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中国で問題視されているEV墓場について

2022年度の世界各国における、電気自動車(EV)の販売台数は1,000万台を突破しましたが、中でも世界のEV市場を大きく牽引しているのが中国です。

2022年度のEV販売台数は500万台を超え、世界で最も高いシェアを誇っています。中国は2001年より、EVを中心とした新エネルギー車(NEV)の開発の取り組みをスタート。これまでEVの製造や購入に対し、多額の補助金を出したことで、中国のEV業界は急速に成長を遂げてきました。

しかしながら、その一方で問題が起きていることも見逃せません。それが今回、注目する「EV墓場」と呼ばれる現象です。EV墓場はどのような理由で起きているのか、または今後の課題についても触れていきます。

目次

  1. そもそもEV墓場って何?
  2. EV墓場が誕生してしまった原因ってなんだろう?
  3. EV墓場に続いて想定される環境問題
カースモーラちゃんのPICK UP
  • 中国各地で起きているEVの大量放置が問題視されているの。
  • EVに搭載される、リチウムイオン電池の廃棄についても問題視されているよ。
  • 今後は資源を有効活用していくことが大切になりそうだね。

そもそもEV墓場って何?

そもそもEV墓場って何?

中国ではEVが急速に普及する一方で、EV墓場が問題視されています。EV墓場とは、EVが適切な処理を受けずに大量に放置されている場所のこと。


中国では300メートル四方の土地に約2,000台のEVが敷き詰められるように打ち捨てられ、その光景がまるで墓場のように見えることから「EV墓場」と呼ばれています。


この現象は、EV大国の中国のみならず世界各国が注意すべき問題でしょう。この問題はEVが普及する上での今後の課題となるかもしれません。

EV墓場が誕生してしまった原因ってなんだろう?

EV墓場が誕生してしまった原因ってなんだろう?

なぜEV墓場と呼ばれる現象が起きるのでしょうか。その理由の一つとして、EVを普及させるための補助金制度が挙げられます。


中国はEVの生産や販売・輸出を奨励しており、一定の条件を満たすとさまざまな優遇措置や奨励金・補助金を受けられる制度が用意されているとのこと。


当然ながら中国の自動車メーカーは、大量にEVを製造することで優遇措置や奨励金・補助金を獲得しようとします。そのため、過剰な台数を製造し、そして架空登録することで販売台数を増加させるという行為が行われている可能性も。


結果として過剰に製造されたEVが廃棄され、EV墓場へと行き着いてしまうのです。


一方、中国でのEV市場の過度な競争も原因の一つと考えられています。


国が推進するEV施策や、シェアリングサービスなどに対して多くの企業が市場に参入した結果、競争についていけずに倒産に追い込まれる企業が相次いだのです。倒産した会社はEVの処分ができず、そのまま放置されることに。


このように、さまざまな理由から中国のEV墓場が誕生してしまったのです。

EV墓場に続いて想定される環境問題

EV墓場に続いて想定される環境問題

EVが大量放置されてしまうことは、環境被害につながる恐れがあります。特にEVに搭載されているバッテリーの廃棄問題は深刻なトピックでしょう。


EVに伴う環境問題は、中国に限らず、世界的に取り組むべき課題の一つでもあります。この章ではEVの放置やバッテリーを廃棄することで発生する課題について触れていきます。

リチウムイオン電池の廃棄問題

大量のバッテリーゴミは埋め立て処分場の不足だけではなく、有害物質による環境汚染を引き起こします。EVで使用するバッテリーは、リチウムイオン電池が採用されていることが一般的です。


リチウムイオン電池はEVにおける核心ともいえる技術ですが、課題があることも忘れてはいけません。


リチウムイオン電池の原材料には、コバルトやニッケル、マンガンなど土壌や水を汚染する材料が多く使われているため、そのまま廃棄することは環境汚染に直結してしまうのです。


廃棄されたバッテリーがきちんと管理されず、野ざらしで放置されてしまうと、人体や地球環境に悪影響を及ぼしてしまいます。リチウムイオン電池はただ廃棄するのではなく、リユースやリサイクルにより資源を有効活用していくことが求められます。

リチウムイオン電池の発火による環境被害

劣化したリチウムイオン電池は衝撃が加わると発熱し、激しく発火することがあります。万が一、EVが密集した場所で発火してしまうと、瞬く間に他の車両へと燃え広がってしまうでしょう。


リチウムイオン電池が発火した場合、水素、二酸化炭素、エタンやメタン等の炭化水素系に加えて、微量のフッ化水素や一酸化炭素も放出されます。


このフッ化水素や一酸化炭素は有害物質であり、吸い込むことで死に至る可能性も否定できません。さらに、フッ化水素が空気中の水分と反応してフッ化水素酸(フッ酸)に変化した場合、皮膚に接触しただけで体内に浸透し、人体に害を与えてしまいます。


もしEV墓場でリチウムイオン電池が発火した場合、甚大な環境被害を引き起こすことが想定できます。

カースモーラちゃんのまとめ

中国ではEVが急速に普及しているけれど、EV墓場が問題視されているんだ。EVが大量に放置されることで、リチウムイオン電池の廃棄も問題になってくるみたい。

中国に限らず世界各国がこの問題に向き合うことが必要になりそうだね。これからもEV普及を加速させていく中国はEV墓場問題をどのように改善していくのか、注目しておきたいね。

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