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EV車にもエンジン音を!各メーカーが手掛ける擬似サウンドや擬似エンジン音って何?

いずれ来るEV時代のために、各自動車メーカーはガソリン車のような擬似エンジン音を搭載する方向に進んでいます。ガソリン車のエンジン音が好きな人たちから、EVにしか乗ったことのない時代の人たちへの贈り物になるかもしれません。EVへの過渡期となる今、EVの面白みを引き出すひとつとなる擬似エンジン音と擬似サウンドについてご紹介していきます。

目次

  1. いずれ無くなってしまうかもしれないエンジン音の魅力とは?
  2. ヤマハ発動機の擬似エンジン音「alive AD」
  3. まとめ

いずれ無くなってしまうかもしれないエンジン音の魅力とは?

いずれ無くなってしまうかもしれないエンジン音の魅力とは?

現在各自動車メーカーは、EVをさらに面白くするためのさまざまな開発が進められています。擬似マニュアル・トランスミッションを搭載することや、『DODGE』がエンジンの振動を再現する装置を開発し特許を申請したなどワクワクするニュースが飛び込んできました。


そしてもうひとつ、ガソリン車のような擬似サウンドを搭載する方向に進んでいることも大きなトピックです。いずれガソリン車が姿を消しても、車好きが愛してやまないエンジン音が残っていれば、古き良き時代を思い返せるのかもしれません。


自動車メーカーがこだわって開発している擬似エンジン音ですが、エンジン音にはどのような魅力があるのか、紹介していきます。


・車の個性を際立たせている


エンジン音は、車によって全く違う個性の塊です。メーカーはもちろんのこと、車種によっても大きく異なります。遠くから響いてくるエンジン音で、車種が分かるほど特徴的なものも多いことは、車好きには当たり前のことではないでしょうか。


つまりエンジン音は車の個性であり、車の性能やパフォーマンス、ひいてはポテンシャルを表しています。聞くものに心地よさを与え、ドライバーには運転する喜びを与えているといえるでしょう。


・モータースポーツ


レース会場に向かう途中、サーキットを走行するレースカーの音が聞こえてくるだけでワクワクして、足早になることがあります。『F1』 をはじめとするモータースポーツが与える影響は非常に大きいものです。


「天使の咆哮」と呼ばれるエンジン音を持つ名車が日本には2台あります。美しい名前の通り、高音域での響きの心地よさからこのように呼ばれています。例えば「マツダ787B」のエンジン音は、伝説となるほど美しいものでした。もう一台は「レクサスLFA]ですが、どのようなサウンドだったかは後ほど詳しくご紹介します。

騒音規制法がエンジン音に拍車をかける

自働車の騒音規制に関する法律は「騒音規制法」に定められており、車の種類によって騒音の許容限度を定めています。騒音規制は段階的な改正を行っている段階で、現在はフェーズ2の騒音基準が適用されていますが、近年では内燃機関の車に対して厳しさが増しているようです。


フェーズ1は過去に適用されていた規制で、乗用車の騒音レベルに制限を加えていました。2020年10月からフェーズ2の規制が始まっています。乗用車の騒音レベルの最大値が70〜74dBに決められましたが、GT-Rやクラウンではこの数値を下回ることが難しいとされていました。


2024年以降にフェーズ3へと移行する予定で、この規制は国際基準の「UN Regulation No.51-03 Series(通称R51-03)」に基づくものです。施行されれば、さらにシビアな規制がかけられることが予測されています。また欧州で販売される車については「ユーロ7」という規制がかけられるようです。2024年の秋以降に販売される新型車に適用され、継続販売車においても2026年秋から施行される予定。


これは内燃機関車両ではクリアできないレベルとされ、現在の内燃機関車両は絶版となるほどのものという心配なニュースも聞こえてきます。しかし、自動車メーカーは、欧州の「ユーロ7」に適合する開発を続けているようなので、しっかりとした対策は今後立てられるのではないでしょうか。


