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国からの補助金だけではない!地方自治体による電気自動車普及の取り組みを紹介~宮城県庁編~
公開日:2024/08/07更新日:2024/08/07
目次
宮城県の電気自動車購入補助は、事業者向けモデル事業と個人向け普及の2種類
日産のリーフやサクラを中心に少しずつ増えているとはいえ、日本郵便の軽1BOX車以外は電気自動車がまだ珍しい宮城県だけに、補助金で弾みはつけたいところ
まずは宮城県が進めている電気自動車に関連した2種類の補助金について説明しましょう。
どちらも基本的には「太陽光発電」をベースに、蓄エネ(蓄電)を目的としてBEV(電気自動車)とPHEV(プラグインハイブリッド車)の購入に補助金を出すものですが、その対象や目的はかなり異なります。
令和6年度スマートエネルギー住宅普及促進事業補助金
令和6年度スマートエネルギー住宅普及促進事業補助金(宮城県) | |
対象者 | 補助対象住宅を所有し、かつ居住している、宮城県内に住所を有する個人または宮城県内に本拠を置く法人(個人事業主を含む) ※詳細は下の「参考」を参照。 |
BEV・PHEV | 10万円 |
太陽光発電システム(蓄エネ設備併設タイプ) | 4万円 |
V2H(住宅用外部給電機器) | 5万円 |
地中熱ヒートポンプシステム | 補助対象経費の5分の1(上限50万円) |
蓄電池 | 6万円 |
家庭用燃料電池(エネファーム) | 8万円 ※固体酸化物形燃料電池(SOFC)の場合は16万円/件 |
既存住宅省エネルギー改修 | 改修部位・範囲により2千円~9万円/箇所 |
みやぎゼロエネルギー住宅 | 32万円 |
次世代みやぎゼロエネルギー住宅(地域型) | 150万円/件 |
申込期間 | 一次募集:R5.12.1~R6.5.31 二次募集:R6.6.1~R6.9.30 三次募集:R6.10.1~R6.11.30 ※期間ごとの予算超過分は抽選。 |
BEVおよびPHEVに関する備考 | ※太陽光発電とV2Hの設置が要件。 ※新車(中古車不可) ※給電機能を有するとCEVセンターに登録されているものに限る。 ※初度登録日がR5.12.1?R6.11.30 ※または初度登録日がR4.12.1?R5.11.30で太陽光発電システムの電力受給開始日またはV2Hの引渡日のうち、遅い方の日付がR4.12.1以降。 |
令和6年度スマートエネルギー住宅普及促進事業補助金について
https://www.pref.miyagi.jp/soshiki/kankyo-s/smart-energy.html
その名の通り、主目的は「スマートエネルギー住宅」、すなわち二酸化炭素排出量の削減と、災害時の電源確保に寄与する目的で、県民が自ら居住する住宅へ指定された設備を導入する際の補助金で、BEVとPHEVはスマートエネルギー住宅の蓄電池という位置づけです。
東日本大震災(2011年・平成23年3月11日)の後、「エネルギーの地産地消」と「災害時の自給自足」を目的として、平成23年度に太陽光発電設備の設置補助から始まって次第にメニューを追加していき、電気自動車への補助は令和5年度(2023年度)から開始。
県民全体に広く普及する目的から、補助額自体はやや控えめとなっています。
令和6年度太陽光発電を活用したEV利用モデル導入支援事業費補助金
令和6年度太陽光発電を活用したEV利用モデル導入支援事業費補助金(宮城県) | |
対象者 | 法人その他団体(市町村および一部事務組合を除く)または県内の住所地、居住地もしくは事業場などの所在地を納税地として青色申告を行っている個人事業主 |
対象事業 | 電気自動車(BEV、PHEV)、太陽光発電設備、V2H充放電設備 |
要件 | ・対象から2種以上を導入 ・太陽光由来の電力を利用 |
補助率 | 補助対象経費の1/2以内 |
補助上限額 | BEV:新車50万円・中古25万円 PHEV:新車25万円・中古12.5万円 太陽光発電設備:250万円 V2H充放電設備:50万円 |
設備全体の合計額 | 350万円 |
特別加算 | ・太陽光発電設備の設置を前提に通常の要件を満たしたうえで、蓄電池かEMS(エネルギーマネジメントシステム)を導入 ・補助率:太陽光発電:5万円/kW(通常の補助に上乗せ加算)、蓄電池(設備費と工事費のみ):1/3、エネルギーマネジメントシステム:2/3 ・補助限度額:350万円 ・FIT、FIP認定を取得している場合は特別加算の対象外 |
