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日本では本当にEV化が進んでいるの?

2021年1月、菅 義偉元総理大臣が発表した「2035年までに新車販売で電動車100%を実現する」と言う目標。現在日本ではその実現に向けて補助金や税金面での優遇措置など、国をあげた電気自動車(EV)化が推し進められています。

その成果からか昨今では街中をドライブしていると、生活圏でもEVやプラグインハイブリッド車(PHV)を頻繁に目にするようになりました。しかしながら、世間ではシェアは伸びているものの充分とは言えない、諸外国に遅れを取っているなどの意見が散見されます。

果たして、日本のEV化は本質的な意味で進んでいると言えるのでしょうか。現在の日本のEV化の進捗を踏まえ、今後の動向を探っていきます。

目次

  1. 日本の現在のEV普及率
  2. これまでの普及率との比較
  3. 日本ではEV化が進んでいると言えるのか
カースモーラちゃんポイント
  • 日本国内のEV普及状況は価格などの要因もあって思わしくないみたい。
  • 軽EVは販売車種が少ないにもかかわらず好調なんだね。
  • 諸外国はメーカーに対する規制や補助制度によってシェアを伸ばしているんだ。

日本の現在のEV普及率

日本の現在のEV普及率

日本は新車販売でEV100%の実現を2035年までの目標として掲げています。


2023年時点では日本のEV新車販売台数は4万3,991台、シェアは全体の1.66%。PHVの販売台数は5万2,143台、シェアは全体の1.97%とEVと比べると優勢なものの、今ひとつな印象です。EVとPHVを合算してもシェアは全体の3.63%と、目標の100%には遠く及びません。


一方で、ハイブリッド車(HV)に関しては新車販売台数146万133台、シェアにおいては55.08%と、全体の半数を上回るほどの好調ぶり。ガソリン車と比較してもおよそ20%も多いシェアを誇っています。


そして補助金や税金面の優遇があるにもかかわらず、EVの普及が今ひとつ進まない要因とされているのが高額な車両価格です。


車両価格による影響は、中古車市場からも読み取れます。2023年度のEV中古車の販売台数は、中古車市場全体から見てわずか1.2%。日本国内における中古車市場の規模から見ると非常に少ない割合です。EVの新車販売シェアが低いのと同じく、ガソリン車やHVと比較して価格帯が高いことが一つの要因となっているのではないでしょうか。


しかしながら軽市場では一転して、EVが目を見張る好セールスを記録しています。軽市場のEV新車販売台数は、普通乗用車カテゴリのEV販売台数を抜くおよそ4万7,000台。シェアに関しては軽自動車の販売台数全体から見ると3.5%と、一見するとまだまだのように思えます。


特筆すべき点は、軽EVカテゴリでの販売車種の少なさです。現在軽EVのカテゴリから販売されている車種は、片手で収まる程度。販売車種が少ないにもかかわらず4万7,000台ものセールスを記録しました。


中でも好調なのが2023年の軽自動車販売台数で15位にランクインした日産「サクラ」。2023年には軽EVの販売台数のうち、大部分を占める3万4,083台の販売を記録しました。2023年度のEV販売台数全体から見てもおよそ41%を占めます。


日本市場でのEV普及においては、利便性の高い軽EVが鍵を握っていると言えるでしょう。

これまでの普及率との比較

これまでの普及率との比較

2022年度

2023年度

EV新車販売台数/シェア

3万1,592台

1.42%

4万3,991台

1.66%

PHV新車販売台数/シェア

3万7,772台

1.7%

5万2,143台

1.97%

合算

6万9,364台

3.12%

9万6,134台

3.63%


2022年度と比較すると、EVとPHVの合算で新車販売台数はおよそ3万台増。シェアに関しても3.12%から3.63%と、着実に数値を伸ばしています。しかしながら、今後さらに普及しなければならないと考えると、販売台数はまだまだ充分に伸びているとは言えません。


