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FCEV(燃料電池車)とは?特徴や仕組み、人気車種一覧を紹介

電気自動車には、エネルギー源の電力をバッテリーから求める「BEV(バッテリー電気自動車)」のほか、燃料電池から求める「FCEV(燃料電池車)」もあります。BEVとFCEV、どちらも電気でモーターを回して走るのは同じですが、その特徴や仕組みはどう違うのでしょう?販売中のFCEV車種一覧もご紹介します。

目次

  1. FCEV(燃料電池自動車)とは
  2. FCEVの特徴・仕組み
  3. FCEVとBEV、HEV、PHEVの違い
  4. FCEVに水素充填する水素ステーションについて
  5. FCEVを選ぶメリット
  6. FCEVを選ぶデメリット
  7. FCEVの主な人気車種一覧
  8. FCEVの購入時に使える補助金は?
  9. FCEV(燃料電池車)についておさらい

FCEV(燃料電池自動車)とは

FCEV(燃料電池自動車)とは

FCEV(燃料電池車)とは、2024年現在では主にリチウムイオンバッテリーが使われているバッテリー式の電気自動車「BEV」と異なり、燃料電池で発電した電気でモーターを動かすタイプの電気自動車です。


「充電」ではなく、水素燃料などを「充填」するのはエンジン車やハイブリッド車がガソリンや軽油を「給油」するのと似ており、まだ車種は少ないものの将来が期待されています。

FCEVの特徴・仕組み

FCEVの特徴・仕組み

FCEVというのは、簡単に言えば「バッテリーの代わりに燃料電池を搭載した電気自動車」ですが、仕組みとしてはエンジンの代わりに燃料電池を積んだハイブリッド車…と言えます。


燃料電池とは、「水素と酸素を化学反応させて電気を作る、発電装置」ですから、日産がハイブリッド車へ採用しているe-POWERなど、「エンジンが発電した電力で回すモーターだけで走るハイブリッド車」に近いかもしれません。


ガソリンや軽油を入れる燃料タンクが水素を充填する高圧タンクに代わり、発電装置にエンジンではなく燃料電池を使ったのが、FCEVです。


燃料電池で発電した電気は、二次電池(バッテリー)を通してインバーター、モーターとつながり、回生ブレーキでもバッテリーに充電し、その電気で走る事もありますから、「燃料電池とバッテリーのハイブリッド車」という意味で、「FCHV」と呼ぶ時もあります。

FCEVとBEV、HEV、PHEVの違い

FCEVとBEV、HEV、PHEVの違い

いずれも「EV」のつく電動車ですが、それぞれどんな違いがあるか、以下の表にまとめてみました。




FCEV

BEV

HEV

PHEV

他の呼び方

燃料電池車

電気自動車

ハイブリッド車

プラグインハイブリッド車

エネルギー充填方式

充填(主に水素)、または充填+充電

充電

給油(ガソリン、軽油など)または充填(LPGなど)

充電+給油(ガソリン、軽油など)または充填(LPGなど)

充填場所

水素ステーション

充電スポット、または自宅などの充電設備

ガソリンスタンド

ガソリンスタンド、充電スポット、または自宅などの充電設備

充填時間

短い

長い

短い

給油のみなら短く、充電は長い

エネルギー源の貯蔵方式

高圧水素タンク+バッテリー

バッテリーのみ

燃料タンク+バッテリー

燃料タンク+バッテリー

発電方式

燃料電池+回生ブレーキ

回生ブレーキのみ

エンジン+回生ブレーキ

エンジン+回生ブレーキ

タイヤを駆動する動力

モーター

モーター

エンジン+モーター、またはモーターのみ

エンジン+モーター、またはモーターのみ


このような表で見ると、FCEVとは燃料電池そのものが動力としてタイヤを駆動しない、という一点で、エンジンを積むHEV(ハイブリッド車)に近く、必ずモーターのみで走るという意味ではBEV(電気自動車)に近くなっています。


また、FCEVの中でもバッテリーの容量を増やし、外部からの充電を可能にして水素ステーション不足を補うタイプがあり、それはPHEV(プラグインハイブリッド車)に近いです。

