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今やEVレースはオフロードやラリーも行われている⁉新しいカタチのレースをご紹介

4月に東京で開催された「2024 Tokyo E-Prix」が成功裏に幕を閉じ、『フォーミュラe』の存在が少しは身近に感じられるようになりました。まだまだ日本ではEVレースについては知られていないのが現状です。そこで世界で行われているEVレースの、オフロードやラリーなど規格外のレースについてご紹介していきましょう。

目次

  1. エクストリームE
  2. ADACオペルeラリーカップ
  3. コルサeラリーとはどんな車?
  4. IONIQ5 N eN1 Cup
  5. ポルシェ・ミッションR
  6. 番外編:パイクス・ピーク・インターナショナル・ヒルクライム
  7. まとめ

エクストリームE

気候変動の影響に対する認識を高めるために、気候変動の変化がすでに表れている地域に行き、EVバギーでレースを行う『エクストリームE』は2019年に始まりました。当初から『F1』 レーサーも参戦しており、注目を集めています。


6年目を迎えた2024年に、2025年からはEVに変わって水素を使用した『エクストリームH』 に移行することが決定。来年からの新たな試みがどのように変化を与えるのか、期待が高まります。

概要

『国際自動車連盟(FIA)』の公認するオフロードレースをご存知でしょうか。2019年に始まったこのレースは「地球環境の保護に役立つEVの市場浸透を促進する」という大きなビジョンが掲げられています。


またエクストリームEがめざすものには


・平等
・環境
・娯楽
・モビリティ
・エネルギー

があり、気候変動によって世界中の生態系に起こっているさまざまな問題に関心を持ってもらうために立ち上げられました。EVのバギーを使用して世界中の自然を舞台に繰り広げられ、環境保全運動にも参加しています。

このコンセプトに共感したモータースポーツ界の有名選手も賛同し、『F1』ドライバーたちが自らチームを設立して参戦しています。例えばジェンソン・バトンのチームは「JBXE」です。
またレースに参戦するドライバーは各チーム男性女性ひとりずつの2名を揃えることが義務付けられました。平等を目指す『エクストリームE』ならではのレギュレーション、国際的なモータースポーツでは初の試みとなります。

フォーミュラカーとして仕上げられたレーシングカーの魅力もさることながら、世界中の難関コースをものともせず疾走するEVオフロード車の迫力は、すさまじいものです。


視聴の方法は、衛星放送やケーブルTVなら『スカパー』や『J:COM』など。オンデマンドで見るなら『J SPORTSオンデマンド』で見ることが可能です。

2024年の開催地

今年はサウジアラビア・ヨーロッパ(未定)・イタリア(サルデーニャ島)・アメリカ(フェニックス)で開催予定です。

新しいレース形式と各チームの紹介

無観客でのレースとなるため、ファンがお気に入りのドライバーに投票する形で参加することができる「Grid Play」システムを採用。『エクストリームE』のWebサイトなどで投票することができます。


得票数が多いチームが決勝のスターティンググリッドを選択するという、新しい試みもファンを楽しませているひとつです。

チーム紹介

・アクシオナ|サインツXEチーム(スペイン)


ラリー界のレジェンドカルロス・サインツによって結成されたチーム。2023年は転倒による車両破損のアクシデントもあり総合2位で終えているので、今年は総合優勝を目指しています。


・E.ONヴェローチェレーシング(イギリス)


Veloce Esportsチームによって設立されたヴェローチェレーシングは、元『F1』 ドライバーのジャン エリック・ベルニュを監督に迎えて2023年は総合3位となっています。


・JBXE(イギリス)


『F1』 ドライバーのジェンソン・バトン率いるJBXEは、ジェンソン・バトンの頭文字にXEはExtremeを略して名付けられました。当初はバトン自身がドライブすることが発表されていましたが、デビュー戦後に辞任を決意しています。昨年の総合で9位となり、課題が多く残りました。今期の活躍に期待が高まります。


・LEGACY MOTOR CLUB(アメリカ)


