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EUのEV施策は日本の自動車産業にも影響を与えるのか?

欧州連合(EU)はこれまで、2035年以降の新車でのガソリン車を含むエンジンを搭載した車の販売を原則禁止とする方針で基本合意していました。ところが2023年3月、合成燃料(e-fuel)を使用することを条件にエンジン搭載車の販売容認に方針転換したのです。

これはEUのEVシフトにどのような影響を及ぼすのでしょうか。実はEU圏のみならず、日本の自動車業界にも影響を与えるとされています。

EUのエンジン搭載車の販売容認から、日本国内のe-fuelに関する取り組みやその実現が今後の自動車産業に与える影響について見ていきましょう。

目次

  1. EUが条件付きでエンジン車の販売を容認
  2. e-fuelに対する日本の動き
  3. 合成燃料の実現で日本の自動車産業はどう変わるのか
カースモーラちゃんポイント
  • EUの方針転換にはドイツの主張が関係しているんだ。
  • 日本政府はe-fuelの商用化を目標に掲げているよ。
  • 国内自動車メーカーにとって、EUの方針転換はチャンスみたい。

EUが条件付きでエンジン車の販売を容認

EUが条件付きでエンジン車の販売を容認

2023年3月、EUが2035年以降の新車でのガソリン車を含むエンジンを搭載した車の販売を原則禁止とするというこれまでの方針を転換し、e-fuelの使用を条件にエンジン搭載車の販売を容認しました。


その方針転換に関わっているのがドイツです。その背景には同国が抱える「ポルシェ」有するEU最大の自動車メーカー「フォルクスワーゲン」。その取締役会会長オリバー・ブルーメ氏が以前からe-fuelを推進していたことがあります。


ポルシェはこれまで、南米チリで世界初のe-fuelプラント構築を目指すプロジェクト「Haru Oni」に参加、主導してきました。巨額な投資をしてきた経緯もあり、同社はe-fuelを燃料とするエンジン搭載車の容認を主張。EVと並行して推進するとの発言をしました。


そもそもは本来の方針の前文に規制力は持たないものの合成燃料に関する記述があったため、e-fuelが容認とも禁止とも取れる位置付けになっていたことがそのはじまり。ポルシェからの発言もあり容認を確実にしたいドイツは閣僚理事会にて、e-fuelに関する位置付けを明確にしない場合には賛同しないと宣言します。否決に足る票を集めるべく、EU加盟国に反対を呼びかけました。


このように、ドイツがエンジン搭載車の容認を強く主張したことから、妥協案として本来の方針は変更せず、e-fuelの容認を宣言するかたちで合意となりました。

e-fuelに対する日本の動き

e-fuelに対する日本の動き

そもそもe-fuelとは、二酸化炭素と水素を原料にした合成燃料のこと。ガソリンと同じように燃焼することで二酸化炭素を排出するものの、原料にも利用するため結果として排出をゼロにできます。


現在e-fuelの課題とされているのはその価格。製造コストに加えて原料の調達コストがかかるため、1Lあたり300〜700円とガソリンと比較して非常に高額です。


日本政府は2040年までにe-fuelの商用化を目標に掲げていましたが、EUの容認を受け2030年代前半に前倒ししました。それを受け現在e-fuel実用化に向け、さまざまな取り組みが国内でも行われています。


主な日本企業の動きは、出光興産やENEOSの海外企業との共同開発、ホンダの航空燃料開発などが有名です。


トヨタも合成燃料を使用した自動車を実装させPRするなど、今後はEVと並行した自動車メーカーの取り組みが期待できるのではないでしょうか。

合成燃料の実現で日本の自動車産業はどう変わるのか

合成燃料の実現で日本の自動車産業はどう変わるのか

ドイツの主張を受け、e-fuel容認へと方針転換をしたEU。ポルシェがe-fuel容認に向けて行動したのには、e-fuelプラント構築に投資していたという理由だけではありません。


注目すべきは従来のエンジンでそのまま利用できるという点。国をあげてEVが推進されている現在でもなお、自動車のスタンダードは依然としてガソリン車です。


特別な変更を加えることなく既存のエンジンで利用できるメリットは、メーカーの開発・製造コストの削減だけではありません。乗り換えることなく利用できるという点でユーザー側のメリットも大きいと言えるでしょう。


そもそも日本政府は2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロとする「カーボンニュートラル」を目標として掲げています。


そして、その前段階の目標としているのが「2040年までにEVと合成燃料等の脱炭素燃料の利用に適した車両で合わせて100%とすること」。日本政府はEVと併せて2030年代前半を目処に、e-fuelの商用化を目標としています。国内自動車メーカーのEV市場への出遅れが指摘されていることもあり、EUのe-fuel容認は、日本にとっての好機と言えるでしょう。


世界的にEVシフトに舵を切っていますが、e-fuelの登場とEUの方針転換により自動車メーカーの戦略は異なります。e-fuelの普及がすぐ実現するわけではなく、実用化する上での課題も多く存在します。そのため、この先もEVが各自動車メーカーの主軸となるはずです。


先んじて行動に移したトヨタに続き、今後はその他の国内自動車メーカーも合成燃料への取り組みが求められるのではないでしょうか。

カースモーラちゃんまとめ

今回はEUのEV施策の方針転換や、日本のe-fuelに関する動きをお伝えしたよ。

EUは2023年、これまで掲げていた2035年以降の新車でのガソリン車を含むエンジン搭載車の販売禁止から方針転換し、e-fuelの使用を条件にエンジン搭載車の販売を容認したんだ。

その背景にはe-fuelを推進するポルシェを抱えるドイツのエンジン搭載車の容認に対する強い主張があったみたい。

e-fuelに関しては日本政府も2040年までに商用化を目標にしていたよ。さらにEUの方針転換を受け、目標を2030年代前半に前倒ししたんだ。

e-fuelの商用化に向け、出光興産やENEOS、ホンダ、トヨタをはじめとした日本企業がさまざまな取り組みを行なっているよ。今後は他の国内自動車メーカーも合成燃料への取り組みが求められるかもしれないね。

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