NEW

中国がかつて展開した「十城千両」プロジェクトって?

2012年、中国の最高指導者となった習近平国家主席は「中華民族の復興」の旗を揚げ「近代化強国」を提起しました。

2014年5月には、電気自動車(EV)、燃料電池自動車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHV)への移行、すなわちNEV(New Energy Vehicle)シフトこそ中国自動車強国への唯一の道であると公言、NEV産業の発展に向けた取り組みを開始します。

実はその数年前、「十城千両プロジェクト」という計画が発足していました。この計画は中国がNEVシフトを進めるにあたり重要な役割を果たしていたのです。

今回は中国NEVシフトの転機とも言えるこのプロジェクトについて、簡単に説明していきます。

目次

  1. 十城千両プロジェクトってなに?
  2. 十城千両プロジェクト以降、 NEVが電動車戦略の中核に
  3. NEV政策の要となった補助金政策と新車登録規制
  4. 中国のNEV戦略は今後どうなっていくのか
カースモーラちゃんのPICK UP
  • 十城千両プロジェクトでは、中国の公共部門を対象に3年間にわたって1都市当たり1,000台のNEVをモデル運行させたんだって。
  • 十城千両プロジェクトをきっかけに、NEVシフトをより加速させる狙いがあったみたい。
  • 「自動車産業中長期発展計画」によれば2025年を目標にさらにNEV戦略を加速させていくみたいだよ。

十城千両プロジェクトってなに?

十城千両プロジェクトってなに?

2009年1月、中国の中央政府4部署(中国の科学技術部、財政部、国家発展改革委員会、工業情報化部)の連名で打ち出された「十城千両プロジェクト」。


この十城千両プロジェクトを簡単に要約すると「2012年に中国の自動車市場に占めるNEVの割合を10%に増やすことを目的とし、大中型都市の公共交通機関、タクシー、政府機関の公用車、郵政などの分野を対象として1都市当たり1,000台のNEVを3年間モデル運行させる」といったもの。


開始間もない2010年には対象都市を20都市まで増やし、NEVメーカーの集中する上海や深圳など5都市をモデル地区に指定。さらに個人向け補助金制度も開始するなど、積極的な推進が行われました。

十城千両プロジェクト以降、 NEVが電動車戦略の中核に

十城千両プロジェクト以降、 NEVが電動車戦略の中核に

中国政府は十城千両プロジェクトでのNEV普及を通じて、ある仮説に辿り着きます。


それは「中国系自動車メーカーの技術は外資系企業と比べてハイブリッド車(HV)の技術はやや劣っているが、NEV領域の技術に関しては十分戦えるレベルにあるのではないか」というものだったようです。そこで、NEVを今後の戦略の中心に据える方針転換を行いました。


2011年に発表されたエコカー産業発展計画によると、NEVの導入台数に関して、2015年までに50万台、2020年までに500万台を目指すといった大胆な目標を設定しています。この目標に向け、2013年には補助金政策と大都市圏での新車登録規制を導入。


この両政策が功を奏して、2015年の新エネルギー車導入目標を達成しました。中国におけるNEV市場の成長において、補助金政策と新車登録規制の役割は非常に大きなものであったと言えるでしょう。


こうした政府主導による力強い取り組みにより、中国は新エネルギー車の普及と市場の拡大を大きく前進させています。

NEV政策の要となった補助金政策と新車登録規制

NEV政策の要となった補助金政策と新車登録規制

中国におけるNEVの普及に関する政策は、強力な補助金政策と新車登録規制によって牽引されたと言っても過言ではありません。中央政府だけでなく、多くの大型都市や中型都市では地方政府からも補助金が提供されており、地域によっては1台あたり最大約11万元(約200万円相当)という大規模な支援が行われました。


加えて、新エネルギー車を購入するとナンバープレートが無料で提供されるという規制も、NEVの購入を促進する重要な要素です。従来車を購入する際にはナンバープレートの入手にオークションを利用する必要があったため、特に料金が高い北京や上海のような都市では、この施策は魅力的に映ったのかもしれません。


