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エンジン車歴30年の中年ドラがBEVに乗る!最初のアクシデントを乗り越え、走りは存分に楽しみきった!テスラ モデルYロングレンジAWDのドタバタ試乗記
公開日:2024/07/20更新日:2024/07/20
目次
世界で一番売れた車に乗ろうと、テスラセンター仙台へ!
当たり前だが、仙台で一番テスラ車が並んでいる場所であろう「テスラ仙台センター」
今回は2024年5月に開所したばかりのテスラセンター仙台(仙台市宮城野区)が5月21日から6月30日まで開催した、「テスラ1Dayドライブ」へ申し込んだ筆者・CARSMORA契約ライター兵藤 忠彦が、1日試乗を体験!
選べたのは4ドアセダンのモデル3と、その5ドアSUV版モデルYの2車種ですが、どうせなら「2023年に世界で1番売れた車」、それも電気自動車としてではなく「自動車」としてのNo.1ベストセラー、モデルYへの試乗を希望します。
センターでは4輪駆動の「ロングレンジAWD」と2輪駆動(後輪駆動)の「RWD」を選べましたが、どうせならAWDに乗りたいと前者を選択、最強バージョンの「パフォーマンスAWD」がないのは惜しいものの、結果的にはロングレンジAWDで十分でした。
ちなみにテスラセンター仙台は2023年11月からサービス拠点として稼働していたものの、今年5月に改めてディーラーとして開所したものらしく、日本のテスラではまだ珍しい「販売とサービスを集約した普通のディーラー」だそうです。
そのため試乗後にはいろいろと面白い話も聞けましたが、それはまた後日改めて紹介しましょう。
最初の洗礼!走らせるようにするには、どうしたら?!
このカードキーをドリンクホルダー後方のカードリーダー部へ置かねばならない…それだけは直感だけだと思いつかなかった!汗
まず簡単なレクチャーを受けて試乗となったものの…そこから走行させる方法が不明です!
電気自動車なんて今まで何台も試乗しましたし、動かすのも楽勝ですよ〜と大口叩いた手前、車内外の撮影や、センターディスプレイをいじくるフリをして自力解決を試みますが…車内にスイッチ類がほとんどなくシンプルなぶん、かえってわかりません。
ステアリングコラムの右側がコラムシフトレバー、左側がウインカーとワイパーのレバー…センターディスプレイのタッチパネルは大きいスマホだと思えば直感的に扱いやすくていいのですが、やはり走行可能状態につながる何かは見当たらず。
これはもう降参!とスタッフの方に聞いたら、キーカードをセンターコンソールのカップホルダー後方にあるリーダー部に置けば、走行可能モードになると…ああ、もうこの時点で今までの「自動車」という概念がガラガラと崩落し、自信喪失です。
「カギをひねってエンジンをかけるか、プッシュボタンでシステム起動」という習慣から抜けられない古い人間なのを自覚しつつ、とにかく行って帰ってくるだけでも今日は上出来だと考えて、各種機能にはあえてあまり触らず、走りへ集中することにしました。
スーパーチャージャーは、もっと気楽な場所へも欲しい
仙台ロイヤルパークホテル(仙台市泉区)地下駐車場にあるスーパーチャージャー
仙台センターにはまだテスラの急速充電器「スーパーチャージャー」が設置されていないため、試乗車は満充電ではなく残走行距離は251km、今日の目的地と考えていた、「道の駅 大谷海岸」(宮城県気仙沼市)へは最適経路でも片道111kmなのでギリギリです。
つまりまずは充電が必要で、仙台センターから16kmほど離れた「仙台ロイヤルパークホテル」(仙台市泉区)の地下にスーパーチャージャーがあり、試乗車は無料で充電可能とのことで、向かってみます。
同ホテルの地下駐車場に着くと、さすがは高級ホテル、一般的なJ1772の普通充電器が20台分、スーパーチャージャーも4台分あり、高価な電気自動車で乗り付けたセレブが、宿泊やランチの合間に充電する姿が目に浮かびました。
しかし乗り付けたのがモデルYとはいえ、ユニクロのくたびれたTシャツGパンで身を固め、ロングドライブに備えたコーヒーの1リッターペットボトルをぶら下げた筆者は明らかに場違いで、どうもホテルの中では居心地が今ひとつ。
サクラやアバルトの試乗と違って服装を選ぶべきだったか、もっと気軽な場所にスーパーチャージャーがあればテスラ車が身近になるのでしょうが、いずれ仙台センターに設置されるとのことで、今後に期待です。
ともかく充電率は約80%、残走行距離は400km以上に回復、いよいよモデルYの本格試乗開始です!
