2024 ビジネスアップデート 説明概要 ~電動化に向けた取り組みの方向性と財務戦略について~

Hondaは、四輪電動化を中心としたHondaの取り組みについて説明会を開催し、取締役 代表執行役社長 三部 敏宏(みべ としひろ)が出席して説明を行った。

電動化への取り組みの指針と財務戦略

●電動化目標に対する考え方


二輪・四輪などの小型モビリティの電動化にはEVが最も有効なソリューションであり、2040年にグローバルでのEV/FCEVの販売比率を100%とする目標に変化はない。EV普及期を見据えた中長期的な視野で強いEVブランド・事業基盤を構築することが必要


●調達・生産構造の改革


バッテリーを中心としたEVの垂直統合型バリューチェーンの構築により、2030年に、北米で調達するバッテリーコストを現行のバッテリー比で20%以上削減するほか、生産コストの35%削減を目指し競争力のある事業構造を構築。予定している約200万台分のEV生産を賄うバッテリーを確保する見通し


●電動ラインアップ戦略


主力となるグローバルEV「Honda 0シリーズ」を、2030年までに小型から中大型モデルまで、全世界で7モデル投入。モバイルパワーパックを活用した電動化展開として、2025年度中にモバイルパワーパックを4個搭載する超小型モビリティを日本へ投入するなど拡充を図る


●財務戦略


EVの本格普及期となる2030年度までの10年間で、約10兆円の資源投入を計画。将来成長に向けた果敢な投資と株主還元の両立を推進していく

1.Hondaの電動化に向けた考え方と目標実現に向けた取り組み

電動化を取り巻く激しい環境変化の中、一部地域では足元のEV市場の成長について減速感を指摘する声もある。Hondaの掲げる「2050年カーボンニュートラルの実現」に向けてはさまざまなアプローチがあり、モビリティの環境負荷ゼロに向けては、航空機や船舶などの大型モビリティにおいては航続距離の観点からSAF※1やe-fuelなどが有望視されるなど、多様なソリューションに対応していく必要がある。
 一方で、二輪・四輪などの小型モビリティについては、Hondaは、EVが最も有効なソリューションであるという考え方は変わらず、長期的視点で見ればEVシフトは着実に進んでいくと確信している。足元の状況変化に捉われ過ぎることなく、2020年代後半以降に訪れるEV普及期を見据えた中長期的な視野で、強いEVブランド、事業基盤の構築が必要。


Hondaは、2030年、グローバルでのEV/FCEV販売比率は40%、200万台以上のEVを生産する計画であり、これを見据えて
 ①Hondaならではの魅力的なEVの投入
 ②バッテリーを中心としたEVの包括的バリューチェーンの構築
 ③生産技術・工場の進化
これら3点を、適切なタイミングで投資判断を行いながら着実に行っていくことで、2030年にEV事業として売上高営業利益率(ROS)5%の達成を目指しており、EV事業の自立化に向けてさらなる利益率向上を図っていく。


※1 Sustainable Aviation Fuel:持続可能な航空燃料

1-1.Hondaならではの魅力的なEVの投入

HondaのEV戦略を担う「Honda 0シリーズ」は、“Thin, Light, and Wise.(薄く、軽く、賢く)”という新たなEV開発アプローチにより、ゼロからの発想で創り出す、全く新しいEVシリーズだ。今年1月のCESでは、「SALOON(サルーン)」「SPACE-HUB(スペース ハブ)」という2台のコンセプトモデルをお披露目した。特にフラッグシップモデルとなるSALOONは、2026年にこのコンセプトにかなり近い形での上市を予定している。


Thin”(薄く)


Hondaが大切にしてきた「M・M(マン・マキシマム、メカ・ミニマム)思想」をEV時代に具現化する、走りにも居住性にも優れる空間価値の提供を目指す。


・ 新採用の中大型EV専用プラットフォームと、進化したパワーユニットにより、EVでは他に類をみない低全高のスタイルと、ショートオーバーハングなパッケージを実現


・ 新開発の小型e-Axle、トップクラスの超薄型バッテリーパックの採用によりモータールームやフロアを薄型化。部品レイアウトの最適化や部品点数の削減に加え、Honda独自の衝突コントロール技術や、デザインと機能性を兼ね備えたボディー骨格など、長年のクルマづくりで培った技術も投入することで、低全高のスタイルと広く快適なキャビンを両立。また、直感的な認知を促すユーザーインターフェースや、爽快な視界など、運転がさらに楽しくなる室内空間を目指す


“Light”(軽く)


