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世界初の量産EVを発売した日本のこれまで

かつて日本は世界で初めて電気自動車(EV)の量産に成功、EVへの早期参入、世界トップのシェアを誇るEVのリリースなど、EVシーンを先導していました。

しかしながら、近年の日本はEVシフトの遅れが指摘されるまでに失速。2023年の新車販売台数のうち、EVのシェアは全体の1.66%程度と低い水準です。この流れはテスラが急成長を遂げ頭角を現した2015年に始まります。

それまで日本はどのようにしてEVの分野で世界をリードしてきたのでしょうか。諸外国の現状や日本政府が掲げるカーボンニュートラルの定義を交え、今後の日本のEVについて探っていきます。

目次

  1. かつてEVを牽引していた日本のメーカー
  2. 失速する日本のEV市場
  3. 日本のEVが再び世界一になる日は来るのか
カースモーラちゃんポイント
  • これまで日本は数々の功績によって世界のEVをリードしてきたよ。
  • 日産のリーフがテスラに追い抜かれた2015年に日本は失速を始めたみたい。
  • 近年ではEVだけでなく、合成燃料やハイブリッド車(HV)が注目されているんだ。

かつてEVを牽引していた日本のメーカー

かつてEVを牽引していた日本のメーカー

現在、日本の自動車メーカーはEVにおいて、諸外国と比較して遅れているとされています。しかしながら、かつての日本はEVで世界をリードしていました。


そもそも世界で初めてEVの量産に成功したのは後に「日産自動車」と合併する「プリンス自動車工業」の前身「東京電気自動車」です。同社は1947年、世界初の量産EV「たま電気自動車」を発売。鉛酸バッテリーを使用するたま電気自動車は最高速度はおよそ35km/h、航続距離96kmを達成し、当時のカタログ値を超える高性能で注目を集めました。


後の1949年には最高速度は55km/hにアップ、航続距離も200kmまで伸ばし、高い技術力を証明しました。しかしながら1950年にはバッテリーの原料となる鉛の価格が高騰し、EVを開発した理由となったガソリン供給状況が改善に向かったことから製造終了することとなります。


日本のEVが再び登場したのは、たま電気自動車の登場からおよそ60年後の2010年12月。世界初の量産EVを発売した東京電気自動車の意思を継ぐ日産が初めて発売した「リーフ」です。同車は発売から1年後の2011年から大々的なグローバル展開を開始。2014年までの間、世界で最も売れたEVとして頂点に君臨していました。


さらに、EV市場を牽引していたのは自動車メーカーだけではありません。リーフがトップシェアを誇っていた2014年、バッテリー生産量においてEVを主導していたのはパナソニック、それに次いで日産系のバッテリーメーカーAESCです。


日産がEV事業に参入した当時、日本の自動車・バッテリーメーカーはEVシーンをリードしていたと言えるでしょう。

失速する日本のEV市場

失速する日本のEV市場

日本のEVが失速を始めたのは2015年、テスラがこれまでで最高の販売台数を記録し、初めて販売実績を公表した年です。


当時のテスラが量産していたモデルは高級車として知られる「モデルS」のみ。当時急速に成長していたテスラは、航続距離に関する課題をバッテリーの容量増加により解決しました。それにより、環境問題に関心のある富裕層の間で人気を獲得。高額な車両価格に関わらず、2015年には販売数が日産のリーフを上回りました。


発売以降バッテリー容量の微増をはじめとしたマイナーアップデートを繰り返し、目立った変更を加えなかったのがリーフの敗因の一つと言えるでしょう。2016年までに累計販売台数150万台の目標も現実味を失い下方修正。日産がリーフの展開と同じく当時注力していた充電インフラ事業からも撤退を余儀なくされました。


一方で日本政府は2020年、2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロとする「カーボンニュートラル」を発表。2021年には菅 義偉元総理大臣が「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」と言う目標を掲げました。


それにより充電インフラの整備はもちろんのこと、補助金が始まるなど国を挙げたEVシフトが始まります。しかしながら、それらの施策が決定打に欠けることから普及率は諸外国と比べると低い状況です。国内大手自動車メーカーの一つ「トヨタ」のEV参入も出遅れがメディアに取り上げられているなど、日本のEVシフトの失速がさまざまな角度から指摘されるようになりました。

日本のEVが再び世界一になる日は来るのか

日本のEVが再び世界一になる日は来るのか

2023年時点の日本のEV新車販売台数は4万3,991台、普及率は全体の1.66%とまだまだ道半ばです。


しかしながら、日本政府が目指しているのは2040年までにEVと合成燃料等の脱炭素燃料の利用に適した車両を合わせて100%とするという目標です。さらに後の2050年のカーボンニュートラルにおいても「温室効果ガスの排出を全体としてゼロとする」としています。


つまり脱炭素社会の実現への道筋は、EVだけにこだわる必要はないということ。現に日本政府は2030年代前半を目処に、二酸化炭素と水素を原料にした合成燃料「e-fuel」の商用化を目指しています。e-fuelのポイントは、既存のガソリン車などのエンジンでも利用できる点。燃焼時にはガソリンと同じように二酸化炭素を排出するものの、原料としても二酸化炭素を利用するため「全体としてゼロにする」ことが可能です。


2023年3月にEUでもe-fuelの利用を条件にエンジン車が容認されたこともあり、現在世界中で注目されています。


近年ではアメリカのEVシフトも緩やかになり、2023年度にはHVの販売台数が65%増加し、EVを上回りました。これを受け注目を集めているのが、これまでEVの出遅れを指摘されてきたHVに強みを持つトヨタです。


アメリカではイギリスと同様に、新たな二酸化炭素排出量の基準を2024年3月発表の最終案で緩和。ZEVの範疇にプラグインハイブリッド車(PHV)やHVも加えられたことから、今後もトヨタ優勢の状況が継続することが予測されます。


EVのみにこだわるのではなく、e-fuelをはじめとした別角度からのアプローチを視野に入れることも、日本の復権にとって重要な位置付けとなってくるのではないでしょうか。

カースモーラちゃんまとめ

今回は世界をリードしていた日本のEVのこれまでを振り返りつつ、現在の状況をお伝えしたよ。

日本はこれまで「日産自動車」と合併する「プリンス自動車工業」の前身「東京電気自動車」が1947年に発売した世界初の量産EV「たま電気自動車」や、2011年から2014年の4年間、世界トップのEVとして君臨していた日産「リーフ」の発売、2014年のバッテリー生産量において1位を記録したパナソニックなど、輝かしい成果を上げてきたんだ。

しかしながら2015年、急成長を遂げたテスラの「モデルS」にリーフが敗北したことや、日本政府のEV推進の施策が諸外国と比べて決定打に欠けていたことなど、さまざまな要因が重なり、国内のEVは失速し始めたよ。

ところが近年、EUでe-fuelが容認されたことや、アメリカでHVが再び脚光を浴びたことによって、エンジン搭載車の新たな可能性が注目されているんだ。

EVの普及だけではなく、e-fuelをはじめとした他の可能性も視野に入れることで、日本が再び世界をリードする存在になる日が来るかもしれないね。

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