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東南アジア最大のバンコク国際モーターショー2024で見えたトヨタなどの日本メーカーに次ぐ中国の脅威

東南アジア最大のモーターショー『バンコク国際モーターショー2024』が3月27日〜4月7日まで行われました。モーターショーの醍醐味は、各自動車メーカーが新型自動車やコンセプトカーを出展することです。メディアでも大きく取り上げられることが多く、期待も高まります。日本メーカー人気の強いバンコクでも、今年はひと味違う様子が見受けられました。その様子を詳しくお伝えしていきます。

目次

  1. バンコク国際モーターショー独自の文化とは?
  2. 展示車両の紹介
  3. モーターショーで販売台数の多かったブランドは?
  4. まとめ:世界では中国勢の脅威が迫っている

バンコク国際モーターショー独自の文化とは?

バンコク国際モーターショー独自の文化とは?

モーターショーといえば、デトロイト、ジュネーブ、フランクフルト、パリ、そして最大級の集客を誇るジャパンモビリティショーの5大モーターショーが有名です。通常は各自動車メーカーが新型車を発表する場となっており、関連商品などの見本なども置かれています。


またモーターショーで見逃せないものといえばコンセプトカー。市販することを考えずに、ショーのために作られる車たちは、来場目的の楽しみのひとつ。どんな車が展示されているのか見て楽しむものです。しかし、『バンコク国際モーターショー』は、車の展示即売会という側面を持つ面白みもあります。


ただ見るだけではなく、購入できるため来場者との距離も近く独特な雰囲気を持つモーターショーです。開催中に車の購入を決めれば、低い金利となる特典も用意されています。


タイは東南アジア最大の自動車生産量を誇り、「アジアのデトロイト」と呼ばれてきました。そのため日本の自動車メーカーとも深い繋がりがある地域です。そんなタイで開かれるモーターショーは、人気も高く、盛り上がることは言うまでもありません。


2023年度の来場者数は約162万人にものぼり、日本で行われた『ジャパンモビリティショー』の来場者数約111万人を大きく上回っています。会場では多くの日本メーカーの車両が出展されていましたが、今年は今までとは少し違った印象です。


日本メーカーのほかに、中国メーカーの目覚ましい台頭が見られ、中でもEVに注目が集まりました。

展示車両の紹介

展示車両の紹介

出展ブランド一覧


日本ホンダ/いすゞ/マツダ/三菱/日産/スズキ/トヨタ/レクサスなど
欧州アウディ/ベントレー/BMW/ロータス/マセラティ/メルセデス・ベンツ/MG/MINI/プジョー/ポルシェ/ロールス・ロイス/ボルボなど
アメリカフォード/ジープ
中国Aion(埃安)/長安(Changan)/長城(GWM)/哪吒(Neta)/小鵬(XPeng)/極氪(Zeekr)/BYDなど
東南アジアVinFast
韓国現代起亜

注目された車種

・いすゞ 「D-MAX」


2019年に誕生したピックアップトラック。グローバル戦略車としてアジアをはじめ欧州、アフリカ、中南米など世界100カ国以上で販売されています。現在はエンジン車ですが、タイでバッテリーEVのピックアップトラックを生産し、順次投入していく計画です。


・トヨタ 「Hilux Revo-e」


ハイラックスRevoをベースにして、パワートレインをEV化したピックアップトラックは、タイでも人気の高い一台になっています。タイ国内の電動化が進み、トヨタでもハイラックスのEV化が進められました。


bz4Xのフロントに搭載されるモーターをハイラックスではリアにして、リチウムイオン電池を荷台の下に搭載したBEV仕様です。エンジンの冷却の必要性がないことからグリルレスのフロントマスクを採用し、スッキリとした印象を与えています。


・日産 「Hyper Tourer」


日産のハイパーツアラーは、おもてなしの精神や上質さと先進技術を融合したプレミアムEVミニバン。2023年に行われた「ジャパンモビリティ―ショー」で世界初公開されていますが、日本以外で登場したのはタイが初めてのことです。


日本の伝統美を意識したボディパネルと直線的なシャープなキャラクターラインで構成されたデザイン性は、近未来を想像させてくれるでしょう。組木をモチーフにしたホイールは、美しい絵のような存在感があります。


「ニッサンEVテクノロジービジョン」は小型化したコンポーネントを統合し、エネルギー密度の高い全個体電池を組み合わせたパッケージングに仕上げています。今までにない滑らかな加減速や安定感のある走行性能を実現しました。また大容量バッテリーを蓄えることができ、自宅や店舗、旅行シーンなど活用の幅は広がります。


次期エルグランドのコンセプトモデルとなり得るハイパーツアラーから目が離せません。


・スズキ 「eWX」


2023年の『ジャパンモビリティショー』で世界初公開された軽ワゴンサイズのコンセプトモデルEVが、バンコクでも出展されました。実用性と新しいデザインを取り入れた先進的なクロスオーバーです。


エクステリアはイエローの蛍光色をアクセントカラーにしたポップなデザイン性が光ります。丸みのある長方形のデザインでキュートな印象も与えているようです。『スズキ』は2030年に向けた成長戦略説明会の中で、2030年までに6モデルのEVを展開すると公言しているので、今回のeWXが市販化される可能性は十分にあるでしょう。