Hondaのクルマづくりのこだわりである「操る喜び」を提供する、軽快な走りを追求していく。


・ ボディー骨格の軽量化に加え、F1やハイブリッドの開発で培った技術で軽量・薄型化した新型パワーユニットの採用により、従来比約100kgの軽量化を実現


・ バッテリーやパワーユニットなどの重量物を低く、車体中心に配置し低重心化することで、クルマの挙動が安定し、キビキビとした軽快な走りを創出


・ ドライバーが思い通りコントロールできる技術として、Honda独自のロボティクス技術で培った姿勢制御によるモーションマネジメントシステムがさらに進化


・ モータースポーツで培った高効率なパワーユニットと、高い空力技術の組み合わせにより、Hondaらしい軽快な走りと世界トップクラスの電費性能を両立、各モデルで300マイル以上※2の充分な航続距離の実現を目指す


※2 EPA(米国環境保護庁)が定める基準での測定値


“Wise”(賢く)


独自のビークルOSを搭載し、コネクテッド技術の進化と合わせて、お客様一人ひとりに最適化したデジタルUXを提供。機能がOTA(Over The Air)により継続的にアップデートしていくことで、Hondaらしい、魅力的な商品へと進化していく。


・基盤となるE&Eアーキテクチャーや、その上部レイヤーであるビークルOS、その上に乗るアプリケーションを独自開発。搭載されるSoC(System on Chip)半導体についても、自動化・知能化の進化に不可欠なAIを搭載しながら消費電力を抑制するなど、Honda独自のカスタマイズを実施


・2020年代後半に投入するモデルでは、個々にクルマのシステムを制御する複数のECUを、コアECUに集約し、クルマ1台分の頭脳が一つになるセントラルアーキテクチャー型を採用。一つ一つの機能が連携していくことで、今まで実現できなかったような新しい感動体験をスピーディーに提供することが可能となり、一人ひとりの嗜好やニーズにきめ細かく対応できる、クルマが知性を宿すような進化を遂げる


・AD(自動運転)/ADAS(先進運転支援システム)は、クルマに乗っている時だけではなく、乗車から降車までシームレスな移動体験を提供することを目指し、さらに進化したセンシングやAIなどの知能化技術を用いることで、より人の感性に近いシステムへと進化。
運転支援技術については、世界に先駆けて実用化した自動運転レベル3技術を活用し、高速道路での対応車速域を広げていくほか、一般道においても自動化支援の対応範囲を拡大。外出先での呼び出しから駐車に至るまで、移動に関わる体験を一貫してサポートすることで、ストレスの少ない「自由な移動の喜び」を実現

1-2.バッテリーを中心としたEVの包括的バリューチェーンの構築

EVのコア部品であり、競争力の鍵となるバッテリーを中心に、長期視点で高い競争力を確保するために、段階的にバリューチェーンの構築を図っていく。

2024 ビジネスアップデート 説明概要 ~電動化に向けた取り組みの方向性と財務戦略について~

■EV黎明期:2020年代前半


地域ごとに液体リチウムイオン電池の外部パートナーシップを強化し、必要なバッテリー量を、コストを抑制しながら安定的に調達する。


■EV移行期:2020年代中盤


パートナー企業との合弁によるバッテリー生産を開始する。
 米国では、2025年にLGエナジーソリューションとの合弁によるバッテリー工場が稼働を開始し、年間40GWhのバッテリーを生産する。北米において最大規模となるパートナーとの強固なバリューチェーンにより、競争力のあるバッテリーコストを実現するほか、高密度なパッケージング技術で生産される軽量・コンパクトなバッテリーパックは、Honda 0シリーズに搭載され商品力の強化に寄与する。
 また、車両の生産にとどまらず、充電サービス領域、エネルギーサービス、リユース・リサイクルといったライフサイクルビジネスへも事業領域を拡大し、自前化の範囲が拡張していくことで、さらに安定した事業基盤を確立していく。


■EV普及期:2020年代後半以降


さらに領域を拡大し、原材料の調達から完成車生産、バッテリーの二次利用、リサイクルまで含む、バッテリーを中心としたEVの垂直統合型バリューチェーンの構築を目指していく。
 カナダでは、GSユアサとの共同開発バッテリーの自前生産を開始する。主要部材についても、カナダにおいて、正極材は POSCO Future Mと、セパレーターは旭化成とそれぞれ合弁による新工場で生産し、自前化を進めていくほか、バッテリーの二次利用やリサイクルまで視野に入れた包括的なバリューチェーンの構築を目指す。バッテリー価格の最適化や安定調達はもちろん、川上から川下まで、バリューチェーン全体での競争力確保に繋げていく。
 これにより、2030年には、北米で調達するバッテリーのコストを現行のバッテリー比で20%以上削減する。また、予定している約200万台分のEV生産を賄うバッテリーについては、地域ごとに最適な方法で確保する見通しが立っている。