都市毎に料金が異なるものの、最も高い北京では 10万元前後、上海でも 8万元前後と高額だったため、インパクトが大きかったようです。中国汽車協会のデータによると、2017年1月から11月の間に中国で販売されたEV(乗用車のみ)は約38万台で、そのうち約7割が上海や北京などの6大都市で販売されているという統計もあります。


これらの数字からも、中国のNEV政策が国内のEV市場の拡大に大きく貢献していることが伺えます。

中国のNEV戦略は今後どうなっていくのか

中国のNEV戦略は今後どうなっていくのか

中国は2025年までに世界の自動車強国の一角を占めることを目指すため、「自動車産業中長期発展計画」を始動させました。この戦略により、EV電池やモーターなどの基幹部品の国産化が促進されると期待されています。


その理由としては、中国の国内消費市場、貴金属資源の保有、部品・部材産業集積などの面で、他国より優位に立てる可能性があるためです。中国政府は、三段階のステップを踏んで「自動車強国」となる構想を描いています。

第一段階:NEV市場の育成

まず最初のステップとして、NEV市場の育成に注力しているようです。市場育成のために、消費者にNEV購入を促す補助金制度や、企業にNEV生産を義務付ける制度など、一連の政策を実施しています。


また、部品産業の育成にも力を入れており、特にEVの品質に大きく影響する電池の技術開発において、航続距離の向上とコスト削減にも取り組んでいます。


中国の「省エネ・新エネ車技術ロードマップ」によると、NEV販売の政府目標は2020年に200万台、2025年に700万台、そして2030年には新車販売全体の約50%にあたる1,700万台という計画を立てており、積極的に戦略を推進していることが伺えます。

第二段階:中国ブランドの育成

2025年までの中長期的な目標として、自国発の世界的な自動車ブランドの育成を図っています。


現在、自動車メーカーや自動車部品メーカーのトップ10は日本、アメリカ、ヨーロッパなどの企業が目立ちますが、そこに複数の中国企業が名を連ねることを狙っています。


さらに、中国の主要EVメーカーが世界市場においてシェアを拡大し、中国のスマートカーを世界トップ水準にまで高めることも目標としています。

第三段階:中国メーカーの海外進出

自国の自動車産業をグローバルに展開し、世界の自動車強国としての地位を確立することを目指しています。2020年頃から先進国向けの自動車輸出を開始し、2025年までに世界市場における中国ブランドの地位を高めることが目標とされています。


その一環として中国政府は省エネ技術の高度化を推進しています。自動車メーカーの平均燃費基準は2019年時点では100km当たり6.0リットルでしたが、2025年までに4.0リットルに引き上げることで、中国メーカーの新車品質が国際的な基準に達することを求めています。


こうしたビジョンを実現するためには、産業チェーン全体の発展、省エネ技術の向上、コア部品の生産技術の獲得、官民一体となった研究開発の強化が不可欠です。

カースモーラちゃんのまとめ

中国がNEV施策に本腰を入れる前から、すでに「十城千両プロジェクト」という計画が並走していたんだ。対象都市を拡大したり、補助金制度を拡充する積極的な姿勢はやっぱりすごいよね。

日本とは違う政策でNEVシフトを推し進める中国だけど、今後どんな未来が待っているのか、要注目だね。

こちらもオススメ

  • 東南アジア最大のバンコク国際モーターショー2024で見えたトヨタなどの日本メーカーに次ぐ中国の脅威

    東南アジア最大のモーターショー『バンコク国際モーターショー2024』が3月27日〜4月7日まで行われました。モーターショーの醍醐味は、各自動車メーカーが新型自動車やコンセプトカーを出展することです。メディアでも大きく取り上げられることが多く、期待...

    2024/07/26

こちらもオススメ

  • 中国の電気自動車(EV)メーカー「BYD」とは?車種一覧も紹介!

    2024年に入って「世界の電気自動車(EV)2大メーカー」として、アメリカのテスラと並び抜群の存在感をアピールしている中国のBYDですが、日本でも拠点となるディーラーを全国で次々に開設するなど、今の日本で最も勢いのある新興メーカーかもしれません。...

    2024/05/13

新着記事