FCEVに水素充填する水素ステーションについて

FCEVに水素充填する水素ステーションについて

2024年現在で市販されているFCEVは、水素ステーションで車内の高圧タンクへ水素を充填し、燃料電池で発電するという方式です。


ガソリンスタンドや充電スポットとは異なる公共の水素充填施設、「水素ステーション」が近くにないと利用が難しいのですが、その数はまだ少なく、全国どこにでもあるわけではないため、自宅の近所にある、という以外は場所をすぐ把握できるとよいでしょう。


更新時期がハッキリしており、計画中の施設まで掲載していることから、FCCJ(燃料電池実用化推進協議会)の「商用水素ステーション情報」が参考になるほか、FCEVを市販しているトヨタの「水素ステーション一覧」も参考になります。


トヨタのQ&Aによれば、水素充填時間は充填圧82Mpaのステーションで約3分程度、水素充填料金は1,210~1,760円/kgが目安となっていますが、ガソリンなどと同じく施設によって異なるため、現地で確認するのが一番です。

FCEVを選ぶメリット

FCEVを選ぶメリット

「水素を充填して発電する」という、BEVとも、HEVやPHEVとも全く異なる特徴を持つFCEVですが、2024年時点ではまだ車種、インフラともに発展途上なものの、BEVとともに自動車の未来を担う技術として期待されており、そのメリットを紹介します。

BEVと同様に、排出ガスがゼロ

FCEVで最大の特徴かつメリットと言えるのが「排出ガスゼロ」なことで、発電機であるエンジンが排気ガスを出すHEVやPHEVと異なり、水素と酸素を化学反応させて発電する際に、燃料電池は排ガスが出ません。


他の燃料から水素を作る、「改質器」を積んだFCEVも研究されていますが、改質時に高熱や排ガスを出すため、2024年現在で市販されているのは最初から水素を充填するFCEVのみで、太陽光と水さえあれば、再生可能エネルギーのみで車を走らせることも可能です。

BEVよりも水素充填時間が短い

大容量バッテリーに外部から充電するBEVやPHEVの場合、普通充電で充電量を満タンにするのは少なくとも数時間、出先で80%程度までの急速充電なら30分程度、ちょっとした継ぎ足し程度の急速充電でも最低10分はかかります。


これが液化水素を充填するFCEVになると、充填のためのディスペンサーを接続して待つこと約3分程度で満充填になりますから、ガソリンや軽油を給油するのと全く同じ時間で水素を充填し、すぐに走り出すのもよし、洗車や掃除をしてもよしと、使い勝手は抜群です。

BEVと同性能を軽量コンパクトに実現可

水素を満充電した場合の航続距離は、トヨタのMIRAIやクラウンセダンFCEVで約820km(社内計測による参考値)となります。


BEVでこれに近い性能としては、メルセデス・ベンツ EQS450+が799km(WLTPモード)ですが、MIRAIやクラウンセダンFCEVが車重2t少々なのに対して2.5t以上とはるかに重く、ふた回りほど大型で、通れる道路や使える駐車場に制約が出てしまうのです。


BEVに比べ、いかにFCEVが小型軽量でコンパクトに同性能を実現しているかがわかります。

FCEVを選ぶデメリット

FCEVを選ぶデメリット

BEVに対して水素充填時間は短く、小型軽量に作れて、排出ガスが出ないのは同様と、いいことづくめに思えるFCEVですが、それでも2024年4月現在日本で市販されているのはわずか3車種、今後も急激に増える予定はなく…その原因であるデメリットも紹介します。

水素ステーションが…まだとても少ない!