オートパイロットでの高速巡航は快調!
ドンと置かれたセンターディスプレイで各種設定を行うが、変にあちこちスイッチがあるよりかえって使いやすい
仙台ロイヤルパークホテルから、気仙沼の大谷海岸へは東北道・泉ICから東北道〜富谷JCT・仙台北部道路経由〜利府JCT・三陸道で大谷海岸ICまで123km、ほとんどが高速道路です。
そうなると試したいのはテスラのレベル2運転支援機能「オートパイロット」で、コラムシフトレバーを「D」より下に引き下げると作動し、ステアリング右側スイッチで最高速度と車間を設定すれば、あとは先行車を追いかけてくれます。
ただし私の知識不足で、作動させたのは「トラフィックアウェア クルーズコントロール」(他車では「ACC」アダプティプ・クルーズ・コントロールと呼ばれることが多い)機能のみ。
車線維持を支援してくれる「オートステアリング」(1回ではなく2回素早くレバーを引き下げる操作が必要)は作動せず、何度も車線上で左に寄ってはピーピーと車線逸脱警報を鳴らしてしまいます…盛んに鳴る車線逸脱警報から、センサーの万全な作動を確認できたのは収穫でしたが。
ただ、ペダル操作だけでも開放されれば運転にだいぶ余裕ができたのは確かで、車の挙動を監視しつつ、乗り心地にも神経を集中します。
モデルYはもちろん電気自動車らしくエンジンの騒音やミッションの変速とは無縁で、モーターによる加減速時のトルク変動もマイルドなため、前後方向のGによるストレスはほとんどなく快適ですが、気になったポイントが2つありました。
オプションの選択によっては、快適性に若干課題あり?
三陸道で試乗車が装着していた20インチのタイヤ/ホイールは少々荒れた高速道路で巡航にするにはマッチングが今ひとつだったが、その後のワインディングでは逆に好印象
ひとつ目は上半身が横方向に終始揺さぶられて落ち着かない点で、路面からの大きな入力は柔らかく受け止める一方、細かい入力にはゴツゴツと揺さぶられる事が多く、サスペンションのセッティングに疑問を持ちましたが、これはセンターへ帰着後に聞いた話で納得。
試乗車はオプションの20インチホイールに255/40R20タイヤ(標準は19インチ・255/45R19)を装着しており、これが舗装が荒れ気味の高速道路の巡航では少々神経質な挙動になり、乗り心地に問題を感じさせたようです。
高速巡航を第一に考えるユーザーなら標準の19インチを選択するか、20インチを履くなら社外品でマッチングの良いサスペンションを選択した方がいいかもしれません。
もう1つ気になったのは、JCTの分岐で先行車が別の分岐を選んで急にいなくなると、減速を要する場面でもオートパイロットの設定速度へ加速を始めてしまい、パワフルなモーターを積む電気自動車特有の急加速にヒヤリとする場面がありました。
これはナビ連動機能がないレベル2運転支援機能に共通した課題で、ブレーキを軽く踏んで運転支援機能を切れば問題ないのですが、筆者のようにこの種の機能に経験不足なドライバーは、経験による慣れが必要なようです。
閑話休題、電気自動車もチラホラ見かける大谷海岸で一服
気仙沼はカツオの時期なので、カツオのタタキを載せた丼は最高だ…味噌汁もダシが抜群!
