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今後EVの充電時間は短くなるのか?
公開日:2024/07/14更新日:2024/07/14
そんなEVの充電時間を左右するのは充電器の出力です。例えば3kWの普通充電器を用いた場合、1時間充電すると3kWのみしか充電できませんが、40kWの急速充電器を利用すれば40kW充電することができます。
このようにEVの運用効率にも大きく影響する充電器。近年では急速充電器が増えつつあり、今後はスタンダードになることが予想されます。
目次
カースモーラちゃんポイント
- EV充電器には普通充電器と急速充電器の2種類があるんだ。
- 近年では急速充電器が増え、さらなる高出力充電器も出てきているよ。
- 2024年5月からは急速充電器設置に対する優遇措置もはじまったみたい。
現状のEVの充電時間
現在、EVの充電設備には普通充電器と急速充電器の二つが存在します。両者は出力が異なり、急速充電はその名の通り、普通充電と比べて充電時間が短いのが特徴です。
そして普通充電器とは、単相交流200Vが電源に用いられ、交流充電方式が採用された充電器のこと。出力は3〜6kW程度のものが多く、主に自宅やマンション、ホテル、屋外駐車場などに設置されています。
バッテリー容量が40kWのモデルを、出力3kWの普通充電器を用いて充電する場合の計算式は以下の通り。
40kWh(必要電力量)÷3kW(充電器の出力)=13.33時間
一方で、急速充電器は高速道路のサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)、道の駅、商業施設、ガソリンスタンドなどに設置される充電器です。出力はおよそ40〜150kW程度のものが多く、普通充電器に比べて、10倍以上も充電時間を短縮できる計算になります。
バッテリー容量が40kWのモデルを、出力40kWの普通充電器を用いて充電する場合の計算式は以下の通り。
40kWh(必要電力量)÷40kW(充電器の出力)=1時間
3kWの普通充電器と比較するとおよそ13倍以上もの出力を実現した急速充電器ですが、ガソリン車の給油時間がフルタンクまでおよそ5分程度とされているため、まだまだ充分とはいえません。
しかしながら、EVが抱える航続距離の課題の解決策の一つとして近年ではより高出力のEV充電器の開発も進んでいることから、今後は急速充電の需要がますます高まるのではないでしょうか。
今後は高出力充電器が主流に
今後のEV充電器は、現在の急速充電器よりもさらに高出力の充電設備が主流となり、充電時間も大幅に短縮されることが予想されます。
そもそも2024年3月末時点での国内EV充電器の普及状況は全国でおよそ2.2万口。そのうち普通受電機は約13,000口、急速充電器は約9,100口と、日本政府が2030年までの目標として掲げる「公共用の急速充電器3万口を含む30万口の充電インフラ整備」には遠く及ばない状況です。
現在EVは、ガソリン車と比べて航続距離が短いとされ、今後さらに普及率を上げるためにもバッテリーの大容量化をはじめとした課題解決が求められています。
高出力のEV充電器も短い航続距離を補う解決策の一つと言えるでしょう。日本政府の目標に「急速充電器3万口を含む」と条件を加えていることからもわかる通り、今後急速充電器はEVの普及において重要な位置付けとなることが予想されます。
近年では2021年に登場したテスラの「スーパーチャージャーV3(最大出力250kW)」や、2023年にCHAdeMOの2.0.1認証を取得して最大出力240kWに対応した「株式会社パワーエックス」の「Hypercharger」をはじめとした、より高出力に対応したEV充電器が登場しています。
2024年5月には、EV充電のインフラ整備を支える「株式会社e-Mobility Power」と、電力インフラやエネルギーを扱う「株式会社東光高岳」の両社が一口最大出力350kW、総出力400 kWの次世代超急速充電器の共同開発に合意したことで注目を集めています。CHAdeMO規格で10分間で航続距離およそ400kmに相当する充電が可能になる最大出力350kW急速充電器の開発は、世界初の取り組み。EV充電器の高出力化時代到来を物語る出来事と言えるでしょう。
EV充電器の更なる高出力化は、今後のEV普及を支える柱となるのではないでしょうか。
高出力充電器を優遇した設置補助制度も
日本政府は、かねてより実施してきた「クリーンエネルギー自動車の普及促進に向けた充電・充てんインフラ等導入促進補助金」通称「充電インフラ補助金」により、EV充電インフラ整備を進めてきました。
しかしながら、高出力の充電器に関しては普及がまだまだ充分ではなく、経済産業省が2024年5月より優遇措置を開始。その内容は高速道路に設置する急速充電器の中でも出力が150kWを超える充電器の設置に対して、150kW未満の補助金額400万円と100万円の差をつけ、1口あたり500万円の補助金を交付、高出力充電器の導入を促すというものです。
高速道路を対象にした長距離運転における充電経路の確保に加えて、現在もなおEVシフトが充分に進んでいない大型トラックをはじめとした長距離運用を目的とした車両に向け、充電による時間ロス削減をアピールする狙いがあると見られます。
さらに、これまで商業施設などに関しては1回の申請あたり原則2口までを補助対象としていたところ、駐車スペースが200台を超える大型駐車場を対象に50口まで保障対象を広げました。
より高出力な急速充電器の増設によるEVシフトの推進に加え、多方面の事業者に向けてEV充電器の設置を促すための措置と言えるでしょう。
高出力の充電はバッテリーへの負荷も
充電による時間ロスを減らすことで、EVの運用効率化が期待される高出力の充電設備。しかしながら、普通充電と比べるとバッテリーへの負担が大きいというデメリットもあります。
EVに用いられるリチウムイオンバッテリーは、寒冷地などの低音環境に弱いのはもちろんのこと、熱にも弱いのが特徴です。
高出力の充電器を用いた充電は、低出力の普通充電と比べて一度に供給する電力が多いため、必然的にバッテリーの温度は上昇しやすくなるのがポイント。すると、バッテリーには大きな負担がかかり、劣化を早める原因になってしまいます。
特に気をつけなくてはならないのが、高速道路のサービスエリアをはじめとした、高速走行した後の充電時。長距離の高速走行によって熱を持ったバッテリーに対して急速充電をすると、バッテリーへの負担は非常に大きくなります。
できるだけバッテリーの劣化を予防するためにも、高速道路を利用する際はあらかじめ充電計画を立て、連続での急速充電は避けるのがおすすめです。
カースモーラちゃんまとめ
現在EV充電器は出力3〜6kW程度の普通充電器と、40〜150kW程度の急速充電器の2種類があるんだ。
充電時間の短縮にもなる急速充電器はEVが抱える航続距離の課題の解決策にもなるため、近年ではさらなる高出力の充電器が登場しているよ。
2024年5月には「株式会社e-Mobility Power」と「株式会社東光高岳」の両社が一口最大出力350kW、総出力400 kWの次世代超急速充電器の共同開発に合意をしたみたい。
今後はさらに高出力な充電器が主力となり、ガソリン車の給油時間と変わらない時間でEVが充電できる時代が来るかもしれないね。