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これまでの中国のEVシフト戦略を俯瞰する

中国は、自動車産業を経済成長の重要な柱の一つと捉えています。電気自動車への移行(EVシフト)を進めるため、政府はさまざまな施策を打ち出し、国内の自動車市場を急速に成長させてきました。

中国の自動車市場の拡大には、政策の規模やスピードが大きく影響しており、その急激な成長は目を見張るものがあります。当記事では、中国が取り組んできた自動車産業に関する施策の一部を紹介していきます。

目次

  1. まず二輪車でのEVシフトを実現させた中国
  2. 補助金政策により加速した新エネルギー車(NEV)市場
  3. 自国産業をより強めるための戦略「中国製造2025」
  4. 自動車産業中長期発展計画
  5. ドイツ、メルケル前首相との関係
カースモーラちゃんのPICK UP
  • 中国は1990年代からEVシフトを推し進めていたんだね。
  • 強力な補助金制度の後押しもあって、EV市場は急成長したみたい。
  • 中国は自国をより強くするために「自動車産業中長期発展計画」や「中国製造2025」など、たくさんの取り組みを進めているよ。

まず二輪車でのEVシフトを実現させた中国

まず二輪車でのEVシフトを実現させた中国

現在積極的なNEVシフトを行っている中国ですが、実は1990年代後半から二輪車分野での電動化がすでに進んでいました。


当時、中国の都市部での自動車やオートバイによる大気汚染や交通事故が社会問題化したことを受けて、ナンバープレート規制(新規登録禁止)が導入され、二輪車の電動化がスタート。当規制は、1994年に天津でのオートバイ登録禁止から始まり、現在では150以上の都市で実施されています。


結果として、中国では電動二輪車が急速な普及を見せました。


2013年をピークに減少傾向にはあるものの、依然として年間2,000万台を超える電動二輪車が販売されており、国内の保有台数は実に1億台を超えています。


加えて、ユーザーにとってのメリットが多かったことも普及の要因の一つ。中国では電動二輪車が自転車と同等に扱われるため、運転免許の取得や道路交通法に関する教習も不要です。


さらに、電動バイクの所有に必要なのは購入時の登録番号のみ。税金や自賠責保険に関する負担もありません。価格面でも、デザインや機能による差こそあるものの、1,500〜5,000元ほどで販売されています(日本円で約3〜10万円ほど)。


中国における電動二輪車の普及は、都市部での環境改善政策として大きな役割を果たしており、今後も中国の都市部における移動手段として重要な位置を占めると考えられます。さらに並行して、自動車産業のEV普及も加速させていきます。

補助金政策により加速した新エネルギー車(NEV)市場

補助金政策により加速した新エネルギー車(NEV)市場

十城千両プロジェクトを始めとし、2010年から中国は大規模な補助金政策を展開してきました。


NEVに対する補助金制度は2022年をもって一旦終了しましたが、中国政府はEV普及を後押しする一環として2014年に自動車取得税の免税措置を開始しました。免税措置は2025年末まで継続し、2026〜2027年は免税額を半減させるようです。


こうした政府の強力な後押しもあり、中国におけるEV及びPHVの普及は近年顕著に増加しています。


国際エネルギー機関(IEA)のデータによれば、2022年時点で新車販売台数の約29%がEVまたはPHVであり、これは約3台に1台が電気自動車という計算になります。


特筆すべきは成長率の急激な上昇です。2018〜2020年までの三年間は比較的低い成長率でしたが、2021年に16%、2022年には29%へと急成長。


これは、政府補助金終了に伴う駆け込み需要の影響とも考えられますが、前年比で約1.8倍の成長を遂げている点は驚異的と言えます。具体的な販売台数を見ると、2022年のEVは前年比で60%増の440万台、PHVは前年比で172%増の150万台という、目覚ましい伸び率を記録しています。


また、中国国内で利用可能な公共のEV充電器の数も、2022年時点で176万基に達しており、そのうち100万基が普通充電器、76万基が急速充電器です。この数値は、2021年時点の115万基から前年比で1.5倍。