申込期間 | R6.4.1~R6.5.31(令和6年度は既に終了) |
「スマートエネルギー住宅普及促進事業補助金」とは異なり、太陽光発電(または太陽光由来の電力)を活用して電気自動車を導入する事業者への補助で、個人事業主を除く単なる「個人」は対象外です。
太陽光発電や電気自動車の普及を図るというより、導入を補助した事業者を「導入モデル」として、他の事業者が設備を導入する際のイメージになってもらうのが目的のため、補助率が高い代わりに申込期間や予算の制約は多く、令和6年度の申込期間は既に終了済。
こちらも電気自動車は「太陽光で発電した電力の蓄電池」という扱いですが、普及による直接的な環境対策よりも導入モデル構築を優先しているため、蓄電池の役割を果たせるならBEVやPHEVは中古でも構わないのが、特徴となっています。
県民からの高い関心で実現した、電気自動車への補助
来庁者の車が列をなす宮城県庁の駐車場だが、HEVは多数、PHEVも何台かはあったがBEVは皆無で、普及のために補助金の活用は必要不可欠と感じられる
今回の記事では現在も二次募集が進行中で、来年度も継続が前提となっている「スマートエネルギー住宅普及促進事業補助金」を中心に、宮城県 環境生活部 環境政策課 省エネ・再エネ推進班(以下、「宮」)で、制度の経緯や内容について、お話を伺いました。
───まず制度そのものや、電気自動車への制度が加わった経緯からお願いします。
宮:最初は東日本大震災の後、エネルギーの地産地消という観点から住宅に太陽光発電パネルを取り付け、エネルギーの「地産地消」、そして災害時に自給自足できるようにという意図から、太陽光パネルの補助から始まりました。
しかしだんだん情勢が変わり、より効果的に使うための蓄電池とか、さらに省エネを狙ってエネファーム(ガスを改質した水素による燃料電池)などが増えていきます。
そして、電気自動車を見かける機会が増えた県民の皆さんから問い合わせが増えたこともあり、運輸部門のCO2排出削減を目的に、昨年度(令和5年度)から電気自動車への補助も始まりました。
財源は県民からの「みやぎ環境税」で、環境意識の高い県民へ還元している形です。
───国や県でも上の方から降ってきた話というより、県民からの要望で形になったんですね?
宮:そうです。実際、今では問い合わせも半分くらいは電気自動車じゃないかってくらい、かなり多い印象ですね。
───その時に、HEV(ハイブリッド車)を含めないのかという話はありませんでしたか?
宮:問い合わせ自体はあったようですが、CO2排出削減という意味ではHEVもありがたいものの、県としてはあくまで太陽光発電を念頭に、(BEVやPHEVに搭載された)蓄電池の導入を補助しています。
環境に優しい、お財布にも優しい、非常時にも大丈夫の三本柱
───補助金の事業内容を見る限り、東日本大震災のような災害も踏まえて、「環境」と「防災」の2本柱という印象ですが。
宮:この事業を進めていくうえでよく言うのは、「環境に優しい」、「お財布にも優しい」、「非常時にも大丈夫」、この3本柱ということで、県民の皆さんには普及啓発していきたいです。
───普及啓発という意味では、私もインターネットから調べて自分が住んでいる県にもこういう制度があるんだ、と知ったクチなので、もっと広報していけばよいのにと思ってしまいます。
宮:そこは普及啓発事業として予算を取っていまして、地元TV局の番組(KHB東日本放送の「ナマイキTV」)でも最近特集されたばかりです。
住宅展示場のイベントやSDGs関連のイベントに出展してチラシを配ったり、エネファームはガスを使う燃料電池なので、仙台市ガス局さんも推進したいからとガスフェアに協賛して出展したりですね。
───あくまで「スマートエネルギー住宅」の補助金ですから、実際にこれから住宅を建てる県民の方などが集まる場所での広報を行っているわけですが、電気自動車メディアとしてはディーラーや地元の自動車関連イベントでも、積極的に広めてほしいところです。
宮:補助金に関してはディーラーさんへのお話や、逆に問い合わせも来ており、そういうところからアプローチもしています。
───「環境、お財布、防災(非常時)」の3本柱はわかりやすいのですが、どれがメインになるのでしょう?