道の駅の屋上はオープンカフェになっており、晴れた初夏にここから眺める海は最高に素晴らしい
目的地の「道の駅 大谷海岸」へ到着すると、CHAdeMOの急速充電器で日産 リーフ(2代目)が充電中…数年前だと休日でも利用者がいない余剰設備という雰囲気でしたが、今や平日(試乗日は2024年6月12日)でも不可欠な設備になっています。
フードコートで季節の海産物メニュー(カツオごまだれ丼・1,000円)をいただくと、メインディッシュもさることながら味噌汁がキッチリとダシを取っていてウマイ!
食後にファーストフードコーナーでサメ肉のシャークナゲットとアイスコーヒーを買い、屋上のオープンカフェでノンビリと海を眺めます…何か最初の方でやたらと悪戦苦闘したような気もしますが、来て良かったなと思いつつ…。
東日本大震災で大津波の直撃を受け、国道45号線とJR気仙沼線は大谷海岸駅や海水浴場ごと何もかも流されましたが、あれから13年経った今はすっかりかさ上げされた上に新たな道の駅が建ち、BRT(専用線)でバス復旧したJR気仙沼線の駅としても復活しています。
このまま初夏の海風に吹かれて、ビールでも飲んで溶けてしまいたいところですが、今はモデルYの試乗中、帰りも高速道路で楽しては往路と変わらないため、志津川(南三陸町)からは三陸のリアス式海岸沿いでワインディングを試さねばなりません。
大トルクとAWDらしい安定性が楽しいワインディング!
三陸沿岸は三陸道で楽に通るのもいいが、このように楽しそうなワインディングが楽しめる下道もドライブルートとして悪くない
大谷海岸ICから三陸道で南三陸海岸ICで南三陸町志津川へ、国道45号を南部の戸倉から国道398号へ左折すると、そこからは三陸沿岸特有の「リアス式海岸」へ沿った、絶景のワインディングです。
かつては国道と言っても小さな漁港を経由する生活道路に近かった398号も、今や大震災後の改修で高台を通る避難道路を兼ねた立派な幹線道路ですが、むしろ眺めを楽しみつつ余裕を持って走れる道へと変わりました。
ここでようやく「モデルYロングレンジAWDは、電気自動車としてどんな走りをするか」を存分に味わえるわけですが、ここで同車の動力性能を軽く解説しましょう。
【テスラ モデルY ロングレンジAWD】
車重 | 1,980kg |
最高出力 | フロント158kW(215ps)/リア220kW(299ps) |
システム最高出力 | 378kW(514ps) |
パワーウェイトレシオ | 5.23kW/kg(3.85ps/kg) |
最大トルク | フロント240N・m(24.5kgf・m)/リア350N・m(35.7kg・m) |
システム最大トルク | 590N・m(60.2kgf・m) |
トルクウェイトレシオ | 3.36N・m/kg(32.9kgf・m/kg) |
車重が2t近くて昔ながらの自動車に比べ重たい車ではありますが、スポーツカーなら7ps/kg、スーパーカーでも5ps/kgあれば優秀とされるパワーウェイトレシオは非常に高く、しかもほぼ停止状態から最大トルクを発揮しますから、走りはパワフルそのもの!