北米から新規参戦チームとして登場したのがLEGACY MOTOR CLUBです。今期の『NASCAR』カップシリーズで「トヨタ カムリXSE」で参戦しているジミージョンソンが自身でドライブすることを発表しています。新たなチームがどのような走りを見せるのか、楽しみですね。


・ROSBERG X RACING(ドイツ)

2016年に『F1』 のドライバーを引退したニコ・ロズベルグがチームを率いて手腕を発揮しています。2023年はシーズンフィナーレを優勝で飾り、緊迫した戦いを制しました。今年も熱いバトルを繰り広げてくれることを期待したいものです。

ADACオペルeラリーカップ

ADACオペルeラリーカップ

ドイツ自動車連合の『ADAC』 と『オペル』が2020年から開催しているEVラリー選手権は、若手ラリードライバーの育成カテゴリーとして誕生しました。2021年には『ドイツ・ラリー選手権』と併開催され、2023年には4カ国で8戦を行っています。最終戦は『WRCセントラル・ヨーロッパ・ラリー』と併開催されるなど、年々注目を集めてきました。


2024年も8ラウンドで構成され8月に行われる『ADACラリー・ズーリンゲン』で幕を開けます。ドイツ国外に遠征し、オランダやフランスなど5カ国で開催が決定。日本ではほとんど知られていない熱狂的なラリー戦が繰り広げられます。5人の女性ドライバーが参戦しているのも見どころのひとつです。

コルサeラリーとはどんな車?

初代コルサが誕生したのは1982年のことでした。現行で6代目を迎えていますが、2代目と3代目は日本でも『ヤナセ』から販売されていたので、思い出す人も多いでしょう。GM傘下で販売されていましたが、2017年に「オペル」「ボクスホール」を『グループPAS(現ステランティスN.V)』に売却しています。


量産車の「コルサe」をラリー仕様にしたモデルを2019年から販売しており、パワートレインやモーターなどは市販車と同様です。サスペンションなどは専用パーツを使用し、少しワイドなボディになっています。Bセグメントのコンパクトハッチのスタイルは健在で、EVモーターならではの加速力が楽しめるでしょう。

IONIQ5 N eN1 Cup

韓国最大の『ヒュンダイNフェスティバル』は、プロを対象としたワンメイクレースの祭典です。レース専用車両で戦う「AVANTE N1 Cup」やノーマル車輌で戦う「AVANTE N2 Cup」に加えて2024年からEVを使用した「IONIQ5 N eN1 Cup」が設定されています。

レース車両

レースで使用する車両は日本未導入の「IONIQ5 N」をベースにしていますが、出力は市販モデルのままで、最大650馬力を発揮するハイパフォーマンスモデルです。大幅なダウンフォースを手に入れるためにリップスポイラーとリヤウィングを装着しています。


コーナリング性能の向上のためオーバーフェンダーに仕上げたスタイルは、レースカーのカッコよさを押し出したデザイン性です。EV車両の弱点でもある重量の重さも軽量化が図られています。


内装を取り外し、FRPボンネットやポリカボネートウィングの採用によって市販車のIONIQ5 Nの2,100kgを約1,970kgに軽量化が図られました。

EVレースならではの演出

・普段は使用できない最高出力を出せる「NGBオーバーブースト」の使用
・変速の挙動を実現する「バーチャルシフト」
・疑似的なエンジンサウンドを奏でる「N Active Sound」。このサウンドは各レー スチームが独自に選んで設定できる


このように韓国でもEVモータースポーツが活気を帯びてきてることが分かります。フォーミュラレースやワンメイクといったさまざまな車種で行われるEVモータースポーツが、日本国内でも広がることに期待したいものです。

ポルシェ・ミッションR

数年以内に『カレラカップ』のようなワンメイクレースの開催を目指し、ポルシェが取り組んでいるのは、「Porsche GT4 e-Performance」の開発です。2023年に千葉県木更津市にある「ポルシェ・エクスぺリセンター東京(PEC東京)」で試乗体験も行われています。


Porsche GT4 e-Performanceのベース車両は718ケイマンGT4クラブスポーツです。ポルシェのカスタマースポーツ用EVフル電動レーシングのプラットフォームとして開発した「ミッションR」を使用して開発が進められました。