宮:「みやぎゼロカーボンチャレンジ2050」という企画を定めていることもあり、メインテーマは強いて言えば「環境」ですけども、だんだん「環境だけでは食っていけない」という時代になっているのが現実です。
電気代の高騰、高まる災害リスクといろんなリスクが混ざる中、太陽光パネルや蓄電池などの設備導入を、(コスト削減や災害時の電力自給自足のため)選んでくださいという政策ですね。
だからどれが強いというより、環境、お財布、防災、どれをとっても合理的な選択肢ですよというイメージです。
───「お財布」という点からすると、電気代を安くできるにしても、戸建住宅が持てる富裕者層向けというイメージが強いですね…より広い層に電気自動車へ普及させられるよう、集合住宅向けの制度は考えられていませんか?
宮:この補助金では対応できていませんが、だんだん集合住宅向けのニーズは増えてきていると思っています。
───国では集合住宅や商業施設、月極駐車場への補助も始まっていますし、「太陽光発電を活用したEV利用モデル導入支援事業費補助金」のようにモデル事業でもよいですから、県からも何か弾みがつく事業を期待したいですね。
「太陽光発電で昼間に充電できない」場合は蓄電池がオススメ
───あくまで「住宅設備の蓄電池」という位置づけなので致し方がないのかもしれませんが、太陽光発電と電気自動車をセットにしても、クルマ社会だから昼間は出かけていて充電できないだろう、という指摘が多いことに対して、県ではどう考えていますか?
宮:実際、それは問題だなと思ってまして…ただ、日中は蓄電池に太陽光発電からの電池を貯め、夜間にその電気で充電するようなイメージを持っており、そのために蓄電池にも多めの補助を組みましたから、「そういう住宅を作ってほしい」というイメージです。
───それだと蓄電池もセットにしないと、効果が限られてきませんか?
宮:今後の検討課題ではありますね。
───太陽光発電を設置できない事情がある世帯のために、「再エネ由来の電力ならOK」としている自治体もあります。
宮:再エネ由来と言っても他の県の電力を買ってきたり、宮城県で作った電気を他県に買われてもいいのか、申請の際にそれが「県内産の電気」と言えるのかという問題もあって、県としてはなかなか採用しにくいですね。
それに、「電気自動車を購入する補助金」として考えれば、再エネ由来の電力を充電すればいいという話になると思いますが、あくまで太陽光(地産地消エネルギー)をベースに、蓄エネの一貫(蓄電池)として電気自動車を入れているわけです。
あくまで、「まず太陽光発電をつけましょう、その電気を蓄電池やEVに蓄えて地産地消しましょう」という考え方に沿っている限りは、現状の制度設計が正解になります。
国や市町村の補助金とも重複OK!ぜひ使ってほしい
───国のCEV補助金や、市町村独自の補助金、宮城県で他に補助金を出している事業との重複はどうでしょう?全て申請できるなら、合わせてかなりの補助になりますが。
宮:県の単独事業…今回だと「スマートエネルギー住宅普及促進事業補助金」と「太陽光発電を活用したEV利用モデル導入支援事業費補助金」は重複できませんが、国や市町村の補助金とは重複でOKです。
───そうなると、住んでいる地域によっては(登米市や栗原市のように)補助金が10万円出る自治体もありますし、国のCEV補助金、宮城県からの補助金と合計で100万円を超えるケースも出てきて、ありがたい話ですね!
最後に県民の皆さんへ電気自動車の普及に向けて一言!
宮:ニュースでも最近は脱炭素や電気自動車がかなり取り上げられ、実際ちょっと気になっている方、電気自動車をもう実際に検討されてる方は結構いると思うんですね。
そういう方に、導入のキッカケとして補助金を知っていただけたらと思っていますので、ぜひ使ってください!
スマートエネルギー住宅普及促進事業補助金の申込先 | 一般財団法人 宮城県建築住宅センター 住宅保証課 (仙台市青葉区上杉一丁目1-20 ふるさとビル6階) TEL:022-265-3605 FAX:022-213-2789 |
お問い合わせ先 | (宮城県仙台市青葉区本町三丁目8番1号13階北側) TEL:022-211-2664 FAX:022-211-2669 |
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