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アメリカを中心にHV販売台数が増加する中、今後のPHVの立ち位置はどうなるのか

各国で電気自動車(EV)普及が進められる中、販売台数が停滞しはじめたアメリカ。一方、2023年のハイブリッド車(HV)の新車販売台数は前年から65%増加した124万台を記録し、EVを上回りました。

そのような背景に加え、自動車業界からの反発も大きかったことから、2027年から2032年にかけて段階的に規制を厳しくしていくことを予定していた新基準の排ガス規制を緩和。

新車販売におけるZero Emission Vehicle(ZEV)の範疇にプラグインハイブリッド車(PHV)やHVも加えたことにより、新たな可能性が見えてきました。

本記事では、現在アメリカ国内で急速に販売台数を増やし、再注目されるHVやEVとの中間に位置するPHVがどのような影響を受けるのか、今後の動向を考察します。

目次

  1. アメリカで販売台数急増のHV
  2. HVが再注目されたことで過去最高業績を残したトヨタ
  3. EVとPHVの二極化が進む中国市場
  4. 今後、エンジン搭載車強化の流れも視野に
カースモーラちゃんポイント
  • 2023年、アメリカではEVシフトが停滞、HVが急激に販売数を伸ばしているよ。
  • 中国でもEVの増加率が減少、PHVが勢いを増しているみたい。
  • EUのエンジン搭載車容認を受け、自動車メーカーは今後PHVやHVも検討する必要があるんだ。

アメリカで販売台数急増のHV

アメリカで販売台数急増のHV

冒頭でも説明した通り、現在アメリカの自動車市場ではEVシフトが停滞し、HVが販売数を伸ばしています。


EVに関しては2023年度で販売台数およそ119万台、新車販売台数におけるシェアはおよそ7.6%、前年度からの増加率は約47%にとどまっています。一方で、好調なHVは前年比65%増の124万台を記録しました。


そして、バイデン政権が2023年4月に発表した規制案の緩和も見逃せない出来事です。元々は2032年までに二酸化炭素(CO2)排出量を2026年比較で56%の削減を目標に、2027年から徐々に規制を厳しくすることで、アメリカ国内のEV普及割合を67%まで増加させるという規制案でした。


しかしながらEVシフトの停滞はもちろんのこと、自動車業界からの反発も大きく、2024年3月に発表した最終案では当初の規制案から緩和。開始から3年間、2027〜2029年の規制を緩やかにすると共に、普及割合の目標を35%に下方修正しました。


さらに、本来CO2をはじめとした排出ガスを一切出さないと定義されていたZEVに、PHV、HVが加えられたのもポイント。HV再注目や2024年11月に控えた大統領選挙を考慮した判断と言えるでしょう。


規制案が緩和された背景もあり、アメリカ市場では今後EVに代わってPHV、HVがさらに勢いを増すことが予測されます。

HVが再注目されたことで過去最高業績を残したトヨタ

HVが再注目されたことで過去最高業績を残したトヨタ

アメリカを中心にHVの販売台数が増加する中、HVを主軸に目覚ましい成果をあげているのが日本の自動車メーカー「トヨタ」。


同社は右肩上がりに業績を伸ばしており、株式時価総額が初めて50兆円を超えたことでも話題を集めました。2023年度の営業収益は45兆953億円で、前期比+7兆9,410億円という結果で着地。そして営業利益は、5兆3,529億円、前期比+2兆6,279億円で、どちらも過去最高を記録しています。


営業利益率を見ると11.9%と前期と比較すると4.6%上昇。大衆車を販売する自動車メーカーは営業利益率が低い傾向にありますが、トヨタは別格と言える結果を残しました。


また、世界的に自動車の電動化が進んでいますが、トヨタの成長率は35.3%の増加。主力であるHVは1年だけで87.4万台も増加し、トヨタの好収益を支えています。


その大きな要因は、アメリカで再びHVが注目を集めたことが挙げられます。EVシフトに大きく舵を切る自動車メーカーが多い中、競合に左右されない独自の戦略により、最王手自動車メーカーとしての価値を世に知らしめました。

EVとPHVの二極化が進む中国市場

EVとPHVの二極化が進む中国市場

EVの現状を振り返る際、アメリカと密接に関係している中国のEV市場は欠かせません。


中でも中国の「BYD」が2023年第4四半期において過去最大の販売台数52万6,409台を記録、EVの頂点に君臨していたテスラを抜き、EV販売台数トップの座を獲得したのは象徴的な出来事です。