1-3.生産技術・工場の進化

2020年代半ばまでのICEからEVへの移行期間においては、需要や環境の変化に柔軟に対応しながら、収益も確実に確保していくフェーズとなるため、既存の生産設備を最大限活用し、ICEとEVの混流生産で対応していく。
 さらに、Thin, Light, and Wiseの実現に必要な先進技術を着実に取り込みながら効率的に進化させていき、将来のEV専用工場での高効率な生産体質の構築につなげていく。


EV生産においてカギとなる薄型バッテリーパックの製造ラインでは、米国オハイオ州のアンナ工場に新しく設置するバッテリーケースの製造ラインに、6,000トンクラスの高圧ダイキャストマシン、メガキャストを導入。これにより、60部品を超えるバッテリーケースの構成部品数や付帯部品数を5部品に大きく削減できるほか、摩擦攪拌接合(FSW)技術を組み合わせることで、投資の抑制と生産効率の向上を両立していく。
 なお現在、日本で初※3となる6,000トンクラスのメガキャストマシンを、栃木の生産技術の研究拠点に導入し、量産性の検証を行っている。
 この技術は、将来は大物アルミ鋳造のボディー骨格部品に適用を拡大するなど、継続的に進化させていく。


バッテリーパックの組み立てラインにおいては、クルマの製品機能に応じてモジュール化した部品構成とセル生産方式を組み合わせた、Honda独自の「フレックスセル生産システム」を先行で取り入れ、生産機種の変更・生産量の変動にフレキシブルに対応できるようにする。また、現実の生産ラインの状況をリアルタイムにサイバー空間で再現する、デジタルツインを活用することで、工場への部品供給や、生産量・スピードといった生産効率を最適化し、市場のニーズに合わせてタイムリーに商品を供給する。これらの技術も将来的に適用範囲をさらに拡大し、バッテリーパックの製造ラインだけではなく、EV生産の全ラインに適用・展開していく。
 最終的には、2028年に稼働を開始するカナダのEV専用工場において完成形を迎え、大幅な稼働率の向上、固定費の削減などを含め、世界トップレベルの生産効率を実現することで、従来の混流生産ラインと比較して約35%の生産コスト削減を目指す。


※3 Honda調べ

2.リアルタイムデータの連動によるオペレーションの進化

商品・調達・生産の取り組みに留まらず、商品の企画からアフターサービスまでのオペレーションを一括してソフトウェアで連携することで、さらに進化させていく。
 Honda独自のソフトウェアデファインドモビリティでリアルタイムに得られるデータを活用し、あらゆるシーンで、よりお客様一人ひとりに寄り添った商品・体験価値を、よりスピーディーに提供することが可能となる。
 例えば、販売現場で得られる最新の市場動向やお客様の嗜好などのデータは、リアルタイムに開発・生産現場にフィードバックされることで、お客様や市場のニーズに最適化された商品を最速で提供できるようになる。
 また、コネクテッド機能によって得られる車両のリアルタイムデータは、サービスの現場で連携されることで、お客様に最適なサービスメニューを立案、Honda専用のアプリを通してリアルタイムにお客様にご提案できるようになる。
 これらの事例に留まらず、バリューチェーン全体で同様に常に最新のデータと連動していくことで、EV市場の激しい変化に迅速かつ柔軟に対応できる体制を構築していく。

3.電動ラインアップ戦略

2030年のEV普及期に向けて、EVについては主力のHonda 0シリーズを中心に、グローバルで戦略的に商品投入を行っていくほか、足元市場で需要が旺盛なHEVについては、さらなる性能進化を図るとともに、グローバルで充実したラインアップ展開を図っていく。
 投入計画は以下の通り。

EV展開

・グローバルEV「Honda 0 シリーズ」
2026年に北米での上市を皮切りに、2030年までに小型から中大型モデルまで、グローバルで7モデルを投入


・中国での独自展開
2027年までにEVを10機種投入し、2035年までにEV販売比率を100%とする。現在展開しているe:Nシリーズに加えて、新型EV「烨(yè:イエ)」シリーズを発表し、引き続きEVラインアップを拡充


・小型EV展開
2024年秋に日本で発売を予定する軽商用EV「N-VAN e:」を皮切りに、2025年には軽乗用EVモデル、2026年には操る楽しさを際立たせた小型EVなど、小型EVのニーズがある地域に対して順次製品を投入

