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高コストな水素ステーション、普及のための課題って?

環境に優しい「燃料電池自動車(FCEV)」。

これまで自動車の燃料として使用されてきたガソリンではなく、FCEVは水素と酸素の化学反応でモーターを動かします。そのため、燃料の供給に必要となるのは、ガソリンスタンドではなく水素ステーション。

ですが現在、肝心の水素ステーションがなかなか普及しないという状況に直面しています。普及のためにどのような点が課題になっているのでしょうか?

目次

  1. 水素ステーションの市場規模
  2. 水素ステーションが今後普及するために乗り越えるべき課題
  3. 水素社会の実現に取り組むトヨタの事例
  4. 今後、水素ステーションは普及されるのか
カースモーラちゃんポイント
  • 政府は2030年までに水素ステーションを1,000ヶ所にしようとしているけど、まだ200ヶ所に満たないんだって。
  • 水素ステーションの導入にはすごくお金がかかってしまうの。
  • FCEV自体の普及もまだ多くないから、水素ステーションへの投資に踏み切れないのかも。

水素ステーションの市場規模

水素ステーションの市場規模

世界の水素ステーションの市場規模は2023年時点では7億2,930万ドルと評価され、2024年では8億1,785万ドルとされています。2032年までに54億6,437万ドルに成長すると予測されており、予測期間中の年平均成長率は26.8%。


アジア太平洋地域は2023年に77.26%の市場シェアを獲得しており、水素ステーション市場で強い競争力を誇っています。


対する世界のEV(電気自動車)充電ステーション市場は、2022年になんと229億ドルに達しており、2023年~2030年における予測期間中の年平均成長率は25.3%。


2030年には1,374億ドルにまで達すると予測されています。


EV充電ステーションの世界需要の大部分は、世界経済成長の多くが集中しているアジア太平洋の新興国である中国が牽引しているようです。


これからの社会では低炭素な製造方法による水素が主流となり、FCEVや発電設備での利用が増加すると考えられています。


そのため、水素ガスに加えて発電設備や製造装置、水素ステーションなどの機器も含めて多くの産業が誕生していくでしょう。それら水素関連市場全体を含めた市場規模は2040年度には90兆7,080億円にまで達すると予想されているようです。

水素ステーションが今後普及するために乗り越えるべき課題

水素ステーションが今後普及するために乗り越えるべき課題

現在、日本全国で水素ステーションの整備が進んでいます。


2021年3月時点では約140か所ほど、2023年1月には都市部を中心に全国163ヶ所に設置されていますが、まだまだ十分な数とはいえません。


2025年までに320ヶ所程度、2030年までに1,000ヶ所ほどの設置が政府の目標として掲げられています。


対するEV充電ステーション数は約30,000ヶ所以上であることを考えると、水素ステーションの数は非常に少ないことが分かります。では、インフラ整備の課題となっている要因は一体なんなのでしょうか。

インフラ整備、運営に莫大なコストが発生してしまう

まずコスト面は大きな課題です。


水素ステーションの建設には多額の費用がかかり、設備の設置や運営に必要な資金も高額。例えば標準規模の水素ステーションを建設する場合、1ヶ所当たり約4億円前後が必要とされています。政府からの補助金を使っても事業者は約1億円以上の資金が必要に。


また、例えばトラックやバスなど水素タンクの容量が大きい車両に対してはこの規格では安定的な充填ができません。対応するには充填能力を高めなくてはならず、建設費はさらに膨らんでしまいます。さらに毎年の保安検査は原則必須なので、メンテナンスにも費用が発生します。


経済的な持続可能性は極めて大きな課題です。

普及に苦戦するFCEV

日本政府は、2030年までにFCEVを80万台に増やす目標を掲げています。では実際の普及状況はどうなのでしょう?2023年の普通乗用車における普及状況を見てみましょう。


日本自動車販売協会連合会の数値によれば、


  • ガソリン車:94万8,445台(35.77%)
  • ハイブリッド車(HV):146万133台(55.07%)
  • プラグインハイブリッド車(PHEV):5万2,143台(1.97%)
  • EV:4万3,991台(1.66%)
  • ディーゼル車:14万6,164台(5.51%)
  • FCEV:422台(0.02%)

となっています。


FCEVの普及台数が2022年夏時点でおよそ7,000台であったことも加味すると、まだまだ目標台数と大きな開きがあります。


また、FCEVそのものの価格の高さも見逃せません。日産のEV「サクラ」などの低価格帯の軽自動車の売れ行きは好調なのに対して、FCEVは基本的に高価格帯しか販売されていません。トヨタの「MIRAI」は国の補助金を使っても500万円台からと高額。