騒音規制が国際基準になったことでエンジンやマフラーからの音を出すことが難しくなっていくと思われます。エンジンそのものの音にこだわることができなくなるであろう、近い将来に向けて自動車メーカーが方法のひとつに選択したのが、電子デバイスで作った擬似サウンドを車内に響かせる方向でした。


EV車でも差別化を図るために、音による演出ができれば楽しみになります。今後EVの普及が進んだときに、物足りなさを補うエンジン音を、各メーカーが独自で作っているのも、頷けます。

各メーカーの擬似サウンドとエンジン音づくり

擬似エンジン音というのは、エンジンの回転数や走行モードに応じて、車内のスピーカーから電気的に作られたサウンドを発生させるものです。最適なエンジン音をスピーカーを通して聞くことができます。


例えば『マツダ 』ロードスターの「アクティブ・エンジン・サウンド」や『トヨタ 』86の「アクティブ・サウンド・コントロール」、『スバル』の「サウンド・クリエーター」などは、エンジンの生の音を車内に取り込むものです。


擬似エンジン音を搭載したEV車には、『アバルト』500eがあります。アバルトのガソリン車が発する加速や原則、ブレーキングやコーナリングなどさまざまなサウンドを録音し、新しい音色を作り出すために6,000時間かけて再現しました。


擬似サウンドには、大きな意味でエンジン音も含まれますが、ここではエンジン音のことだけを差していません。車内の音響などさまざまな音に対して使われるものを擬似サウンドと定義します。


擬似サウンドを取り入れているEVには『ヒョンデ 』IONIQ5 Nが挙げられるでしょう。Nブランドはスポーツモデルのことで、サーキットもこなせるハイパフォーマンス仕様。


音は3種類ありlgnitionはレシプロエンジン、Evolutionはヒョンデのレースカー、そしてSupersonicはジェット戦闘機のサウンドが車内に広がります。EVでもエンジン音をさせると楽しくもあり、気持よく運転することができるものです。

各メーカーのサウンド名

各メーカーが作り出す擬似サウンドには共通の名称が決まっているわけではありませんが、国産メーカーの多くは「アクティブ サウンド コントロール」と呼んでいます。対する輸入車メーカーでは使用している名前はバラバラです。また、擬似エンジン音を使用しているメーカーも以下に名称を入れておきましたので、参照してみてください。


メーカー擬似サウンド名擬似エンジン音
トヨタ・日産・ホンダアクティブサウンドコントロール(ASC)

メルセデス・ベンツ

サウンドエクスペリエンス
Serene Breeze
BMWBMWアイコニック・サウンド・エレクトリック
アウディe-sound
マセラティマセラティ・インテリジェント・アシスタント

多くのメーカーが擬似サウンドや擬似エンジン音に独自の名称を付けています。また多くの自動車メーカーが、擬似サウンドの開発に取り組んでいることも理解できるのではないでしょうか。

ヤマハ発動機の擬似エンジン音「alive AD」

ヤマハ発動機の擬似エンジン音「alive AD」

『ヤマハ発動機』はもともと楽器の製造を行っていた現在の『YAMAHA』から分離して、オートバイの製造をスタートさせています。現在ではボートやヨットなどのマリン製品、バギーやスノーモービル、産業ロボットなどさまざまな業種に活躍の場を広げてきました。


また自動車関連の製品も多く手掛けており、エンジンやショックアブソーバーシステム、電動モーターユニットの開発を行い、従来より生産を請け負ってきた『トヨタ自動車』をはじめとする国内外の自動車メーカーに高性能エンジンを供給してきました。


忘れてはならないヤマハ発動機のエンジンといえば、「トヨタ レクサス LFA」です。先にも述べてきた「天使の咆哮」と呼ばれる国産車は2台しかなく、1代は「マツダ787B」で、もう1台が「レクサスLFA」でした。


