設定ローンの普及により、将来の買取価格が保証されることが一般的になりました。しかし、EVはガソリン車に比べて残価率が低めに設定されていることがあります。


将来的にはバッテリー技術の進化や、中古EVバッテリーの状態を正確に評価する技術の向上、中古市場での取引実績の増加が期待されます。

カースモーラちゃんまとめ

アメリカ、EU、中国などはそれぞれでEV普及に向けた取り組みを行っているんだね。

日本のEVシフトは他国に比べて遅れていると指摘されているみたいだけど、課題に対応するためには技術革新、インフラの拡充、政策の推進が不可欠だね。

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