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燃料電池自動車(FCV)は普及するのか
公開日:2024/07/13更新日:2024/07/13
しかしながら、2023年度の新車販売台数はEVと比較しても1/100以下と、非常に厳しい状況。主な原因はFCVの燃料となる水素ステーションの数の少なさと、補助金の利用を考慮しても高級車と変わらないその車両価格にあります。
FCVはEVが持つ欠点を克服している一方で、まだまだ課題は多いと言えるでしょう。今回はそんなFCVの現状から普及に対する課題点を踏まえ、今後普及していくのかについて考察します。
目次
カースモーラちゃんポイント
- FCVは水素と酸素の化学反応によって燃料電池で発電、その電力を使って走行する自動車なんだ。
- メリットが多い一方で、水素ステーションの普及は充分に進んでいないみたい。
- EVと比較しても高額な車両価格も普及を妨げる要因になっているよ。
FCV・FCEVとは
そもそもFCV(Fuel Cell Vehicle)・FCEV(Fuel Cell Electric Vehicle)とは、燃料電池自動車のこと。水素と酸素を化学反応させることによって電気を発生させる燃料電池で発電を行い、それによりモーターを駆動させて走行する自動車を指します。
そのエネルギー源には水素と酸素を用いるため、排出するのは化学反応による水のみ。走行時にCO2をはじめとした温室効果ガスを一切排出しないため、その環境性能が注目されています。
さらに、ガソリン車と比較して低振動かつ静音性に優れているのも特徴の一つ。閑静な住宅街や夜間などでも騒音問題を気にすることなく利用できます。
FCV最大の特徴は、航続距離が長いことと、エネルギー補給時間が短い点です。
環境性能や静音性などはFCVと同じくエコカーとして注目を集めるEVと比べて特別な差は感じられないものの、水素は電気よりも高いエネルギー密度を持つのがポイント。加えてエネルギー効率の面でもガソリン車の15〜20%の倍、30%以上を実現しています。そのため、航続距離に課題を抱えるEVよりも一充填で長い距離を走行できます。
そして、ガソリン車と遜色ない時間でエネルギー充填が可能なのも嬉しいポイント。充電時間が長いことで知られるEVに優っている点だと言えるでしょう。
また、FCVはEVと同じく走行に電気を利用することからV2H(Vehicle to Home)に対応し、災害時などに非常用電源として利用することもできます。
FCVの現状
2023年度のFCVの新車販売台数は422台、普通車の燃料別新車販売台数から見ると、その割合はわずか0.02%にとどまります。一方で、EVはというと2023年度の新車販売台数は4万3,991台、シェアは全体の1.66%と、販売台数に関してはFCVの100倍以上。
FCVメリットが多いにも関わらず、EVにここまで大きく引き離されている原因は、水素ステーションの少なさです。2024年4月時点で、全国の水素ステーションは152箇所のみ。そして、設置されているエリアは、首都圏、中京圏、関西圏、九州圏の四大都市圏をメインに、それらを結ぶ幹線沿いを中心としたエリアです。
つまり、関東圏より北側にはほとんど設置されていないということ。いくら一充填あたりの走行距離が長いとはいえ、水素ステーションが少なくては運用が難しいことは想像に難くありません。
そして、高額な車両価格もFCVの普及を妨げている一つの要因として挙げられます。EVに関しても同クラスのガソリン車と比較すると車両価格が高額なことで知られていますが、FCVの価格は最低でも700万円以上からとさらに高額。
日本政府が交付するCEV補助金(クリーンエネルギー自動車導入促進補助金)が利用できることに加えて、補助金額はEVの最大85万円よりも高額な最大232万円となっているものの、それでも400万円台は下回りません。
FCVが普及しない理由は、水素ステーションの少なさや、補助金を利用しても高級車クラスの車両価格にあると言えるでしょう。
FCVは今後普及するのか
現時点の新車販売台数におけるFCVのシェアは2023年度で0.02%と、普及の遅れが指摘されているEVの1.66%と比べてもわずかです。
しかしながらエネルギー密度・効率が高くガソリン車と同等の航続距離を実現しています。そのため、長距離の運転が想定される職種や、トラックなどはEVよりもFCVが向いていると言えるでしょう。
さらに、EVではネックとされているエネルギー充填の時間に関しても5分程度と、ガソリン車と変わらない時間を実現しています。
これらのメリットを見ると、FCVはEVが抱える問題の多くを解決していることがわかります。
一方で、現時点で購入できるモデルも2014年に登場し、2020年には2代目が発売されたトヨタの「MIRAI」、2019年に登場したメルセデス・ベンツの「GLC F-CELL」、2022年に登場したヒョンデ「ネッソ」の三車種のみ。
販売車種の少なさは、国外においても水素ステーション普及が充分に進んでいないことを意味します。現在水素ステーションの普及に向け、日本政府が補助金の交付を実施しているものの、充分に進んでいない現状を鑑みると、メーカーがFCV開発に躊躇するのは当然の結果と言えるでしょう。
その理由の一つとされているのが、参入障壁の高さです。そもそも水素は密度が低いため、漏洩しやすいのが懸念点として挙げられます。加えて、その他のガスと比較しても発火に必要なエネルギーが低いことから発火、爆発を起こしやすいとされています。
そのため、安全対策の規制が非常に厳しく、水素ステーションの設置工事にはガソリンスタンドの倍以上の費用が必要です。さらに、FCVの普及率が低いこともあり、高額な初期費用や運用費の採算を取るのが不可能に近いのが現状。
今後よりFCVを普及させるためには、さらなる水素ステーションの普及はもちろんのこと、前述した高額な車両価格の低減が必須と言えるでしょう。
カースモーラちゃんまとめ
FCVは水素と酸素を化学反応させることによって電気を発生させる燃料電池で発電を行い、それによりモーターを駆動させて走行する燃料電池自動車のことなんだ。
そんなFCVは走行時に温室効果ガスを一切排出しない環境性能や、優れた静音性、EVと比較して航続距離が長いこと、エネルギー補給時間がガソリン車と変わらないなど、多くのメリットを持ってるよ。
長所が多い一方、2023年度の新車販売台数は普及の遅れが指摘されているEVの4万3,991台を大きく下回る422台と、苦戦を強いられているみたい。
FCVの普及が進まない主な理由は、エネルギー充填に必要不可欠な水素ステーションが2024年4月時点で152箇所のみと少ない点と、最低でも700万円以上からと非常に高額な車両価格の二つ。
今後FCVが普及するためには水素ステーションのさらなる普及と、車両価格の低減が必要不可欠なんだ。