Honda Mobile Power Pack(モバイルパワーパック)を使った電動化展開

・2024年にモバイルパワーパックを2個搭載する二輪電動モビリティを投入


・2025年度中に、モバイルパワーパックを4個搭載する超小型モビリティを日本へ投入

ハイブリッド展開

・Honda独自の2モーターハイブリッドシステム「e:HEV」、およびプラットフォームを刷新。e:HEVの軽量・高効率化、プラットフォーム効率化・共用化により、さらなる燃費の改善と上質で爽快な走りを高次元に両立していく


・EV開発での技術をハイブリッドへ転用し、EVに搭載するモーターを活用した電動四駆を採用。機械式四駆と比較して、最大駆動力が向上するとともに、高応答・高精度な駆動力配分制御が可能。またモーションマネジメントシステムとの協調制御により、車両挙動を安定させながら運動性能を引き出し、安心と運転の楽しさを両立


この進化したハイブリッドモデルはグローバルで多くのお客様に提供していくとともに、ハイブリッドを含めたICE事業の体質強化により、着実に収益を確保し、創出した原資はEV事業を始めとする新事業に投入していく。

2024 ビジネスアップデート 説明概要 ~電動化に向けた取り組みの方向性と財務戦略について~
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4.財務戦略-投入資源の確保とキャピタルアロケーション

これらの電動化戦略の実現に向けて、適切なタイミングでの戦略的な投資が必要不可欠であると考え、EVの本格普及期となる2030年度までの10年間で、約10兆円の資源投入を計画している。
 その内訳は以下の通り。


・ソフトウェアディファインドモビリティ実現に向けた研究開発支出として約2兆円


・米国、カナダ、日本などでの、EVの包括的バリューチェーン構築に係る投資・出資など約2兆円


・次世代のEV専用工場を含む生産領域、二輪電動化関連、四輪新機種開発支出、金型投資など、ものづくり関連費用として、開発支出3兆円、投資・出資3兆円を合わせた約6兆円


投資判断に際しては、EVの市場への浸透度を見定めながら、適切な投資タイミングを計り、柔軟に対応していく。


また、創出したキャッシュについて、将来の成長に向けた資源投入と株主還元への配分を行う、Honda全体でのキャピタルアロケーションの計画は以下の通り。

2021年度から2025年度まで(ICE製品事業の体質強化とEV事業への資源投入フェーズ)

二輪事業、及びICEハイブリッド事業の体質強化により、12兆円の営業キャッシュ・フローを創出。これを電動事業・ICE/ハイブリッド、および新領域へ投資配分するとともに、安定・継続的な配当を行う。早期のPBR1倍超え達成に向け、この2021年度から2024年度の4年間で7800億円の自己株式取得を推進しているように、過去から積みあがった自己資本の適正化を含め、資本効率を向上させていく。

2026年度から2030年度まで(ICEからEVへ本格的な事業転換フェーズ)

営業キャッシュ・フローは、二輪事業での新興国を中心とした販売台数の拡大、四輪ICE/ハイブリッドでの継続的な体質向上により、2021-2025年度同等レベルのキャッシュを稼ぎ、さらにEVのROS 5%へ向けた収益性の向上と台数の拡大による営業キャッシュ・フローを上乗せすることで、2021-2025年度を超えるキャッシュの創出を目指す。
 資源配分としては、EV事業の成長に向けた電動化・ソフト領域への資源投入をさらに加速させるとともに、株主還元に関しても、安定的・継続的な配当、機動的な自己株式取得を実施していく。
 配当に関しては、2021-2025年度で1.3兆円以上、2026-2030年度で1.6兆円以上を計画している。これは、変革期に必要となる先行投資を継続した結果、短期利益が変動したとしても、1株当たりの配当を減額することなく、安定的・継続的な配当を実施したいという意思を示したものだ。


これまで築き上げてきた収益基盤と新たな成長領域でのキャッシュ創出を最大化し、将来成長に向けた果敢な投資と株主還元の両立を推進していく。

2024 ビジネスアップデート 説明概要 ~電動化に向けた取り組みの方向性と財務戦略について~
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2024.05.16 HONDAニュースリリースより

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    ホンダ

    現存する日本の主要自動車メーカーでは1960年代に最後発で四輪へ進出、大手の傘下に入ることもなく独立独歩で成長したホンダ。初期のスポーツカー「S」シリーズやF1参戦でスポーツイメージが強い一方、初代シビックの成功や、可変バルブ機構を採用した高性能なVTECエンジンで実用的かつスポーティな大衆車メーカーとして発展、1990年代にはミニバンのオデッセイやステップワゴン、SUVのCR-Vをヒットさせ、2010年代には軽スーパーハイトワゴン「N-BOX」の大成功で軽自動車ブームの中心になっています。先進技術の開発にも熱心で、ハイブリッドカーやBEVなど電動化、運転支援システムの実用化にも積極的。

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