2つ目は全固体電池の開発状況を問われた場面。
テクニカルワークショップでも紹介された全固体電池。電解質が固体で、正極と負極間をイオンが素早く移動できるという特徴があり、BEVの充電時間の短縮、長い航続距離、高出力という強みがある。


全固体に限らず、トヨタでは近年電池開発において、さまざまな取り組みが進められている。
米国では、トヨタとして海外初となる電池製造拠点・TBMNC(Toyota Battery Manufacturing, North Carolina)が稼働開始。HEV(ハイブリッド車)、PHEV(プラグインハイブリッド車)、BEV向けの電池を生産する。
仲間づくりでは、出光興産との協業やプライムアースEVエナジーの完全子会社化(トヨタバッテリーへと社名変更)が発表された。
こうした状況の中、株主から寄せられた全固体電池に対する質問。中嶋副社長は、マルチパスウェイ戦略の説明から回答を始めた。
中嶋副社長

全固体電池の前に、トヨタが取り組んでおりますマルチパスウェイの戦略について少しお話させていただきたいと思います。
言うまでもありませんが、各国・各地域のエネルギー事情に応じて最適なクルマをお届けするということで、エンジン車はもちろんのこと、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車、最近は水素自体を燃料とする水素エンジン車やFCEV(燃料電池車)にも取り組んでおります。
保有台数についても、たくさんのクルマを世界中でお乗りいただいております。カーボンニュートラル燃料という、CO2を排出せずにつくった燃料も提供していこうと取り組んでいます。
全固体電池も重要な一要素で、我々が認識しているBEVの課題は、充電時間や航続距離の問題などです。
全固体電池は、このBEVの問題を一気に解決しようということで開発が進められております。充電時間が非常に短く、出力が高いため、航続距離も長い。さらに、非常に耐久性もいい。ということで実は、全固体電池がラインオフするタイミングで始まるプロジェクトもあります。
このプロジェクトは、全固体電池ができなければ台無しになってしまう。開発をしている中で間に合うのか、というご質問だったと思いますが、開発はいつも先が見えません。うまくいくかどうか、正直わかりません。
私はいつも、会長の豊田から「失敗してもいいじゃないか」と激励されます。失敗したからこそ経験が残る。若い開発者がそういう経験をすることで、また新しい開発にチャレンジしてくれる。そうなればいいと思っています。
ただ個人的には、お約束した日程を守り、全固体電池を次の未来を切り開く大きな要素としてお届けできればと思っています。
2025年の株主総会は全13問の質問が寄せられ、これが最後の質問だった。
それまで質問した株主の方を真っ直ぐ見つめて答えていた中嶋副社長は、ここで議場全体を見渡し、さらに続けた。
「株主さまから一つひとつの応援の言葉を、今日たくさんいただきました。その言葉を我々開発陣、ここにいる(執行)メンバーも心に刻み、次に向けて大きな一歩を踏み出す勇気をいただけました。本当にありがとうございました」
中嶋副社長が話し終えた後、マイクを握ったのは豊田会長。トヨタの脱炭素への挑戦に対する想いを語った。その様子については、後日トヨタイムズに掲載する。
2025.06.20 トヨタイムズニュースより
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TOYOTA
トヨタ
常に世界の最多生産台数を争い、日本のみならず世界を代表する自動車メーカー、トヨタ。多くの日本車メーカーと深い関わりを持ち、グループ全体で超小型車からバス・トラック、産業車両まで網羅したフルラインナップ・メーカーであり、近年は実用性やコストパフォーマンスのみならず、スポーツ性など走る楽しみにも力を入れています。世界初の量販ハイブリッドカー「プリウス」から電動化技術では最高の蓄積を持ち、自動運転技術の実用化、新世代モビリティと都市生活の在り方を模索する「ウーブン・シティ」へ多大な投資を行う一方、電動化だけがエコカー唯一の選択肢ではないというスタンスも崩さず、死角のない全方位戦略が現在の特徴です。