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EVの車両価格は今後どうなるのか

脱炭素社会の実現に向け、2035年までの目標として新車販売で電気自動車(EV)100%の実現を掲げている日本政府。ところが、2023年時点でEV新車販売台数は4万3,991台、シェアは全体の1.66%と心許ない数値です。

しかしながら、これまでEV普及の大きな障壁となっていた高額な車両価格が近年、新設計のバッテリーや、製造工程・コストの削減に大きく貢献する生産技術の登場により低減に向かう兆しを見せています。国外メディアが発表した内容によると、早ければ2025年にはEVの価格がガソリン車を下回るそうです。

本記事ではEVの車両価格の大部分を占めるとされているバッテリーの基本を振り返りつつ、新たな技術と低価格化の今をお伝えします。

目次

  1. EVの車両価格を釣り上げているバッテリー
  2. LFPバッテリーがEVの低価格化に貢献
  3. 数年以内にEVの製造コストがガソリン車を下回る可能性も
カースモーラちゃんポイント
  • EVのバッテリーは車両価格の大部分を占めているんだ。
  • 2020年にBYDが独自開発のバッテリーを発表し、EVの低価格化に大きく貢献する技術として注目されているよ。
  • バッテリー技術と同じく、車体パーツを成型する生産技術も低価格化において注目されているみたい。

EVの車両価格を釣り上げているバッテリー

EVの車両価格を釣り上げているバッテリー

ガソリン車と比べて、車両価格が高額とされているEV。その車両価格を釣り上げる大きな要因となっているのはバッテリーです。EVの製造コストのうち、バッテリーの価格が占める割合はおよそ20〜30%、販売価格においてはおよそ半分程度とも言われています。


そもそもEVのバッテリーはモーターの動力となる駆動用バッテリーと、ガソリン車と同じようにライトやオーディオなどを動かす補機用の鉛バッテリーの二つ。そして高額とされているのは駆動用のバッテリーです。


EVのバッテリーに必要とされる条件は以下の三つ。


  • 使い捨ての乾電池のような一次電池ではなく、放充電を繰り返せる二次電池であること
  • 充分なエネルギー密度を持つこと
  • 充分な航続距離を確保できる容量があること

現在EVの主流とされているのはこれら三つの条件を満たすリチウムイオンバッテリーです。そんなリチウムイオンバッテリーは容量によって高額になるのがポイント。モデルによって差はあるものの、EVに使われているバッテリーの容量は、4人家族の世帯の半周間分に相当するとされています。


さらに、リチウムイオンバッテリーに使われている正極材料も、バッテリーを高額にしている要素の一つ。バッテリーは正極材と負極材と電解液が化学反応を起こすことで電気を生み出します。そして、EVのバッテリーの主流とされているのが三元系正極材、ニッケル、マンガン、コバルト(NMC)です。


これらのレアメタルの費用はバッテリー価格にも影響し、コバルトに関してはおよそ20~30年で枯渇すると予測されていることから相場が下がらない現状。


そんなEVのバッテリーの主流、NMCバッテリーに変わる新たな選択肢として現在、正極材料にリン、鉄、リチウムを用いたLFP(リン酸鉄リチウムイオン)バッテリーが注目を集めています。

LFPバッテリーがEVの低価格化に貢献

LFPバッテリーがEVの低価格化に貢献

これまでLFPバッテリーは、NMCバッテリーと比べて生産コストの点では優れているものの、重量あたりの蓄電容量が少なく、航続距離においては劣るためEVに多くは採用されてきませんでした。


ところが2020年、BYDが薄く細長い形状によって高エネルギー密度を実現し、これまでの欠点を克服した独自開発のLFPバッテリー「ブレードバッテリー」を発表したことで状況は覆ります。


BYDはブレードバッテリーを用いて、三元系バッテリーと同レベルの航続距離を実現しながらも生産コストを抑えたEVの開発に成功。それにより2023年第4四半期、これまでEVメーカーのトップを維持してきたテスラを抜き、販売台数首位を獲得しました。