NeV(一般社団法人 次世代自動車振興センター)の水素ステーション整備状況によると、2023年12月7日現在で水素ステーションは全国にわずか161箇所しかありません。


充電スポットが全国2万箇所以上にあり、ガソリンスタンドもまだ2万5千軒以上あるのに対して極端に少なく、しかも年中無休24時間営業の水素ステーションは、2024年5月に福島県本宮市で開設予定のものが全国初。


つまりFCEVユーザーは単に水素ステーションを探すだけではなく、営業日や営業時間、さらに故障で閉鎖していないかまで確かめないといけません。

2024年4月現在はたった3車種で選択肢が少ない

FCEVは熱心に続けているメーカー以外に通常の市販実績がとても少なく、日本で2024年4月現在も販売しているのは、トヨタから「MIRAI」と「クラウンセダン」の大型セダン2台、韓国のヒョンデがSUVの「ネッソ」、この3車種しかありません。


今後も、クラリティ FUEL-CELLをリース販売していたホンダが2024年夏に新型CR-VのプラグインFCEV(大容量バッテリーへの外部充電可能)を発売予定なくらい。


かつてGLCクラスのプラグインFCEVを販売したメルセデス・ベンツは事実上、一般向けFCEVから撤退した形ですし、今後も急激に車種が増える見込みはなさそうです

保証外で水素タンクの交換はかなり高額

水素を充填する高圧タンクは車検時にFCV点検費用で5万円近い追加費用がかかるほか、5年または10万km、どちらか早い方までという保証期間を過ぎた後で、何らかの事情によるタンク交換が発生した場合、かなり高額になると言われています。


交換費用はMIRAIなどで1本200万円以上、3本全てなら600万円以上とも言われ、タンク自体の耐用年数は15年と言われているので、実際にタンクを丸々交換して乗り続けるユーザーは多くないと考えられますが、普及の心理的ハードルになっているのは確かです。

FCEVの主な人気車種一覧

FCEVの主な人気車種一覧

ここでは、FCEVの人気車種一覧…もっとも、2024年3月現在で日本で販売しているのはこの3車種だけですが…その全てについて、概要や特徴、スペックを紹介しましょう。

トヨタ クラウンセダンFCEV

一時はSUVのみになるかと思われた16代目クラウンでしたが、2022年9月の第1弾「クラウンクロスオーバー」発売時に従来からのクラウンセダン復活も明らかとなり、2023年11月にPHEV仕様と、このFCEV仕様が揃って発売されました。


ベースは同社の2代目「MIRAI」なので、FCEVとしての性能や、約820kmに達する航続距離、V2H/V2L対応といった機能もMIRAIに準じており、それに加えて伝統の「クラウン」にふさわしい内外装が整えられています。


そのため、車格としてはMIRAIより上になるのですが、高度運転支援機能「トヨタ チームメイト」の機能はMIRAIの「Advanced Drive」系グレードより限定的で、価格もやや抑え気味の820万円です。


メーカー

トヨタ(TOYOTA)

車種

クラウンセダンFCEV

モデル・グレード

■Z

全長×全幅×全高

5,030×1,890×1,475mm

車両重量

2,000kg

乗車定員

5人

最小半径

5.9m

圧縮水素タンク容量

3本合計141L(前方64+中52+後方25)

一充填走行距離

約820km(参考値)

燃料消費率

148km/kg(WLTCモード)

発電用FCスタック最高出力

128kW(174ps)

モーター最高出力

134kW(182ps)

モーター最大トルク

300N・m(30.6kgf・m)

価格(税込)

830万円

公式サイト

トヨタ(TOYOTA)公式サイト

トヨタ MIRAI

世界初の量販FCEVとして2014年12月に初代モデルが登場、その時はプリウスを一回り大きくしたような4人乗り4ドアFFセダンでしたが、2020年12月にモデルチェンジした2代目では、レクサスLSともプラットフォームを共用する5人乗り大型FRセダンとなりました。


最新鋭FCEV高級セダンとして、優れた高級感や800km超のBEVにはなかなかマネができない航続性能、V2H/V2L対応といった基本に加え、AI技術も取り入れた高度運転支援システム「トヨタ チームメイト」の機能をフルに取り入れた”Advanced Drive”系グレードも設定。


価格帯は通常モデルが約726~817万円ですが、”Advanced Drive”系グレードは846~861万円と、クラウンセダンFCEVよりも高額です。




メーカー

トヨタ(TOYOTA)

