「第74回自動車技術会賞」を受賞

日産自動車株式会社は23日、公益社団法人 自動車技術会主催の「第74回自動車技術会賞」において、同社の「高EGR(*1)内燃機関用高耐食低摩耗ピストンシールシステムの開発」と「電動モーター四輪駆動車の制駆動力制御システムの開発」が技術開発賞に、「Modeling of Direct Cooling Method with Forced Convection Boiling Phenomena considering Liquid Phase Behavior of Liquid Gas Two-Phase Refrigerant for Vehicle Traction Application PMSM(自動車用駆動モーターの気液二相挙動を考慮した直接強制沸騰冷却性能予測モデルの提案)」が論文賞を受賞したと発表した。

今回受賞した技術、技術者および受賞理由は次の通り。

日産自動車、第74回自動車技術会賞で技術開発賞と論文賞を受賞

●技術開発賞

・受賞テーマ:高EGR内燃機関用高耐食低摩耗ピストンシールシステムの開発


・受賞者:


平山 勇人  (日産自動車株式会社)
金子 格三  (日産自動車株式会社)
高木 裕介  (日産自動車株式会社)
田井中 直也    (日産自動車株式会社)
篠原 章郎     (リケンNPR株式会社)



・受賞理由:
次世代内燃機関の重要課題でもある、異物によるピストリング/ボア間の摩耗現象に対して、ピストンリング表面の被膜(DLC*2)硬度を軟化させることが有効であることを見出し、課題解決に至ったこと。この技術は、EGR(*2)率30%以上の実現や腐食環境が厳しいバイオ燃料等のカーボンニュートラル燃料の拡大に適用可能な成果であり、CO2削減に多大な貢献が期待できる。


<開発背景など>
エンジン燃費改善のためには、EGR率の増加が有効であるが、排気ガス凝縮水がシリンダーボアの腐食を引き起こす課題がある。この課題を対処するため、鉄系材料にクロムを添加したステンレス溶射ボアを開発したが、摺動相手材であるDLCを成膜したピストンリングと溶射ボアの接触面に入り込む異物による摩耗が課題となる。本開発では、溶射膜を柔らかくすることで、気孔を低減した表面を形成してオイル消費を抑制、DLC膜硬度を下げることにより、異物形状に沿って変形する能力を高め、高耐摩耗性を実現した。本開発での知見は、EGR率30%以上の実現、腐食環境が厳しいバイオ燃料等のカーボンニュートラル燃料の拡大に適用可能な成果であり、CO2削減に多大な貢献が期待できるため、高く評価された。



・受賞テーマ:電動モーター四輪駆動車の制駆動力制御システムの開発


・受賞者:


平工 良三 (日産自動車株式会社)
恒原 弘  (日産自動車株式会社)
坂上 永悟 (日産自動車株式会社)
鈴木 達也 (日産自動車株式会社)
片倉 丈嗣 (日産モータースポーツ&カスタマイズ株式会社)



・受賞理由:
電動AWD(*3)車のポテンシャルを引き出し、限定されたシーンだけではなく、日常生活における運転・走行シーンにおいても価値を享受できる技術を開発したこと。


<開発背景など>
本制御システムは、電動モーターを前後に2基搭載する電動AWDシステムを前提に、運転し易い、快適な乗り心地である、といった人間の感じ方に焦点をあてて車両の動きを制御している。それにより、従来の四輪駆動車に期待されるシーンでの性能だけではなく、日常の使用でも体感できる価値を提供することを狙った。運転のし易さを狙った旋回加速シーンでは、前後の電動モーターと4輪のブレーキとの統合制御により、要求される加速度を保ったまま前後の横力のバランスを制御し、横力から発生するヨーモーメントを安定させることで、ドライバーの修正操舵量を大幅に低減。快適な乗り心地を狙った加減速のシーンでは、機械的なサスペンションの可変機構を用いることなく、躍度(加速度の変化率)とピッチ角を独立して、高応答・高精度に制御し、加速感を損なわない快適な加減速を実現した。本技術は、電動AWD車のポテンシャルを引き出し、限定されたシーンだけではなく、日常生活における運転・走行シーンにおいても価値を享受できる技術であり、四輪駆動車の進化というより、電動駆動車を進化させる技術の一つと考えられる。

●論文賞

・受賞テーマ:
Modeling of Direct Cooling Method with Forced Convection Boiling Phenomena considering Liquid Phase Behavior of Liquid Gas Two-Phase Refrigerant for Vehicle Traction Application PMSM(自動車用駆動モーターの気液二相挙動を考慮した直接強制沸騰冷却性能予測モデルの提案)


・受賞者:


森本 達也   (日産自動車株式会社)
佐々木 健介  (日産自動車株式会社)
加藤 崇    (日産自動車株式会社)



・受賞理由:
モーターの主要設計パラメータであるコイル占積率がドライアウト(*4)現象を引き起こす要因の一つになることを解明したことで、車両用モーター沸騰冷却方式の設計指針の土台となる知見を見出だしたこと。


<研究背景など>
電動化の更なる拡大を見据え駆動用モーターの高出力密度要求が高まっている。高出力密度により発熱密度が高くなるため冷却性能向上がキーとなる。その策として沸騰冷却が着目されているが、適用にはドライアウト発生メカニズムの解明が重要である。本論文では、スロット内コイル発熱を強制対流沸騰冷却において抜熱する構造を想定し、スロット内コイル占積率とドライアウト発生との相関を実験的に明らかにするとともにそのメカニズムを解明した。特にメカニズムについて、コイル占積率と冷媒充填率との相関を冷媒の表面張力から説明し、ドライアウト発生境界となる占積率条件を推定するモデルを構築、実験結果と良く一致することを示した。本論文でモーターの主要設計パラメータであるコイル占積率がドライアウト現象を引き起こす要因の一つになることを解明したことは、車両用モーター沸騰冷却方式の設計指針の土台となる知見を得たと考えられ、有用な成果である。



*1 Exhaust gas recirculation; 排気ガスの再循環機構


*2 Diamond like carbon; グラファイトとダイヤモンド両方の特性を有する非常に硬い、高潤滑炭素皮膜


*3 All wheel drive


*4 冷却面(コイル表面)が冷媒蒸気に覆われ、冷却性能が低下する現象


2024/05/23 日産自動車ニュースルームより

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    日産

    かつては日本第2位の自動車メーカーであり、自他ともに求める「技術の日産」として、真剣なクルマ選びに値する玄人好みのクルマがユーザーに支持される日産自動車。フェアレディZやスカイライン、GT-Rといった歴史と伝統を誇るV6DOHCターボエンジンのハイパワースポーツをイメージリーダーとして大事にする一方、2010年に発売したリーフ以降、SUVのアリア、軽自動車のサクラなど先進的なBEVをラインナップ。さらにエンジンを発電機として充電いらず、従来どおり燃料の給油で乗れる「e-POWER」搭載車を増やしており、モーターのみで走行するクルマの販売実績では、日本No.1の実績を誇るメーカーでもあります。
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