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欧州は電気自動車(EV)の普及にどのように向き合っているのだろう

ヨーロッパでは、2035年までに自動車の二酸化炭素排出量を100%削減するという目標が掲げられました。この目標に向けて、現在さまざまな取り組みが進められています。

2035年以降は新車登録を原則として、電気自動車(EV)、FCV(燃料電池自動車)、 PHV(プラグインハイブリッド車)を始めとしたゼロエミッション・ビーグル(ZEV)に限定するという方針が示されていることも、ヨーロッパのEV普及に大きく寄与しています。

環境問題に対して真摯な姿勢で取り組むヨーロッパは、世界的に見てもEVの普及率が非常に高い地域としても知られています。

そんなEVシフトの勢いの増すヨーロッパでは、普及のためにどのような取り組みを行っているのでしょうか。当記事では、ヨーロッパのEV施策についてご紹介します。

目次

  1. ヨーロッパでEVはどのぐらい普及しているんだろう?
  2. EVの普及が進む欧州は環境問題にどう向き合っているのだろう?
  3. EV普及拡大における今後の課題
カースモーラちゃんのPICK UP
  • ヨーロッパは世界的に見てもEVの普及が進んでいるんだ。
  • 環境問題や、EV普及のための政策などを積極的に推進しているんだって。
  • 車両価格やインフラの整備などの課題は日本が抱えている課題と似ているね。

ヨーロッパでEVはどのぐらい普及しているんだろう?

ヨーロッパでEVはどのぐらい普及しているんだろう?

ヨーロッパにおけるEVの普及率は国によって大きく異なりますが、一部の国では非常に高い普及率を示しています。


最も普及率が高いのはノルウェー。なんと普及率は88%にまで達しており、これに続いてアイスランドが70%、スウェーデンが54%、デンマークが39%、フィンランドが38%と、北欧諸国が上位に位置しています。


2022年にヨーロッパ全体で販売された新車のうち約21%、すなわち5台に1台以上がEVでした。


次に販売台数を見てみましょう。世界における販売台数の一位は中国です。2022年のEV販売台数が590万台と世界の約60%を占めています。


結果としてEVの総台数は1,380万台にまで上り、世界に存在するEVの半分以上が中国にあるということになります。


第二位の市場はヨーロッパで、2022年のEV販売台数は260万台と世界の約25%を占めるほど。EVの総台数は780万台で、世界の30%のEVはヨーロッパにあることに。


このように、ヨーロッパでは普及率、販売台数共に高い数値を創出しており、EVが広く受け入れられている地域と言えます。

EVの普及が進む欧州は環境問題にどう向き合っているのだろう?

EVの普及が進む欧州は環境問題にどう向き合っているのだろう?

前述したように、EVが広く普及するヨーロッパは、環境問題に積極的に取り組んでいる地域でもあります。では、具体的にどのような取り組みを行っているのでしょうか。

2035年までに全新車をZEVに

環境を汚染したり、気候を混乱させる廃棄物を排出しないエンジン、モーター、仕組み、または、その他のエネルギー源。これらの技術を使用した環境にやさしい車をZEVと呼びます。


EUは、2035年までに新車販売をZEVに限定し、合成燃料(e-fuel)を除くガソリンやディーゼルを使用するエンジン車の新車販売を禁止するという方針を掲げました。


方針案はEU委員会が2021年7月に発表。2035年にかけて段階的に排出規制を強化していくようです。

新車生産に必要なプラスチックの25%を再生プラスチックに

2023年7月、EUは自動車設計と廃車管理の持続可能性に関する新しい規則案を提案しました。


この規則案の中には、新車の生産に使用されるプラスチックのうち、少なくとも25%を再生プラスチック(そのうち25%は廃車由来)でまかなうという規定も含まれています。当規則は、車両設計、生産、廃車プロセスにおける資源効率の向上を図ることが主な狙いです。

