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電気自動車とガソリン車のコスト比較|ランニングコストシミュレーション

大容量バッテリーのおかげで「高価」というイメージが先行しがちな電気自動車ですが、自動車は買って終わりではなく使ってナンボ、実際に走らせるのにどれだけのコストがかかるかガソリン車と比較してみれば、見えてくるものがあるかも?今回は電気自動車とガソリン車でランニングコストをシミュレーションしてみましょう。

目次

  1. 電気自動車とガソリン車の主なコストを比較
  2. 電気自動車とガソリン車のランニングコストをシミュレーション
  3. 電気自動車とガソリン車の車両本体価格を比較
  4. 電気自動車にかかるその他のコスト
  5. 電気自動車とガソリン車のコスト比較【まとめ】

電気自動車とガソリン車の主なコストを比較

電気自動車とガソリン車の主なコストを比較

自動車のランニングコストで最も大きなウェイトを占めるのは月極駐車場代ですが、持ち家などで駐車場代がかからないユーザーもいますし、今回は他に代表的なコストとして電気自動車の電気代(ガソリン車の燃料代)、税金、保険料で比較してみます。

電気自動車の主なコスト

電気自動車でガソリン車とランニングコストを比較する場合、もっとも大きく異なるのはガソリンではなく電気を充電することで、他に税金や保険料といったコストがかかるのは変わりがありません。

充電にかかる電気代


電気自動車を充電するのにかかる電気代ですが、公共の充電スタンドを使う場合はさまざまなサービスやプランへの加入/非加入などユーザーごとの事情によって大きく異なり、単純な計算はできません。


多くのユーザーで共通しているのは自宅での普通充電で、家電公取協(公益社団法人 全国家庭電気製品公正取引協議会)が2022年7月22日に改定して以降の目安単価(税込)は、1kWhあたり31円となり、あとはどれだけ走るかの違いです。


ここ数年はガソリン価格の高騰が続いていることもあり、一般的には電気代の方がガソリン代より安いと言えます。

電気自動車にかかる税金


電気自動車でもPHEV(プラグインハイブリッド車)など、エンジン搭載車ではまた話が変わってくるものの、バッテリーの電力だけで走るBEV(ピュアEV)ならそもそもエンジンを積まないので、自動車は排気量1リッター以下の扱いとなり、自動車税は安価です。


ただし、非常に重く、電力を消費しても軽くなるわけではない大容量バッテリーで車重がかさむため、車検ごとの重量税は高くなりがちで、税制優遇により初回車検までの自動車税が100%免税になっても、その次からガソリン車より負担が増えるのは避けられません。


2回目の車検(初回登録から5年後)を機に乗り換えるユーザーは別ですが、長く乗るユーザーなら長期的な計算が必要でしょう。


また、東京都や愛知県のように期間限定で5年間は自動車税を免除するなど優遇措置がある場合もあり、地域差もあります。

電気自動車にかかる保険料


保険料(任意保険料)については、電気自動車の場合だと高価な部品が使用されていることが多いため、車両保険だけはどうしても高価になりがちですが、これはガソリン車でも高級輸入車など、車種によっては同じことが言えるため、具体的な比較対象によりけりです。


それ以外の単純な任意保険料については、事故率などの要素で電気自動車かガソリン車かという区別は特になく、むしろ電気自動車を普及させる目的で保険料の割引を設定している保険会社も多いため、契約する保険によっては意外と安いケースがあるかもしれません。

ガソリン車の主なコスト

ガソリン車のランニングコストは、ここで紹介するガソリン代、税金、保険料以外にも、電気自動車と同じくタイヤ代やブレーキフルード代、駆動系のオイル代などに加え、ガソリン車独特で意外と高額なものにエンジンオイル代もあります。


ただし車種ごと、使用環境ごとの変動が大きい要素は省くと、やはり以下の項目が代表的でしょう。

ガソリン代


1990年代後半、HEV(ハイブリッド車)が登場した頃はレギュラーガソリンがリッター90円もしない超安値でしたから、ちょっと燃費がいいくらいでは高価なハイブリッド車を買ったってモトが取れやしない、と笑われたものです。


しかし2024年現在はレギュラーリッター160~170円台が当たり前、HEVやよほど燃費のいい車でなければ高額なガソリン代で遠出もままなりませんし、それでも頻繁に車で長距離を走らねばならないユーザーにとって、ガソリン代が重くのしかかっていることでしょう。


燃費の悪い車に乗っているユーザーなど、HEVやPHEV、BEVのどれに乗り換えるのが得か、今まさに迷っているのでは?