近年ではテスラをはじめとした競合メーカーもBYDに追随し、LFPバッテリーの開発・導入に取り組んでいます。


2017年には、アメリカの総合情報サービスを提供する「ブルームバーグ」のエネルギー経済環境のリサーチ部門「BNEF(ブルームバーグ ニュー エナジー ファイナンス)」が、早ければ2025年にEVの価格はガソリン車よりも低くなる可能性があるとの予測を発表しています。バッテリーの価格に関しては2030年までの間になんと、およそ77%も下落する予想です。


BYDが2023年に日本市場に参入し、補助金適用込みで実質200万円台を実現したコンパクトEV「DOLPHIN(ドルフィン)」を発売した出来事からも、ブルームバーグの予測の信憑性の高さが伺えます。

数年以内にEVの製造コストがガソリン車を下回る可能性も

数年以内にEVの製造コストがガソリン車を下回る可能性も

2024年3月、アメリカの調査会社「ガートナー」が新たな製造手法によって2027年までに同等のガソリン車よりも平均して安く生産できるようになるとの予測を発表しました。それにより現在、バッテリーと並んでEV低価格化に大きな貢献をするとされ、注目を集めているのが「ギガキャスティング(ギガキャスト)」です。


ギガキャストとは、大型の鋳造設備を用いてアルミニウム合金を金型に流し込み、車体パーツを成型する生産技術のこと。これまで自動車の大型部品は、加工、溶接を含む複数の工程を経て製造されてきました。ギガキャストはそれらの工程を大幅に短縮、生産を簡素化することにより、製造コスト低減に大きく貢献する技術とされています。


2020年にテスラが実用化したのに続き、国内大手のトヨタも2026年に発売を予定している次世代EVにギガキャストを導入することを発表しています。


そんな車両価格低減に次いでギガキャストに期待されているのが、素材が従来の鉄からアルミニウムへと変更されることによる車体の軽量化です。アルミニウムの比重は鉄の1/3程度。そのため、軽量化に伴う航続距離の増加にも期待できます。


このように、EVの製造コストの根本的な削減が進む中、ユーザーにとって懸念されるのが補助金の有無です。これまで、日本国内で交付されているCEV補助金をはじめ、世のEV普及は補助金によって支えられてきたと言っても過言ではありません。


しかしながらEVの低価格化が進み、数年で同等のガソリン車を下回るとされている昨今、突然廃止とまではいかないもののこれまで多くの予算を掛け、国力をあげて注力してきた補助金の減額は免れないでしょう。今後はEV関連予算を、充電インフラや燃料電池自動車(FCV)をはじめとした、今もなお充分に普及していない領域へのさらなる予算配分が予想されます。

カースモーラちゃんまとめ

今回はEVの車両価格の今後についてお伝えしたよ。

高額なEVの車両価格の大部分をバッテリーが占めているよ。製造コストにおいてはおよそ20〜30%、販売価格においてはおよそ半分程度と、バッテリーは車両価格に大きく影響を与えているんだ。

そんなEVバッテリーはこれまでNMC(ニッケル、マンガン、コバルト)バッテリーが主流とされてきたみたい。ところが、2020年にBYDがLFPバッテリーの欠点を克服した独自開発の「ブレードバッテリー」を発表。NMCバッテリーと同レベルの航続距離を実現しながら生産コストを抑え、EVの低価格化に大きく貢献したんだ。

そんなバッテリーと並んで注目されているのが、ギガキャストと呼ばれる金型により車体パーツを成型する生産技術。生産コストの削減や生産工程の短縮はもちろんのこと、素材も従来の鉄からアルミニウムに変更されるから軽量化やそれに伴う航続距離の増加にも期待できるんだ。

近い将来、EVがガソリン車の価格を下回る日が来るみたい。今後の技術発展がとっても楽しみだね。

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