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電気自動車(EV)の課題解決を狙うバッテリービジネスって?

EV(電気自動車)の利用・普及を目指す上で、「バッテリー」に関するトピックは避けては通れません。バッテリー自体の劣化や交換コストの問題のほかにも、中古車価格がバッテリーの劣化具合によって大きく変わる点や、リサイクルフローが確立されていない点など、課題は山積みです。

こうした問題を解決する上で、今、注目を集めているのがバッテリービジネスである「BaaS」。日本では法整備が進んでいないため活発化こそしていませんが、今後のEV領域に革新をもたらす可能性を秘めた注目のビジネスモデルです。当記事では、今後のEV市場を左右する可能性のあるBaaSについてご紹介します。

目次

  1. バッテリーのサービス化を意味する「BaaS」とは?
  2. EVの課題であるバッテリー問題にはどのようなものがあるの?
  3. バッテリー問題をBaaSで解決している会社はあるの?
  4. 日本におけるBaaSの登場はまだ先に
カースモーラちゃんのPICK UP
  • BaaSとは主に劣化したバッテリーを新しいバッテリーと交換することができるバッテリーサービスを指すよ。
  • アジア圏ではたくさんのBaaS企業が登場しているけど、なかなか導入までのハードルが高いみたい。
  • バッテリー交換式EVは車検を通らない日本ではBaaSはまだ浸透していないみたい。

バッテリーのサービス化を意味する「BaaS」とは?

バッテリーのサービス化を意味する「BaaS」とは?

自動車業界における「Battery as a Service」、すなわちBaaSとは、EVユーザーがバッテリーを直接所有するのではなく、交換サービスを用いて充電済みの電池と入れ替えながらシェア(共通利用)かつリユース(再利用)するというもの。


常にバッテリーの「交換」が必要となるため、BaaSではEVバッテリー交換や充電設備の提供が主なサービス内容となります。バッテリーの寿命管理や交換にかかるコストを抑制し、EVの利用をより容易で経済的なものへと導くことが期待されています。

EVの課題であるバッテリー問題にはどのようなものがあるの?

EVの課題であるバッテリー問題にはどのようなものがあるの?

バッテリーの劣化問題がEV市場に与える影響は非常に大きいと言えます。その例をいくつか挙げてみましょう。以下の問題を解決するためには、バッテリー技術の改善、劣化予測技術の進歩、中古バッテリーの評価基準の確立、リサイクルシステムの整備などが必要となってきます。

バッテリーの劣化と中古車価格

中古EVの価値を正確に評価する際には、バッテリー状態の把握が重要です。しかしながら、中古EVにおけるバッテリー状態の把握は決して容易なことではありません。


例えば、走行距離の比較的短いEVであっても、極端に寒い環境下を走行していたり、急速充電や充放電の回数が多い場合は、予想よりも遥かにバッテリー劣化が進んでいるケースもあります。ガソリン車のように、単純な走行距離だけでは測ることができないことも多いのです。


また、将来のバッテリー交換コストまで考慮するとなると、いよいよ中古EVの価格の算定が難しくなります。良くも悪くもバッテリーの状態に左右されることから、新車価格に対する中古車の価値(残価率)を正確に評価することが難しく、中古EVの価格設定は複雑化の一途を辿っているのです。

二次・三次利用環境の未整備

使用済みEVバッテリーの二次利用(エネルギー貯蔵システムなど)や三次利用(資源回収)のライフサイクルは、まだ十分に確立されているとは言えない状況です。廃棄処理のコストや環境への影響が懸念されています。

バッテリー本体のコスト問題

現在、バッテリーはEVの総コストの大きな部分を占めており、これがEV価格を高額にしてしまっています。


原材料や製造工程の問題などさまざまな要因がバッテリー費用の高騰につながっています。技術開発や製造コスト削減を進めることが、将来的なEVの普及には重要です。

バッテリー問題をBaaSで解決している会社はあるの?

バッテリー問題をBaaSで解決している会社はあるの?

世界的にまだまだ数は多くないものの、BaaSを展開している企業は多く存在しています。その中から一部の企業を紹介しましょう。

NIO(中国)

中国の新興EVメーカーとして知られるNIOでは、サブスクリプション方式のバッテリー交換サービス「NIO BaaS」を展開。バッテリーをフル充電のものと交換するのにかかる時間はわずか2〜3分ほど。


すでに多くのバッテリー交換ステーションを保有しており、2025年までに世界で4,000(国外は1,000)を超えるステーションのオープンを予定。今後は、ヨーロッパでの展開も視野に入れているようです。

SUN MOBILITY PRIVATE LIMITED(インド)

SUN MOBILITY PRIVATE LIMITEDはインド発、eモビリティ分野のサービスプロバイダーです。同社のスマートモビリティソリューションには、安全性、堅牢性、効率性に加え、クラウドへの接続性を備えたスマートバッテリーが組み込まれている点が大きな特徴。


使用済みのバッテリーも、わずか数分でフル充電済みのものと交換可能に。EVのデメリットでもある充電時間の長さや航続距離の短さといった問題を、バッテリーの力で解消することで、ユーザーがより便利に、快適にEVを利用できるような社会を目指しています。

LGエネルギーソリューション(韓国)

LG化学からリチウムイオン電池事業を分社化し誕生した、LGエネルギーソリューション。同社では、バッテリー状態を診断する「B-Lifecare」を提供。具体的には、バッテリー本体に情報収集装置(OBD)を取り付けることで、アプリ上でバッテリーの寿命や最適走行経路などを確認できるサービスとなっています。


また同社は、電気自動車充電器メーカーのSKシグネチャーと連携し、リアルタイムでバッテリー寿命等の情報を確認可能なバッテリー診断サービス事業も展開。バッテリーを所有・保守するのではなく「交換」するBaaSにおいて、交換のタイミングを事前に確認できるサービスの存在は、今後さらに重要性を増していくはずです。

日本におけるBaaSの登場はまだ先に

日本におけるBaaSの登場はまだ先に

BaaSモデルは大きな可能性を秘めていますが、現在の日本では「バッテリー交換式EVは車検に通らない」という大きな課題があります。今後、日本におけるBaasの登場には規制緩和が必要と言えるでしょう。


一方で、未だ規制の進んでいないEV二輪車の分野では、BaaSの成功事例も見られます。代表的な例として挙げられるのが「Gachaco(ガチャコ)」です。


Gachacoは、ENEOSホールディングスと本田技研工業、カワサキモータース、スズキ、ヤマハ発動機の5社が共同で設立した株式会社ガチャコの展開するバッテリーシェアリングサービスです。このビジネスモデル、実はEVのバッテリー交換式BaaSを電動二輪車に適用したもの。


ENEOSホールディングスはバッテリー交換ステーションの整備とBaaSプラットフォームの構築を、四大二輪メーカーは電動二輪車用の交換式バッテリーの相互利用を可能とする標準化に合意のうえ、適合する電動二輪車の開発を推進しています。2022年10月には、国内初となるバッテリー交換ステーションを西新宿に設置し、稼働を開始しました。


日本の大企業5社が手を組んでスタートさせたサービスが、これからどのように発展し、EV業界へどのような影響を及ぼすことになるのか、注目が集まります。

カースモーラちゃんのまとめ

EVにとって必要不可欠なバッテリーの抱える課題の解決は、今後の普及における糸口になるかもしれないね。国内外含めて、規制緩和に向けた議論が進むのか、バッテリー交換式BaaS以外の選択肢が登場するのか、バッテリービジネスはどのように成長していくのかな。

今後も、EVを取り巻くバッテリー技術の進展や周辺状況の変化にも注目だね。

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