ミッションRha2021年にドイツで開催された『国際自動車ショー(IAA)』で発表された電動レースカーのコンセプトカー。軽さを追求してCFRP(炭素繊維強化複合材)をボディパネルやエアロパーツに採用しています。


大きな特徴となるのは「ロールオーバー・プロテクション・コンセプト」です。ロールゲージに鋼鉄製を使用するのが通例ですが、CFRPケージを採用しており、タルガルーフの応用ともいえる新しい構想となっています。

Porsche GT4 e-Performanceの装備

モーターは前後に2基搭載し、最大出力は800Kwの1088psに達するといわれています。0-100㎞/hで加速は2.5秒未満、最高速度は300㎞/hを超え、『ポルシェ911 GT3カップ』と同様のラップタイムとなるようです。


31年ほど前にドイツで初開催されたワンメイクレースの『ポルシェ・カレラ・カップ』。今では世界30の地域で開催されるまでになりました。Porsche GT4 e-Performanceも、いずれ初開催を迎えポルシェが提案するEV化が具現化される日も近くまで来ているでしょう。

番外編:パイクス・ピーク・インターナショナル・ヒルクライム

北アメリカ大陸のロッキー山脈にあるパイクス・ピークで行われるモータースポーツ『パイクス・ピーク・インターナショナル・ヒルクライム』は、一番最初にどの車が登りきることができるかを競うヒルクライムイベントです。


世界でも有数の伝統のあるレースで、全長12.42マイル(19.99㎞)のコースには156か所のコーナーがあります。またスタートとゴールの高低差は1,439m)となっていることからも険しいレースです。


EVレースではなく、通常のガソリン車も参加して競うレースですが、2018年に行われた大会で、「フォルクスワーゲンのEVモデル I.D.R Pikes Peak」が優勝を果たしました。


これまでの最速ラップは3.2LのV6ターボを搭載した「プジョー208」で、8分13秒でした。フォルクスワーゲンのI.D.Rは7分57秒148で完走しています。

まとめ

まとめ

『エクストリームE』 で使用する『オデッセイ21』は音のない大型バギーです。レースではサイドバイサイドの駆け引きをしながら、疾走していく姿が迫力満点です。


しかし『エクストリームE』 は2024年で終了し、2025年からは新たに水素を使用した『エクストリームH』 へと移行することが決定しています。燃料の変化がどのように影響をもたらすのか今のところ分かりませんが、新たな試みで楽しませてくれるのではないでしょうか。


また『ADACオペルeラリーカップ』も海外で行われているため、なかなか観戦に出かけることは難しいかもしれません。EVであることをのぞけば、普通のラリーと何ら変わらない楽しさがあります。


ライターは2022年開催の『WRCラリージャパン』を観戦した経験がありますが、サーキットではなく一般道をラリーカーが全開で疾走する姿は、ラリーでしか味わえない醍醐味です。日常の生活道路をラリーカーが190㎞/h以上で走ったりジャンプしたりすると非日常なシーンに変化したような感覚でした。


そのほかにも韓国で有名な 『IONIQ5 N eN1 Cup』やこれから始まるであろう『Porsche GT4 e-Performance』など、各自動車メーカーがEVレースを盛り上げてくれそうなレースが世界では多く開催されています。


速さだけではない新しいカタチにこだわった面白みのあるレースに期待が高まります。



著者プロフィール

【KAKO MIRAI】車好きから始まった自動車サイトでの執筆は、パーツからチューニングまで多岐に渡る。トルクフルなV8サウンドに魅せられて、ユーロライクなCAMARO Z28から乗り換えたDODGE CHARGER HEMIと、CADILLAC XT5でアメ車を満喫中。最近まで足車はCHEVROLET SONICという筋金入りのアメ車好き。 いつかガソリン車のDODGE CHARGER Hellcat Redeyeを手に入れる夢が断たれ、現在の目標はCHEVROLET Corvette C8。内燃機関好きから見たEVを徹底分析していきます。

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