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EVシフトを牽引したカリフォルニア州ZEV規制と、豊富な支援策

アメリカのカリフォルニア州では、2035年までにすべての新車をゼロエミッション車(ZEV)にする目標を掲げています。

同州では2012年に立てられた「2025年までにZEVの台数を150万台にする」という目標を2023年に達成していることから、新車販売の一定比率をZEVで占める「ZEV規制」が非常に進んでいると考えられます。

インフラ整備も推進され、住民の多くがEVの所有に積極的なカリフォルニアですが、EVの普及に向けてどのようなことを行ってきたのでしょうか。今回はカリフォルニア州のZEV規制と、豊富な支援制度などについて紹介していきましょう。

目次

  1. ZEV規制って?
  2. EVを普及させるためのインフラ設備の拡張にも注力
  3. 住民の大半がEVの所有に前向きなカリフォルニア
  4. 充実したEV支援策
カースモーラちゃんのPICK UP
  • ZEV規制は1990年にカリフォルニア州が導入した制度だよ。
  • カリフォルニアはZEVの販売台数も多く、積極的にEVシフトを推進しているんだ。
  • 住民の多くがEVの所有に積極的なんだよ。
  • ZEV普及のためにたくさんの制度が用意されているの。

ZEV規制って?

ZEV規制って?

ZEV規制とは、大気汚染対策として米国カリフォルニア州が1990年に導入した制度です。カリフォルニアでは自動車の利用率が高く、地形的な特徴も合わさり大気汚染が深刻だったこともあり、30年以上前から存在している制度なのです。


そんなカリフォルニア州は2023年4月、州知事室が州内のZEV販売台数が150万台を突破したことを発表。


この発表はジェリー・ブラウン知事(当時)が2012年に設定した「2025年までに150万台のZEVを販売」という目標を、2年以上早く達成したことを意味しています。


さらにアメリカエネルギー省のデータによると、2022年の全米のZEV登録台数は約974万6,500台で、そのうちカリフォルニア州が36.9%を占めており、カリフォルニア州がクリーンな自動車の普及において他州に先行していることが見て取れます。


また、カリフォルニア州は2035年までに州内のガソリン車やハイブリッド車(HV)などの新車販売を全面禁止する規制案を決定したこともあり、ZEV施策を積極的に推進している地域として注目されています。

EVを普及させるためのインフラ設備の拡張にも注力

EVを普及させるためのインフラ設備の拡張にも注力

当然、同州はインフラ整備にも力を入れています。カリフォルニアエネルギー委員会(CEC)による2023年9月のデータによると、カリフォルニア州内のZEV充電設備数は合計9万3,855台に達しています。


これには公共充電設備4万1,384台と共有されている私有充電設備5万2,471台が含まれており、レベル2の充電設備が8万3,597台、DC急速充電設備が1万258台です。


特にロサンゼルス郡、サンタクララ郡、サンディエゴ郡に多くの充電設備が設置されています。日本のEV充電器数1万9,768拠点と比較すると、なんと約2倍ほどの数に。

住民の大半がEVの所有に前向きなカリフォルニア

住民の大半がEVの所有に前向きなカリフォルニア

カリフォルニア公共政策研究所(PPIC)が2023年6月に実施した調査によると、州全域で8%の住民が既にEVを1台所有していると回答しました。しかし、さらに注目すべきは、50%の住民がEVの購入を検討していると答えたことでしょう。


特にサンフランシスコ・ベイエリアでは、住民の10%が既にEVを保有しており、55%が購入を検討していることがわかりました。これは、この地域に限って住民の3分の2がEVの所有に前向きであることを意味します。

充実したEV支援策

充実したEV支援策

カリフォルニア州でZEVが大きく普及した要因の一つとして、州政府による豊富な支援策が挙げられます。アメリカエネルギー省のデータによれば、カリフォルニア州には代替燃料や先進的車両に関する約110ものインセンティブが存在しています。


この数字は、ニューヨーク州(38)、イリノイ州(15)、テキサス州(24)などほかの州と比較しても非常に多く、充実ぶりが際立っていると言えるでしょう。


これらの支援策には、EVの購入に対する補助金や税額控除、充電インフラの設置支援、EVの使用に関する特典などが含まれます。具体的にどのような支援策が用意されているのか、その一例を見てみましょう。


提供主体

支援策名

概要

Clean Vehicle Rebate Project

カリフォルニア州大気資源委員会(CARB)の資金提供により、要件を満たすZEVの新車購入またはリースに対して、1,000ドルから7,500ドルの還付を提供。

Clean Vehicle Assistance Program

総収入に関する要件を満たす個人を対象とし、新車または中古車のZEV購入やリースについてCARBが助成金を与える。例えば、EVやPEVは5,000ドル、HVは2,500ドルまで助成金を受けることが可能。また、レベル2のEV充電器の購入と設置で、2,500ドルまでの助成も。

公的機関

Clean Cars for All

ベイエリア大気質管理区(BAAQMD)の「Clean Cars for All」は、所得要件を満たす住民に対して、古くなった車両をEV、HEV、FCV、PHVへ置き換える際に9,500ドルまで助成金を供与。交換対象となる車両のモデルは、2005年以前でなければならない。助成金の受領者は、新車または中古のEV、HEV、PHEVを購入またはリースすることができる。助成金の額は、家計の所得や車種によって異なる。

公益・民間企業

Time-of-Use (TOU) Rate

アラメダ市営電力は、EV所有者に対して充電時間帯に応じた任意の料金プランを提供。オフピークの時間帯でのEV 充電など一部の利用のシフトを通じて、利用者は安価な価格で料金プランを利用可能。

公益・民間企業

Empower EV Program

電力会社PG&Eは、「Empower EV Program」を提供。目的は、EVの充電支援。適格な世帯収入の対象者は2,500ドルまで金銭的インセンティブを受けることが可能。このプログラムは、申請前6カ月以内にEV購入やリースした単身世帯にも適用可。

公益・民間企業

EV Fleet program

電力会社PG&Eの「EV Fleet program」は、充電インフラを簡単かつ費用面で効率的に設置することを支援。支援措置の1つとして、EV購入に対し一定額の還付を提供する。還付額は車種によって異なる。


カースモーラちゃんのまとめ

ZEV規制は1990年からあるんだね。30年以上もこの制度と向き合ってきたカリフォルニアだからこそ、住民がEVへの関心が高いことも納得だな。

ただ制度を公表するだけじゃなくて、積極的にインフラ整備をしたり、補助金を用意したりするあたりは日本も見習いたいね。ZEV規制をリードしていくカリフォルニアは今後どんな政策を進めていくのか、楽しみだね。

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