前述の通り、EVの高額な車両価格は普及を妨げる要因の一つ。今後EV普及を加速させるためには、より手頃な販売価格を実現する必要があります。


現在EVの価格に関する見解として注目を集めているのが、ここ数年以内で販売価格がガソリン車よりも安くなるという話題です。


アメリカの大手総合情報サービス会社「ブルームバーグ」の脱炭素化に関するリサーチ部門「BNEF(ブルームバーグ ニュー エナジー ファイナンス)」が示したのは、早ければ2024年までにEVの価格はガソリン車よりも低くなる可能性があるとの見解。加えて同国の調査会社「ガートナー」も新たな製造手法によって2027年までに同等のガソリン車よりも平均して安く生産できるようになると、同様の予測を発表しています。


生産コストの見直しによるコストカット実現により、現在の国内シェアの半数以上を占めるHVに替わり、EVが台頭する時代がここ数年以内に訪れるかもしれません。

日本ではEV化が進んでいると言えるのか

日本ではEV化が進んでいると言えるのか

現在、日本の2023年度のEV新車販売台数は4万3,991台、シェアは全体の1.66%です。


諸外国の2023年度のEV普及状況は以下の通り。


  • アメリカ
    EV販売台数は約119万台、シェアはおよそ7.6%
  • ヨーロッパ
    EV販売台数は約154万台、シェアはおよそ14.6%
  • 中国
    EV販売台数は約669万台、シェアはおよそ22.2%


日本のEV新車販売数は前年と比較して3万台多く、着実にその数を増やしています。しかしながら諸外国と比較すると、EV化が充分に進んでいるとは言えません。


3国の中でトップのEV普及率を誇る中国と比べると、その差はなんと20%以上。これはユーザーではなく自動車を販売するメーカーに対して設けられた、販売台数の一定割合以上をEV、PHV、燃料電池自動車(FCV)を含むNEV(New Energy Vehicle)にすることを義務付ける「NEV規制」が大きく貢献していると言えるでしょう。


そして3国の中で最も普及率の低いアメリカと比較しても、日本はおよそ6%引き離されています。アメリカのEV普及状況に関しては、州単位のルールが尊重される国の特性上、州ごとに大きく異なるのが特徴です。


その中でもアメリカのEV普及の中心を担うカリフォルニア州はシェア21%と、中国にも迫る勢いです。中国のNEV規制と同じく新車の一定割合をZEV(Zero Emission Vehicle)にすることを義務付けるZEV規制や、日本円にしておよそ110万円もの税額控除を設けるなど手厚い補助、テスラをはじめとした国産車の存在、ガソリン価格の高騰など、さまざまな要因によってEV普及が後押しされています。


中国に次ぐヨーロッパも14.6%と高いシェアを誇ります。特にノルウェーは政府による支援と税金面での優遇により、およそ88%と驚異的な普及率を記録しました。しかしながら、EU圏全体で見るとEVの普及は各国で実施されている購入支援策によるところが大きく、今後は停滞するとの見方もあり、その動向が不安視されています。


このように、世界的にEVの普及状況は規制や補助金、税金面での優遇をはじめとした制度によって支えられているのです。

カースモーラちゃんまとめ

今回は日本のEV化の今をお伝えしたよ。

日本政府は2035年までにEV100%の実現を目標として掲げているんだ。しかしながら、2023年度の普及状況はEV新車販売台数が4万3,991台、シェアは全体の1.66%。PHVと合算してもシェアは全体の3.63%と、高額な車両価格の影響もあって目標には遠く及ばないみたい。

しかしながら、軽EVカテゴリでは販売車種が少ないながらも4万7,000台ものセールスを記録しているよ。日本の自動車市場では利便性の高さも影響してか、軽EVの需要が高いみたい。

EV普及の進む諸外国では、メーカーへの規制や補助金などの制度が大きく貢献しているんだ。

今後日本がEV化をより加速させるためには、補助制度はもちろんのこと、軽EVなど、日本独自の需要を捉える必要があるのかもしれないね。

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