ユーザー数が増加しないと水素ステーションの建築にも踏み切りにくいため、FCEVの早期の普及が望まれます。

どのように安全に運ぶか

水素を製造した後は需要地まで運ぶことが必要となります。


水素は、常態では体積エネルギー密度が非常に小さく、液化するためにはマイナス253℃という極低温まで冷却することが必要といった物性を持つエネルギーです。


そのため、長距離大量輸送することがとても難しい物質とされています。すなわち、水素の利用においては、輸送手段の選択がきわめて重要な問題に。


水素を陸上で短中距離輸送する場合は、高圧水素として気体のままローリーで運ぶことが想定されますが、この方法で輸送できる水素の量と距離は限られてしまいます。パイプラインが利用可能な場合は大量に輸送することが可能ですが、現実的な輸送手段として成立するのは輸送距離1,500kmくらいまで。


長距離、または海を越えて船で輸送することが必要な場合には、水素をより運びやすい物質や状態「水素キャリア」に変えて運搬する必要があります。輸送された水素キャリアは、消費地で水素に再変換 し、必要に応じて精製したうえで用いられます。そのためには大規模なサプライチェーン構築も必要となるため、このプロセスを解決のための実証実験が続けられています。


例えば高圧で圧縮させる、低温で液化させる、金属などに吸蔵・吸着させる、他の物質に変換して貯蔵するなど、安全な貯蔵や運搬に向けたさまざまな技術が研究・開発されています。

水素社会の実現に取り組むトヨタの事例

水素社会の実現に取り組むトヨタの事例

日本の自動車メーカーで水素社会の実現に積極的に取り組むトヨタ。


同社はカーボンニュートラルの実現を目指して二酸化炭素(CO2)排出量の削減を進める中で、水素を重要な燃料と位置付けています。


水素利活用の促進による「水素社会」の実現に貢献するために、様々な取り組みを進めています。

FCEVの開発・販売

トヨタはFCEVの普及を目指し、FCEVの開発を加速しています。ディーゼルエンジンの技術を応用した排気浄化システムを組み込むなど、車両全体の検討も進めているようです。


トヨタが生産しているFCEVは、2024年6月現在「MIRAI」と「クラウン」の2種類。MIRAIの車両価格は7,261,000円〜8,610,000円ほど。


対するクラウンは8,300,000円に設定されています。

水電解システムの共同開発

トヨタは千代田化工と共同で大規模な水電解システムを開発しています。2025年度からトヨタ本社工場の水素パーク内にこのシステムを導入し、将来的には10MW級まで拡大する計画です​。


トヨタが持つ燃料電池技術を用いた水電解セル・スタックの生産や量産技術に加え、千代田化工が持つプロセスプラント設計技術や大規模プラントの建造技術を融合。競争力のある大規模水電解システムを開発することで、急激に拡大する国内外の水素製造市場に対応するとしています。

福島で取り組む「水素地産地消」

2021年6月以降、福島県と共同で「福島発」の水素・技術を活用した新たな未来のまちづくりに向けた活動を進めてきました。


「MIRAI」のFCスタックなどを流用して、水を電気分解して水素を製造する水電解装置を新たに開発しています。今後の普及促進に向けた技術実装の場として、2023年3月に株式会社デンソー福島工場において稼働を開始。


今後、この水電解装置で製造したクリーンな水素を工場ガス炉で自家消費する「水素地産地消」モデルの構築などに取り組むようです。

モータースポーツを通じた技術開発

トヨタはレースに参戦し、都度技術革新を行っているようです。


2023年5月28日、世界初の液体水素エンジン車によるレース参戦。「液体水素エンジンカローラ」は358周、約1,634kmを見事走り切っています。


このレースで収集したデータを分析することで、多くの点が改善されたようです。


例えば、液体水素ポンプの耐久性向上、安全バルブや配管など様々な液体水素システムや燃料の圧力を最適化することでポンプの負荷を軽減、ジョイントとフレキシブルホースの軽量化、給水素時間の向上など、常に革新的な技術を取り入れようと試行錯誤しています。

今後、水素ステーションは普及されるのか

今後、水素ステーションは普及されるのか

政府が2030年度に向けて1,000件を整備する目標を発表した以降、商用車タイプのFCEVが利用可能な大規模水素ステーションの設置が増加する他、都市部や幹線道路沿いでの整備が進むと期待されています。商用車の電動化で燃料電池が採用される機会が増えれば、比例して水素ステーション需要の増加も期待できます。


2030年度以降は、水素ガスパイプラインや液化水素による大量輸送など供給インフラが普及し、水素の輸送コストが低減することも考えられます。


今後、水素ステーションの数は増加する見込みではありますが、当然ながらその普及には多くの課題が伴います。


政府の目標達成には、国を挙げた継続的な支援と技術開発が不可欠です。現時点では乗用車向け水素ステーションが一気に増えるとは考えにくいものの、これからの普及に期待したいところです。

カースモーラちゃんまとめ

脱炭素社会の実現のため、水素には大きな貢献が期待が寄せられているけど、実際には苦戦しているみたい。水素ステーションがなかなか普及しない背景には、そもそもFCEV普及に苦戦していたり、設置の金額が高かったり、さまざまな理由があるんだね。

たくさんの企業が水素社会の実現に向けて様々な研究を行っているから、きっと今の課題は徐々に解消されるんじゃないかな。FCEVと取り巻くこれからの動きに注目だね。

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