車種

MIRAI

モデル・グレード

■Z "Executive Package Advanced Drive"


■Z "Advanced Drive"


■Z "Executive Package"


■Z


■G "Executive Package"


■G "A Package"


■G

全長×全幅×全高

4,975×1,885×1,470mm

車両重量

2,195~2,265kg

乗車定員

5人

最小半径

5.8m

圧縮水素タンク容量

3本合計141L(前方64+中52+後方25)

一充填走行距離

約810~850km(参考値)

燃料消費率

146~152km/kg(WLTCモード)

発電用FCスタック最高出力

128kW(174ps)

モーター最高出力

134kW(182ps)

モーター最大トルク

300N・m(30.6kgf・m)

価格(税込)

■Z "Executive Package Advanced Drive":861万円


■Z "Advanced Drive":846万円


■Z "Executive Package":817万2,000円


■Z:802万2,000円


■G "Executive Package":772万2,000円


■G "A Package":747万8,000円


■G:726万1,000円

公式サイト

トヨタ(TOYOTA)公式サイト

ヒョンデ NEXO

韓国のヒョンデが2018年3月に発売、2022年5月に日本でも販売開始したSUVタイプのFCEVで、V2H/V2L対応こそないものの、トヨタの2車種とは異なりボディタイプに全世界で売れ筋のSUVを採用、広い荷室を持つ5ドアワゴンボディで実用性の高さも魅力。


FCEVとしては最大トルクが大きい強力なモーター、MIRAIやクラウンセダンFCEVより小型軽量でパワーウェイトレシオ/トルクウェイトレシオが優れて取り回しもしやすく、軽快な走りと同等の航続性能(820km)と、優れたFCEVに仕上がっています。


価格帯は776万8,300円と比較的安価ですが、MIRAIよりもさらに古い国内販売FCEVでは現役最古参となるため、そろそろモデルチェンジが待たれるところです。


メーカー

ヒョンデ(HYUNDAI)

車種

ネッソ

モデル・グレード

ベースグレード

全長×全幅×全高

4,670×1,860×1,640mm

車両重量

1,870kg

乗車定員

5人

最小半径

5.68m

圧縮水素タンク容量

3本合計156.6L(52.2×3)

一充填走行距離

約820km(参考値)

燃料消費率

-

発電用FCスタック最高出力

95kW(129ps)

モーター最高出力

120kW(163ps)

モーター最大トルク

395N・m(40.3kgf・m)

価格(税込)

776万8,300円

公式サイト

ヒョンデ(HYUNDAI)公式サイト

FCEVの購入時に使える補助金は?

FCEVの購入時に使える補助金は?

FCEVは次世代自動車への買い替えを促す「CEV補助金」の対象となっており、令和5年度(2023年度)補正予算によって、令和6年(2024年)4月1日以降登録分でも以下のようにCEV補助金が出ます。


車種

車両価格

補助金

トヨタ クラウンセダン

830万円

136万3,000円

トヨタ MIRAI

726万1,000~861万1,000円

145万3,000円

ヒョンデ ネッソ

776万8,300円

215万5,000円


ある程度車種が出揃い、充電スポットの増加で実用性にも目処がついたBEVと異なり、まだ相当に手厚く補助を行わない限り購入を促すのが難しいということもあってか、補助金の額は充実しているほか、自治体単位の補助金が出る場合もあります。

FCEV(燃料電池車)についておさらい

ここまでFCEV(燃料電池車)についてご紹介してきましたが、エンジン車やハイブリッド車と同様の使い勝手が期待できて、BEV(電気自動車)やPHEV(プラグインハイブリッド車)といった大容量バッテリー車より軽く、道路や駐車場を選ばないのも魅力です。


水素インフラの普及が遅れている現状では、「全国どこでも、どこに行くにも積極的にオススメできる」とは言い難い面もあります。


しかし、水素ステーションが整備された大都市圏内、あるいは大都市圏間なら今でも実用性は高く、多額の補助金も出るため、「充電に時間を取られない」という最大のメリットを理由に購入するユーザーも、今後は増えてくるかもしれません。

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