ちょっとでも長いストレートならアクセルの踏み過ぎには注意せねばなりませんし、昔ながらのクネクネした線形のカーブが目立つ区間でも、アップダウンをものともせずにどこからでも加速可能です。
仙台センターを出る前に、「回生ブレーキはかなり強く効きますよ」と注意された通りにワンペダル走行ではかなり減速するものの、これまで試乗した電気自動車のように「ガツン!」と効くのではありません。
あくまで初期には緩めに、しかし少しでも減速が始めれば急激に回生する結果、「しっかり減速するけども、減速率には全く違和感や危険を感じさせる要素なし!」で、アクセルペダルの操作だけでも、かなり自然なワインディング走行が可能です。
走りはデキのいい電子制御スプリットAWDそのもの
眺めがよく、適度な直線とアップダウンのあるコーナーが続く三陸沿岸の国道は走り好きにはたまらないが、モデルYで走るのも楽しかった
回生ブレーキによるワンペダル走行で、これだけ自然なフィーリングと強力な制動性能を両立した電気自動車は初めてで、さすが電気自動車メーカーのテスラ!とうなるしかありません。
しかも回生による減速にせよ、そこからの加速にせよ、後輪駆動を基本に状況に応じたフロントモーターの回生/駆動の介入が絶妙の制御で、多少ラフな操作をしても破綻する兆しがなく、ものすごくデキのいい電子制御スプリットAWD車という感じ。
高速巡航では快適性に難アリと思えた20インチタイヤ/ホイールもワインディングでは純正サスペンションと見事なマッチングを見せてくれました。
タイトなコーナーでは自動的に微妙な姿勢制御をしている感覚もあり、油圧ブレーキも含めた盛んな介入で重量級の車体を安定させ、タイヤにも負担をかけていたかもしれませんが、快調なドライブを楽しんでいる分には不安どころか楽しいとしか思えないのです。
これで4ドアセダンのモデル3だったらもっと軽くて重心が低く、さらに安定感があるでしょうし、3でもYでも高性能版の「パフォーマンス」なら、もっと刺激的でしょう。
しかし、クーペSUVのモデルYなら5ドアで十分な実用性とスポーツ性を両立しますし、高めのアイポイントでドライブでの気持ちにも余裕を持てます。
それでいて622.6万円、補助金込みなら500万円台後半で買えるのですからコストパフォーマンスは抜群で、「電気自動車としてではなく、自動車として2023年に世界で一番売れた車」にふさわしいと、十分に納得できました。
あまりにも楽しすぎて、時間ギリギリの帰着!
夕刻のラッシュを突破し、テスラセンター仙台に帰ってきた…が、もっとモデルYに乗っていたかった
結局、南三陸町から石巻市雄勝〜女川町~石巻港へと国道398号のワインディングをモデルYで目一杯楽しみ、充電してから370kmほど走っても、残走行距離は300kmほどしか減っていないので電費は抜群。
しかし気がつけばセンターの閉店時間であり、試乗車を返す期限である18時ギリギリで、三陸道の石巻港ICから、仙台東部道路の仙台港北ICまで快調に走った後の国道45号線ではテスラセンターへの数kmがラッシュで渋滞しており、楽しみすぎたのをちょっぴり後悔。
センターではスタッフの方から「時間ちょうどに帰ってこられましたね!」と笑顔で迎えられたものの、2分ほど超過してしまってスイマセン!
そこからまたいろいろ面白い話を聞けたので、テスラセンター仙台様にはまた改めて取材させていただければと思います。
さすがは10年以上も電気自動車だけでやっているテスラ、後から参入したり、エンジン車やHEVと両立しているメーカーとはひと味もふた味も異なる貫禄を、しっかり見せていただきました!
これまで30年以上もいろいろなエンジン車、時にはハイブリッド車にも乗りましたが、モデルYへ試乗したこの日ほど、「エンジン車の時代は、やっぱり終わりなのか…」と感じさせられた日はありません。
帰路に愛車のダイハツ ソニカRSリミテッドが3気筒ターボエンジンを震わせると、歓迎すべき未来の実感と、愉快な思い出が過去になる寂しさが半々に感じられました。
このブランドについて
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TESLA
テスラ
2003年にイーロン・マスクが創業、2009年に初の市販車「ロードスター」をデリバリーした時、2020年代には世界を代表するBEVメーカーへ急成長した姿を誰が想像できたでしょうか?高級セダンのモデルSやSUVのモデルXがモーターの大トルクを活かした圧倒的な動力性能と、画期的だった運転支援システム「プロパイロット」で先進的なテクノロジーを好むユーザーの心を鷲掴みにして、安価なセダンのモデル3、SUVのモデルYの量販に成功すると一気にシェアを拡大して世界各地に工場も建設。未来の乗り物だったBEVを一気に身近なものとした立役者であり、BEVが将来の主流と位置づけられる限り、その成長は続きそうです。
著者プロフィール