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EVの普及で自動車業界はどう変わるんだろう?

電気自動車(EV)は、ガソリン車と比べて使われるパーツが少ないことで知られています。両者のパーツの差はエンジンの有無によるもの。

ガソリン車のエンジンはその複雑な構造から車両全体のおよそ1/3ものパーツを占めているのと比べて、EVはシンプルな構造の電子モーターを動力としています。そのため、エンジン周りのパーツも不要です。

その差は非常に大きく、トヨタ自動車の豊田章男会長に100年に一度の大変革の時代に入っていると表現されるほど。EVの登場は自動車業界の今後の在り方を変えてしまうほどの影響を与えているのです。

モビリティ変革はどのようにして起こっているのか、現在の業界から今後の展望を見ていきましょう。

目次

  1. パーツの多いガソリン車に対してシンプルな構造のEV
  2. 現在の自動車業界
  3. 構造の違いが業界にもたらす変化
カースモーラちゃんポイント
  • 現在、世界中で脱炭素社会の実現に向けてEVの普及が推し進められているよ。
  • EVはガソリン車と比べて構成するパーツが少ないんだ。
  • EVが登場したことによって自動車業界は転換期を迎えているみたい。

パーツの多いガソリン車に対してシンプルな構造のEV

パーツの多いガソリン車に対してシンプルな構造のEV

2050年カーボンニュートラルに向けてEVシフトが進む昨今。ガソリン車とEVの構造の違いに関しては正しくおさえておきたいところです。


そもそもEVはガソリン車と比較してシンプルな構造をしていることで知られています。ガソリン車がおよそ3万点ものパーツから構成されているのに対して、EVを構成するのは1〜2万点のパーツ。その差は1万点以上にも及びます。


そして、両者を構成するパーツ点数に大幅な差が生まれる理由はエンジンの有無です。ガソリン車の心臓とも言えるエンジンは、およそ7,000〜1万点ものパーツから構成されています。複雑な構造をコンパクトに収めるためには、車両全体のおよそ1/3ものパーツを要するのです。


一方でEVはエンジンの替わりに、パーツ点数が少なくシンプルな構造の電気モーターを動力として走行します。そのため、ガソリン車と比較するとエンジンはもちろんのこと、補機をはじめとしたエンジン周りのパーツも必要としません。


ガソリン車とEVのパーツ点数の差は、エンジンの有無が大きく影響していると言えるでしょう。

現在の自動車業界

現在の自動車業界

現在の自動車業界は自動車メーカーを頂点とし、各種部品の製造を請け負う部品メーカー、その下の部品メーカーといったピラミッド型の業界です。特定メーカーのみにパーツを製造する系列企業間での垂直統合型の取引の多さも自動車業界の特徴として挙げられます。


自動車メーカーが軸となり、長い年月をかけ関係を築き上げた下請けの部品メーカーとの連携することによって一つのモデルを開発・生産。その工程の一つ一つで品質を担保するための試行錯誤が行われています。


このようなチームワークは、一朝一夕で築けるものではありません。自動車業界はこの仕組みによって長きに渡る高品質の維持を実現し、競合他社や他業種からの業界参入を阻むことで優位性を保ってきたと言えるでしょう。


しかしながら自動車業界は今、EVの登場によって転換期を迎えています。

構造の違いが業界にもたらす変化

構造の違いが業界にもたらす変化

近年のモビリティ変革についてトヨタ自動車の豊田章男会長は、約100年前に馬が自動車に置き変わった時と同じかそれ以上の「100年に一度の大変革の時代に入っている」と表現しています。


国によってEV普及が推し進められている背景もあり、ガソリン車に替わりEVが台頭する時代の訪れは想像に難くありません。

EVシフトによる雇用喪失問題

世の中でEVシフトが進む近年、まず懸念されるのがこれまでガソリン車の部品製造を請け負ってきた下請け会社の雇用問題です。前述の通りエンジンを搭載するガソリン車と比較して、電気モーターを用いるEVは使われているパーツが少ないという特徴を持ちます。


近い将来ガソリン車とEVの力関係が反転するとなると、電子モーターの需要が増える一方でエンジンの需要が減少するのはもはや必然です。すると、ガソリン車には必須とされていた1/3ものパーツが今後は不要になります。


そして、現在の自動車業界のパーツ市場の内、エンジン関連はおよそ36%と非常に大きな割合を占めています。構成するパーツのみでそれほどの規模の市場を誇るエンジンが電気モーターに置き換わるとなると、必要な下請けメーカーの数はもちろんのこと雇用者数も大幅に見直されるでしょう。


さらに、EVの課題の一つとされる価格の解決策として近年では製造コストや工程の削減、製造ラインの見直しをはじめとした生産工程の効率化が注目を集めています。そうともなると、既存の量からの発注減少も避けられません。

他業種のEV参入

業界参入へのハードルが下がったことにより、他業種によるEV参入が増えつつある事実も見逃せません。


EVをはじめとした現在の自動車には電子部品が多く使われています。そのため、これまでの技術のみでは対応が難しくなるでしょう。今後さらに複雑化するシステムに対応していくためにも、ソフトウェアに関する知見が求められます。


しかしながら、これだけ規模の大きい業界ともなると、ハード・ソフトの両者に対処するのは至難の業。当然ながら分業の選択も視野に入れなくてはなりません。自動車業界は現在、従来の系列企業間での垂直統合型の取引では、対応が難しくなってきていると言えるでしょう。


そんな背景もあってか「Google」や「アップル」をはじめとしたIT業界の名だたる企業がEVに参入しています。近年では中国の通信機器大手メーカー「ファーウェイ」がEVに進出し話題に。電気自動車メーカーのセレス・グループと共同開発した「Aito M7」は発売から2か月半で10万件の注文を獲得するヒットを記録しました。


このようにこれまで自動車業界が他業種の参入を阻んできた優位性が失われつつあります。今後、自動車業界はこれまでの体制と決別し、ソフト・ハードの分業や、製造・生産と開発・設計を分けるファブレス生産など、時流に乗った運営を検討する必要性が出てくるかもしれません。

カースモーラちゃんまとめ

今回はEVの普及が自動車業界に与える影響について紹介したよ。

これまで自動車業界は自動車メーカーを軸に、各種パーツを生産する下請け部品メーカーとの連携によるピラミッド型の業界として成立していたみたい。それによって高品質を実現し、他業種からの業界参入を阻んできたんだ。

しかしながら、エンジンに替わってパーツの少ない電気モーターを動力として走行するEVが登場したことで、その優位性は失われつつあるみたい。実際に近年ではIT業界をはじめとした他業種のEV参入が話題になっているよ。

今後自動車業界はソフト・ハードの分業やファブレス生産をはじめとした仕組みを取り入れ、新しい体制を構築する選択を迫られるかもしれないんだ。

EVの登場は一人一人のエコに対する意識だけでなく、大規模な企業の在り方を変えてしまうのかもしれないね。

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