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アメリカのEV普及は今後どうなるの?

世界最大級の市場規模を誇るアメリカ。電気自動車(EV)メーカーの頂点に君臨するテスラを生み出したことでも知られています。

しかしながら近年ではEV普及率の伸びは緩やかになり、諸外国と比較すると今ひとつです。そんなEVに替わって現在、アメリカ国内ではハイブリッド車(HV)が販売台数を急激に伸ばしています。

その要因は2023年に長らくEV販売台数首位に君臨していたテスラがBYDに敗れたことや、同年に発表された新基準の排ガス規制案などさまざま。

今回は現在のEV普及状況や、新基準の二酸化炭素排出量の規制案、HVの再評価をはじめとした出来事から今後のアメリカのEVシフトについて紐解きます。

目次

  1. アメリカのEV普及状況
  2. 新基準の排ガス規制がEV普及の後押しとなるのか
  3. 急激に伸びるHV販売台数
カースモーラちゃんポイント
  • テスラの不調もアメリカのEV普及率が伸び悩んでいる要因の一つみたい。
  • 2023年4月、バイデン政権によって自動車の二酸化炭素排出量の規制案が発表されたんだ。
  • その新基準の規制によって近年、HVが再び脚光を浴びているよ。

アメリカのEV普及状況

アメリカのEV普及状況

2023年のアメリカのEV販売台数は約119万台、シェアはおよそ7.6%でした。2021年は3.2%、2022年には5.8%と、わずかながら毎年伸び続けています。しかしながら、カリフォルニア州やニューヨーク州をはじめとした主要都市で2035年までにガソリン車の新車販売を禁止することが決まっていることを踏まえると、まだまだ充分なレベルでEVが普及しているとは言えません。


その原因としてまず挙げられるのが、州単位のルールが尊重されるアメリカの仕組みです。その特性上、アメリカのEV普及状況は州ごとに大きく異なります。


アメリカのEV普及の中心となっているのはカリフォルニア州です。新車の一定割合をZEV(Zero Emission Vehicle)にすることを義務付けるZEV規制や、日本円にしておよそ110万円もの税額控除を設けるなど手厚い補助によって、普及率は21%と諸外国と比べても優れたシェアを実現しています。


しかしながらEVに対する関心度の低い州では、シェアも一気に下がり1%にも満たない普及率です。あくまでも普及率が高い州が平均を押し上げた結果と言えるでしょう。


さらに、EV普及の伸び率が2021年から2023年にかけて、わずかに下がり続けているのもおさえておきたいポイントです。アメリカを代表するEVメーカー「テスラ」が近年、伸び悩んでいるのも一つの要因と言えるかもしれません。


2023年の第4四半期、長らくEVシェアにおいて頂点に君臨していたテスラが、BYDにトップの座を奪われたことで大きな話題となりました。その背景にあるのは、2023年に中国のNEV補助金の終了を皮切りに勃発したEVの価格競争です。


この価格競争を牽引するのは、低価格帯のEVを得意とするBYD。一方で主要モデルの平均販売価格が高いテスラは販売価格の値下げにより対応するも追いつかず、苦戦を強いられている状況です。この需要低迷を受け、分が悪いと判断したテスラは2024年に中国での生産縮小を選択しました。

新基準の排ガス規制がEV普及の後押しとなるのか

新基準の排ガス規制がEV普及の後押しとなるのか

バイデン政権は2023年4月、自動車の二酸化炭素排出量の基準を2026年と比較して56%削減することを目標に、2027年から段階的に規制を厳しくする規制案を発表。


これによりアメリカ国内のEV普及割合は2032年時点でおよそ70%と、大幅増加の見通しが立てられていました。


しかしながら厳しすぎる基準値に対して見直しを求める一般意見が多数寄せられたうえ、自動車業界からも規制に対する反発が大きかったことから2024年3月20日発表の最終案では開始から3年間、2027〜2029年の規制を緩和。


自動車メーカーがクリーンエネルギー車のサプライチェーンを確保できるよう、猶予期間を設けました。一方で、2032年販売モデルに関しては当初の基準と同様の規制が適用されるため、2030〜2032年の間の二酸化炭素削減のペースは上がる調整となりました。


ポイントは新車販売におけるZEVの範疇にプラグインハイブリッド車(PHV)やHVが加わった点です。これはメーカーがEVのみに限らず、PHVやHVを導入することを事実上認めたということ。


これにより今後数年はアメリカ国内のEVシフト減速が予想されるものの、2030年以降は元の規制案に比べてさらにハイペースな規制がはじまるため、急激にEV普及が推し進められるのではないでしょうか。

急激に伸びるHV販売台数

急激に伸びるHV販売台数

近年、アメリカではEV販売の流れが緩やかになってきたこともあり、HVに再びスポットライトが当てられています。EVが伸び悩む一方で、2023年のHVの新車販売台数は前年から65%増加した124万台を記録しEVを上回りました。


これは広大な国土を誇るアメリカならではの航続距離や充電時間に対する不安、EVの高額な車両価格など、さまざまな要因が重なった結果と言えるでしょう。


さらに前述の排ガス規制緩和によりPHVやHVが事実上容認されたこともあり、今後も数年は安定して供給される見込みがあります。そうともなるとEVより安価で、不安要素の少ないHVが今選ばれるのは不思議ではありません。


現在HVが再注目されているのを受け、日本の自動車メーカーのトヨタが注目されています。これまでトヨタはEVシフトが競合他社と比べて遅かったことから海外メディアからのバッシングの標的にされるなど、各所でその出遅れを指摘されていました。


しかしながら、アメリカ国内でEVとHVの立場が逆転したことにより事態は一変します。トヨタは20年以上前からHVに取り組み、プリウスをはじめとした数々の名HVを生み出してきました。HV市場では確固たる地位を確立していると言えるでしょう。


そして2024年度2月、トヨタの株式時価総額が50兆円を初めて超えたことで話題となっています。その大きな要因は為替変動による増益と、再びHVが注目を集めたことでトヨタ車の販売台数が急増したこと。競合に左右されない独自の戦略により、最王手自動車メーカーとしての価値を世に知らしめたのです。

カースモーラちゃんまとめ

今回は今後のアメリカのEVシフトについてお伝えしたよ。

そもそも2023年のアメリカのEV販売台数は約119万台、シェアはおよそ7.6%と、まだまだ充分にEVが普及しているとは言えない状況なんだ。州ごとに普及状況が異なるからEVのシェアが進んでいる地域があっても、平均すると低くなってしまうんだね。

そんなEVシフトをさらに進めるため、バイデン政権は2023年4月に新基準の排ガス規制を発表したみたい。しかしながら反発も大きかったことから2024年3月発表の最終案では規制を緩和されたんだ。ただし、2030年以降はさらに急速に規制が進むから、EVシフトもさらに加速するかもしれないね。

そして近年はアメリカではEVが落ち着いてきたこともあって、HVが再び注目されているんだ。緩和後の排ガス規制でもPHVやHVが容認されたことも、EVより安価なHVが選ばれている要因だよ。

今後アメリカではEVだけでなく、PHVやHVも一緒に普及していくことが予測されるよ。

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