ヤマハ発動機製V型10気筒4.8L1LA-GUE型のエンジンは、出力性能はもちろんのこと音のプライオリティが高く、F1マシンを思わせるハイトーンのエンジン音は唯一無二の存在です。エンジンそのもののサウンドから、室内に響く聞こえ方までヤマハ発動機が細部までこだわり抜いています。


ヤマハ発動機が擬似エンジン音の開発を行うきっかけとなったのは、先にも述べた騒音規制の強化によるものでした。段階的に厳しくなる規制に対して、エンジンやマフラーから音を出すのは難しいと考え、電子デバイスによる擬似エンジン音を作り出すことに成功しています。

「alive AD」とは

専用の音響LSIを内蔵したコントロールユニットと専用のスピーカーで走行音を調律することで、魅力的なサウンドを響かせます。エンジンの音やタイヤから伝わる振動や騒音、走行時の風きり音などのランブル音から、EV独特の高周波までリアルに再現することができました。


さまざまなドライブシーンで自然な駆動音を演出することで、高揚感や躍動感を感じることができます。海外メーカーの『BOSE』や『ハーマン』はすでにEVサウンドの電子デバイスを事業展開してきました。


例えば『BMW』 はハーマンを採用し、SFの世界を想像させるような未来的な加速音を取り入れて話題になったことも記憶に新しいのではないでしょうか。海外メーカーが車種に合わせた作り込みを自動車メーカーに任せていることに対し、ヤマハ発動機では車種に合わせた詳細な造り込みまでできる仕様にしています。


現在のところ、自動車メーカーでの採用実績はありませんが、EV市場が成熟していけば、需要の拡大が期待できるものになりそうです。私たちユーザーがこのサウンドを耳にする日もそう遠くはないかもしれません。

まとめ

まとめ

車の持つ面白みのひとつにエンジン音がありました。ドライバーのアクセル操作に応じて車を操っている楽しさを感じることが高揚感を高めています。しかしEVのモーター音は、ドライバーに届くことはありません。楽しさを感じるという意味では、EVよりもエンジンを持つ内燃機関の方が高いといえるでしょう。


現在のところ擬似サウンドは、各自動車メーカー独自のサウンドが使用され、擬似サウンドの名称も異なっています。


例えば『マツダ MX-30』では6気筒エンジンのように聞こえるサウンドを使用した擬似エンジン音を採用しました。また『BMW』では『アカデミー賞』受賞経験を持つ映画音楽の作曲家がかかわったSFを思わせるような擬似サウンドが使われています。


音は好みによって大きく異なり、エンジン音も爆音が好きな人、甲高いスポーツカーの音に惹かれる人、戦闘機の音が好きな人などさまざまです。擬似エンジン音や擬似サウンドにおいてはどんな音を使うのか、いつ使うのか、特別なモードを設定するのかなど決まっているわけではありません。


擬似エンジン音や擬似サウンドが自動車メーカーごとに差別化されることで、メーカーや車種の魅力を高めることにつながる可能性も秘めています。今後もEV車の擬似サウンドが一般的に定着するまで時間がかかりそうです。発展途上の擬似エンジン音や擬似サウンドがどのようになっていくのか、期待が高まります。

著者プロフィール

【KAKO MIRAI】車好きから始まった自動車サイトでの執筆は、パーツからチューニングまで多岐に渡る。トルクフルなV8サウンドに魅せられて、ユーロライクなCAMARO Z28から乗り換えたDODGE CHARGER HEMIと、CADILLAC XT5でアメ車を満喫中。最近まで足車はCHEVROLET SONICという筋金入りのアメ車好き。 いつかガソリン車のDODGE CHARGER Hellcat Redeyeを手に入れる夢が断たれ、現在の目標はCHEVROLET Corvette C8。内燃機関好きから見たEVを徹底分析していきます。

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