その要因の一つとされているのが、NEV(New Energy Vehicle)補助金の終了を皮切りに始まった中国市場での価格競争です。NEV補助金が終了後間もない2023年1月にテスラが実施した値下げに競合メーカーが追随し、価格競争が勃発。しかしながら発端となったテスラは、独自開発のLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリー「ブレードバッテリー」を開発し、EVの低コスト化に成功していたBYDに敗れる結果となったのです。


そのような出来事もあり、現在世のEVをリードしていると言える中国。そんな中国のEV市場でも近年、アメリカと同様のEVシフトの停滞が起こっています。中国では、自動車メーカーに対して販売台数の一定割合以上をEV、PHV、燃料電池自動車(FCV)を含むNEVにすることを義務付ける「NEV規制」が設けられています。


それにより、2023年度にはEV販売台数はおよそ669万台、シェアはおよそ22.2%と諸外国と比べても高いシェアを実現しました。しかしながら、前年と比較するとその増加率は24.6%と、2022年度の増加率81.6%から大幅に減少したと言えます。


一方で、PHVに関しては販売台数およそ280万台とEVには及ばないものの、前年からの増加率は84.7%と、大幅な増加を見せました。中国大手EVメーカーBYDや「東風汽車集団」がPHVに注力してた結果、EVよりも安価なPHVが多くのユーザーに選択されたことも一つの要因と言えるでしょう。


EVの販売台数は減速傾向にあるものの、大手メーカーの注力により急激に勢いを増すPHVとEVの二つを軸に今後推移することが予測されます。

今後、エンジン搭載車強化の流れも視野に

今後、エンジン搭載車強化の流れも視野に

2023年度のアメリカ市場ではHVが、中国市場ではPHVが脚光を浴びる年となりました。バイデン政権のPHVやHV導入の容認もあり、アメリカ国内ではEVと比べて安価なHVが勢いを増しています。一方で、中国市場ではPHVが販売台数を大幅に増加させている現状です。


忘れてはならないのが2023年3月、EUが2035年以降の新車でのガソリン車を含むエンジン搭載車の販売を原則禁止とする従来の方針を転換し、合成燃料(e-fuel)の使用を条件にエンジン搭載車を事実上容認した出来事。


e-fuelとは、二酸化炭素(CO3)と水素(H)を原料にした合成燃料のことを指します。特別な変更を加えることなく既存のエンジンで利用できるのがメリットです。ガソリンと同じように燃焼することでCO2は排出するものの、原料に用いることで結果として排出量をゼロにできます。


つまり、メーカーはEU圏でもPHVやHVの販売を検討する余地が出てきたということ。これまでのアメリカや中国の動向から見るに、EUに関しても特別な施策が実施されない限りEVと比べて安価なモデルを選択するユーザーの急激な増加が予測されます。


前述の通り、トヨタはこれまで多方面からEVシフトの遅れが指摘されながらも、アメリカ市場でHV販売台数急増を達成した出来事を踏まえると、日本の自動車メーカーに関してもガソリン車容認を受けて復権が期待されます。


大規模なマーケットを持つ諸外国でのPHV、HV販売台数急増・容認を受け、今後自動車メーカーはEVのみに絞るのではなく、エンジン搭載車のさらなる発展も視野に入れた動きが求められるのではないでしょうか。

カースモーラちゃんまとめ

今回はアメリカや中国の市場の動向を受け、今後PHVやHVの動向はどうなるのかを考察してみたよ。

2023年度、アメリカ市場ではEVの販売台数はおよそ119万台、前年度からの増加率は約47%だったみたい。一方でHVは販売台数124万台、前年比65%増を記録したんだ。日本の自動車メーカー「トヨタ」も、HV好調の波に乗り過去最高の業績を残しているよ。

バイデン政権が2023年4月に発表した新基準の排ガス規制は、2024年3月の最終案では当初の規制案から緩和。ZEVの範疇にはPHVやHVも加えられたみたい。

一方で中国のEV販売台数に関してはおよそ669万台、増加率は24.6%と前年度の81.6%から大幅に減少しているよ。ところがPHVに関しては販売台数およそ280万台とEVには及ばないものの、前年からの増加率は84.7%と大幅に増加したんだ。

それらの背景や、EUが合成燃料(e-fuel)の使用を条件にエンジン搭載車を容認したこともあり、自動車メーカーは今後 HVのみに絞るのではなく、PHVやHVも視野に入れていく必要がありそうだね。

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