ガソリン車にかかる税金


1989年の税制改正で3ナンバー車の自動車税が下がり、ガソリン価格も下がり続けていた一時期は大排気量車がもてはやされたものの、ここ10年ほどは排気量を下げてターボ過給で大排気量エンジン並の性能を得るダウンサイジングターボ化が進みました。


排気量別に区分された自動車税も安くなる現実的な選択をしたユーザーも増えていますし、BEVやPHEVといった電気自動車より重い走行用バッテリーを積まない分だけ軽く、車検ごとの自動車重量税も安いため、長く乗ろうと考えるユーザーほどガソリン車は有利です。


ただし、高騰するガソリン代で税金が有利な分を相殺されてしまうことや、電気自動車への税制優遇を考えると、よほど長く乗り続けようと考えるユーザー以外は、さほどの恩恵を受けられないと思われます。

ガソリン車にかかる保険料


任意保険料はガソリン車、電気自動車を問わず車種ごとの事故率、つまり保険で損害を補填した車種ほど保険料が高くなるだけの話なので、基本的にはガソリン車だから有利ということはありません。


むしろ保険のプランによっては、電気自動車の普及を後押ししたい保険会社の割引制度の恩恵を受けられませんし、輸入高級車など高価な部品を使っていたり、盗難率の高い車種なら車両保険も高額になりがちですから、場合によってはガソリン車が不利というケースも。


もっとも、2020年代も半ばな現在においては「保険料が高額なガソリン車」、たとえばスポーツカーなど趣味性の高い車を購入するユーザーは高額な保険料を覚悟で好きな車に乗ることを選択した人たちですから、あまり問題にしないかもしれません。

電気自動車とガソリン車のランニングコストをシミュレーション

電気自動車とガソリン車のランニングコストをシミュレーション

ここでは、電気自動車とガソリン車を購入後、実際に走らせるために必要なランニングコストをシミュレーションし、その結果を比較しましょう。


可能な限り同等の条件とするため、電気自動車の中でもBEV(ピュアEV)と同格のガソリン車が存在する、トヨタ bZ4xとハリアー(2.0リッターガソリン車)のFWD車、往復30kmの通勤に使用し年間7,200km走行と仮定します。


また、ユーザー自身やその選択、環境によって変動が著しいため参考になりにくい、任意保険やタイヤ代、駐車場代は含まず、車検費用も最低限の基本料金のみです。


なお、あくまで一例のため、利用状況によっては特に充電費用、ガソリン代で大幅に変動しますから、あくまでわかりやすい部分だけ並べた参考です。

電気自動車のランニングコスト

トヨタ bZ4X Z(FWD車)

ランニングコスト

年別合計

1年目

自動車税種別割:6,500円(総排気量1.0リットル以下・グリーン化特定でおおむね75%減税)


充電費用:2万8,570円

3万5,070円

2年目

自動車税種別割:2万5,000円


充電費用:2万8,570円

5万3,570円

3年目

自動車税種別割:2万5,000円


充電費用:2万8,570円


【車検ディーラー相場】


基本料金:5万5,000円


自賠責保険料(25ヶ月):1万8,160円


検査印紙代(電子申請):1,600円


(※エコカー減税で自動車重量税は100%免税)