・HONDA 「e:N1」


日本メーカーがタイでEVを生産するのはe:N1が初となります。2022年に中国でホンダ初のEVとして発表された「e:NS1」「e:NP1」のタイバージョンです。タイでEVを販売する日本メーカーは、「ニッサン:リーフ」「トヨタ:bz4x」だけなので、3社目がホンダになりました。


まだ一般への販売は先になる見通しです。というのも日本同様に自家用のEVを所有する一般ユーザーは少ないため、先ずはレンタカーでホンダのEVの良さを実感してもらう事から始めるといいます。


航続距離は最大500㎞を実現する68.8kWhの大容量バッテリーを搭載。新開発されたフロントモーター駆動プラットフォーム「e:N Architecture F」など、瞬発的な出力と繊細な制御を両立できる電気モーターによって実現。パワーユニットは最大出力204ps、最大トルク310Nmと、モータースポーツで培ってきた走行性能へのこだわりも見せています。


・小鵬(XPeng) 「G6」


シャオペンはバンコク初出展の中国メーカー。急速充電システムや航続距離などについて新たな技術を訴求している企業です。展示車両で目注目されたのは「空飛ぶクルマ」。まだまだ販売には法律上の課題なども多く道のりは険しい状況ではありますが、ついにここまで来ているのかと話題を集めていました。


SUVクーペのG6は、FRのBEVです。1基のモーターを搭載し、バッテリーの仕様は2種類が用意されています。航続距離は580㎞と750㎞で、急速充電システムは20分で80%の充電が可能です。


・長安汽車(CHANGAN) 「ルーミン(Lumin)」


長安汽車は、1950年から自動車製造を行っている老舗メーカーで、中国を代表するビッグ5の1社です。ルーミンは、中国では2022年に発売されているコンパクトサイズのBEVで、日本の軽自動車よりも全長が短く、全幅が5ナンバーサイズ。3ドアのハッチバックスタイルで4人乗りとなっています。


丸いフォルムの可愛さが目を惹く一台で、基本モデルは普通充電のみですが急速充電にも対応したグレードも設定されていました。


・BYD 「デンツァD9」


デンツァD9は、最上級EVミニバンとして話題になっています。『ジャパンモビリティショー2023』でBYDが出展していたことで、目にした人も多いかもしれません。『BYD』と『メルセデス・ベンツ』の合弁会社が開発したハイエンドサブブランドです。エクステリアではフロントグリルにメッキ加飾を採用しており、トヨタアルファードやエスクァイアを思わせます。アルファードよりもローアンドワイドなボディサイズで、独自開発された「DiSusインテリジェントボディコントロールシステム」によって安定性のある走行性能を実現。アルファードに匹敵する快適さをもたらしています。

モーターショーで販売台数の多かったブランドは?

モーターショーで販売台数の多かったブランドは?
順位メーカー販売台数(台)
1トヨタ自動車8,540
2BYD5,345
3ホンダ4,607
4上海汽車(MG)3,518
5三菱自動車3,409
6長安汽車3,073
7広州汽車(AION)3,018
8長城汽車(MG)2,815
9いすゞ自動車2,734
10日産自動車2,488

出典:日本貿易振興機構JETRO


上位10位までを見ると、日本と中国で拮抗しているのが分かります。展示車両はEVが年々多くなり、中心的な存在へと移行しており、タイではBEVへの期待が高まっているようです。


またタイでは国内自動車生産の約6割がピックアップトラックで占められている事からも、ピックアップEVに注目が集まっています。そのため『トヨタ自動車』の「ハイラックス」や『いすゞ自動車』の「D-MAX」が今後の人気車両となりそうです。

まとめ:世界では中国勢の脅威が迫っている

まとめ:世界では中国勢の脅威が迫っている

2024年のバンコク国際モーターショーでは、前年とは大きな変化が見られました。今までは日本メーカーの圧倒的な存在感を示してきましたが、今まで出展していなかった中国メーカーを含む8社に及んでいます。


また広い展示スペースを確保する中国メーカーが多く、それに伴い日本メーカーのスペースは縮小されたと言えるでしょう。現在タイでは完成車に対する関税措置が高くなっていますが、BEVに対しては優遇措置が取られています。こうした背景もBEVを後押ししている一因です。


タイだけを見て判断することはできませんが、中国メーカーの台頭により、日本メーカーがシェアを低下させる要因は十分にあるでしょう。日本の中では分からない世界のEVシフトへの現状を垣間見ることができるようです。


中国メーカーが今後どれだけ勢力を伸ばしてくるのか、日本メーカーにとっては脅威ではありますが、日本メーカーはBEVのみに絞った戦略を立てているわけではないようです。


後発といわれながらも全方位を固めた販売戦略で中国メーカーのEVにも対応していくのではないでしょうか。日本メーカーの新しいBEVに期待したいものです。

著者プロフィール

【KAKO MIRAI】車好きから始まった自動車サイトでの執筆は、パーツからチューニングまで多岐に渡る。トルクフルなV8サウンドに魅せられて、ユーロライクなCAMARO Z28から乗り換えたDODGE CHARGER HEMIと、CADILLAC XT5でアメ車を満喫中。最近まで足車はCHEVROLET SONICという筋金入りのアメ車好き。 いつかガソリン車のDODGE CHARGER Hellcat Redeyeを手に入れる夢が断たれ、現在の目標はCHEVROLET Corvette C8。内燃機関好きから見たEVを徹底分析していきます。

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