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フルEV専門メーカーを目指すロータスが重量級SUVやスポーツセダンだけではない証明、2019年発表のハイパーカー「エヴァイヤ」とは?
公開日:2024/11/03更新日:2024/11/03
目次
ロータス初のBEVは、2〜3億円級の電動ハイパーカーだった!
電動SUVのエレトレ、電動スポーツセダンのエメヤが日本でもオーダーを開始したものの、ロータスといえばエリーゼやエキシージなど、エンジンはさほどパワフルでなくとも、軽量ボディでヒラヒラ走るミッドシップ・スポーツのイメージが強い人も多いはず。
そうした比較的安価なロータスとしては現在も「エミーラ」が販売されており、フル電動メーカーを目指すロータスにとって同車は最後の内燃機関モデルとされていることから、後継としては電動エリーゼ的な「タイプ135」を開発中です。
それまでは、パワフルで豪華であろうとヘビー級のSUVやスポーツセダンを、「これでもロータスの血統でありDNAを受け継いでいる」と納得しながら乗るのか…と残念がるファンを失望させないためか、2024年10月には「セオリー1」というスポーツコンセプトを発表しています。
しかしそこはやはりロータス、エレトレやエメヤ以前に超ド級の電動スポーツを市販しており、日本円で2~3億円というプライスから、エリーゼというよりはかつての「エスプリ」すら上回るハイパーカーではあるものの、「ロータスらしさ」はバッチリとアピール!
何より、胸はときめくものの、あくまで将来に向けたコンセプトカーに留まりそうなセオリー1とは異なり、2019年8月に発表したロータスの電動ハイパーカー、タイプ130「エヴァイヤ」は、コードナンバーに由来する限定130台とはいえ、しっかり市販されていました。
エヴァイヤはなんとクアッドモーターで2,000馬力超!
スポーツカーといえばフロント、ミッド、リヤのいずれかにエンジンを1基搭載して、駆動軸を通して2輪または4輪を駆動、電動化が進むとエンジンで2輪、モーターでエンジンをさらにアシストしつつ、残り2輪もモーター駆動という電動AWDも登場しています。
しかし、内燃機関(エンジン)に比べればより配置の自由度が高いフル電動EV時代になると、前後2モーターでAWD、さらに後輪は左右独立のトライ(3)モーターとして積極的な駆動力制御を行う高性能モデルも増えました。
ならば4輪全てにそれぞれ配置したクアッド(4)モーターで4輪独立制御したならば、素晴らしいAWDハイパースポーツ(あるいは、先日日本でもオーダー開始したメルセデス・ベンツ G580のようなAWDオフローダー)が可能と考えるのが自然な成り行き。
ロータス エヴァイヤはそんなクアッドモーター配置を実現したAWDハイパーカーで、4つのモーター全てを駆動させた時の最高出力は実に2,011bhp(英馬力)日本でも馴染み深い仏馬力だと2,038馬力、最大トルクも1700N・m(173kgf・m)に達します。
全長4,459mm✕全幅2,000mm✕全高1,122mmというスリーサイズも、少々幅広すぎることを除けばコンパクトに収まっていますし、パワフルな割に70kWhに抑えたバッテリー容量のおかげで航続距離は公称315km(ニュルブルクリンク15周分らしい)ながら、車重は1,680kgとBEVとしては軽量級。
同じクアッドモーター軽量級でも、1,000馬力級でもうちょっと軽いセオリー1の方が「ロータスらしい」とも思えますが、エヴァイヤは親会社の中国・吉利汽車(ジーリー)の後押しで実現したハイパーカーらしいので、インパクト重視だったのでしょう。
実際、エヴァイヤをベースにしたサーキットアタック仕様「エヴァイヤX」は、当時の量産車プラットフォーム搭載車でニュブルクリンク北コース史上最速(総合では3番目)となる、6分24秒047という記録を残しています。
日本でも市販されていた
カーボンファイバーモノコックなど素材を追求した軽量化や、ドアミラーに代わるフロントウイング内蔵の電動式カメラ、バッテリー冷却と空力安定を兼ねたエアロダイナミクスも徹底しており、テールランプはジェットエンジンのアフターバーナーを連想させる演出も。
特に目立つのはボディサイドからテールに向け貫通する「ベンチュリートンネル」で、高速域では空気の流れを最適化してタイヤのトラクション性能を増しつつ、ドラッグ(空気抵抗)も低減する効果と、そのわかりやすい視覚化が特徴となっています。
斜め前方に開く「ディヘドラルドア」はドアハンドルなどなく、リモコンで電動開閉するという近代的な電動ハイパーカーらしい仕掛けですが、「電源喪失した場合は?」と考えるのはいささか野暮であり、素直に「スゴイ」ということでよいでしょう。
乗り込んでバケットシートに着座すれば、フォーミュラマシンのような楕円形ステアリングや、斜め上にせり上がるようなセンターコンソールには六角形のくぼみがついたタッチ式ボタンが配されるなど、実に未来的。
もっとも、スイッチ類を極力減らし、タッチパネル操作や音声入力が増えている2024年現在の最新BEVからすると、「これでも少しゴテゴテしすぎている」という印象を受けるかもしれませんが、「2019年発表当時の未来」だと考えれば、時代の流れを感じます。
いずれにせよ、吉利汽車(ジーリー)傘下となったロータスで初の新型車であり、同社初のBEVでもあったエヴァイヤは実際に市販されており、限定130台の少なくとも1台は、国内のショップで仕入れ、販売されていました。
エヴァイヤの市販、コンセプトカーながら発展型とも言えるセオリー1の発表、そして開発中のより現実的(であろう)な電動スポーツのタイプ135は、エレトレやエメヤがいかに大きく重くとも「ロータスはそのDNAを失ったわけではない」と証明する存在であり続けるでしょう。
このブランドについて
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Lotus
ロータス
かつてのセブンやエリート、エラン、ヨーロッパ、そしてまだ記憶に新しいエリーゼやエキシージはブリティッシュ・ライトウェイトスポーツの代名詞であり、エスプリのようなスーパーカーもあったイギリスのロータス。現在販売中のミッドシップスポーツ「エミーラ」が最後のエンジン車で、2023年に登場した同社初のSUV「エレトレ」からはピュアEV(BEV)専業メーカーになります。日本でもスーパーカーブームや各種モータースポーツで活躍、豪華でも超高級でもパワフルでもない軽さで勝負するマシンは憧れの存在でしたが、大トルクのピュアEVでも走りのため研ぎ澄ました軽量ボディを得れば、その持ち味はさらに活かされそうです。