さらに、中国のEVメーカーの多くは新車購入者に家庭用充電器を無償で提供しているため、2022年時点での家庭用充電器の設置数は340万台以上に上るとされています。

自国産業をより強めるための戦略「中国製造2025」

自国産業をより強めるための戦略「中国製造2025」

「中国製造2025」は、中国が2015年に発表した製造業の発展計画のこと。国内製造業を総合的に強化し、世界の製造大国へと躍進することを目指す政策です。


この計画はどのようなものなのでしょうか。

段階的成長を目指す中国製造2025

中国の製造業の発展を目指す「中国製造2025」の計画は三段階に分かれています。簡単に概要を説明すると、第一段階では2025年までに日本やアメリカのような製造強国の仲間入りを目指すというもの。


次の第二段階は、2035年までに世界の製造強国の中で中級レベルに達することを目標としています。そして最終的な第三段階では、新中国建国100周年にあたる2049年までに、世界のトップクラスの製造先進国へと成長を遂げることを目指しています。

中国製造2025で発展を目指す領域

中国製造2025は、自動車だけに絞った政策ではなく、中国の製造産業全体の成長を目指したものです。特にハイエンド製造業の強化や戦略的新産業の育成、伝統製造業の高度化に焦点を絞っており、


  1. 次世代情報技術(IT)
  2. 先端NC工作機械・ロボット
  3. 航空宇宙設備
  4. 海洋エンジニアリング設備・ハイテク船舶
  5. 先端鉄道・交通設備
  6. 省エネ・新エネルギー自動車
  7. 電力設備
  8. 農業設備
  9. 新素材
  10. バイオ医薬・先端医療機器

などの十大産業の発展を図ろうとするもの。


ITと製造技術を融合するスマートファクトリーの実現により、自動化や生産性の向上を目指しています。なかでも裾野が広く、かつ難易度の高い自動車産業の振興は中国製造業の高度化において極めて重要と言えるでしょう。

自動車産業中長期発展計画

自動車産業中長期発展計画

自動車産業中長期発展計画では、NEVシフトのためにさまざまな政策が推進されています。その一つとして、消費者にNEV購入を促す補助金制度の導入や、企業にNEV生産を義務付ける制度などの「より市場を育てるための政策」が挙げられます。


また、先進的な製造技術などの研究開発に重点を置き、中国の自動車産業を技術的に高度化させることもこの計画の一つ。省エネ技術の高度化や中国ブランドの育成なども行い、2025年までに世界市場における中国ブランドの地位を高めることを一つの目標としています。

ドイツ、メルケル前首相との関係

ドイツ、メルケル前首相との関係

アンゲラ・メルケル元ドイツ首相の在任期間中(2005年11月〜2021年12月)、中国とドイツの関係は非常に親密であると言われていました。特に自動車産業にその影響が顕著に表れています。


メルケル首相は首相就任後、10回以上も中国を訪問し、両国間の経済関係を強化しました。これに対し、日本への訪問はサミット関連での3回ほどに留まっています。


ドイツは中国との貿易を大きく伸ばし、経済成長の重要な支柱としてきました。中国はドイツにとって重要な市場であり、生産の拠点としても魅力的だったようです。


このため、ドイツと中国はビジネス面での良好なパートナーシップを築いていると言えます。


代表的な例を挙げると、


  • 2010年:中国政府とドイツ政府はEV分野での協力で合意
  • 2011年:「EV分野における戦略提携の共同声明」を発表
  • 2012年:中国政府はEVシフトを決定し、中国工業情報省とドイツ経済技術省はEVの業界標準、普及の奨励政策、研究開発など多分野にわたる提携を開始
  • 2014年:「中独協力行動綱要」を発表し、EVシフトにかかる製造業の高度化、スマートファクトリーの協力でも合意

など、重要な連携を行っています。


また、中国の「中国製造2025」計画は、ドイツの「インダストリー4.0」と多くの共通点を持っています。このため、「中国版インダストリー4.0」とも呼ばれており、両国は技術革新や産業発展においても密接な関係を保っています。

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