EV購入支援金の交付

ヨーロッパ各国では、EVの普及を促進するため、税控除や購入支援金の給付といった財政的な負担軽減策が広く採用されています。


2023年7月時点で、EU加盟国のうち26か国が負担軽減策を実施し、20か国が購入支援金を給付していることが欧州自動車工業会(ACEA)の報告により明らかになっています。しかし、EV市場が成熟した国々では、これらの支援策の縮小や廃止がすでに始まっています。


例えば、スウェーデンは2022年11月に「ZEVの市場導入目標を達成した」として、2023年以降の購入支援金の廃止を決定しました。同様に、ドイツやオランダでも支援金の段階的削減が進められています。


また、フランス政府は2024年以降のEV購入に対する環境報奨金制度に、車両のカーボンフットプリント(温室効果ガスの量を計測し、得られた全体の量をCo2量に換算すること)に基づく新たな適用条件を導入する計画を発表しました。


特に注目されるのは、ヨーロッパでEV普及が最も進んでいるノルウェーです。ノルウェー政府は2025年までに全新車をZEVにするという目標を掲げ、これまで新車EVに対する付加価値税の免除などの優遇策を実施してきました。


こうした優遇策によりEVの普及が早期に進んだ一方で、政府にとっての財政負担は大きかったようです。2023年1月からは50万ノルウェー・クローネ(約700万円)以上の新車EVには付加価値税を課税することで、政策の軌道修正を図っています。

EV普及拡大における今後の課題

EV普及拡大における今後の課題

ヨーロッパの新車登録台数に占めるEVの割合が高まってきている一方で、まだまだ課題も山積みです。どのような課題があるのか、見ていきましょう。

EV車両の価格

ヨーロッパにおけるEVの普及に向けて、その価格が課題となっています。特にヨーロッパ市場で人気の高いSUVのEV化に伴う高価格化や、EVのラインナップの限られた選択肢が消費者の選択幅を狭めてしまっている状況です。


この問題に対処するために注目されているのが、社用車市場。というのも、ヨーロッパの環境・消費者団体による2023年5月の発表では、ヨーロッパで販売される乗用車の約60%が社用車として購入され、その後3~5年で入手しやすい価格で中古車市場に流通するとされています。


したがって、これからより多くの消費者が手頃な価格のEVを所有することができると考えられています。

課題の充電インフラ、新規則発効で整備加速となるか

充電インフラの整備は、EVの普及に向けて不可欠な要素です。2022年時点で、EU域内には約45万箇所の充電ポイントがあり、そのうち約4万5,000基が急速充電器です。


設置数は2020年の2倍以上に増加していますが、オランダ、ドイツ、フランスの3か国に集中しており、ほかの加盟国では整備が思うように進んでいない状況です。


欧州委員会は2021年7月、充電インフラの整備を加速するために、加盟国に対して充電器設置目標を課す「代替燃料インフラ規則案(AFIR)」を提案しました。


指定区間に一定数のEV充電器や水素ステーションの設置する、加盟国ごとのインフラ整備目標を設定するといった、インフラ整備を後押しする内容になっています。


また、イギリス政府は2022年から新築の住宅とスーパーマーケットやオフィスなどの建物にEV充電器の設置を義務付けることを発表。これらを含むさまざまな施策により、毎年最大14万5,000台のEV充電器が整備されると見込まれています。

カースモーラちゃんのまとめ

EUを中心として、ヨーロッパと自動車業界は「2035年までに全新車をZEV」という目標に向けて着実に前進しているよ。全体的に高い普及率を誇るヨーロッパだけど、実は日本と同じように価格やインフラ整備の悩みがあったんだ。

環境問題と真摯に向き合うヨーロッパは、今後もEV普及施策を充実させていくんじゃないかな。EVシフトがなかなか進まない日本も、海外の事例を参考にしつつ、良いところを上手に取り入れていけたら良いね。

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