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日本でも人気沸騰のきざしアリ⁈中国EVメーカーBYDとはどんなメーカー?
公開日:2024/07/28更新日:2024/07/28
目次
BYDの歴史
1995年に中国の深センで王伝福(ワン・チュアンフー)が創業したバッテリーメーカーです。従業員20人の小さな会社から始まり、携帯電話やPC用のバッテリーを製造していました。
その後2003年に自動車事業に参入し、2005年には日本法人『ビーワイディージャパン』を設立しています。2008年には世界初の量産型プラグインハイブリッドカー「BYD F3DM」を発売。バッテリーメーカーとして培った技術力を活かし、BEV、PHEVの開発を拡大していきました。
その後2020年には『日野自動車』と商用のEVを中心に戦略的パートナーシップを締結。また2022年には『トヨタ自動車』のEV戦略パートナ―企業として発表されたことは記憶に新しいのではないでしょうか。
世界6大陸、70の国と地域、そして400都市で販売を展開しており、2021年にはEV車の累計販売台数が100万台に到達しています。そして2022年にはEV販売台数がアメリカの『テスラ』を抜き、世界1位を記録しました。
参照元:マークラインズ 電気自動車販売月報 2022年12月
現在は4つの事業を展開しています。
●電気自動車
EV自動車の開発から販売までを担う事業を展開。乗用車だけでなくフォークリフトや大型バスまでを販売。2015年には中国発となる日本にEVバスを納車している。また群馬県館林市にBYD製フォークリフトを販売する「TATEBAYASHI MOULDING株式会社」を設立。「TATEBAYADHI MOUKDINGが設立した「BYD FORKLIFT JAPAN」によってEVフォークリフトの販売を開始。
●ITエレクトロニクス
スマートフォンのパーツ事業の拡大。全世界の携帯電話の10台に2台はBYDのパーツを使用。
●エネルギー事業
リチウム電池、太陽電池、エネルギー貯蔵システムの開発。
●モノレール
モノレールの建設事業。自社開発のモノレールが本社内を走行しているほど主力となる事業のひとつ。
日本では2023年2月に横浜市に1号店を出店。従来型の店舗販売を行っています。そして2025年までに100店舗以上を構える予定です。
BYDの強み
①垂直総合で開発から製造まで自社で賄う技術力
世界有数のリチウムイオン電池メーカーとして名を馳せる『BYD』は、EV用の電池からクルマ本体までを自社開発、製造していることが最大の強みになっています。通常は自動車メーカーとサプライヤーとの分業となりますが、パーツの生産から全てを行う「垂直統合」で、スピーディーな開発と生産が可能です。
EVの基幹パーツであるリチウムイオン電池はもちろんこと、駆動ユニットのギア、モーター、インバーターといったeアクスルパーツ。サスペンション、ヘッドランプ、ブレーキ、パワー半導体、先進運転支援システムなど、タイヤとガラス以外は全て手掛けています。
②課題を克服したブレードバッテリーの開発
従来の三元系バッテリーで問題となっているのは発火や爆発などの危険性や、寿命、充電速度などが挙げられてきました。そこで『BYD』が開発したのが、リン酸鉄リチウムイオンの「ブレードバッテリー」です。モジュールをなくしブレード上のセルそのものをバッテリーパックに配置し、積載効率を向上しました。
従来のバッテリーよりも約50%小さくすることができたので、車内空間やラゲッジスペースなどをより確保することができます。また熱安定性が高いので発火などの危険性を抑えることに成功しました。
ブレードバッテリーは80%の充電まで30分で済ませることができます。また容量劣化が少ないため、8年15万㎞の品質保証を実現しました。
③BYDが採用するプラットフォーム e-Platfrom3.0
ブレードバッテリーがシャシーの一部を構成することで車体剛性が向上し安全性が高まります。また低重心でフラットな床面と長いホイールベースによって、広い室内スペースを確保することができました。
またモーターや制御システムの一体化と軽量化によって効率性が誕生。車の制御や各支援システムを統合することでインテリジェント・ドライブを可能にしています。
バッテリー分野での高い技術力を活かし、世界進出も積極的に行ってきました。また低価格で高品質な車を提供していることが『BYD』の強みです。
販売車両一覧
それでは日本で販売されている2車種と2024年6月に発売が開始される1車種について詳しく見ていきます。
ATTO3
ミドルサイズのe-SUV「ATTO3(アットスリー)」は日本でも取り回しのしやすいサイズ感です。全高が少し低めなスタイルは、クロスオーバーの雰囲気もあります。特徴的なのはリアのメタルパネルに波紋状の凹凸のデザインが、スタイリッシュな雰囲気を演出していること。
またボディサイドの後方まで伸びていく曲面を持つラインは、BYDグループの日本企業「Tatebayashi Molding」が製造しています。高度な金型技術が生み出すスタイリッシュなデザイン性を強調しているようです。