12万8,330円

4年目

自動車税種別割:2万5,000円


充電費用:2万8,570円

5万3,570円

5年目

自動車税種別割:2万5,000円


充電費用:2万8,570円


【車検ディーラー相場】


基本料金:5万5,000円


自賠責保険料(25ヶ月):1万8,160円


自動車重量税(2年継続車検・2t以下・エコカー減税車):2万円


検査印紙代(電子申請):1,600円

14万8,330円

5年合計

41万8,870円

ガソリン車のランニングコスト

トヨタ ハリアーは上級グレード「Z」のFWD車で、WLTCモード燃費は15.4km/L、つまり年間走行距離7,200kmなら年間468Lのガソリンを必要とします。


燃費情報サイト大手、「e燃費」によれば、2024年5月16日現在のレギュラーガソリン価格(都道府県平均)は169.4円とされていますから、年間のガソリン価格は7万9,279円に固定です。


なお、ハリアーのガソリン車はエコカー減税対象外なので、自動車重量税もかなり高めとなっています。


トヨタ ハリアー Z(FWD車)

負担内容

年別合計

1年目

自動車税:3万6,000円(排気量1.5リットル超2.0リットル以下)


ガソリン代:7万9,279円

11万5,279円

2年目

自動車税:3万6,000円(排気量1.5リットル超2.0リットル以下)


ガソリン代:7万9,279円

11万5,279円

3年目

自動車税種別割:3万6,000円


ガソリン代:7万9,279円


【車検ディーラー相場】


基本料金:5万5,000円


自賠責保険料(25ヶ月):1万8,160円


自動車重量税(2年継続車検・2t以下):3万2,800円


検査印紙代(電子申請):1,600円

22万2,839円

4年目

自動車税:3万6,000円(排気量1.5リットル超2.0リットル以下)


ガソリン代:7万9,279円

11万5,279円

5年目

自動車税種別割:3万6,000円


ガソリン代:7万9,279円


【車検ディーラー相場】


基本料金:5万5,000円


自賠責保険料(25ヶ月):1万8,160円


自動車重量税(2年継続車検・2t以下):3万2,800円


検査印紙代(電子申請):1,600円

22万2,839円

5年合計

79万1,515円

結論:電気自動車のランニングコストの方が安い

今回は電気自動車で公共の充電設備を考慮しない、電気自動車に不利な任意保険料、特に車両保険も対象外で、電気自動車では消耗が早い傾向にあるタイヤ代も含まないなど、ガソリン車には不利な条件ではあります。


しかし、それを差し引いてもなお、電気自動車のランニングコストは同クラスのガソリン車より安いことが実感できる結果になったのではないでしょうか?

電気自動車とガソリン車の車両本体価格を比較

電気自動車とガソリン車の車両本体価格を比較

電気自動車はランニングコストが抑えられるとして、その分の差額で埋められるほどガソリン車と電気自動車で車両本体価格の差は少ないのか、ここで比較検討してみましょう。

電気自動車とガソリン車の車両本体価格の相場

ランニングコストのシミュレーションで例に出した、トヨタの電気自動車・bZ4Xだと車両本体価格は550万~650万円、対するトヨタのハリアーだと、ガソリン車は312万8,000~453万8,000円となっており、その差は200万~240万円ほどもあります。


実際には各種の補助金や購入時の税制優遇によって、bZ4Xでは約90万円ほど差を詰められますし、自治体の補助金があればさらに数万~数十万円は詰められますから、住んでいる地域によっては「ランニングコストの差も含めれば、電気自動車でいい」と思うかも?


電気自動車もガソリン車も価格はピンからキリまであるものの、価格差という意味では上記の例からプラスマイナス100万~150万円というところで、車種によっては思ったほど差が出ないでしょう。

200万円台で購入できる電気自動車も登場

電気自動車とガソリン車の価格差は、2024年現在だとほぼ「高価なバッテリーが原因」ですから、車体が小さく物理的に積めるバッテリー容量の小さな車ほど電気自動車でも安価になり、その代表例が軽自動車の日産 サクラや三菱 eKクロスEVです。


これらは200万円代で購入できて、補助金を活用すればベース車(日産 デイズ/三菱 eKクロス)の同格グレードより安くなるので、航続距離180kmでも通勤や買い物用途なら十分使い出があるとヒットしました。


他にGLMの「MiMoS」など新興メーカーの参入もあって、日本では200万円台の軽自動車によるセカンドカー需要から、電気自動車の普及が進みそうです。

電気自動車を新車購入で利用できる補助金

ピュアEVにせよ、プラグインハイブリッドにせよ、電気自動車で圧倒的に有利なポイントは普及を推進するための補助金で、国からの「CEV補助金」に加え、都道府県に市区町村と自治体レベルでも続々と新たな補助金が誕生しています。


国と自治体の補助金はどちらか一方ではなく、両方受け取れるのが大きな魅力となっており、単純に車両本体価格だけを見て「電気自動車は高い!」と考えてしまい、「補助金こみで自分の場合はいくらになるか」に気づかないと、損をするかもしれません。


ただし、2024年4月以降に新規登録された車では、メーカーが充電設備の設置を推進していなかったり、高額な少数販売車しか販売しない、ディーラーの実店舗を建設しないなど、電気自動車の普及に協力的でないとCEV補助金が大幅に減額されています。


購入を検討している車種にどのくらい補助金が出るかも、今後は購入を検討する際の大きな分かれ目になりますが、そのぶん金利0%ローンを設定するなど対策しているメーカーもあるため、情報収集は本当に大事です。

電気自動車にかかるその他のコスト

電気自動車にかかるその他のコスト

ここでは電気自動車にかかるコストについて、これまで紹介した購入費用や電気代、税金、保険料以外の部分について、特に電気自動車ならではのコストを紹介していきましょう。

EV充電設備の費用(本体費用+設置工事費用)

最近は戸建住宅でも重合住宅でも新築時に充電設備を最初から設置するケースが増えましたし、特に新築マンションについては国土交通省や経済産業省の旗振りによって、駐車場または共同スペースへの充電設備設置が推進されるようになりました。


しかし既存の住宅や施設の場合は新たに設置しなければいけないことに変わりなく、充電器の本体費用と設置工事費用は、電気自動車の所有で必要なコストです。


ただ、「どこまでやるか」というのが大きなポイントで、充電設備も電気自動車同様に技術や規格が日進月歩で進化していますから、まずは3kW普通充電の一番簡易な充電コンセントでよければ、本体に設置工事を合わせても安くて数万で設置できるケースもあります。

バッテリー交換費用

電気自動車に関するネガティブな意見の代表格に「バッテリー交換費用の高さ」があり、実際2024年現在でもまだ、容量によって100万〜300万円程度が相場と見られています。


なるべく安く買い、低いランニングコストで長く乗りたいユーザー心理からすると、補助金で安く買えてランニングコストがお得でも、バッテリー交換が必要になったら破滅だ…と考えるのも、無理はないでしょう。


ただ、まだ電気自動車自体が珍しかったひと昔前に比べ、大規模な工場が次々と建設され、走行用バッテリーが大量生産されるようになった現在は、日に日にバッテリー価格が下がる傾向にあり、いずれは交換費用も「エンジンが壊れるより安い」となるかもしれません。


電気自動車は急速な発展の渦中にありますから、状況が好転することはあっても、悪くなっていくことはないと考えられます。

電気自動車とガソリン車のコスト比較【まとめ】

今回は電気自動車とガソリン車で購入価格からランニングコストまで比較し、その他の電気自動車ならではなコストまで紹介しましたが、ここ数年ではガソリン車の価格が急激に上がって昔のように安い車が減った一方、安くて使い勝手のよい電気自動車が増えました。


完全に電気自動車とガソリン車の価格が並ぶような日はまだまだ先かもしれませんが、かつてハイブリッド車がガソリン価格の上昇とともに脚光を浴びたように、ランニングコストの低さで電気自動車が圧倒的有利になる日も、夢ではありません。


あくまで個別の事情によるとはいえ、既に「ウチなら電気自動車の方がいい!」というユーザーもいて、今後も急激ではないにせよ、次第にその数を増やしていくことでしょう。

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