インテリアはフィットネスジム×音楽をモチーフにしたデザインを採用。ドアトリムのポケット部分はギターを再現していて、赤い弦をつま弾くと3つの音を奏でる楽しい仕掛けも。基本的なスイッチをあえて残すことで、EVへ初めて乗り換えても戸惑うことがないのも嬉しい点です。
基本情報
全長(mm) | 4,455 |
全幅(mm) | 1,875 |
全高(mm) | 1,615 |
ホイールベース(mm) | 2,720 |
最高出力kw(ps) | 150(204) |
最大トルク(N・m) | 310 |
パワーバッテリー | リン酸鉄リチウムイオンバッテリー |
総電圧(V) | 390.4 |
航続距離(㎞) | 約470 |
価格 | 450万円~ |
DOLPHIN
コンパクトEVのDOLPHIN(ドルフィン)はATTO3よりも小さく、国産のコンパクトカーよりも少し大きめのサイズ感です。キビキビとしたドライブフィーリングは街乗りにも最適です。
エクステリアは海洋生物から着想を得ていて、フロントノーズはイルカが波を切り裂く意匠を採用した個性的な表情です。曲線とシャープなラインを採用したサイドは力強い躍動感にあふれています。このデザインを手掛けているのは、ATTO3も手掛けた、元アウディのウォルフガング・エッガーさんによるものです。
またインテリアは元メルセデス・ベンツのミケーレ・パガネッティさんを中心に有名デザイナーが手掛けています。高性能と高いデザイン性を兼ね備えながら低価格に押さえているのが大きな特徴といえるでしょう。
DOLPHINにはスタンダードモデルとロングレンジモデルがあり、ロングレンジモデルのボディはツートンカラーを採用しています。インテリアは美しい曲線で波を表現しました。またドアノブはイルカの胸びれを再現したり、エアコンの吹き出し口は波しぶきの波紋を表現してるなど、随所に遊び心を取り入れています。
ATTO3でも採用している回転式ディスプレイを採用し、横でも縦でも使用することができるのは使いやすいもの。横向きなら最大2画面、縦向きなら最大3画面を表示することが可能です。
基本情報(スタンダードモデル)
全長(mm) | 4,290 |
全幅(mm) | 1,770 |
全高(mm) | 1,550 |
ホイールベース(mm) | 2,700 |
最高出力kw(ps) | 70(95) |
最大トルク(N・m) | 180 |
パワーバッテリー | リン酸鉄リチウムイオンバッテリー |
総電圧(V) | 332.8 |
航続距離(㎞) | 約400 |
価格 | 363万円~ |
SEAL
『BYD』には2つのシリーズがあり、ひとつは中国歴代王朝の名を持つ「王朝シリーズ」。そしてもうひとつが海に因んだ名を持つ「海洋シリーズ」です。そして今回DOLPHINに続く新たな海洋シリーズが仲間に加わることになりました。
新たなラインナップに加わるのは、SEALという名前でアザラシを意味しています。セダンとは異なりますが、トヨタ クラウンや日産 スカイラインと同じサイズのDセグメントのサイズ感です。
エクステリアは、アザラシが水中魚を捕らえる時の俊敏さにインスパイアされたもの。そのためCピラーやテール部分には、水滴のデザインがちりばめられたおしゃれな演出も施されました。
インテリアのサンタ―ディスプレイはATTO3よりも大きな15.6インチの大画面を採用し、ナビなどの操作性や視認性を向上させました。日本ではシングルモーターの後輪駆動(FR)と、ツインモーターを採用した四駆のハイパフォーマンスモデルをラインナップする予定です。ハイパフォーマンスモデルの走行性能は非常に気になるところではないでしょうか。
基本情報(シングルモーター)
全長(mm) | 4,800 |
全幅(mm) | 1,875 |
全高(mm) | 1,460 |
ホイールベース(mm) | 2,920 |
最高出力kw(ps) | 312 |
最大トルク(N・m) | ー |
パワーバッテリー | リン酸鉄リチウムイオンバッテリー |
総電圧(V) | 550.4 |
航続距離(㎞) | 556 |
価格 | ー |
まとめ:EV市場を席巻する?
トヨタをはじめとする世界の大手自動車メーカーは、長年の技術力やブランド力で、安全性と信頼性を築いてきました。しかしEV市場で、『テスラ』や『BYD』と比較すると、後発となっています。自動車メーカーは今後の動向を見守るという側面があるのでしょう。
EVを中心に躍進している新興メーカーを見ると、品質や生産の規模などの問題も多く、富裕層に向けた付加価値で差別化を図ってきました。そのため、低価格での市場参入には至っていません。
『BYD』には高い技術力があり、自社で開発から製造まで行える豊富な資金力も兼ね備えており、低コストで販売も実現しています。EVの王者として君臨してきた『テスラ』を猛追し、販売台数1位を獲得しました。新たな王者となる日も近いといえるでしょう。
世界トップクラスのEVメーカーとして、これから目が離せない存在になっていることは明らかです。「日本で中国メーカーのEVが売れるの?」といった価値観がなくなる日もそう遠くないかもしれません。
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